やさしい目で きびしい目で・135
仕事はもうひとりの子供
木村 亜紀子
1
1兵庫医科大学
pp.355
発行日 2011年3月15日
Published Date 2011/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410103580
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私が眼科医局に入局した頃は,女医さんは結婚したら医局をやめるというのが暗黙の了解でした。私も当然,結婚・出産を機に大学を去るものと思っていました。ところが,娘の樹里が3歳の時に臨床復帰してから,ずっと大学に籍を置いています。三村主任教授が「ママさん女医にも大学で活躍の場を」とお考えになり,私はその第一号だったのです。
臨床復帰した当初は本当に大変でした。大学院で博士号を取ったは良かったものの,マウスや細胞とばかり向き合っていたので臨床が全くできなくなっていたのです。おまけに子育てにも向いておらず,娘が小さい頃は育児ノイローゼになりそうで心に余裕がなく(娘にも悪いことをしました),医局でもギスギスしていたと思います。なのに,子供をずっと保育園に預けて仕事ばかりというわけにもいきませんでした。「ママがいないと寂しいだろう」と気を揉み,気が気でなかったのです。仕事と子育てと,時間も制限されいろいろなことは無理だと悟り,本当に好きなことだけをしようと決心し,専門を斜視弱視・神経眼科に絞りました。教授にもその意を伝え,専門一本・臨床一本に絞ることを了解して頂きました。それでも時間が足りず,でも子供との時間も欲しかったので,お手伝いさんを雇い食事以外の掃除・洗濯を全部してもらいました。大学を早く帰る分(夕方6時頃帰宅),学会発表の準備や論文などは朝3時に起き挽回に努めました。今も朝仕事をするのは変わりません。
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