看護教育 60巻11号 (2019年11月)

特集 実習病院と教育機関の関係づくり

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社会的な医療ニーズの上昇に伴い、看護師等学校養成所の数は急激に増加しました。この現象は特に都市部で顕著であり、看護基礎教育機関は実習先の確保に苦慮しています。また同時に、実習を受け入れる臨床施設も看護職員の確保が難しくなっており、できるだけ能力の高い学生を多く受け入れたいと考えています。

そのような状況のなか、京都橘大学と京都市立病院は、教員と実習指導者が連携することで、臨地実習や基礎教育、さらに臨床看護師の現任教育までを効果的に行えるような取り組みを行っています。特集では、教育と臨床の立場から実習における学生とのかかわりを振り返り、それぞれの間の「ずれ」を埋めるためにどのようなことが必要かを紹介していただきました。

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 近年、疾病構造の変化や少子超高齢社会の進展に伴い、医療・介護をめぐる状況は大きく変化しており、看護職にはこれまで以上に高い専門性が求められている。このように社会的な医療ニーズが変化するなか、看護系大学が増加し、なかでも附属病院などの関連医療施設を有しない大学の増加が顕著である。基礎教育機関は、患者像の複雑化に対応できる総合的な看護教育が求められる一方で、臨地実習先の確保に苦慮している現状がある。また臨床においては、病院機能の拡充や変更に苦慮しながら、多様なニーズに対応できる優秀な人材の確保や育成に取り組んでいる。

 独立行政法人京都市立病院機構京都市立病院(以下、当院)は2012(平成24)年度より、新たに京都橘大学の看護学実習の受け入れを開始した。実習を受け入れるにあたり、実習指導者(以下、指導者)の育成や指導・教育体制などの組織強化を始め、実習環境の整備を行いながら、大学との連携のあり方について教員との議論を積み重ね、協働を推進してきた。その結果、互いに「看護の質の向上」を目標とした良好な関係を構築することができた。今回の特集では、7年間にわたる看護基礎教育機関と臨床との連携の実践について紹介したい。

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はじめに

 臨地実習では、患者の主観的・客観的な情報を統合しケアにつなげることが困難な看護学生も多く、実習指導者(以下、指導者)は効果的な指導方法や教員との連携に悩むことも少なくなかった。効果的な指導方法を検討するうえで、患者・学生・指導者の関係を考えることは臨地実習指導ではきわめて重要である。そこで、実在する患者への看護実践を通じて、学生と指導者がどのようにかかわったか、実際の指導場面を振り返り、指導者会で検討を行ってきた。

 今回、京都橘大学の実践看護学実習Ⅱ(2年次後期開講2単位)をとおして、指導者および教員が指導に苦慮する場面を共有し、学生の実習記録、指導者の指導記録、指導教員の指導内容の振り返りをふまえてその過程の分析を行った。その結果、「学生と指導者」「学生と指導教員」「臨床と大学」それぞれの間に、学生を指導するうえで、いくつかの「ずれ」が生じていることが明らかとなった。そこで、この「ずれ」の存在を理解したうえで、教員と指導者がどのように対応・連携していくことが効果的な教育や指導となるのかを検討した。

 本稿から始まる3つの記事でその内容を紹介したい。まずは、本稿で「学生と実習指導者」の間のずれを紹介する。

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 本稿では、実習指導事例の振り返りと分析①(909頁)で報告された「実践看護学Ⅱ」の実習事例において生じた学生Aと大学教員の認識の「ずれ」と、学内演習での学びと臨地実習で求められるものの「ずれ」について考察し、それらを埋めるための支援のあり方について述べる。

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 これまでに実習指導者と学生の「ずれ」、教員と学生の「ずれ」が明らかになった。本稿ではこれをもとに、実習指導者(以下、指導者)と教員がそれぞれの強みを生かして、学生との「ずれ」を埋め、学生の臨床的思考を育むための学びの支援の方法について検討したい。

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 看護学生の臨地実習における深い学びを紡ぎ出すためには、実習指導者と看護教員の指導能力と双方の連携が重要になる。京都橘大学(以下、本学)では、この2点を推進するための取り組みとして「協働学習会:より良い看護学実習について共に考える会」を2017年度に立ち上げ、現在も活動を続けている。本稿では、この協働学習会の取り組みについて紹介する。

連載 つくって発見! 美術解剖学の魅力・23

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 膵臓は、消化液を十二指腸へ外分泌し、インスリンを血管へ内分泌している重要な器官です。しかし、腹腔内でも深い部分にあるために、よく見る腹部の壁を取り除いただけの内臓の解剖図には描かれません。膵臓は腎臓と同じ高さにあり、その後ろには大動脈と大静脈が縦に走行しています。前部には胃があって、その奥に隠されています。膵臓の右と下は十二指腸、左は脾臓、上は胆囊と肝臓に囲まれています。また、膵臓自体も小腸と肝臓を結ぶ重要な血管をはさみ込んでおり、ちょうど消化器官が交わる交差点に位置しています。

 膵臓周囲器の造形は、まず細めの粘土棒を2本に切って、上腸間膜動脈と門脈を作ります。次に膵臓を大きめの粘土で逆「つ」の字形に作り、先の2本をはさみ込みます(①)。このとき、上腸間膜動脈は膵臓の裏側までで、門脈は膵臓の上方へ抜けてきます。

連載 〈教育〉を哲学してみよう・4

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 現在、大学教育でも学校教育でも、アクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び)が重要だと言われている。教授が教壇に立ち、受講生がその話を静かに聞いたり、板書を写したりする。そういった伝統的な大学の知識伝達型の講義スタイルが見直されつつある。改訂された学習指導要領では、「何を知っているか」ではなく「何ができるか」へと知識・技能のイメージを転換し、児童生徒が知識・技能を具体的な場面で活用したり、未知の問題を解決するために駆使したりすることのできるよう工夫することが教師に求められている。その核となったのが、大学ですでに必要性が言われていたアクティブ・ラーニングである。具体的な授業方法までふみ込んだ点に今回の学習指導要領の特徴があると言われる。

 実際、大学でのFDや学校教育での研修では、ペアやグループでの活動、PBL(problem based learning)、プロジェクト学習などの体験型教育の講習がさかんになされている。しかし、ときに活動をするだけで終わり、なんとなくやった感だけが残る場合も少なくない。そもそも伝えたい内容や身につけるべき知識・技能に応じて、授業方法が異なっていてもいいはずである。どのような活動が効果的なのかは教育方法学や教育心理学の研究成果を待つとして、この連載では「アクティブ・ラーニング」の考え方そのものを問い直してみたい。今回はその第一歩として、「考える」ということを考えてみよう。

連載 専門看護師とともに考える 実習指導のポイント 昭和大学の臨床教員の立場から・8

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 本連載では、臨床教員である専門看護師が、自分の担当する実習科目について、看護スペシャリストとしての視点をふまえた実習指導の「概要・ポイント」と「実践」に分けて説明する。「概要・ポイント」回では、実習領域の特徴を説明したうえで学生への指導ポイントや臨床との連携について紹介し、「実践」回では、実践例を具体的に説明する。また連載とは別に、昭和大学の臨床教員制度の詳細について毎回異なるテーマのコラムを掲載する。

大﨑千恵子(昭和大学保健医療学部 同学統括看護部)

連載 核心に迫る授業改善 インストラクショナルデザインによる事例検討・8

レンガ積みよりペンキ塗り 平岡 斉士
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 前回(連載第7回)は、IDの考え方をふまえて改善をした授業計画をさらに改善することを考えました。今回はその後編です。引き続き前田洋子先生(愛知県立総合看護専門学校)に提供していただいた事例を取り上げますので、授業計画などは前回を参照してください。ではさっそく、3つの「教員の悩み」を順に見ていきましょう。

連載 臨床倫理を映画で学ぼう!・11

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作品紹介

 今回は『感染列島』(瀬々敬久監督、2009年、日本)を取り上げます。東京都I市の病院に、きわめて毒性と感染性の高い新型インフルエンザウイルスに感染したとみられる男性が救急搬送されてきました。救命救急医の松岡は抗インフルエンザ薬を投与しますが、効果を示さず、男性は高熱と出血、けいれん、そして多臓器不全により死亡してしまいます。このウイルスの感染は、院内のスタッフや患者に広がっていきました。

 世界保健機関(WHO)から派遣された医官の小林は、松岡とともにウイルス封じ込め対策と治療を開始します。しかしその甲斐もなく、ウイルス感染は瞬く間に日本中に広がり、感染爆発(パンデミック)を起こしました。世界は、この未知のウイルスを「ブレイム」(神の罰)と呼ぶようになります。日本社会は大混乱に陥り、交通網も物流も麻痺して生活物資が不足しました。

連載 医療通訳inバンクーバー・8

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 今回は、私がなぜ医療通訳者になったのか、そしてどのようにして医療通訳を専門とする会社を経営することになったのかを書きたいと思います。

 きっかけは、小学校6年生(11歳)のある日のできごとです。朝、ランドセルを背負おうとした私に両親が「今日から家族旅行に行くから荷物をまとめて」と言うのです。私は「学校に行かなくてラッキー!」とワクワクしました。1時間後には奈良県生駒市の家を出て空港に向かい、数時間後に日本を発ちました。アルバイトでお金を貯めて飛行機のチケットを購入し、やっと日本に帰れたのはその5年後でした。

連載 看護師のように考える コンセプトにもとづく事例集・11

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episode1

土岐さんは、術後7日目で経口摂取が進みません。

あなた 土岐さん、おはようございます。朝ごはんはもう召し上がりましたか。

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目次

Movie Guide 人生、ただいま修行中
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あらためて照らされる、看護を学ぶ人々の姿

 フランス、パリ近郊の看護専門学校を舞台に、学生たちの成長を描いたノンフィクション映画「人生、ただいま修行中」が11月1日より全国で公開されます。

 本作の監督ニコラ・フィビリエールは過剰な演出を好まない、撮影対象と「正しい距離」をとると評される映画監督です。本作は、講義、演習、実習の3章仕立てとなっており、ナレーションや音楽は用いず、実際の学習場面を淡々と描いています。そこでは、フランスの看護学生たちの豊かな語りと、表情も含めた身体の動きがくっきりと、自然に映し出されています。

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「ケアを提供する」から「まちがケアする」へ

 医療者にとって「地域包括ケアシステム」は耳になじんだ言葉である。厚生労働省によれば、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることをめざした、地域の包括的な支援サービス提供体制のことだ。“コミュニティデザイン”を仕事とする山崎氏はこの言葉に出会い、「医療や福祉の世界がまちづくりに近づいてきた」と思ったという。しかし、それはどのようなケアであるのか? この疑問をもって、自身がイメージする地域包括ケアに近い取り組みを行っている地域に出向き、鼎談を試みた。本書はその生の記録である。

 なぜ“鼎談”であるのか。著者がイメージしたのは、ケアとデザインとが協働する現場である。だから対談は、各地域において医療や福祉の専門家とデザインやまちづくりに携わる人、そして著者の3名で行われたのだ。

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豊かな体験をしてほしい、と願う看護教員へ

 「豊かな感性」と「臨床の知」を育む看護学生にとって、経験が非常に大きな意味をもつといえます。経験はそれぞれの体験に意味づけがなされて蓄積されていくことや、体験には実感・発見・感動があることに鑑みると、学生にとってのより豊かな体験を意図的に準備することが、私たち教員には求められます。

 看護実践能力の育成のために、体験の機会を多くもち、振り返りを充実させることの必要性は常に言われており、看護教育の現場においてさまざまな体験学習の方法が活用されています。そのなかでも、臨地実習は代表的な体験学習の場であり、患者・家族・他の医療従事者の方々とのかかわりから学習を深めることのできる最も貴重な体験です。しかし、やり直しのきかない本物の体験であり、リスクを伴うことになるため、多くの学校では事前にロールプレイやシミュレーションを実施しています。私の勤務する看護学校においても、ロールプレイやシミュレーションによる演習を体験することで、学生は安全を保障された環境のなかで自身の行動のイメージができ不安の軽減につながっているようで、必要な学習方法であると実感しています。

新刊紹介

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基本情報

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看護教育
60巻11号 (2019年11月)
電子版ISSN:1882-1391 印刷版ISSN:0047-1895 医学書院

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