看護教育 59巻3号 (2018年3月)

特集 私たちのストレスケア

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 学校現場は,今更ながら「ブラック職場」であるといわれ始めているように,教員はストレッサーが多い職業です。看護師も一時期は「3K,4K」などといわれ,ストレスが多いことは知られています。どちらの職業も,ミッション遂行にきわめてまじめに取り組み,かついまだ滅私奉公的な考えをもつ人が少なくないことから,ストレスが原因でメンタルヘルスを害してしまうケースは珍しくありません。そんな「教員」と「看護師」双方の面をもつ「看護教員」がストレスケアが必要になる機会が多いのは,当然といえます。

 ストレスの多い教員,看護師のストレスケアについての調査・研究は多く,さまざまな場で発表もされてきました。しかし,看護教員のストレスケアについては,なぜかほとんど取り上げられてきていません。つまりは,ケア自体は本人任せであったといえるでしょう。自主的な対応はもちろん大事ですが,ストレスケアには,組織的な対応が必ず求められます。今回の特集は,看護教員が抱えるストレス源をあらためて浮き彫りにし,ストレスケアの仕方を,個人にできることと組織で行うべきことの双方から提案しようというものです。

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 筆者は現在,看護短期大学で精神看護学領域の専任教員をしている。看護教員養成課程で講習修了後,初めての看護教員経験は3年課程の公立看護専門学校であった。当時,担任学生への指導,授業案の作成と授業,実習指導,実習施設の指導者との調整と毎日が緊張の連続で,就寝中,歯を食いしばっていたことによる顎関節痛や,両手指の痺れで中途覚醒することがたびたびあった。それでも,筆者が教員を継続できた要因には,教育が好きだからと自己研鑽したことはもちろんだが,職場環境に恵まれたことが大きかったと思う。先輩教員から指導ノートを見せていただいたことや,教育活動の計画・実施・振り返りの会議などの場面をとおして,機会教育や情動的支援があったからだ。

 筆者は,所属する短期大学では後輩の教員を指導・支援する立場にある。後輩教員のなかには,メンタルヘルスの不調が理由で離職した人もいた。その教員らとのかかわりをとおして,「看護師が看護教員になるとはどういうことなのか」「看護教員のストレスにはどんな特徴があり,どんなメンタルヘルス対策が有効なのか」について検討の必要性を強く感じ,「看護教員の職業的アイデンティティと職業性ストレス」に関する研究に取り組んでいる。本稿ではその一端を紹介する。

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はじめに

 身近な話からさせてください。ご存じのように,2014年6月25日に公布された改正職業安全衛生法では,新たに「ストレスチェック制度」が設けられました。省令とともに示された指針では,「職業性ストレス簡易調査票」(57項目)を用いることが望ましい,と述べられました。2015年12月1日施行の同法にしたがい,筆者の勤務大学では,早速に,契約業者から電子メールが届きました。ここをクリックしてストレスチェックを受けてください,10分程度で終わります云々,と。確か,高ストレス者に該当したら,医師の面接指導を受けねばならないはず。きっと自分はそうなる,そうなったら煩わしい……と思って避けていました。ところが,忘れたころを狙い澄ましたかのように,督促メールが届き続けるのです。

 それがストレスになってきました。督促メールの存在自体が「ウザい」と嫌になって,3年目の2017年11月,ついに受けてみました。結果は,「総合的に判断して,あなたは高ストレス者に該当しませんでした」。安堵しつつ結果表を見てみると,高ストレス者に該当しないためには,①職場の人間関係が良いこと,②仕事の裁量性が高いこと,の2点が重要となるようです。至極もっともであると思います。

 しかし,回答しながら違和感も覚えました。なぜなら,①②に該当する質問項目群が,「学校・大学」や「教育」といったことの特徴を織り込んでいないからです。学校・大学という職場には,企業などと同じく上司・部下(的な存在の人間)や同僚もいますが,同時に,学生という立場を異にする人間もいます。彼らとの関係は「おとな同士」と同じとはいかず,「教育的」でなければならないがゆえの難しさがあり,したがってしばしばストレッサーとなっています。

 ところが,チェックテストは学生の存在を想定していません。また,一般的にいって仕事の裁量性が高いことは良いことですが,さまざまな観点からの配慮が教員のデフォルトとなった現在,何を規準に学生を指導し評価すべきなのか自体も,ストレッサーとなりがちです。しかも,裁量性が高いということはそれだけ教師の責任は重いのだ,という厳しいまなざしは,自己だけでなく同僚に向けることにつながり,そうした要求水準に適っていない(と思われる)同僚の存在が,ストレッサーになったりします。

 学校・大学という職場に勤める教員─看護教員にせよ,それ以外の教員にせよ─の仕事には多くのストレスがつきものです。ただし同時に,教育・研究や学務に全力を注ぐと何だか達成感もあり,「いやぁ〜もうホント,大変でね〜」などと,ついつい「病気自慢」ならぬ「ストレス自慢」をしてしまいがちです。しかしこれでは,遠からず爆発状態がやってきます。

 どうすれば少しでもストレスを軽減できるのでしょうか。本稿は,この問題を考えていきます。そのためには,「学校・大学」や「教育」といったことの特徴を少し掘り下げながら進んでいく必要があるでしょう。次の第2節では学生というストレッサーとその軽減方法について,続く第3節では同僚(や上司・部下)というストレッサーとその軽減方法について論じます。第4節では職場の長のリーダーシップの重要性と「ストレスフリーの場」について説明し,最後に第5節でまとめをします。

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教職員のメンタルヘルスに関する現状 文部科学省の調査結果から

 文部科学省が2013年3月にまとめた「教職員のメンタルヘルス対策について」によれば,2011年度の病気休職者に占める精神疾患の割合は61.7%,約5300名に上り,在職者に占める精神疾患による病気休職者の割合は,2001年度からの10年間で約2倍に増加している1)。教員のメンタルヘルスの現状は依然として深刻な状況にあり,メンタルヘルス対策の充実を図ることが喫緊の課題となっている。

 一方,現代の学校現場が抱える問題は,いじめや不登校,発達障害,学級崩壊,保護者対応,虐待,非行,事務仕事の増加など,複雑多岐にわたっており,極めて多忙である教員が抱えるストレスは高い水準にある。2011年度に条件附採用期間中に病気を理由に離職した教員のうち,精神疾患が約9割に達している2)ことは,こうした学校現場において,新任として着任後,一人前の教員として即戦力になることへの要求が,多大なストレスになっていることを示しているといえよう。

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看護教員のお悩みを聞いてみると……

 私が看護師として働き始めたのは1987年。以後30年間,ずっとフィールドは臨床でした。ですから,看護教員の経験はありません。

 ただ,看護教員をしている友人・知人(大学,短期大学,専門学校など多様),あるいは講師として呼ばれた学校(こちらは主に看護専門学校)の教員から,リアルな話を聞く機会は多いのです。

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 「アカデミック・ハラスメント(以下,アカハラ)」という言葉をご存知だろうか。高等教育に携わる読者の多くは,どこかで耳にしたことがあるだろう。だが,なんとなく聞いたことはあるけれど,「セクハラ」「マタハラ」「パワハラ」「アルハラ」など似たような言葉がありすぎてよくわからない,という人も多いかもしれない。

 筆者は,研究教育活動の場で観察されるさまざまなハラスメント問題について,教育社会学の視点で研究してきた。本稿では,身近にあるのに実はよく知らない「アカハラ」について,具体的な内容をお伝えし,読者とともにその対応を考えていきたい。

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医療者のストレス

 近年,対人援助職のストレスコーピングが重要になっています。わが国の看護教員は,授業や実習指導,行事の指導,生活指導,就職指導,教務事務など業務内容が多岐にわたっており,1人の教員にかかる責任が重く,ストレスフルな環境です。看護教員のバーンアウト研究では原田浩二らが,「学生対応」「職場環境」「教員資質」「多忙」「トラブル対応」「教育方法」「教員相互関係」「研究資源」「教育能力向上」の因子で169人から回答を得たものがあります1)。それによれば,看護教員をめざした者は全体の3%にすぎず,上司や先輩の薦め,職場や家庭の事情など,もともと教員志望は少ない現実があり,ストレス指標も志望者ほど減少気味であることが報告されています。

 実際,そういったストレスフルな環境で職務遂行を行っていくことは,多くの職務上のジレンマやストレスを発生させています。実は1988年の早い時期から医師や看護職のストレスについての研究があります。それは「燃え尽き現象」の要因として,心理社会的環境特性(生活出来事,日常苛立事,仕事や職場での対人関係,職場の雰囲気および仕事の士気,患者や医療従事者仲間,上司からの活動期待・支持,情緒的支援)と行動特性(A行動特性,神経質型行動特性,対処型行動特性)の両面から調査が行われたものです2)

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 専門学校などの看護教育機関の多くは小規模で,1校で教員の継続教育を企画・継続するのは容易ではありません。そこで期待されるのが,自治体単位での看護学校協議会。この協議会は,地域にある看護教育機関をつなぎ,全体の底上げに貢献できる可能性を秘めています。

 今回は,すでに独自のネットワークを形成し,教員の継続教育に力を注いでいる大阪府と千葉県の協議会と,大阪府に触発され,同様な活動をめざしている兵庫県の協議会,それぞれの代表に,活動の実際や,組織づくりの課題とその解決法,今後の展望などについて話し合っていただきました。

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 文部科学省は,平成29年10月に「看護学教育モデル・コア・カリキュラム〜『学士課程においてコアとなる看護実践能力』の修得を目指した学修目標〜」を公表した。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/078/gaiyou/__icsFiles/afieldfile/2017/10/31/1397885_1.pdf

 これは,各大学のカリキュラム編成において参考にして活用することを期待するものである。詳細については,上記URLよりダウンロードいただくとして,本稿では策定までの経緯,看護学教育モデル・コア・カリキュラムの意図することや内容について御理解いただくことを目的に概説する。

連載 つくって発見! 美術解剖学の魅力・3

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 頚を見ると正中の下から両耳の後ろまでを斜めに走る胸鎖乳突筋の束があります。頭を左右に回すといっそう目立つので,頚の表現では欠かせない要素です。

 胸鎖乳突筋より深層には頚部の形の土台となる構造が隠れています。頚部を立体的にとらえるためには,その構造を知ることがより重要です。

連載 キネステティク・クラシック・ネオ 動きの言語化のツールが可能にすること・3

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 前回(59巻2号)は,学生への教育的かかわりの可能性と,学生の感性を引き出し伸ばすかかわりについてお伝えしました。今回はキネステティク・クラシック・ネオ(以下,クラシック・ネオ)が単なる動きの介助術ではないことと,応用範囲の広さと看護技術教育を変える可能性について,臨床経験3年目である看護師の学習経験を例にお話ししたいと思います。

連載 授業を良くする! 教育関連理論・5

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開発の基本を理解する

教材って何だろう

 今回はADDIEモデルの2つ目のD(Development)「開発」を扱います。開発は,学習環境において利用される教材の準備を指します1)。たとえば,授業で使う教科書を選んだり,使えそうな映像を探したり,スライドやワークシート,シナリオを作成するといったことが開発に当てはまります。

 教材にもさまざまな定義がありますが,ここでは日本教材学会の定義2)を参考にしながら,「教育の目的・目標を学習者が達成するために制作・選択された図書,その他の素材。広義には,教えるための道具としての教具を含む」ものとします。第一に教育の目的・目標を学習者が達成するためのものですから,教材をつくるためには,まず授業の目的や目標が明確になっている必要があります。第二に,制作・選択するものですから,教員が新しくつくる場合も,既存のものから選ぶ場合も,その両方である場合もあります。第三に,教材は図書だけでなく,さまざまな素材や道具が含まれ,多種多様であるといえます。

連載 看護教育 継往開来!・10【最終回】

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江藤 『看護教育』の古い記事を読み解く当連載も,ついに最終回となりました。今回もテーマは「教師像」です。そこで,「看護教育」6巻5号(1965年)特集「看護教師のあり方」で取り上げられている橋本勝三先生の「伝統的教職観と新しい教師の資質」,そして石戸谷哲夫先生の「教員養成機関の発達と現状」を読みました。どちらも教育学者で,一般的な教員養成にかかわっておられる立場として,看護教育に寄稿したようです。

 おおまかな内容としては,明治時代から昭和30〜40年代にわたって,「教師観」が変わってきた,という話でした。明治時代であれば,もと武士階級などの,徳の高い人であれば教師足り得ていた。特に清貧を尊ぶ,という習慣があり,教職はいわば「聖職」「名誉職」という扱いを受けていた。

連載 リズムとからだ 「うまくいく」と「うまくいかない」の謎・12【最終回】

ゆらぎのある私 伊藤 亜紗
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 いよいよ連載最終回になりました。しゃべろうとすると,しばしば思ったのとは違う仕方で言葉が出てくる吃音。吃音当事者は,「思いから切断された動き」に遭遇するかもしれない可能性を,場合によってはそうした「恐れ」を生きています。私をさまざまなレベルで「コントロールのきわ」へと引き寄せる,どもる体。ゆらぎがもたらす,吃音的な私のあり方を考えます。

連載 すべって,転んで,立ち上がるために 〜看護職生涯発達学から〜・12【最終回】

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 2017年4月にこの連載を開始し,1年間が経過した。1年間という時間の長さは不思議なもので,毎日をそれなりに精一杯過ごしても,過ぎてしまうとあっという間の出来事のようにも思える。修了生からの原稿が届き,今の私が数年から10数年前に書かれ,修了生によって再考された論文と再会する。時間が経過してもそこには多様な状況,多様な発達段階を抱える看護師たちの言葉が生き生きと在る。そして今の私が看護職生涯発達学の視座から読み解き,解説を試みてきた。しかし多くは解説を超え,その原稿を読んで触発された思いや先人の言葉について述べてきたように思う。最終回では,この1年間をとおして新たに考えたことを読者の皆様にお伝えしたいと思う。

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 読者のみなさん,こんにちは。まだまだ雪深い札幌,春が待ち遠しいです! 今月はCoSTEPスタッフの奥本素子が,北海道大学病院 臨床遺伝子診療部で認定遺伝カウンセラーとして活躍している修了生の柴田有花さんに,CoSTEPでの学びを生かした活動について伺います。

─そもそも認定遺伝カウンセラーはどのようなお仕事なのですか。

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 つらいと言えない対人援助職の2人が,マインドフルネスとスキーマ療法によりいかにして幸せを手にしていくか!?本書では,この2人と臨床心理士である著者とのやり取りが臨場感あふれる文章で描かれるとともにマインドフルネスやスキーマ療法,その基礎となる認知行動療法(CBT)についてわかりやすく解説されている。さらに,今日から実践できるマインドフルネスのエクササイズも多く紹介されている。

 著者によれば,「つらいと言えない人」には,自分の感情をないものとし,感情を出す人を「レベルが低い」と見下す「オレ様/女王様」タイプと自分の感情より相手の感情を優先して,他人の世話ばかりしてしまうタイプの2つがあるという。本書では,前者のタイプであるオレ様医師のヨウスケさんと後者のタイプである真面目で隙のない臨床心理士のワカバさんの2人が登場する。

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 看護倫理は,看護師の知識・技術・態度の根底に存在するものである。看護基礎教育では,専門職業人としての倫理観を高めるために,社会におけるさまざまな規範の根拠について考察する力,自分自身の思考や行動を客観的に認識する力が必要であり,各学校が特徴をもたせ教育理念に表現している。評者の勤務校は,45年の歴史ある3年課程看護専門学校から,2017(平成29)年度より4年制専門学校として再スタートした。新カリキュラム構築では倫理教育を主軸として,教育理念での位置づけ,分野・領域・科目・単元の学習内容の設定,科目横断の学び方,学年での積み上げなどの話し合いを重ねてきた。

 1年生は,社会におけるさまざまな規範(道徳や哲学)の根拠について考え,倫理的に判断し行動できる力を養うとし,2年生は,現代社会の現状と課題について理解し,さまざまな価値観について考察を深め,3年生では,さらに経験の意味を問いながら自分のありようを見つめつつ,自己理解・他者理解を深め,生きること・死ぬこと,人間とは何かを論理的に考える力を滋養したいと考えた。そして仕上げの4年生では,専門職業人および反省的実践家として,看護とは何かについて,行為のなかで省察することの意味を学ぶとした。さらに4年間のなかで展開される臨地実習によるかけがえのない経験を意味づけていくことで,専門職業人としての倫理観を高めていくことができるようにと考えた。

新刊紹介

INFORMATION

基本情報

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看護教育
59巻3号 (2018年3月)
電子版ISSN:1882-1391 印刷版ISSN:0047-1895 医学書院

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