看護教育 53巻7号 (2012年7月)

特集 学校をアピールする! 学生確保のためにできること

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 少子高齢化にともない,若年層の減少がすでに始まっています。このため,一般の専門学校や大学では学生確保のため,さまざまな形でのアピール活動を行っています。看護専門学校においては,資格取得を目指す社会人経験者の入学増加もあり,他分野に比べれば,まだ学生不足が目立つという状況ではありません。ただ,大学が200校を超えたいま,各校とも学生確保に向けての一層の工夫と努力が求められます。もちろん,その大学も広報活動には力を注ぐ必要があるのは,言うまでもありません。

 「学生募集対策は経営者が考えること」ではありますが,経営管理の視点は一般教員であっても必要です。今回の特集は,さまざまな試みを紹介することにより,これからますます厳しくなるであろう学生確保のための広報活動について,それぞれの教員が考えるきっかけとしていただきたいと思います。

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都立看護専門学校の学生確保の現状

 都立看護専門学校(以下,都立看学)は都内の看護師供給源として,1998(平成10)年の7~11月のピーク時には,准看護師も含め1学年定員1310名の看護師を養成していた。その後,准看護学科,二年課程の閉課,閉校等の再編が2007(平成19)年に終わり,学校数も7校で全体の募集定員が560名となった。これに対し,入学を希望する応募学生数は,2005(平成17)年度以降 2009(平成21)年度まで4年間にわたり減少を続けた。

 18歳人口の減少,看護系大学の急増に伴い,看護専門学校の受験生は大幅に減少した。都立看学も例外ではなく,2000(平成12)年度から開始された社会人入試(25歳以上都内在住または在勤)の応募者はほぼ横ばいで推移したが,一般入試はピーク時の53%程度に落ち込み,推薦入試も60%にまで落ち込んだ。この結果,都立全体としては約1000人の応募者が減少した(図1)。

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広報活動に対する本校の体制

 本校は1991(平成3)年に東邦大学医療センター佐倉病院の看護師充足を目的に設置された,1学年定員40名の3年課程の学校である。20年前の開校当時,10倍強の受験者数を確保し,受験生の質の面でも学力・適性ともに現在に比べると優れていたが,ここ数年,受験者は半減し,入学後,学業成績不良のため中途退学する学生が増加,卒業率も72~75%と低迷している。これらの問題解決のために優秀な受験生を確保することが本校の喫緊の課題であり,全教職員挙げて広報活動に取り組んでいる。今回は,オープンキャンパスを中心にその一端をご紹介する。

 そもそもオープンキャンパスとして本校では,高校3年生対象の,いわゆる“1日看護体験”型の学校説明会を年2回,事務職員の企画・運営により実施していたが,受験生の減少,質の低下に危機感を強め,それまでの広報体制を刷新するべく2007(平成19)年4月に広報委員会を設置するに至った。事務職員主導の広報活動から,専任教員主導で受験生が求める情報を積極的に提供するための組織としてスタートしたのである。

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 少子高齢化にともない,若年層の減少が進んでいる。特に2019年以降の18歳人口の予測減少幅は大きく,専門学校,大学問わず,学生確保は大きな課題であり,学校独自の創意工夫が求められている。

 本校における学生募集は学校全体で考えることであり,18歳人口が減少しても学生数の減らない学校づくりに取り組んでいる。その取り組みにおいて,広報活動は大変重要な役割を担っており,特に教員の担うところは大きくなりつつある。学校の教育理念や教育内容,具体的な学生支援と将来像について伝え,選ばれる学校となる必要がある。近年では,入学対象者および保護者や高等学校へのアピールのみならず,広く地域住民に学校を知ってもらい,学校の教育活動や社会貢献について理解を得る取り組みもされている。

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はじめに

 今日,日本の多くの大学・専門学校は,「学生確保」という課題に直面している。学生確保は学校が存続発展していくうえでの重要な基盤であるため,実効性の高い学生募集活動が不可欠である。

 広報活動は,こうした学生募集活動の中心的役割を果たしている。同時に,学校の教育活動を広く社会に伝えていくことは,看護師を目指そうとする人たちに対して極めて重要な役割がある。小山は,「日本の看護教育制度が多様であることは,看護職を希望する人々に個人の状況にあった教育の機会を与えている一方,制度をきちんと理解していない場合には,結果として看護師への道の遠回りをする場合もある。(中略)今日の看護教育制度についての広報活動を,高校生だけでなく中学生,さらには中学や高校の教師や社会の人々に向けても行う必要がある」1)と述べている。

 すなわち広報活動は,学校にとっては学生募集活動の役割,看護職を希望する人々にとっては看護の道への道標としての役割を果たしているわけである。

 本稿では,准看護師が看護師を目指す看護通信課程での広報活動の実際と,学生確保に果たす教員の役割について述べていく。

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看護系大学を取り巻く状況認識

■看護系大学急増の状況

 この3年間での看護系の大学新設をみると,2009(平成21)~2011(平成23)年度で22校あった新設大学のうち,10校が看護系の学部・学科をもっている(2009年度新設11校中7校,2010年度5校中2校,2011年度6校中1校)。この結果,2012(平成24)年には看護系大学が208校となった。入学定員で見れば,4年制大学の看護系は2009年度970人増(大学・学部新設分),2010年度885人増,2011年度652人増で,全体で2507人の増加となっている。

 すでに18歳人口が減少し,リーマンショック後の景気停滞による就職環境の悪化を考えれば,国家試験というハードルはあるものの,“7対1医療”という追い風もあってか看護職の就職は企業就職とは隔世の感があり,出口への期待がもてる分野として,大学をつくるのなら看護系と発想されやすい状況にある。

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はじめに

 「迷ったらより積極的なほうを選べ」,こう言って看護の世界へと多くの生徒たちを送り出し続け,30年以上にもなる。その当初より,他の進学分野と比べあまりにも少ない進路情報に,「送り出す立場から見た看護教育」の視点から,求められるままにさまざまな意見を述べさせてもらった1─3)。また,看護の道へ進んだ教え子たちからもたらされた看護学生や看護師が直面するさまざまな出来事をまとめたこともある4─6)。数年前から,直接現場で指導する機会は少なくなったが,それでもどこから聞きつけてか,今も他校を含む高校生たちや社会人から看護系への進学ついて相談を受けることがある。

 すでにこの分野の受験指導にも,塾,予備校がしっかり根付き,受験に際してかつてのような情報不足の状況にはない。しかし,看護の道を目指す彼女(彼)らは,データリサーチと偏差値中心の一般大学分野と同化した受験の指導体制が,この進路分野に必ずしも完全には馴染まないことをそれとなく感じとっているようにも思える。

 今,高校生は何を考え,看護の道へ進もうとしているのか。最近接したことのなかから気になることを探ってみた。受け入れる専門学校,大学関係者の参考になれば幸いである。

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 今回のテーマ,結論から言えば,お伝えしたいことはただ1つ。5年後,10年後の看護専門学校業界の環境変化に備えて,今からしっかりと準備をしておいていただきたいということです。

 私は,専門学校業界に携わるなかで,環境変化に順応できずに“ゆでがえる”になっていく学校を数多く見てきました。募集停止や廃校といった話も,頻繁に聞くようになりました。

資料 第101回看護師国家試験 解説

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 厚生労働省は,2012(平成24)年2月に実施した第98回保健師,第95回助産師,第101回看護師国家試験について2012年3月26日に合格者を発表した(表1)。

 今年度の合格基準は必修問題は昨年度と変更なく40点以上/50点,一般問題・状況設定問題は157点以上/247点(63.6%)であった。昨年度は,一般問題・状況設定問題163点以上/250点(65.2%)であった(表2)。採点除外問題は2問あった。理由は,午前問題85─選択肢に誤りがあり正解が得られない,午後問題92─設問が不適切で正解が得られない,でともに採点除外の取り扱いになった。その他,保健師国家試験に関しては午前問題25が選択肢に正解がないため採点対象から除外され,助産師国家試験では,午後問題27が複数の正解があるため複数の選択肢を正解として採点対象となり,午後問題47は選択肢に誤りがあり正解が得られないため採点から除外されている。

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はじめに

 第101回看護師国家試験について,午前問題1~25と午後問題1~25および「人体の構造と機能」「疾病の成り立ちと回復の促進」に位置づけられる問題から筆者が選択した午前・午後のそれぞれ10問題の合計70問題を,第101回看護師国家試験を受験したY看護学校の学生38名の協力を得て,修正イーベル法を活用して考察した所感を述べたい。

 修正イーベル法は,本来はテストの合格水準(合否分割点)を合理的に算出する方法であるが,客観テスト(多肢選択型)を構成する個々の小問について必要度と難易度を判定することから,小問の一つひとつについて適否判定に利用することができる。

 すべての看護師にとって特に重要な基本的事項は,あまりにも簡単になりすぎるために出題が控えられてきたことに対応して,“必修問題”が出題されるようになって9回目である。必修問題は必要度が必須で難易度が平易,すなわち必要度難易度指数(Relevance Difficulty Index : RDI)が限りなく0.8に近い判定になるはずのものである。

 今回の調査において,看護学生(受験者)の判定でRDIが0.8だった問題は1題もなかった。0.75以上だったのは午前の問題1,8,10,11,17,19,20,21,22,25(表1)および午後の問題3,4,11,14,20,21,22,24(表2)であった。一方,RDIが0.65未満だったのは,必修問題と考えられる午前問題5,9,12,13と午後問題17(表1,2)ならびに一般問題の午前問題28,33と午後問題30,31,32,33,40である(表3)。

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ウズベキスタンにおける看護の急速な変貌

 著者らは,JICAプロジェクトを通して,2004年7月から2009年6月までウズベキスタン共和国(以下,ウズベキスタン)の看護教育の改善に関わってきた。2004年当時のウズベキスタンの看護はDoctor─Oriented Nursingであり,看護師は医師の補助者としての役割を果たすことが主な業務で,医師の指示があるとき以外は,自ら患者のベッドサイドに積極的に出向いて,症状等を観察するということはなかった。ウズベキスタンで,最もレベルが高いといわれている病院でさえ,「看護記録」も存在していなかった。JICAプロジェクトでは,Client─Oriented Nursing(患者に寄り添う看護)の実現を目指して,基礎看護から領域別の看護(小児看護,成人看護,老年看護等)までの全領域のカリキュラム等を改善し,教育環境を整える取り組みを行った。この活動の詳細は,看護教育誌の連載1─4)で報告している通りである。

 今回,プロジェクトの成果のモニタリングをかねてウズベキスタンを訪れる機会があり,教育機関,医療機関等を視察し,JICAプロジェクト以降,看護の現場が大きく変わりつつあることを実感した。ウズベキスタンの保健省,教育省も教育改革に積極的に取り組み,大統領も参加した国際教育セミナーを2012年2月16~17日に開催し,看護教育の現状について国際的に情報提供を行った。

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はじめに

 医師になって40年が過ぎた。病院医師,大学教授,病院長としての病院運営,の過去を振り返って,医師として最も重要な役割の一つは後輩を育てることであると思う。そのなかで学生教育,特に講義は重要な意味をもつ。

 学生にとって良い講義とは,心に残る講義であり,あのときにあの先生から聞いたことがあると記憶に残る講義であり,短期的には講義時間内に自らが満足して聞くことのできる講義である。

 教師にとって良い講義とは,学生が眼を輝かせて聞いてくれる講義であり,しっかりと理解してくれる講義であり,結果的に学生から良い評価を受け,それにより自分もが満足できる講義である。

 このような,学生にとっても教師にとっても良い講義を実現するために,すべての講義を学生から評価してもらう方式を取り入れた。

 表1は私が川崎医科大学において医学生を対象に行った講義の評価の一部である。この点数評価には一切の基準はもうけず,学生個人が自分の尺度で‘100点満点で好きな点数’を書けばよい,とした。

 当初は (1)具体的に細分化された項目や尺度がないため適正な評価を受けることができるであろうか? (2)教師(私)に媚びを売って良い点をつけすぎはしないであろうか?などの疑問点がなかった訳ではない。そのために,(1)記名・無記名どちらでも構わない,(2)自分の講義を受ける態度をも自分で100点満点で点数をつける,ことにした。

 前者により,媚びを売って点数をつける必要がない状況をつくり,後者によって,私が受講者の態度を判断したのとの格差があるかどうかを評価する指標とした。

 結果的には記名者平均90.0点,無記名者平均89.9点と両者の間にはほとんど差がなく,しかも受講者の態度もほぼ私が評価したものと大差なかった。この方式は講義の評価法として十分に役立つと判断した。

 2004年,川崎医科大学退任後,岡山医療センターの院長となり,附属看護学校の校長を兼任した。2010年,院長・学校長退任後も現在まで,岡山医療センター附属看護学校,旭川荘厚生専門学院で看護教育に携わると同時に岡山大学医学部にて年数回の講義を行っている。

 表2は2011年度の講義の評価点数表である。平均点が97.1点であり,満点の100点をつけてくれた学生が,医学生で37.7%,看護学生で81.1%であったことから,私の講義はある程度学生に受け入れられていると考え,私の講義に対する考え方,講義の手法を15ヵ条にまとめてみた。

連載 「看護教育評価演習」におけるパフォーマンス評価への挑戦・1【新連載】

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連載を始めるにあたって

石川倫子 東京医療保健大学東が丘看護学部看護学科准教授

 2010(平成22)年4月に専任教員養成講習会の平準化をめざし,『専任教員養成講習会実施要領(以下,実施要領)』『専任教員養成講習会ガイドライン』(以下,ガイドライン)が示された。改正ポイントの1つである「看護教育評価演習」は,2011(平成23)年度専任教員養成講習会では,ブルームの目標分析に基づく評価の考え方を用いて看護技術の評価規準と評価基準を作成し,評価内容の明確化を図り,評価方法を体験する演習が主に実施された。

 本連載では,知識や技能の到達を的確に評価することにとどまることなく,実際に看護に必要な知識や技能を活用する課題を設定し,感情・思考・判断を伴った学生の実際的な学習活動を直接的に評価するパフォーマンス評価をも実施した講習会の実際を紹介する。

 第1回は「看護教育評価演習」の設置の意図を理解した演習企画と,これまでの講習会で実施してきた看護学教育評価との関連を考慮した演習内容を取り上げる。そして,第2回には「パフォーマンス評価」の授業の実際を,第3回にはこの演習を受講した研修生の作成したパフォーマンス評価と学びを取り上げる。

 この連載によって,看護学教育の現場で状況的学習論に基づく評価に少しでも取り組んでいただければ幸いである。

はじめに

 東京都看護協会看護教員養成研修課程(以下,当研修課程)では,ガイドラインの趣旨を汲み取りながら,2010(平成22)年度まで積み重ねてきた教育内容を基盤にしてカリキュラムを見直した。そして,2011(平成23)年度は看護教員に必要とされる教育実践力を育成するための研修の質を担保できるように授業科目を精選し,930時間(37単位)を実施した。そのなかで,新たに取り組んだ「看護教育評価演習」の実際を紹介する。

連載 学生の目 教員のまなざし・19

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 2年課程に進学し,落ち着きを取り戻してきた4月の3週目。「看護とは」と尋ねられてもなかなか言葉として出てこない1年生たちに,「看護の詩」と題し詩を作ってもらいました。そうすると,なかなかどうして。恥ずかしそうに朗読していても,一人ひとりがしっかり看護観をもっていることがわかりました。

 自分の病気,家族の死,震災での経験や実習先での患者様の看護を通して得た,自分だけの「オリジナルな看護観」を堂々と語る学生たち。やさしさに溢れた言葉や綴られた文は,ごく自然にこんな看護師になりたいと表現されていて,聞き手である学友たちの心をも震わせます。

連載 「書く力」で“ステキな看護師”をつくろう 初年次から始められること・4

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はじめに

 「リアクションペーパー」という言葉が一般的であるかはわからないが,本稿ではそれに対する考察と,私が実際に行った取り組みに対する学生の反応を報告する。

 リアクションペーパーとは,「出席カード」「ミニッツカード」などさまざまな名称で呼ばれることがあるが,要するに講義の最後に書いて提出してもらう紙のことである。本稿では,講義の終わりにその場で提出してもらう紙を統一して,リアクションペーパーと呼ぶことにする。

 学生時代,私はこの提出物は出席確認に過ぎないと思い,考えたことをサラサラっと書いて終わらせていた。しかし,教員になってみると,同僚の先生方は熱心にリアクションペーパーを読み,学生の理解度を把握するため,また,疑問に耳を傾けるために活用していることを知った。学生が考えるよりも,教員はリアクションペーパーを活用しているのである。

 しかし,教員はリアクションペーパーを課題として出すとき,白紙を渡し,「今日の講義で学んだこと,感想,質問があったら書いて提出すること」という漠然とした指示を口頭で伝えているだけではないだろうか。これでは,学生も課題の意図をとらえることは難しい。教員はリアクションペーパーに期待していることを分析し,戦略的に使う工夫をする必要がある。

 一方の学生もリアクションペーパーを「書け」と言われたから書く,受動的な課題として受け取っている(実際,私もそうであった)。しかし,その場で講義の要点をまとめ,自分の考えを述べる力を鍛えるには,リアクションペーパーは格好の課題である。

 このように,現状ではリアクションペーパーは漫然と済まされてしまい,本来期待できる効果を発揮できていない。しかし,ちょっとした工夫を加えることによって,普段の提出物を書く力を伸ばす装置として使うことができると考えたわけである。

連載 九州・沖縄からの風 学生が綴る看護への想い・7

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思春期におけるさまざまなテーマを取り上げるピア

 私たちは大学で「Circle of Peer(サークル・オブ・ピア;以下,ピア)」というサークルに所属しています。サークル名にあるPeerとは,「仲間」という意味です。このサークルは,「Precious me, Precious you」を伝えることを目的とし,健康教育だけでなく,思春期におけるさまざまなテーマを取り上げて授業を行っています。「あなたも私も大切なひとり」という意味をもつこの言葉は,ピアの先輩方が掲げてくださったものです。

 設立当初はサークルの立ち上げに苦労し,先輩方は毎日のように集まって性教育に関する議論を重ねたり,勉強会を行ったりと,遅くまで残って活動していたそうです。

連載 実習の経験知 育ちの支援で師は育つ・11

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仮面を被る気持ち

 人生の節目には記念写真がつきものです。誕生,入学,卒業,結婚と,残されてきたアルバム。普段は書棚の片隅で眠っていますが,ふと手に取ると,与えられた命を支えられ,人のなかで生かされる日々が,自らを創りあげる何よりの財産であったことを諭される思いです。ここ一年余り,アルバムで思い出されるのは,がれきのなかから家族との想い出を探す被災者の姿です。見えなくなってしまった絆や心の軌跡を混沌としたなかから手繰り寄せるような作業,そして,痛み……。テレビの映像にふれるたび,私は衝撃で震撼する想いでした。が,その胸の痛みを超えて理性ばかりが研ぎ澄まされる感覚にとらわれるまで,そう長くはかかりませんでした。血液が冷めるようなその感覚が,私なりの“防衛”だということに気づいたのは,半年以上経ってからのことでした。

 人は辛くなったり怖くなったりすると,いろいろな形で自分を護ることが知られています。身体を脱して現実から遠ざかってしまうような感覚を味わう人,激しい攻撃性を露わにする人……。かつてはそこに“人の弱さ”を見るだけだった私も,心を病む人やトラウマ・サバイバーと出逢ってからは「人は何て強いのだろう」と感服するようになりました。症状が出るというのは生き延びるために必要な反応の結果で,人間特有の生物学的な生きしぶとさなのではないかと考えるようになったのです。それゆえに,当事者には想像を超える辛さが伴うわけなのですが……。

連載 ナイチンゲール伝・13

リビドーとデストルドー 茨木 保

連載 Mail from USA 『JNE』を読み,世界の看護教育の流れを知る・39

看護教育改革のゆくえ 杉本 敬子
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●【特別寄稿】「ナースを育てる:根本的改革の要求―改革はどこまでなされたか?」より

 JNE4月号の巻頭に掲載されているパトリック・ベナー博士の論説についてご紹介します。米国カーネギー財団による研究の一環でベナー博士らが2009年に発表した“Education Nurses”の翻訳版『ベナー ナースを育てる』が,日本においても,医学書院から昨年末に発売されたことは,多くの読者の皆さんもご存知かと思います。“Education Nurses”の発表から3年経った今,アメリカの看護教育における改革はどこまでなされたのでしょうか。その疑問に対するベナー博士の回答が,この記事には述べられています。

 ベナー博士はこの記事のなかで,看護教育改革の先駆的な試みとして,いくつかの新しいカリキュラム方法を紹介されています。まず,ペンシルベニア大学では,学士課程の1・2年生の過程で,従来別々に教えられていた自然科学と看護実践学の授業を統合的に教育する試みがなされているのだそうです。例えば,ヘルスアセスメントの授業は,解剖学,化学,病理学,薬学などの自然科学系の授業内容を統合して教育する方法を試みているということです。他にも,より洞察的に統合的に学習できるような試みとして,臨地実習グループの配置についての新しい方法を紹介しています。そこでは,各実習グループの学生たちに,同じような疾患ではあるけれども,血液循環状態や電解質バランスが不安定である患者を,意図的に受け持たせるのだそうです。この方法により,学生たちは,受け持ち患者の疾患の理解よりも,実習で日々経験した臨床的な問題に焦点をあてて学ぶことができるのだと述べています。このような受け持ち患者の配置方法の工夫によって,実習カンファレンスでは,同じような臨床疾患をもつ異なる患者の看護ケアについて,各々の視点で学んだことを報告し合い,比較して学び合うことができるのだそうです。

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基本情報

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看護教育
53巻7号 (2012年7月)
電子版ISSN:1882-1391 印刷版ISSN:0047-1895 医学書院

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