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●【特別寄稿】「ナースを育てる:根本的改革の要求―改革はどこまでなされたか?」より
JNE4月号の巻頭に掲載されているパトリック・ベナー博士の論説についてご紹介します。米国カーネギー財団による研究の一環でベナー博士らが2009年に発表した“Education Nurses”の翻訳版『ベナー ナースを育てる』が,日本においても,医学書院から昨年末に発売されたことは,多くの読者の皆さんもご存知かと思います。“Education Nurses”の発表から3年経った今,アメリカの看護教育における改革はどこまでなされたのでしょうか。その疑問に対するベナー博士の回答が,この記事には述べられています。
ベナー博士はこの記事のなかで,看護教育改革の先駆的な試みとして,いくつかの新しいカリキュラム方法を紹介されています。まず,ペンシルベニア大学では,学士課程の1・2年生の過程で,従来別々に教えられていた自然科学と看護実践学の授業を統合的に教育する試みがなされているのだそうです。例えば,ヘルスアセスメントの授業は,解剖学,化学,病理学,薬学などの自然科学系の授業内容を統合して教育する方法を試みているということです。他にも,より洞察的に統合的に学習できるような試みとして,臨地実習グループの配置についての新しい方法を紹介しています。そこでは,各実習グループの学生たちに,同じような疾患ではあるけれども,血液循環状態や電解質バランスが不安定である患者を,意図的に受け持たせるのだそうです。この方法により,学生たちは,受け持ち患者の疾患の理解よりも,実習で日々経験した臨床的な問題に焦点をあてて学ぶことができるのだと述べています。このような受け持ち患者の配置方法の工夫によって,実習カンファレンスでは,同じような臨床疾患をもつ異なる患者の看護ケアについて,各々の視点で学んだことを報告し合い,比較して学び合うことができるのだそうです。
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