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はじめに
「リアクションペーパー」という言葉が一般的であるかはわからないが,本稿ではそれに対する考察と,私が実際に行った取り組みに対する学生の反応を報告する。
リアクションペーパーとは,「出席カード」「ミニッツカード」などさまざまな名称で呼ばれることがあるが,要するに講義の最後に書いて提出してもらう紙のことである。本稿では,講義の終わりにその場で提出してもらう紙を統一して,リアクションペーパーと呼ぶことにする。
学生時代,私はこの提出物は出席確認に過ぎないと思い,考えたことをサラサラっと書いて終わらせていた。しかし,教員になってみると,同僚の先生方は熱心にリアクションペーパーを読み,学生の理解度を把握するため,また,疑問に耳を傾けるために活用していることを知った。学生が考えるよりも,教員はリアクションペーパーを活用しているのである。
しかし,教員はリアクションペーパーを課題として出すとき,白紙を渡し,「今日の講義で学んだこと,感想,質問があったら書いて提出すること」という漠然とした指示を口頭で伝えているだけではないだろうか。これでは,学生も課題の意図をとらえることは難しい。教員はリアクションペーパーに期待していることを分析し,戦略的に使う工夫をする必要がある。
一方の学生もリアクションペーパーを「書け」と言われたから書く,受動的な課題として受け取っている(実際,私もそうであった)。しかし,その場で講義の要点をまとめ,自分の考えを述べる力を鍛えるには,リアクションペーパーは格好の課題である。
このように,現状ではリアクションペーパーは漫然と済まされてしまい,本来期待できる効果を発揮できていない。しかし,ちょっとした工夫を加えることによって,普段の提出物を書く力を伸ばす装置として使うことができると考えたわけである。
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