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はじめに
医師になって40年が過ぎた。病院医師,大学教授,病院長としての病院運営,の過去を振り返って,医師として最も重要な役割の一つは後輩を育てることであると思う。そのなかで学生教育,特に講義は重要な意味をもつ。
学生にとって良い講義とは,心に残る講義であり,あのときにあの先生から聞いたことがあると記憶に残る講義であり,短期的には講義時間内に自らが満足して聞くことのできる講義である。
教師にとって良い講義とは,学生が眼を輝かせて聞いてくれる講義であり,しっかりと理解してくれる講義であり,結果的に学生から良い評価を受け,それにより自分もが満足できる講義である。
このような,学生にとっても教師にとっても良い講義を実現するために,すべての講義を学生から評価してもらう方式を取り入れた。
表1は私が川崎医科大学において医学生を対象に行った講義の評価の一部である。この点数評価には一切の基準はもうけず,学生個人が自分の尺度で‘100点満点で好きな点数’を書けばよい,とした。
当初は (1)具体的に細分化された項目や尺度がないため適正な評価を受けることができるであろうか? (2)教師(私)に媚びを売って良い点をつけすぎはしないであろうか?などの疑問点がなかった訳ではない。そのために,(1)記名・無記名どちらでも構わない,(2)自分の講義を受ける態度をも自分で100点満点で点数をつける,ことにした。
前者により,媚びを売って点数をつける必要がない状況をつくり,後者によって,私が受講者の態度を判断したのとの格差があるかどうかを評価する指標とした。
結果的には記名者平均90.0点,無記名者平均89.9点と両者の間にはほとんど差がなく,しかも受講者の態度もほぼ私が評価したものと大差なかった。この方式は講義の評価法として十分に役立つと判断した。
2004年,川崎医科大学退任後,岡山医療センターの院長となり,附属看護学校の校長を兼任した。2010年,院長・学校長退任後も現在まで,岡山医療センター附属看護学校,旭川荘厚生専門学院で看護教育に携わると同時に岡山大学医学部にて年数回の講義を行っている。
表2は2011年度の講義の評価点数表である。平均点が97.1点であり,満点の100点をつけてくれた学生が,医学生で37.7%,看護学生で81.1%であったことから,私の講義はある程度学生に受け入れられていると考え,私の講義に対する考え方,講義の手法を15ヵ条にまとめてみた。
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