medicina 57巻1号 (2020年1月)

特集 今の流れに乗り遅れない!—プライマリ・ケアでの呼吸器疾患の診かた・薬の使いかた

中島 啓
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 プライマリ・ケアのセッティングにおいて,咳,胸痛,呼吸困難など呼吸器系の主訴で受診する患者は多い.呼吸器疾患は診療の幅も広く,肺炎・結核などの感染症,肺がんなどの悪性腫瘍,間質性肺疾患,COPD・気管支喘息などの閉塞性疾患,アレルギー性疾患,じん肺など職業性肺疾患,睡眠時無呼吸症候群まで内科のさまざまな領域を含んでいる.さらに,重症肺炎,間質性肺炎急性増悪などの急性期病態から,COPDや気管支喘息の安定期の管理,肺がん終末期の緩和医療に至るまで,遭遇する病態や提供する医療も,患者の病状や病期によって変わる.よって,呼吸器診療には「肺を通して体全体を診る」という全人的医療の実践が重要である.

 呼吸器診療は日進月歩であり,目まぐるしいスピードで新薬の開発が行われている.近年登場した代表的な薬剤には,肺がんにおける免疫治療薬,喘息に対する生物学的製剤,COPDに対するトリプル吸入製剤がある.このような背景から,診療ガイドラインの改訂も頻回に行われており,管支喘息・COPDの領域だけを見ても,2017年に『喘息とCOPDのオーバーラップ 診断と治療の手引き』,2018年に『難治性喘息 診断と治療の手引き』『COPD診断と治療のためのガイドライン2018』が日本呼吸器学会から出版された.海外の喘息(GINA)やCOPD(GOLD)のガイドラインも毎年改訂されており,呼吸器内科の専門医でさえ日々アップデートが大変な状況である.

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呼吸器疾患は,疾患の幅が広く,多種多様な薬剤があるうえ,毎年のように新薬が登場しています.例えば,一般内科医も診療に携わることが多いCOPDや喘息の治療も劇的に変化し,関連ガイドラインも頻回に更新され,まさに十年一昔.患者の高齢化の波は,呼吸器領域も例に漏れず押し寄せ,治療選択・管理も難しくなっています.そこで,激変する呼吸器診療にどう対応していくべきか,考えてみたいと思います.(中島)

今の時代の呼吸器薬

呼吸器薬の基本 飛野 和則
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Point

◎「呼吸器薬」は非常に幅広い病態を対象に含む.

◎近年肺がん,COPD,喘息に対する新規薬剤が毎年上市されており,各薬剤の特徴について定期的に知識を整理しなければならなくなっている.また,抗菌薬の適正使用も社会的問題となっており,知識のアップデートが重要である.

◎社会の超高齢化に伴い,ポリファーマシーによる薬物相互作用やアドヒアランスの低下が問題となる.多職種での取り組みが重要である.

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Point

◎咳嗽は3つの経路から発生し,症状持続期間により急性・遷延性・慢性に分類される.

◎急性咳嗽では感染症,遷延性・慢性咳嗽では非感染症の割合が高くなる.

◎咳嗽の鑑別には詳しい問診が最も重要である.

◎咳喘息は夜間から早朝にかけて悪化しやすく,喘鳴や聴診所見に乏しく気管支拡張薬が有効である.

◎胃食道逆流症(GERD)の診断には問診表が有用であり,プロトンポンプ阻害薬が第一選択薬である.

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Point

◎ステロイドの種類,力価,作用の違いについて理解する.

◎ステロイド投与前に,副作用の予防を念頭に置いた諸検査を行い,必要に応じた専門家にコンサルトや予防内服などの対策を行う.

◎ステロイドを投与する際には,投与目的,投与量,投与期間などを明確にし,漸減方法についてもあらかじめ計画して,漫然とした投与を避ける.

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Point

◎吸入薬は,薬剤,吸入回数,吸気流量,手指筋力,患者の好みで選ぶ.

◎自分で粉を吸い込むドライパウダー式と,噴霧される霧状の薬剤を吸入する噴霧式に大別される.

◎喘息は,エリプタ®,タービュヘイラー®,pMDIから,COPDはエリプタ®,ブリーズヘラー®,レスピマット®から選ぶことが多い.

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Point

◎漢方は,本来は現代医学的な病名ではなく,東洋医学的な診断である「証(しょう)」に準拠して用いる.

◎そう言いながら,実は対症療法としても便利に使える.

◎本来の薬効を発揮させるには,症例の「陰陽虚実」を見分けることが第一歩となる.

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Point

◎中等度以上のがん性疼痛に対しては,速やかに強オピオイドを導入し,患者に応じた薬物の選択を行う.

◎オピオイドを導入するときは,吐き気や便秘といった副作用への対策を講じておくことが欠かせない.

◎がんによる呼吸困難感にはオピオイド,ベンゾジアゼピン系抗不安薬,ステロイドの3種類がキーとなる.

◎がんによる呼吸困難感に用いるオピオイドはモルヒネかヒドロモルフォンの使用が特に推奨される.

◎死期が迫ったときの痰からみには,まず輸液の減量を行い,効果が乏しければ抗コリン薬の使用を検討する.

最新の肺炎診療の考えかた

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Point

◎市中肺炎は,一般細菌だけではなく非定型病原体も原因となる.

◎病歴,臨床所見,喀痰グラム染色などの迅速検査に基づいて原因微生物を推定する.

◎入院適応の判断にはA-DROPやCURB-65/CRB-65の重症度分類が参考になる.

◎エンピリック治療では,肺炎球菌とともに他に何をカバーすべきか考えて治療薬を選択する.

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Point

◎CURB-65やA-DROPを用いて重症度を評価し,外来治療が可能か検討する.

◎疫学,患者背景,臨床所見,検査所見などから具体的な原因微生物を推定し,その微生物に適した抗菌薬を選択する.

◎経口抗菌薬は,バイオアベイラビリティのよいものを選択する.

◎第三世代セファロスポリン系やフルオロキノロン系は,第一選択薬としてはおすすめしない.

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Point

◎起炎菌としての非定型病原体が診断できれば治療対象となる.

◎診断できない場合でも中等症以上であれば治療対象となりうる.

◎細菌性肺炎との混合感染についてはデータが少なく治療対象としては推奨されないが,個別の状況に応じる必要はある.

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Point

◎NHCAPの多くは,介護を必要とする高齢者や疾患終末期の状態としての肺炎である.

◎終末期としての肺炎や繰り返す誤嚥の場合は,積極的な治療を望むか意向を確認する.

◎敗血症,重症度,耐性菌リスクを考慮して,初期抗菌薬の選択をする.

◎NHCAPにおいても抗菌薬投与前に喀痰を採取し,できる限り起因菌の同定を行う.

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Point

◎院内肺炎(HAP)の原因菌では,MRSA,緑膿菌が多く,次いでメチシリン感受性黄色ブドウ球菌,肺炎球菌,肺炎桿菌が多く検出されやすい.

◎HAP,人工呼吸器関連肺炎(VAP)患者の初期抗菌薬を決定する際は,死亡リスクと緑膿菌やMRSAなどの耐性菌リスク因子を強く考慮する.

◎HAP,VAP患者の初期抗菌薬を決定する際は,自施設のアンチバイオグラムの結果も考慮する.

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Point

◎日本で小児への肺炎球菌ワクチンを定期接種化後,成人でも血清型置換現象が認められた.

◎肺炎球菌ワクチンもインフルエンザワクチンも,対象者に接種を推奨する.

◎ワクチンの効果は,個人レベルでの効果と,集団レベルでの効果,それぞれを鑑みる必要がある.

肺抗酸菌症診療—ここがポイント

知っておくべき結核治療 南宮 湖
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Point

◎日本の結核罹患率は減少傾向にあるが,世界的には,「中蔓延国」に位置づけられている.

◎結核を疑った際には喀痰の抗酸菌検査を3回提出し,感染性の確認を行う.

◎初期強化時期の2カ月間はリファンピシンもしくはリファブチン,イソニアジド,ピラジナミドの3剤と,エタンブトールもしくはストレプトマイシンいずれかの1剤を投与し,維持期の4カ月間はイソニアジドとリファンピシンを継続することが,肺結核治療の原則である.

◎肺結核のよりよい治療のためには,薬物治療だけでなく,保健所との連携を含めた包括的なアプローチが重要である.

◎免疫抑制薬や抗がん剤などの多くの新規治療薬が登場するなかで,潜在性結核感染症の治療適応を知ることが重要である.

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Point

◎標準3剤併用を継続することが重要である.治療内容,副作用など理解を深めるように説明を行う.

◎空洞の存在は難治化につながるため,空洞出現前に治療を開始することが望ましい.

◎菌陰性化(3回連続培養陰性)12カ月以上の治療を目標とする.

◎エタンブトールの副作用がピットフォールになっている.投与量に注意する.

◎難治例,クラリスロマイシン耐性例では専門施設への紹介が望ましい.

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Point

◎気管支喘息は症状の変動性,症状を反復する病歴,悪化因子に注目することが重要である.

◎喫煙歴のある40歳以上の成人で,労作時の呼吸困難や慢性の咳・痰がある場合にCOPDを疑う.

◎無症状でも喫煙歴のある患者ではCOPDを疑うことが重要で,感冒時に症状が顕在化する場合がある.

◎気管支喘息,COPD,オーバーラップの鑑別は,問診,併存疾患,検査所見から総合的に判断する.

◎適切な診断のために画像検査や呼吸機能検査を医療圏で連携し,積極的に行うことが重要である.

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Point

◎喘息治療の長期管理薬は吸入ステロイド薬(ICS)が基本であり,発症早期から用い,少量でも継続することが奨励されている.

◎呼吸機能が低下していたり,症状が強い場合にはICS/LABA(長時間作用型β2刺激薬)が勧められる.

◎長時間作用型抗コリン薬(LAMA)は,2018年のガイドライン改訂以降,治療ステップ2から使用が可能となった.

◎治療ステップ1から使用可能なロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)はLABAに比べ気管拡張作用は若干劣るが,ICSに次ぐ抗炎症作用や直接的なリモデリング抑制作用などがある.

◎妊婦の喘息発作は,流産,胎児発育不全・脳障害の危険因子となるため,普段よりも厳格な管理が必要となる.

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Point

◎気管支喘息急性増悪(発作)は,突然の発症から心肺停止をきたしうる致死的疾患であり,迅速な増悪(発作)の重症度(強度)評価を行い,強度に合わせた初期治療を使い分ける.

◎アスピリン喘息・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)過敏喘息が疑わしい場合,全身副腎皮質ステロイド(全身性ステロイド)の選択には注意を要する.

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Point

◎難治性喘息と診断する前に,喘息の診断が確かであるか,合併症のコントロール状況,吸入などの薬剤のアドヒアランスの検討が重要である.

◎全身性ステロイドはさまざまな合併症を併発するため,安易な使用は避け生物学的製剤の適応を検討する.

◎生物学的製剤や気管支サーモプラスティなどの治療法にはそれぞれに特徴があり,これらの治療を行う前に専門医へのコンサルテーションが望ましい.

COPD安定期の最新治療 丸毛 聡
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Point

◎COPDの管理目標は,現状の改善と将来のリスクの低減である.

◎COPD安定期では総合的に重症度を評価し,薬物治療と非薬物治療を組み合わせて行う.

◎薬物治療では,長時間作用性の気管支拡張薬を基本とし,吸入ステロイド薬(ICS)の恩恵を被る特徴がある際には効果と副作用をモニタリングしながらICSを追加投与する.

COPD増悪への対応 田辺 直也
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Point

◎COPD増悪は「気道感染をきっかけに喀痰の増加,膿性化,呼吸困難増強などの症状が安定期の変動を超えて続き,短時間作用型気管支拡張薬の吸入,ステロイドや抗菌薬などの追加治療を要する状況」と定義される.

◎増悪時には,短時間作用型β2刺激薬による気管支拡張薬の追加治療を行ったうえで,抗菌薬や全身性ステロイドを必要に応じて使用する.

◎低酸素血症を認める際には,動脈血ガス分析を行い,pHの低下やPaCO2上昇の有無を確認する.

◎COPDの増悪時における補助換気療法の第1選択は非侵襲的陽圧換気(NPPV)である.増悪時の高流量鼻カニュラ酸素療法の位置づけについては更なる検討が望まれる.

肺がんと間質性肺炎の最新事情

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Point

◎特発性間質性肺炎(IIPs)のうち特発性肺線維症(IPF)は最も頻度が高く予後が不良とされてきたが,抗線維化薬が標準治療となり,飛躍的にエビデンスが蓄積されつつある.

◎現在のIIPsは2013年『ATS/ERSガイドライン』と『特発性間質性肺炎の診断と治療の手引き』により分類され,IPFの診断治療は2015年/2018年のATS/ERS/JRS/ALAT国際合同ガイドラインと本邦から出版された『特発性肺線維症治療のガイドライン』に基づいている.

◎日常臨床において,息切れなどの自覚症状,または無症状でも健康診断で胸部X線写真を撮影したことを契機に,診断されることが多い.

◎身体診察では背部両側下方にfine cracklesを聴取することが重要である.

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Point

◎間質性肺炎の治療は,特発性か2次性かにより変化しうる.

◎慢性期特発性肺線維症(IPF)に対するステロイド・免疫抑制薬の投与は線維化が疾患の本態であるため一般的には行わない.

◎IPF急性増悪に対しては,急性呼吸促迫症候群(ARDS)に準じてステロイドパルス療法,免疫抑制薬の投与を検討する.

◎特発性非特異性間質性肺炎(NSIP)のうち,cellular NSIPはステロイド治療に反応しやすいのに対し,fibrotic NSIPは反応が乏しい.

◎特発性器質化肺炎(COP)は比較的ステロイド治療に反応しやすいが,再発も多く見られる.ステロイド治療に反応しづらい場合,膠原病の併発も考える.

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Point

◎薬剤性肺障害は,原因不明の肺炎,間質性肺疾患をみる際に,常に鑑別に挙がる重要な疾患である.

◎市販薬や健康食品を含んだ内服歴を丁寧に聴取する.

◎薬剤リンパ球刺激試験(DLST)は診断の一助になる検査ではあるが,その結果は慎重に評価する.

◎薬剤性肺障害の治療はまずは被疑薬を中止すること.中等症以上にはステロイド投与を中心とした薬物治療を行う.

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Point

◎非小細胞肺がんでは,ドライバー遺伝子変異/転座の有無を調べ,陽性例にはそれぞれの遺伝子変異/転座を標的としたキナーゼ阻害薬を使用する.

◎非小細胞肺がんでドライバー遺伝子変異/転座が不明の場合は,全身状態・臓器機能が許せば,免疫チェックポイント阻害薬(ICI)+殺細胞性抗がん剤の併用療法が推奨される.

◎小細胞がんにおいても,ICI+殺細胞性抗がん剤の併用療法が承認された.

覚えておきたいその他の疾患

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Point

◎早期のARDSや人工呼吸器管理を要する重症肺炎には,ステロイドが一定の有用性を示す.しかし,ARDSの薬物療法において,生存率改善のエビデンスを示す大規模ランダム化比較試験(RCT)は未だなく,これから更なる研究が期待される.

◎好中球エラスターゼ阻害薬は本邦においてARDSに対して保険収載がなされているが,積極的に使用するにはエビデンスが乏しい.

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Point

◎サルコイドーシスは肺,皮膚,リンパ節,眼など多くの臓器に罹患する肉芽腫性疾患である.

◎10〜20歳代後半の男女,60歳代の女性に好発し,多彩な臨床所見を契機に来院する.

◎肺病変では胸部画像上,両側肺門縦隔リンパ節腫脹,広義間質の多発粒状影が特徴である.

◎診断後の治療介入時期は,罹患臓器の状況により慎重に検討する.

◎心臓,眼,腎病変,もしくは進行する肺病変は,積極的な治療介入を検討すべき病変である.

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Point

◎好酸球性肺疾患の原因検索は,①薬剤,②吸入(喫煙も含む)に加え,③感染症,④血管炎や⑤悪性腫瘍など全身性疾患を意識した問診,検査を行う.

◎急性好酸球性肺炎(AEP)は,心原性肺水腫によく似たCT所見を呈し,末梢血好酸球が増多しないことも多く,肺水腫や急性呼吸窮迫症候群(ARDS)症例では,AEPを鑑別の1つに入れておく.

◎慢性好酸球性肺炎(CEP)は,その陰影が肺野の末梢側に分布する特徴をもっており,再発しやすい病態である.

◎治療にあたっては,原因の除去に加え,感染症や腫瘍ではそれぞれの治療介入を行う.好酸球自体の炎症を抑えるには,ステロイドが有用である.抗IL-5受容体抗体など生物学的製剤のエビデンスも待たれる.

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Point

◎肺高血圧症は原因不明の持続的な肺動脈圧の上昇により,右心不全へと進行する予後不良の難治性疾患である.従来,平均肺動脈圧が25 mmHg以上と定義されていたが,最新の第6回ニースシンポジウムにて診断基準が20 mmHg以上へ引き下げられる方向で議論が行われている.

◎肺高血圧症は病変の存在部位により第1〜5群に分類され,病因によりさらに詳細に分類されている.

◎肺高血圧症は,専門施設における右心カテーテルを中心とした早期診断と病型に基づく治療選択が最も重要である.

特集の理解を深めるための28題

問題/解答

連載 見て,読んで,実践! 神経ビジュアル診察・21

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 これまでに四肢・体幹の失調について勉強してきました.立位が保持できないときに,小脳性の失調だと勘違いされる徴候があります.いわゆる深部感覚障害に伴う身体のバランス障害です.今回はそんな徴候を見極めるRomberg試験について勉強しましょう!

 

*本論文中、関連する動画を見ることができます(公開期間:2021年12月31日まで公開)。

連載 フレーズにピンときたら,このパターン! 鑑別診断に使えるカード・1【新連載】

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総論

 われわれが炎症の指標として使っているCRPであるが,CRPとは何かを知っているだろうか? CRPは“C-reactive protein”の略称で,この“C”はcapsular polysaccharide(C多糖類)を指し,肺炎球菌のC多糖類とこの蛋白が反応することに由来する.CRPは感染,炎症,細胞障害をきっかけに上昇するサイトカイン(主にIL-6,その他にIL-1β,Tumor Necrosis Factor-α)により肝細胞でCRP geneに作用し産生され血中に放出される.CRP産生は感染などの刺激から4〜6時間後から始まり,8時間後ごとに倍々となり36〜50時間後にピークを迎える1)

 CRPはただの反応蛋白ではなく,以下の役割をもつ(図1)2)

連載 物忘れ外来から学ぶ現場のコツ 認知症患者の診かた・20

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ポイント

症状の種類,程度,進行速度や,患者さんの置かれた環境・介護状況を鑑みつつ,予期せぬ事態にも対応できる,持続可能な対策が必要です.

連載 目でみるトレーニング

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 『医療者のための結核の知識 第5版』を手にとって読んでみた.本書は初版が2001年に発刊されて以来,実践的でわかりやすい記述に定評があるロングセラー書籍である.数年ごとに改訂され今回で第5版となるが,改訂ごとに新しい知識が各章に盛り込まれており,今版も実践的でわかりやすく記述され読み応えのある内容となっている.

 結核の歴史・疫学から始まり,病態生理などの基礎知識,検査・画像・診断,治療,感染対策,発病予防,免疫不全と結核,および潜在性結核感染症など,医療従事者にとって必要な知識がコンパクトにまとめられている.特に各項目の冒頭にはポイントが記述され,加えて図表や画像,フローチャートが随所に配置されており,また抗結核薬の薬剤見本の記載もあり,視覚的に理解しやすい配慮がなされている.結核患者の入院から退院までのクリティカルパスも紹介されており医療従事者にとっては非常に有用である.さらに,コラムにも結核診療の問題点について興味深いエキスパートオピニオンが記載されている.一方,最近では非結核性抗酸菌症の罹患率が上昇し結核を凌駕するようになってきている背景もあり,今回の改訂では非結核性抗酸菌症の章が充実している.最後にはさまざまな場面での結核あるいは非結核性抗酸菌症の症例を提示することで本書で学んだ知識を再確認できる構成となっている.付章には感染症法関連の届出書式の例が参考資料として示されており,結核診療にまつわる諸手続きに関しても見通せる内容である.

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 わが国の死亡原因の第一位は悪性新生物(がん)であるが,そのなかでも肺がんが最も多い状況が続いている.肺がんの治療成績は不良で,特に薬物療法の対象となる進行肺がんの5年生存率は5%以下のきわめて悪い状況にあった.しかし,21世紀になって,非小細胞肺がん(NSCLC)に対するドライバー遺伝子変異をターゲットとした分子標的薬が開発され,さらに,免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が登場して著しい進歩を遂げている.

 肺がんの薬物療法の歴史を振り返ると3つの大きなエポックがあった.第一は1980年代初頭のプラチナ製剤(シスプラチン)の開発であり,第二は2002年のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬に始まる各種分子標的薬の開発,そして第三が2014年のICIの登場である.細胞障害性抗がん剤の時代が長らく続き,治療レジメンの選択も小細胞肺がん(SCLC)とNSCLCに分けるだけで,毒性(副作用)も抗がん剤の種類によって多少の差はあるものの,血液毒性,消化器症状,脱毛などが中心で,大きな違いはなかった.しかし,ドライバー遺伝子変異阻害薬の開発,ICIの出現によって,NSCLCの治療戦略は大きく変貌し,大変複雑になり,副作用対策も難しくなっている.個々の症例に最適な治療を選択し,最良の結果を得るためには,治療開始前から治療中,治療後において,的確な判断・対応が求められており,担当する者の能力が問われるようになっている.まさに本書は,“プロのコツ”とされているように,肺がん治療を担当する医師,看護師,薬剤師らがプロとしての実力を発揮する一助になる書といえる.

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 「それってエビデンスがあるんですか?」

 上級医とのコミュニケーションや,カンファレンスにおいて,誰もが言われたことがある言葉ではないだろうか.そして,誰しもその言葉にネガティブな印象をもっている.何となく「根拠のない治療をしている」とか,「こんなことも知らないのか」と言われたような気分になるからである.

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 アレルギー性気管支肺真菌症(allergic bronchopulmonary mycosis:ABPM)の診断には1977年にRosenberg,Pattersonらが提唱したABPAの診断基準が用いられてきた.40年以上前に提唱されたものである.近年の医療とのギャップを感じることもあったのだが,本書では日本人におけるABPMの病態を明らかにし,新たな診断基準が示された.

 本書発刊に至るまでには,東海大学呼吸器内科学教授の浅野浩一郎先生を研究代表者とする「アレルギー性気管支肺真菌症」研究班の多大なる努力があったものと思われる.この研究班の前身は,2013年に厚生労働科学研究の難治性疾患等克服研究事業の下に設置されたものであり,本書は長年にわたる調査・研究の集大成といえる.研究代表者の浅野先生はこの分野の第一人者であり,浅野先生を中心にアレルギー学・呼吸器内科学研究者の精鋭たちが結集し,ABPMに関する最新の知見がまとめられた.

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57巻1号 (2020年1月)
電子版ISSN:1882-1189 印刷版ISSN:0025-7699 医学書院

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