書評
—倉田宝保,吉岡弘鎮,金田俊彦 編集—肺がん化学療法 副作用マネジメント プロのコツ
福岡 正博
1
1和泉市立総合医療センター
pp.101
発行日 2020年1月10日
Published Date 2020/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402226674
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わが国の死亡原因の第一位は悪性新生物(がん)であるが,そのなかでも肺がんが最も多い状況が続いている.肺がんの治療成績は不良で,特に薬物療法の対象となる進行肺がんの5年生存率は5%以下のきわめて悪い状況にあった.しかし,21世紀になって,非小細胞肺がん(NSCLC)に対するドライバー遺伝子変異をターゲットとした分子標的薬が開発され,さらに,免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が登場して著しい進歩を遂げている.
肺がんの薬物療法の歴史を振り返ると3つの大きなエポックがあった.第一は1980年代初頭のプラチナ製剤(シスプラチン)の開発であり,第二は2002年のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬に始まる各種分子標的薬の開発,そして第三が2014年のICIの登場である.細胞障害性抗がん剤の時代が長らく続き,治療レジメンの選択も小細胞肺がん(SCLC)とNSCLCに分けるだけで,毒性(副作用)も抗がん剤の種類によって多少の差はあるものの,血液毒性,消化器症状,脱毛などが中心で,大きな違いはなかった.しかし,ドライバー遺伝子変異阻害薬の開発,ICIの出現によって,NSCLCの治療戦略は大きく変貌し,大変複雑になり,副作用対策も難しくなっている.個々の症例に最適な治療を選択し,最良の結果を得るためには,治療開始前から治療中,治療後において,的確な判断・対応が求められており,担当する者の能力が問われるようになっている.まさに本書は,“プロのコツ”とされているように,肺がん治療を担当する医師,看護師,薬剤師らがプロとしての実力を発揮する一助になる書といえる.
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