書評
—四元秀毅 編 山岸文雄,永井英明,長谷川直樹 著—医療者のための結核の知識—第5版
門田 淳一
1
1大分大学・呼吸器・感染症内科学
pp.44
発行日 2020年1月10日
Published Date 2020/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402226662
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『医療者のための結核の知識 第5版』を手にとって読んでみた.本書は初版が2001年に発刊されて以来,実践的でわかりやすい記述に定評があるロングセラー書籍である.数年ごとに改訂され今回で第5版となるが,改訂ごとに新しい知識が各章に盛り込まれており,今版も実践的でわかりやすく記述され読み応えのある内容となっている.
結核の歴史・疫学から始まり,病態生理などの基礎知識,検査・画像・診断,治療,感染対策,発病予防,免疫不全と結核,および潜在性結核感染症など,医療従事者にとって必要な知識がコンパクトにまとめられている.特に各項目の冒頭にはポイントが記述され,加えて図表や画像,フローチャートが随所に配置されており,また抗結核薬の薬剤見本の記載もあり,視覚的に理解しやすい配慮がなされている.結核患者の入院から退院までのクリティカルパスも紹介されており医療従事者にとっては非常に有用である.さらに,コラムにも結核診療の問題点について興味深いエキスパートオピニオンが記載されている.一方,最近では非結核性抗酸菌症の罹患率が上昇し結核を凌駕するようになってきている背景もあり,今回の改訂では非結核性抗酸菌症の章が充実している.最後にはさまざまな場面での結核あるいは非結核性抗酸菌症の症例を提示することで本書で学んだ知識を再確認できる構成となっている.付章には感染症法関連の届出書式の例が参考資料として示されており,結核診療にまつわる諸手続きに関しても見通せる内容である.
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