medicina 55巻2号 (2018年2月)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

河合 真
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 とかく他科へのコンサルトというものは,気を遣うものです.長年勤務している病院で,コンサルト先の専門医が気心の知れた相手ならば「ほっ」としますし,気難しいと評判の医師ならば気を遣います.医師の仕事を顧みたときに,多くの「ストレス」の源はコンサルトから来ているのではないでしょうか.コンサルトの技量は医師としての実力と比例しますし,それが如実に相手にも伝わってしまう怖さがあります.

 コンサルトの難しさには,さまざまな要素があります.特にコンサルト先の科の「常識的な知識」や「求めてくる情報」などは大きな要素で,これを知っているかいないかで,コンサルトのストレスレベルがかなり変わってきます.そのため,研修期間中にさまざまな科をローテートして,コンサルトを出す側と受ける側の両方を経験することは一生の宝になります.私もあちこちの病院でコンサルトしたときに専門医が発した言葉が,今でも昨日のことのように思い出されます.

特集の理解を深めるための27題

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米国では,総合内科医,いわゆるホスピタリストから各科の専門医へコンサルトがなされるという図式があるのですが,日本の場合は立場が逆になることも少なくありません.ですから,お互いに「どうコンサルトしたいか,されたいか」を把握しておくことが大切ではないでしょうか.本日は内科医として立松先生,神経内科医として三枝先生をお招きして,内科と神経内科とのコンサルテーションの課題について,お話しいただこうと思います.(河合)

救急外来,急性期入院病棟からのコンサルト

意識障害 吉田 剛 , 野寺 裕之
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Point

◎発症の時間経過を含む詳細な病歴を,目撃者や家族から聴取する.

◎意識障害患者でも神経診察は可能であり,特に眼球運動および瞳孔の診察が重要である.

◎頭部画像検査は診断に重要であるが,異常が検出されない場合もあることを念頭に置く.

頭痛 古川 宗磨 , 伊藤 泰広
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Point

◎一次性頭痛の診断と治療は大切であるが,まずは「二次性頭痛の除外」を念頭に置く.

◎「これまでに同じような頭痛はありましたか?」と問診し,Noであれば頭痛の原因を全力で特定する.

◎雷鳴頭痛などの病歴からくも膜下出血を否定できない症例は,CTのみでは不十分で,MRI FLAIR像/MRAを確認する.

◎一次性頭痛の問診では片頭痛か緊張型頭痛かを鑑別するより,片頭痛があるかどうかを見極める.

めまい 三枝 隆博
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Point

◎問診が重要! 時間経過,誘発因子,随伴症状から大まかに鑑別する.

◎立ち上がれない「めまい」は慎重に対応する.

◎追視異常がみられる場合は中枢性疾患を想定する.

◎脳血管障害,耳科疾患において緊急性を要する疾患の鑑別を行う.

◎特に高齢者では,全身状態に起因する「めまい感」の検討を忘れない.

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Point

◎急に喋らなくなったり言っていることがわからなくなったりしたら,麻痺がなくても失語の可能性があるため,脳血管障害を念頭に精査する.

◎失語や構音障害は病歴が重要であり,急性発症の場合には症状がなかったことが確認できる最終時間(最終未発症確認時刻)の聴取も行う.

◎脳血管障害は治療の遅れが予後悪化につながるため,急性発症した失語や構音障害は様子をみずに,直ちに神経内科へコンサルトする.

◎簡単なスクリーニングで失語と構音障害は区別できる.

片麻痺 宇高 不可思 , 西中 和人
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Point

◎予断なく患者の訴えをよく聴く.“何か起こしている?”という直感が大切である.

◎バイタルサイン,血液検査,心電図などは必ず検査する.

◎画像診断は,まずCT.神経内科よりも脳外科にコンサルトすべき疾患がすぐわかる.MRIと一緒にMRAも撮る.無理でも血管のflow voidをよく見る.

◎National Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)を使えるようにしておこう.

◎刻々と変わる症状の経過をみる.“後医は名医”と言われるなら,自分が後医になろう.

対麻痺 織田 雅也 , 和泉 唯信
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Point

◎対麻痺は,脳・脊髄・末梢神経のどのレベルの病変でも起こりうるが,脊髄病変(主に胸髄レベル以下)が多い.

◎突発性の対麻痺では,外傷や急性の髄外圧迫などによる脊髄の損傷を想定し,外科治療の適否を迅速に判断しなくてはならない.

◎神経診察においては,感覚障害レベルの評価で病変の高位を推定し,Babinski反射で錐体路徴候の有無を評価し,肛門反射で完全麻痺か不全麻痺かの評価を行う.

◎脊髄のMRI評価が重要で,撮影可能な施設においては禁忌がなければ造影MRIを実施する.

歩行障害・ふらつき 大石 直也
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Point

◎歩行障害・ふらつきでコンサルトする際には,緊急性の有無が伝わるようにする.

◎脳,脳神経,脊髄,末梢神経,筋肉,骨,関節など,病因の局在は多様である.

◎内科,整形外科,耳鼻科など,関連する診療科が多岐にわたることにも留意する.

◎経過だけでなく,誘因や随伴症状,薬剤情報など病歴聴取がきわめて重要である.

てんかん発作 神 一敬
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Point

◎「けいれん発作=てんかん」,「意識消失発作=てんかん」ではなく,まずはてんかん以外の緊急を要する疾患の鑑別を優先すべきである.

◎てんかん診断で最も重要なのは,時間をかけた詳細な病歴聴取である.

◎てんかん発作の誘因として,睡眠不足,精神的ストレス,過労,飲酒,怠薬がある.

◎いつもの発作と同じで,普段の状態に回復しているようなら経過観察でよい.

嚥下障害 松本 慎二郎 , 亀山 隆
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Point

◎まずはバイタルサイン(脈拍,呼吸数,体温),血中酸素飽和度で呼吸状態を診て,緊急性についてチェックする.

◎上気道狭窄や咽頭痛・嚥下時痛を伴う場合は耳鼻科へ,嚥下後の胸部のつかえ感は消化器内科へコンサルトする.

◎構音障害を伴っていれば,神経疾患や筋疾患の可能性が高く,神経内科へコンサルトする.

◎急性発症で構音障害がなく,ティッシュペーパーに唾液をしきりに吐き出しており,めまいとふらつきを伴えば,延髄外側梗塞を疑え.

◎既往歴からADLまで,患者の全体像がわかるような情報を含めてコンサルトする.

感覚障害 服部 学 , 小鹿 幸生
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Point

◎神経疾患の鑑別には,詳細な問診が最も重要である.特に発症様式や時間経過の聴取に重点を置く.

◎感覚の種類により,異なる神経経路を上行するため,病変部位により特徴的な症候を呈する.大まかな神経機能解剖学を理解しておくことが重要である.

◎感覚所見を取るときは,患者の意識状態,理解力に配慮し,疲労や「飽き」を避けるため短時間にとどめる.

せん妄 小栗 卓也 , 湯浅 浩之
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Point

◎せん妄は脳の器質的脆弱性を背景に,さまざまな要因が加わって生じる.

◎せん妄の要因を考えるうえでは,家族・介護者などからの情報収集を惜しまない.

◎せん妄の背景に,脳卒中など急を要する神経疾患が隠れていることがある.

◎診察の際は,髄膜刺激徴候や局所神経徴候の有無を積極的に確認する.

◎薬物療法だけでなく,せん妄の要因や背景疾患を考慮した対応を行う.

複視 松本 瑞樹 , 山下 博史
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Point

◎複視を主訴に医療機関を受診する患者は決して珍しくないが,その原因は非常に多岐にわたる.

◎発症様式や症状の日内変動の有無が診断の鍵になる場合もあるため,詳細な病歴聴取が必要である.

◎客観的臨床能力試験(OSCE)などの卒前教育で習得した標準的な神経診察法を系統立てて行うことが重要である.

◎外来やベッドサイドで簡便に施行可能な「カバー・テスト」や「アイスパック・テスト」は,病変部位診断や鑑別診断に有用である.

視野障害,視力障害 尾崎 彰彦
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Point

◎視野障害・視力障害の患者では,紹介先を決めるために,解剖学的診断を行う必要がある.

◎片眼障害や水平性半盲は網膜や視神経病変,同名半盲は視交叉より遠位の病変を考える.

◎同名半盲は患者が気づいていないことがあり,その確認には対座法での視野検査が有用である.

◎急性の同名半盲は,後頭葉の脳梗塞によるものが多い.

不随意運動 瓦井 俊孝
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Point

◎不随意運動には舞踏病,バリスム,ジストニア,ミオクローヌスなどがある.

◎出現部位,性状,随伴症状の評価が重要である.

◎脳血管障害や重積状態など,緊急のコンサルトを必要とする場合がある.

◎抗精神病薬の内服歴や糖尿病などの代謝性疾患の既往症の聴取が重要である.

高次脳機能障害 植村 健吾
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Point

◎失行・失認を呈する患者では,頭部MRIが必須である.

◎症状の時間経過をきちんと聴取することが鑑別の助けとなる.

◎失行,失認にはそれぞれ左半球あるいは右半球の障害で生じるものがあり,部位診断の一助となる.

心因性・非器質性障害 福武 敏夫
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Point

◎頭痛に引き続く意識減損発作を反復性にきたすような若い女性例では,まず,頭痛の様相を明らかにすることが必要であり,片頭痛が鑑別に挙がる.

◎意識減損発作がてんかんや代謝異常,不整脈などの器質的疾患によるのか,心因性なのかの鑑別を行う.

◎発作が現認できない場合が多く,目撃者からの聴取と患者背景の可能な限り詳しい聴取がキーポイントとなる.

入院病棟からのコンサルト

髄膜炎,脳炎 安藤 孝志 , 勝野 雅央
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Point

◎病歴,身体診察から髄膜炎や脳炎の可能性を見積り,鑑別診断から除外できない場合は髄液検査を行う.

◎ウイルス性髄膜炎の典型例では,急いで専門医にコンサルトをする必要性は高くない.

◎脳炎もしくはウイルス性以外の髄膜炎の可能性がある場合,専門医の関与は必須である.

◎治療緊急性が特に高い細菌性髄膜炎,単純ヘルペス脳炎は疑った時点で早急に専門医にコンサルトをするのが望ましいが,すぐにコンサルトするのが難しい場合は標準治療を開始する.

◎コンサルトの際には「病歴」「神経所見」「提出した検査項目と判明した結果」「鑑別となる病態」「現在の治療内容」などを整理して伝え,思考過程を共有できると理想的である.

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Point

◎Guillain-Barré症候群は基本的に病歴・臨床症候に基づいて診断するため,迅速かつ適切な病歴聴取と神経所見の診察が重要である.

◎約70%の症例で,先行感染が認められる.

◎髄液検査では,発症1週間以降に蛋白細胞解離がみられる.

認知症 久堀 保
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Point

◎認知症をきたす疾患には,Alzheimer型認知症,脳血管性認知症,Lewy小体型認知症,前頭側頭型認知症など多くの疾患がある.

◎せん妄,てんかんなど認知症と間違えやすい病態がある.

◎認知症患者には病識がないことが多く,最も身近な介護者からの情報が必要である.

◎病初期と思われる場合や行動・心理症状(BPSD)の対応には,専門医へのコンサルトが望ましい.

脳梗塞,脳出血(慢性期) 大谷 良
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Point

◎脳梗塞は臨床病型,脳出血は病因が重要であり,そこから背景因子(脳卒中危険因子など)を考慮する.

◎一般理学的・神経学的に,変化した点や悪化した点がないか,詳細に観察する.

◎基礎疾患や合併症,薬剤の影響を常に考慮する.

外来からのコンサルト

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Point

◎「しびれ」という言葉で終わらせず,異常感覚なのか,感覚低下なのかを区別する.

◎「ふらつき」は深部感覚障害のサインであることが多い.

◎歩行困難などがあれば,原疾患や治療の合併症と思い込まず,専門医にコンサルトする.

◎治せる末梢神経疾患を見逃さない.

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Point

◎多発性硬化症(MS)では,病歴や神経所見に時間的・空間的多発を認めないか確認する.

◎診断には神経所見による局在診断,MRI(造影含む)から得られる情報が重要である.

◎MSを含めた中枢神経系脱髄性疾患は,検査法や治療法の急速な進歩により内科医が単独で診断・治療をすることが難しくなってきている.MSが鑑別に挙げられる場合は早めに神経内科医にコンサルトすることも重要である.

◎若年女性の罹患が多いため,うつなどの精神症状や妊娠・出産にも留意する必要がある.

重症筋無力症 近藤 直英
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Point

◎重症筋無力症(MG)の病態には抗AChR抗体,抗MuSK抗体,抗Lrp4抗体が関与している.

◎クリーゼの兆候である呼吸困難感を見逃さない.

◎禁忌薬が多いため,MG患者に新規の薬物を使用する場合は必ず薬剤情報を確認する.

Parkinson病,Parkinson症候群 髙橋 牧郎
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Point

◎Parkinson病とParkinson症候群の病態の違いを理解する.Parkinson病は黒質ドパミン神経細胞の脱落により脳内でのドパミンの枯渇が生じることで運動症状が発症するが,Parkinson症候群は脳血管障害や薬剤の副作用,他の変性疾患などでも生じることに注意する.

◎Parkison病とParkison症候群の臨床症状の違いを把握する.Parkinson病や大脳皮質基底核萎縮症では左右差があることが多いが,薬剤性Parkinson症候群や進行性核上性麻痺では左右差はあまり顕著でない.安静時振戦やre-emergent tremorはParkinson病でよくみられる所見である.

◎Parkinson病とParkinson症候群の検査所見,鑑別点を把握する.Parkinson病ではMRIなどの画像異常はないが,MIBG心筋シンチグラフィやドパミントランスポーターシンチグラフィにて取り込み低下がみられる.

神経筋疾患 原田 陽平
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Point

◎筋萎縮性側索硬化症(ALS)疑いの患者のコンサルトでは,類似疾患との鑑別に有用な情報が得られていることが望ましい.

◎ALS疑いの患者のコンサルトでは,これまでの検査結果や患者・家族との話し合いの内容が正確に伝達されることが重要である.

◎ALSの患者では,呼吸不全を呈する場合,緊急コンサルトが必要となることがある.

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Point

◎急性の脊髄障害は超緊急病態である.

◎脊髄障害の部位診断のポイントは,神経症候の高位を見出すことである.

◎悪性腫瘍の症例が背部痛や神経根痛を訴えた場合には,転移性脊椎腫瘍の可能性がある.

睡眠関連疾患 谷口 浩一郎
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Point

◎わが国における神経内科医のなかでも,睡眠医学を専門とする医師はほぼゼロである.そのため,神経内科に紹介しても睡眠関連疾患の診断確定や専門的加療は困難である.

◎「睡眠外来」や「睡眠クリニック」の名称であったとしても,実際には睡眠時無呼吸症候群(SAS)にのみ対応している医療機関が大部分である.

◎睡眠関連疾患の診察を行う場合,疾患としての特徴的な情報を収集する(=疾患を診る)以上に,概日リズム,恒常性,睡眠環境,身体疾患,精神疾患,薬物(嗜好品なども),ストレスや心理的要因などの観点から情報を集める(=患者を診る)ことが重要である.

連載 フィジカルクラブpresents これって○○サイン!?・11

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60代男性.転落して左肩を強打した.左肩が上がらないため来院した.

連載 Inpatient Clinical Reasoning 米国Hospitalistの事件簿・19

Case Discussion on the Ocean 石山 貴章
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 今回のケースは,秋も深まり少し寒くなり始めた時期に,私が経験したものだ.なぜよく覚えているか? 理由は簡単.それは,このケースを受けたとき私が海の上にいたからだ.『佐渡オータムライド』と銘打ったロードバイクのイベントへ行く途中のフェリーで電話を受け,波間を見ながらのディスカッション.これは,否が応でも覚えているというものだ.

 ちなみに,佐渡に着いた日は自転車仲間とロードバイクに乗り,その後は宴会と枕投げに興じたのだが,なんと翌日はものすごい雨風.肝腎の佐渡オータムライドへの参加は見送りとしてしまった.結果的に,ただの「大人の修学旅行」になってしまった次第である.

連載 目でみるトレーニング

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 本書が類書と比較にならないほどの明らかな優位性は,筆者の圧倒的なフィジカル能力を別として2点ある.一つは動画・音声コンテンツ.もう一つは温故知新である.

 心音のみならず頸静脈などの動画を多く含んでいることに加え,筆者が心尖拍動といったかすかな視診・触診の所見を初学者にどう伝えるかを検討してきた末に到達した「ふせん」まで,過去にも動画音声を含む書籍は多数あるが,それらと比較してもかなり豊富なコンテンツが盛り込まれている.スマートフォンやデジタルカメラといったデバイスの進化で視診・触診のダイナミクスを実際に読者に伝えることが可能となった.なんといっても「百聞は一見にしかず」ということで,視診の大切さを再度思い出させてくれるだろう.実際に例年神戸で行われる,循環器Physical Examination講習会も,今は心音に加え頸静脈,心尖拍動といった所見がかなりの要素で含まれるようになってきており,そこの講師達の中にある「暗黙知」をふんだんに盛り込んでいるので読んでいて“お得感”がある.視診および聴診を合わせることで診断に近づくことができるということを,他の誰より筆者が楽しんでいることが伝わると思う.

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 この本では救急室で遭遇する「高齢者の疾患」にフォーカスがあてられている.高齢者は病歴が取りにくく,併存症として多くの疾患を抱えていることが多い.たくさんの薬を飲んでいるので,薬剤の副作用や相互作用も心配だ.高齢ゆえに免疫不全患者でもある.訴えがはっきりしない高齢患者の診療は非常に難しく,時間や労力がかかるので誰もが敬遠しがちである.

 高齢者に対する救急診療をこれほど詳しく明確に解説した本は,わが国になかったのではないだろうか.コミュニケーション法が具体的に書かれていることも特筆に値する.高齢者は視野が狭いため「患者の正面で唇の動きが見えるように,少しおおげさに話をする」ことや「アイコンタクトを入れ」注意を医療者に向けさせることがとても大切である.

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 誰でも健康でいたい,病気にはなりたくない.だから,患者が診察を受けに来たのには何かの理由がある.これが医師と患者とのかかわり方だ.

 患者を「診る」ことは,初診時の全身の第一印象をみて,会話し(問診),ちょっと丁寧な観察(診察)から始まる.なぜ患者が来院したのか,何が起こりつつあるのか,頭が回転し始める.外来,入院,救急などで,患者を観察し,話を聞きながら状況判断し,すぐに対応するべきことなどを検討しながら推論や仮説を設定,対応し,身体診察を行い,次の選択肢や指示を出さなくてはいけない.特に時間的制限の高い救急やインテンシブ・ケアでは,診療のプロセスが凝縮されている.これらのプロセスこそが臨床の醍醐味だ.

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 この度,日本神経治療学会監修「標準的神経治療」シリーズの一冊として医学書院より『しびれ感』が発刊された.福武敏夫先生ほか気鋭の先生方編著によるもので,診療ガイドラインとして多くの読者が期待するであろうテーマの一つとして選ばれたものである.確かに,日常診療で最も多い主訴は「頭痛」「めまい」「しびれ」と言われるが,前2者については研究や論文も多く独立した書物や神経学書の中で特別に取り上げられ,かなり系統的に記述されることが多い.一方,非常に身近な問題である「しびれ感」は多くは付加的に述べられるにとどまっており,実は十分掘り下げられずに放置されてきた感がある.そのような意味で本書は誠に時機を得た企画であり神経内科医としては非常に興味をそそられる.

 本書では,第Ⅰ〜Ⅲ章で「しびれ感」の概念,解剖・生理学,臨床的な評価など総論的な問題が記述され,第Ⅳ章では15に及ぶ疾患,病態について各論的に取り上げられている.特筆すべきことは,本書がしびれ感を単に末梢神経や中枢神経に起因する問題に閉じ込めることなく,多くの原因疾患を横断的に網羅する形で(例えば,パーキンソン病のしびれ感,ALSのしびれ感など)を項目として取り上げていることである.「しびれ感」を編集,執筆された諸先生方の,神経学の対象としてしびれに正面から取り組むという意欲が読み取れる.「しびれ」は「痺れ」とも書かれる多義語であり,「痺れ」には「運動麻痺」を表現することもあることは本書でも繰り返し注意を喚起されているが,本書では「しびれ感」あるいは「痛み」という「異常感覚」という感覚系の問題に絞られている.

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medicina
55巻2号 (2018年2月)
電子版ISSN:1882-1189 印刷版ISSN:0025-7699 医学書院

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