medicina 53巻9号 (2016年8月)

特集 誰も教えてくれなかった—慢性便秘の診かた

中島 淳
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 超高齢社会を迎え,慢性便秘患者は増加の一途である.60歳未満では女性に多いが,60歳を超えると特に男性の数が増え,男女ともに患者数が急増する.したがって,慢性便秘は患者の大半が60歳以上であることから,内科のみならず,あらゆる診療科で診る機会のある,まさに診療科横断的疾患である.ただし,本疾患の診療において最大の責務は内科医にあることは明記しなければならない.

 また,慢性便秘はひとたびその病に陥れば,コントロールすることはできても,完全には治癒しないやっかいな疾患であり,医師は患者と長期にわたって付き合っていくことになる.しかし,わが国ではOTC(over the counter)医薬品の便秘薬を容易に購入できることから,診療に対する満足度が低ければ,患者はすぐに薬局へ走ってしまう.いかにスマートに診断・治療するかが求められているのである.

特集の理解を深めるための27題

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中島 現在,慢性便秘の診療においては,これまでになかった作用機序のルビプロストンが使えるようになり,さらに今後も新しい便秘治療薬が登場してくることから,治療方針の変化が予想されます.

 しかし,一番の問題は超高齢社会を迎えて患者が非常に増えている一方で,患者側には「便秘で医者には行きづらい」,医師側には「便秘をそれほど真剣に治す必要もないのでは」というような認識のズレがあることです.これはわが国独特の課題ではないかと思うのですが,本日はこうしたことも含め,慢性便秘診療の実地診療について,エキスパートのお二人にお話を伺います.

 まずは超高齢社会という視点から,慢性便秘診療にはどのような問題があるでしょうか.

慢性便秘総論

慢性便秘とは 大草 敏史
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ポイント

●慢性便秘とは,排便回数の減少,かつ/または排便困難感を呈する疾患症候群である.

●慢性便秘の診断基準としてRomeⅢの機能性便秘の診断基準があるが,実際の臨床では過敏性腸症候群の便秘型(IBS-C)も慢性便秘として診断されている.

●慢性便秘は原因不明の機能性(原発性)と原因が特定できる2次性(続発性)とに大別される.

●機能性便秘は,従来は弛緩性・痙攣性・直腸性便秘に分けられていたが,現在は世界的に結腸通過時間正常型・結腸通過時間遅延型・便排出障害型に分類されている.

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ポイント

●大腸癌や炎症性腸疾患による器質性狭窄による便秘を除外することが重要であり,alarm signがあれば積極的に消化管精査を勧める.

●慢性便秘症は,原発性の機能性便秘症と,基礎疾患・薬剤による二次性便秘症に分けられる.

●機能性便秘症を消化管運動能で分類すると,①結腸通過時間正常型,②排出障害型,③結腸通過時間遅延型に分けられる.

慢性便秘の現状 千葉 俊美
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ポイント

●慢性便秘症の予後は良好であるが,QOLの低下が認められる.

●慢性便秘に虚血性心疾患が併発する頻度が対照群と比較し高い.

●食事指導などで生活習慣の改善を図り,下剤の調節をするなど患者との信頼関係を構築する.

●消化管機能検査を施行し,便秘の病態を明らかにすることも必要である.

●慢性便秘症の治療は時間がかかることを患者に説明し理解してもらう.

慢性便秘へのアプローチ

慢性便秘診療のコツ 尾髙 健夫
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ポイント

●慢性便秘症は単に排便障害と腹部症状を起こすだけの疾患ではなく,身体的および精神的なquality of life(QOL)を障害する.

●代表的な自覚症状は排便回数減少,排便困難感,残便感であるが,患者により多種多様な症状があることを理解する.

●病態診断には客観的な問診と,段階的な鑑別診断が必要である.

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ポイント

●慢性便秘によりQOLが障害される.

●慢性便秘のQOLに与える影響は,アレルギー疾患や炎症性腸疾患などの慢性疾患とほぼ同等である.

●慢性便秘のQOL評価にはthe Patient Assessment of Constipation Quality of Life(PAC-QOL)が世界的に使用されており,日本語版も開発されている.

●慢性便秘診療ではQOL評価を含めた症状評価が重要である.

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ポイント

●病歴聴取の第一歩は,どんな症状が,いつ,どのようにして発症したかを知ることである.

●診察の際には,腹部の膨隆,腸蠕動音,鼓脹,圧痛や腫瘤の有無に注意する.

●病歴聴取と身体診察により,大腸癌の可能性を拾い上げ,速やかに大腸内視鏡検査を行う.

●S状結腸から直腸に発生した進行大腸癌は便秘の訴えが多い.深部大腸に発生した場合,腹部腫瘤によって発見されることがある.

●二次性便秘の原因疾患の診断には,それらの疾患を念頭に置いた問診が必要である.

便秘の診断に役立つ検査 水上 健
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ポイント

●生化学検査により,腫瘍,炎症,代謝・内分泌・自己免疫疾患を除外する.

●画像検査により,大腸の腫瘍,炎症,腸管外疾患が除外できる.

●腹部単純X線写真では,便秘の状態と原因が見える.

●大腸内視鏡で大腸の腫瘍,炎症や下剤による大腸黒皮症を診断できるが,便秘は検査困難の原因となる.

慢性便秘の鑑別ポイント 山本 貴嗣
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ポイント

●警告症状の問診などから,器質性便秘の可能性を念頭に置く.

●器質的疾患の除外のため,身体診察時に超音波などの検査を積極的に活用する.

●機能性便秘では食物繊維量を含む食生活についての問診を忘れず聴取する.

●慢性便秘の機序として,排便回数・量の減少と直腸排出障害の有無を判断する.

●診断が困難あるいは初期薬物治療が無効な場合は専門医へのコンサルトを考慮する.

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ポイント

●機能性便秘(FC)と過敏性腸症候群の便秘型(IBS-C)は,診断基準・症状・治療とも類似点が多い.

●実地臨床におけるFCとIBS-Cの主な鑑別点として,年齢,腹痛の程度および精神的な因子の有無などが挙げられる.

●現状ではFCとIBS-Cを区別する臨床的意義は少ない.

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ポイント

●機能性便秘と,機能性ディスペプシア(FD)や胃食道逆流症(GERD)はオーバーラップしやすい.

●オーバーラップ症例の症状は重いことが多い.

●prokineticsは,FDやGERDとオーバーラップした機能性便秘にも奏功する可能性が高い.

慢性便秘の治療 【生活習慣指導】

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ポイント

●便秘患者の問診では,食生活,排便習慣について十分に聴取する.

●慢性便秘治療の第一歩は,薬物治療を開始する前に生活習慣の改善である.

●ポイントは排便習慣の改善である.毎日十分な排便時間が取れる環境づくりをする.

●食事は朝食が最も重要である.

●適切な排便姿勢をとるよう心掛ける.

慢性便秘の治療 【治療薬総説】

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ポイント

●慢性便秘の病態は均一ではなく,それぞれの症例で異なっている.

●便秘症の治療に使用される薬剤は多種存在し,それぞれの薬剤の作用機序や特性が異なっている.

●漢方薬の多くは大腸刺激性下剤であるが,異なる作用機序を有するものもある.

●慢性便秘例の病態を症状・理学的所見から推定し,病態にあった最良の下剤を選択することが重要である.

慢性便秘の治療 【治療薬各論】

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ポイント

●生活指導で改善しない慢性便秘症に対しては緩下剤が第一選択であり,本邦では,塩類下剤である酸化マグネシウムと新規薬剤のルビプロストンなどが選択される.

●酸化マグネシウムは高マグネシウム血症に注意が必要で,腎機能が正常でも,長期投与例,高齢者では定期的な血清マグネシウム測定が必要となった.

●ルビプロストンは妊婦,腸閉塞には禁忌であり,肝機能障害時も注意が必要である.

●ルビプロストンの効果発現は比較的早いが,酸化マグネシウムは効果発現まで数日かかることを患者に説明しておく.

●酸化マグネシウムは就寝前1回投与でも可である.

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ポイント

●大腸刺激性下剤は腸管蠕動を亢進させることで排便を促す薬剤である.

●生活習慣や浸透圧性下剤の投与では効果不十分な場合に,刺激性下剤の投与が考慮される.

●刺激性下剤の長期乱用は避け,できるだけ屯用または短期間の投与で使用すべきである.

●大腸(偽)メラノーシスは,刺激性下剤の長期間連用の指標である.

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ポイント

●便秘に対する坐薬には重曹坐薬とビサコジル坐薬があり,浣腸には主に50%グリセリンが使われる.

●坐薬,浣腸とも,腸穿孔の疑い,腸の高度狭窄,大腸手術直後,中毒性巨大結腸,妊婦などでは禁忌ないし要注意である.

●浣腸は臥位での注入を原則とする.特に立位前屈での使用は直腸壁穿孔事故を起こしやすい.

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ポイント

●漢方薬には,便軟化作用,大腸運動亢進作用だけでなく,平滑筋の過剰収縮を抑制する作用を示す生薬がそれぞれ異なった分量で配合されており,症状や病態に応じて使い分ける必要がある.

●慢性便秘に用いる代表的な漢方薬は,その構成成分から,大黄(だいおう)が基本の薬剤群とそれ以外の2種類に分けられる

●2種類以上の漢方薬を同時に服用すると効果が重複してしまい副作用の危険性が高まるため,注意が必要である.

慢性便秘の治療

慢性便秘治療薬の将来展望 中島 淳
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ポイント

●慢性便秘の新しい治療薬として,ルビプロストンなどの分泌型下剤が登場してきた.

●新しく登場した便秘薬は臨床治験を経ているため,エビデンスレベルの高い効果が期待できる.

●今後新たな機序の便秘薬として,回腸胆汁酸トランスポーター阻害薬などの開発が行われている.

ケース別対応

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ポイント

●年齢とともに,便秘の有訴者率は上昇する.

●加齢が便秘に与える影響は,腸管神経系の変化,骨盤底機能障害に加え,さまざまな生活環境要因が考えられる.

●適切な病態評価を行い,併存症や薬剤の副作用に留意しながら,生活環境に合わせて,包括的な治療にあたることが重要である.

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ポイント

●結腸の病的拡張をきたすものが巨大結腸症,小腸の病的拡張をきたすものが慢性偽性腸閉塞症(CIPO)である.

●内科治療が無効でS状結腸軸捻転を繰り返す巨大結腸症症例は,外科的治療を考える.

●CIPOに対しては適切な減圧療法と十分な栄養療法が必要であり,安易な外科治療(小腸切除)は行うべきでない.

難治性便秘の外科的治療 河原 秀次郎
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ポイント

●内科的治療が限界に達した輸送遅延型の弛緩性便秘症が,外科的治療の良い適応である.

●弛緩性便秘症に対しては,結腸全摘術+回腸直腸吻合術が標準術式であり,バイパス手術の長期的な臨床効果は低い.

●手術療法だけでは十分な効果が得られない症例があり,術後外来での精神的サポートが重要である.

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ポイント

●がん患者がオピオイドを必要とする率は高く,その最も多い副作用は便秘である.

●オピオイドを開始する時は同時に下剤を併用し,軟便化と大腸刺激性下剤の組み合わせを基本とする.

●オピオイド開始後1週間以降の悪心は便秘の鑑別を要するが,腹部膨満の訴えの有無は目安にならない.

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ポイント

●統合失調症の長期療養者では,自覚症状がなくても麻痺性イレウス,巨大結腸症を起こしていることがある.

●定型抗精神病薬,三環・四環系抗うつ薬,多剤併用療法では便秘になりやすく,非定型抗精神病薬単剤,SSRI, SNRIでは,便秘は少ない.

●高齢者のうつ病では,心気妄想(極端な便秘へのとらわれ)を形成することがある.

●摂食障害では便秘薬の乱用に気をつける.

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ポイント

●高齢者における慢性便秘は,生理および行動面での加齢性変化が成因となる.

●認知症に伴う心理および行動障害(BPSD)が便秘の成因となりうるので,BPSDへのアセスメントが必須である.

●臨床像は異なるが,Parkinson病とLewy小体型認知症は神経病理学的に連続したLewy小体病である.

●マグネシウム製剤の連用で,Parkinson病非運動症状の増悪をきたす場合がある.

●アントラキノン系刺激性下剤の長期連用は,Lewy小体病に伴う便秘の増悪要因となる.

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ポイント

●慢性腎臓病(CKD)患者,特に透析患者では便秘の有病率が高い.

●CKDの管理で使用する薬剤には便秘をきたすものが多い.

●腎機能低下者への酸化マグネシウムの使用は,高Mg血症のリスクがあるため注意が必要である.

●刺激性下剤で管理不十分な透析患者の排便管理には,非刺激性下剤(D-ソルビトールやルビプロストン)の使用を考慮する.

その他の排便障害の診断・治療

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ポイント

●排便機能障害による排便困難・残便感などは,慢性便秘の1つである便排出障害の症状として発現することが多い.

●これらの診断では特に肛門視・指診が重要である.

●排便機能障害の初期治療における原則は,生活指導・薬物治療による保存的治療である.

●排便機能障害の診断・治療においては,器質的疾患の除外も重要である.

●便排出障害を呈する疾患の治療で,保存的治療で改善しない場合には専門的診断・治療を行う.

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ポイント

●便失禁の症状には,気づかずに漏れる漏出性と,トイレまで我慢できない切迫性がある.

●内肛門括約筋が障害されると漏出性が,外肛門括約筋の障害では切迫性便失禁が起きやすい.

●頻度が高いのは漏出性で,軽症例が多く生活指導や薬物療法が奏効しやすい.

●高度の会陰裂傷や直腸脱による便失禁は手術が必要なので,専門施設に紹介する.

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ポイント

●便失禁に対するバイオフィードバック(BF)療法では,骨盤底筋収縮訓練と直腸感覚正常化訓練を行う.

●便失禁に対するBF療法の成功率は70%前後で,その有用性に関するエビデンスレベルは,ある程度高い(Level Ⅱ,推奨度B).

●便秘症に対するBF療法の適応は骨盤底筋協調運動障害で,その目的は怒責時に外肛門括約筋・肛門挙筋の弛緩状態を正常に保つことである.

●骨盤底筋協調運動障害に対するBF療法では,骨盤底筋弛緩訓練とバルーン排出訓練を行い,その訓練のなかで,有効な排便姿勢や怒責方法も指導する.

●骨盤底筋協調運動障害による便秘症に対するBF療法の成功率は70%前後で,その有用性に関するエビデンスレベルは極めて高い(Level Ⅰ,推奨度A).

連載 Webで読影! 画像診断トレーニング・5

一歩踏み込んで考える肺所見 石田 尚利
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次の3症例について,どのような病態が推定できますか? また,診断は何でしょうか?

症例1 60代男性.喘息で吸入ステロイドを使用中.発作なくコントロール良好であったが,発熱と喘鳴が出現したため受診.血液検査で,血清総IgE(RIST)2,880ng/mL,アスペルギルスIgE(RAST)クラス3.胸部CTを施行.

症例2 70代男性.1カ月前より咳と痰があり,近医受診.肺炎の診断で抗菌薬,鎮咳薬,去痰薬を投与されるも症状が悪化し,紹介受診となった.単純X線写真で両下肺野に浸潤影,聴診でcoarse crackleを認めた.精査のため胸部CTを施行.

症例3 90代女性.施設入所中で,発熱,SpO2低下を認め受診.2年前に悪性リンパ腫の既往があるが,寛解.体温37.6℃,SpO2 88%(室内気).単純X線写真にて両肺にびまん性粒状影を認めたため,胸部CTで精査となった.

連載 Inpatient Clinical Reasoning 米国Hospitalistの事件簿・1【新連載】

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「またサチュレーション90を切りました.酸素,再開します」

 病棟ナースからの連絡だった.またか….なぜ…? 発熱は改善している.タミフルももうすぐ終了.なのに,酸素化だけが改善しない.これは一体….

 しばし,私は立ち尽くしていた….

連載 あたらしいリウマチ・膠原病診療の話・13

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 現在の関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)診療の原則は,「早期の診断」と「治療目標を意識した治療方針の決定(Treat to Target)」の2点に集約される.しかし,例えば罹病期間が20年以上に及ぶRA患者に対する診療は,時として非常に困難であり,活動性が高い早期RAの治療と同様に専門性が問われる場合が多い.しかも,身体機能の低下と十分にコントロールされていない疼痛のため,患者は移動を厭う傾向にあり,「遠くのリウマチ専門医」よりも「近くのプライマリ・ケア医」を受診していることがしばしばある.

連載 Choosing Wisely Japan その検査・治療,本当に必要ですか?・11

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 Choosing Wiselyは,病気の診断や治療においてエビデンスに基づいた賢い選択ができるように,医師患者間の対話を促すための世界的キャンペーン活動である.有害事象につながるリスクが高く,医療介入としての価値の低い過剰な診療や検査を減らそうというものである.

 具体的な活動として,各国の臨床医学系学会は推奨リストを挙げている.今回は,2014年4月2日にCanadian Geriatrics Societyが発表したリストを表1に示す1)

 では,今回のケースをみてみよう.

連載 診断力を上げる 循環器Physical Examinationのコツ・17

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症例

70代女性.主婦.

病歴 3年前に発作性心房細動を起こし,ワルファリンによる抗凝固療法が開始された.2カ月前に持続性心房細動となったのを契機に非代償性心不全となり,近医へ入院.この時初めて,僧帽弁狭窄症(MS)と左房内の血栓を指摘された.加療目的に当院へ紹介となった.幼少時のリウマチ熱罹患歴は,はっきりしない.

連載 目でみるトレーニング

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 私は國松淳和先生の活躍を非常に期待している.ユニークな課題へ果敢にチャレンジする精神,そして問題解決における着眼点が素晴らしい.不定愁訴や不明熱という皆が苦手な領域にもグイグイと切り込んで,理論的にわかりやすく解説していく.この本では「学会発表」「症例報告」がテーマである.

 國松先生(Dr. K)の熱い指導を受けて,かわいい初期研修医が初めて学会報告を準備する様子が描かれている.「先生,学会で症例発表してみない?」と指導医から突然言われたら,研修医は緊張するだろうな……

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 医師の診療能力はさまざまなケースを経験して上達する.それはマニュアルやガイドラインのみを参照するだけでは決して得られない臨床の実践知なのである.読者は,本書を精読することにより珠玉の外来100ケースを疑似経験することできる.患者背景,主訴,病歴,バイタルサイン,身体所見,初期検査などが継時的に示され,本書を読みながら外来診察室で患者と向き合っているような雰囲気に引き込まれていく.

 各ケースには,臨床的な判断ポイントを問うものとして重要な診断と治療についての設問が1つずつ付いている.設問数は合計200となる.選択肢は単純な知識を問うものというより,問題解決能力を問う形式がほとんどである.知識を問う問題の解答はネットですぐに得られても,これらの設問の解答について自信を持って選択することは簡単ではない.

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 本書は,書名が示すように2008年に刊行された『診断力強化トレーニング』の続編である.今回は監修の立場に移られた松村理司先生(洛和会総長)が,巻頭の「序」で本書の礎となっている「京都GIMカンファレンス」が1998年以来,休むことなく開催され,昨年2月には200回を数えたことを紹介しておられる.評者も,5年近く毎月第一金曜日は「京都GIMの日」と決めて参加しているが,京都・山科にある洛和会音羽病院の会議室を埋め尽くす熱気には,毎回圧倒される.

 本書をひもといてみると,前書を踏襲して50症例が「救急外来」「一般外来」「紹介受診」に色分けされ,その合間に要点を短くまとめた「Bullet」症例が38例掲載されている.

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 「こんな本があったら」と,かねて願っていた本が出版された.勘違い,手落ち,不手際,不覚,思い込み,などさまざまな誤りは,神ならぬ人にとって避けて通れない性(さが)である.しかし,医療には,誤りは許されず,細心の注意と配慮が求められる.

 誤り(誤診)の原因は,患者側にある場合と診察者側にある場合とがある.本書の序論に相当する「誤診(診断エラー)の原因と対策」の章では,原因を①無過失エラー,②システム関連エラー,③認知エラーの3種に類型化し,さらにそれらを細分した分類を引用し,本書で扱われている各症例の誤診原因をこの分類と照合させている.本序論は必読の価値がある.

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基本情報

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medicina
53巻9号 (2016年8月)
電子版ISSN:1882-1189 印刷版ISSN:0025-7699 医学書院

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