medicina 39巻7号 (2002年7月)

今月の主題 わかりやすい不整脈診療

不整脈理解のために

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ポイント

 心筋細胞の膜電位は,拡張期の静止電位と収縮期に発生する活動電位からなる.

 活動電位は数ミリ秒で頂点に達する脱分極相と,その後緩やかに経過して数百ミリ秒で元に戻る再分極相からなる.緩やかな再分極相が心筋活動電位の特徴である.

 活動電位の最大立ち上がり速度は興奮性や伝導速度を決め,活動電位の持続時間は不応期を決める重要なパラメータである.

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ポイント

頻脈性不整脈の発生機序には,異常自動能,撃発活動,リエントリがある.撃発活動の発生の元になる後電位には,早期後脱分極と遅延後脱分極の2種類がある.リエントリは解剖学的リエントリと機能的リエントリに分類されるが,それぞれorderedリエントリ,randomリエントリを形成する.

不整脈の診断

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ポイント

 不整脈の症状の程度や性質は,病気の重症度と必ずしも関係がない.

 不整脈による症状として最も多いものが動悸で,詳細な問診と臨床症状の把握により,不整脈の種類を特定することが,ある程度可能である.

 不整脈の症状は動悸だけとは限らず,めまいや失神も重要で,それが突然死の前兆のこともある.

 器質的心疾患や他の基礎疾患の存在を念頭に置くことも重要である.

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ポイント

 不整脈の診断において,洞調律の心電図は不可欠である.

 洞調律心電図は不整脈の診断のみならず,不整脈の原因となる基礎心疾患の診断に有用である.

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ポイント

 narrow QRS頻拍は房室結節より上部に原因を有する頻拍であり,頻拍中の心房興奮波の同定が鑑別診断に重要である.

 房室伝導の抑制は,PSVTの多くでは停止が可能であり,その他のnarrow QRS頻拍でも停止,徐拍化が可能である.房室伝導の抑制には,理学的方法(頸動脈洞マッサージ.Valsalva法など)や薬理学的方法(ATP,ベラパミルなど)を用いる.

 カテーテルアブレーションにより根治可能な頻拍が多く含まれている.

Regular wide QRS頻拍の鑑別診断 鎌倉 史郎
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ポイント

 regular wide QRS頻拍では,①心室頻拍,②変行伝導を有する上室性頻拍,③顕性副伝導路を介する頻拍を鑑別する必要がある.

 頻拍中に房室解離や,心房興奮による心室捕捉がみられたり,流出路や心尖部起源の心電図波形を呈する場合は心室頻拍を疑う.

 QRS幅が比較的狭く,右脚ブロック型で,心室中隔中央部起源の心電図波形を呈する場合は,変行伝導を第一に疑う.

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ポイント

▶“R-R間隔に変動がみられる頻拍”とは,通常の心電図にて目に見える程度に(50~100ms程度以上)R-R間隔が変動する頻拍のことである.

▶頻拍機序が不安定である場合,R-R間隔が変動しうる(非持続性の上室頻拍・心室頻拍など).

▶複数の頻拍回路・頻拍機序が存在する場合,R-R間隔が変動しうる(房室結節二重伝導路を合併したAVRTなど).

▶上室性頻脈性不整脈において房室伝導比が変化する場合,R-R間隔が変動しうる(第2度房室ブロックを合併した洞結節リエントリ性頻拍など).

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ポイント

 ホルター心電図は頻脈性および徐脈性不整脈の検出に有用な検査法である.

 上室性不整脈の自動解析は,心室性不整脈の場合に比し信頼性が低下する.

 心拍変動は心臓自律神経機能の評価に有用である.

 心拍変動のスペクトル解析の高周波数成分は,副交感神経機能を反映する指標である.

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ポイント

不整脈の診断や重症度評価において,これまでほとんど利用されなかったCTやMRI,心筋シンチグラフィなどの画像診断法により,不整脈の発生部位や発生機序などの解明も可能となり,今後これらの画像診断が治療にも反映されることが期待される.

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ポイント

 各検査法の有用性は,原疾患あるいは標的とする不整脈の違いで異なる.

 疾患によっては,非侵襲的な予知検査(指標)は電気生理学的検査と同等,あるいはそれ以上の予測値を有する.

 予知指標は,単独で判断するよりもいくつかを組み合わせて用いたほうが陽性的中率は高くなる.

治療の適応

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ポイント

 頻脈性不整脈に対する停止治療の必要性は,不整脈の特性,患者の状態を考慮し,迅速に判断しなければならない.

 普段から持続時間の短い発作性心房細動や非持続性不整脈は,停止治療が不要である.

 予防的治療の是非の判断は,不整脈の重症度,自覚症状の程度,患者背景を考慮し慎重に行う.

 重症心機能低下例で非持続性心室性不整脈が認められれば,突然死のリスクが高いと判断し,積極的に治療を加える.

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ポイント

 洞不全症候群は一過性に洞性徐脈性不整脈が出現する場合があり,徐脈と臨床症状の関連の有無を確認することが重要となる.

 症状を伴う房室ブロックはペースメーカー植え込みの適応であるが,無症状でもブロック部位がHis束以下であれば植え込み適応となる.

 過敏性頸動脈洞症候群/神経調節性失神において,心抑制型はペースメーカー植え込みの適応となることがある.

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ポイント

 大規模臨床試験の結果から,抗不整脈薬の催不整脈作用や心機能抑制が明らかとなった.

 Slcillan Gambitによる抗不整脈薬の選択は,不整脈の機序・成立条件,受攻性因子,標的因子をふまえて薬剤を選択する.

 抗不整脈薬の電気生理的・薬理学的作用を理解し,最も有効で,かつ最も安全な薬剤を選択することが重要である.

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ポイント

 高齢者に抗不整脈薬を使用する場合には,洞結節および刺激伝導系の潜在的な退行性変化がありうることに留意するとともに,薬剤の効果や代謝排泄率が通常成人とは異なることを念頭に置く必要がある.

 各薬剤の代謝排泄経路を知ったうえで,各患者の肝および腎機能に応じた用量設定を実践することが望ましい.

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ポイント

 心不全例において,抗不整脈薬使用上注意すべきことは,陰性変力作用,代謝排泄機能低下,消化管吸収低下,他剤との相互作用,催不整脈作用である.

 心不全例でのⅠ群薬使用は死亡率を増加させる.

 心不全例の突然死,不整脈死を予防しうる薬剤は,III群薬とβ遮断薬である.

 心不全合併心房細動例に対し,ACE阻害薬の有効性が期待される.

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ポイント

 抗不整脈薬は安全域が小さく,有効血中濃度の幅が狭いため,肝・腎障害時には特に副作用が発現しやすい.

 肝障害時は血清アルブミン値,血清ビリルビン値,プロトロンビン時間などが,腎機能障害時はクレアチニンクリアランスまたは血清クレアチニン値が投与の指標となる.

 初回投与例や高齢者では,肝・腎機能は必ずチェックすべきである.

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ポイント

 薬剤による新たな不整脈の出現,不整脈頻度の増加,不整脈重症度の悪化を催不整脈作用という.

 催不整脈作用はジギタリスを含めたすべての抗不整脈薬にみられ,非循環器用薬にも生じる.

 Kチャネル遮断薬はQT延長,Naチャネル遮断薬はQRS幅の延長に注意する.

 催不整脈作用が疑われたら,直ちにその薬剤を中止する.

非薬物治療

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ポイント

 体外式除細動は最も強力な頻拍停止手技であり,すべての薬剤抵抗性頻拍が適応となりうる.

 直流通電には,カルディオバージョン(心室波同期)と除細動(心室波非同期)がある.

 心室細動などの致死的頻拍では,非同期通電を行い,除細動までの迅速さが重要である.

 心房細動の直流通電では心室波同期通電を用い,塞栓症予防が重要である.

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ポイント

 2001年末,日本循環器学会による不整脈の非薬物療法ガイドラインが発表された.

 症候性のWPW症候群,房室結節リエントリ性頻拍,通常型心房粗動,心房頻拍,特発性持続性心室頻拍はカテーテルアブレーションの良い適応であり,根治率は高い.

 心室細動,基礎心疾患に伴う血行動態悪化を招く持続性心室頻拍は突然死の危険性が高く,植込み型除細動器の良い適応である.

上室性不整脈の治療

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ポイント

 心房細動の抗不整脈薬療法には患者情報を把握し,合併症や薬剤副作用の出現にも注意が必要である.

 心房細動の抗凝固療法には患者のリスク因子を評価し,適切な薬剤選択ならびに管理を行う必要がある.

 発作性心房細動では発症時間帯などの臨床的特徴から薬剤選択がなされ,治療効率を向上させる可能性がある.

慢性心房細動 新 博次
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ポイント

 慢性心房細動とは,心房細動が安定し1ヵ月以上持続するものである.

 心室レートコントロールはβ遮断薬の効果が優れ,心不全例ではジゴキシンが第1選択である.

 抗凝固療法はリスクがある場合,積極的にワルファリン(PT-INRで2.0)を使用する.

 抗凝固療法施行後,心不全,心内血栓がなければ電気的除細動を行ってもよい.

心房粗動 清水 昭彦
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ポイント

 心房粗動にはいくつかの分類がある.

 心房粗動に対する薬物治療は,危険な場合もある.

 心房粗動に対する高周波カテーテルアブレーションは,ほぼ確立された治療法である.

 通常型心房粗動の多くは,三尖弁輪上を反時計方向に回旋するリエントリである.

発作性上室頻拍 深谷 眞彦
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ポイント

 発作性上室頻拍の主要なものは,WPW症候群の副伝導路が関与する房室回帰性頻拍と,いわゆる二重房室結節伝導路が関与する房室結節リエントリ性頻拍である.

 根治法としての高周波カテーテルアブレーション法が,治療法として確立している.

 頻拍の停止法としては,ATP静注が速効かつ有効性が高い.しかし,頻拍は立位で出現しやすく持続しやすいので,直ちに仰臥位をとってValsalva法を行うことを教育することも有用である.

 頻拍の予防目的で抗不整脈薬を使用して,逆に催不整脈的に作用することがあることに留意する.

心室性不整脈の治療

心室期外収縮 櫻井 正之
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ポイント

 心室期外収縮(PVC)の治療に際しては,まず治療が必要か否かを診断する.

 明らかな基礎心疾患がないPVCは予後に影響することはないが,心筋梗塞,心不全では多発するPVCは予後不良を意味する.

 PVCは突然死をきたす遺伝子異常による疾患の兆候の可能性もある.

 抗不整脈薬治療によるPVCの抑制は必ずしも予後の改善を意昧しない.

 PVCの治療は予後を改善することを目標に行う.

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ポイント

 多彩な心疾患が持続性心室頻拍をきたすが,陳旧性心筋梗塞は全体の約1/3と欧米に比べ少ない.

 器質的心疾患に伴う持続性心室頻拍の予後は不良で,積極的な治療を要する.

 全体としてI群薬よりIII群薬が優れる.

 予後改善には植込み型除細動器が最も有効で,適応も拡大されつつある.

特発性心室頻拍 西崎 光弘
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ポイント

 器質的心疾患を認めない特発性心室頻拍(特発性VT)は右脚ブロック・左軸偏位型および左脚ブロック・右軸偏位(正軸)型を呈する例が多く,それぞれの頻拍起源は左室後中隔および右室流出路に認められる.

 左室起源VTの機序はリエントリ,右室起源VTの機序は撃発活動あるいは自動能と考えられている.

 左室起源VTはベラパミル,右室起源VTはβ遮断薬およびベラパミルが有効であり,両者ともカテーテルアブレーション治療により根治される例が多い.

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ポイント

 心筋梗塞急性期には心室細動,心室頻拍,心房細動,心房粗動,発作性上室性頻拍,房室ブロックなど,あらゆる不整脈が起きうる.

 心室細動では速やかに電気的除細動を行う.

 心室頻拍では意識,血圧,狭心痛,肺うっ血の状態により,電気的除細動か薬物による除細動かを選択する.

 上室性の頻脈性不整脈では薬物的・電気的に,洞調律化するか,徐拍化する.

突然死の対策

心肺停止の蘇生法 岡崎 英隆
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ポイント

 救命処置におけるABCD(Airway,Breathing,Circulation,Defibrillation/Differential Diagnosis)が重要である.

 以前より使用されていたエピネフリンに加え,バソプレシンの有用性が注目されている.

 蘇生時の不整脈には,VT/VF,心静止,PEA(pulseless electrical activity)があり,心電図により個々の不整脈を確定して,それぞれの治療を行う.

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ポイント

 特発性心室細動のうち,安静時心電図で右脚ブロック様波形と,V1〜3誘導での特徴的なST上昇を示す症例をBrugada症候群と呼び,現在では独立した疾患とされている.

 発症は,比較的若年者の男性に多く,さらに,突然死の家族歴をもつものが多い.

 心室細動再発率が高く,予後不良な疾患であることから,植込み型除細動器の適応と考えられている.

QT延長症候群の診断と治療 住友 直方
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ポイント

 QT延長症候群(LQTS)はtorsades de pointesや心室細動を生じ,失神や突然死を起こす.

 LQT 1はKVLQT1の異常によりT波の幅が広くなり,β遮断薬が有効,LQT2はHERGの異常によりT波が低くなり,やはりβ遮断薬が有効で,LQT3はSCN5Aの異常によりT波の始まりが遅く,メキシレチンなどが有効である.

その他知っておきたいこと

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ポイント

 不整脈の誘発因子には,運動,週度の労作,ストレス,睡眠不足,飲酒,カフェイン含有飲料(コーヒー,紅茶,日本茶),喫煙,食事,睡眠などがあり,これらを避けるように指導する.

 運動,労作によって発作が誘発・増悪,消失・減少するもの(心室期外収縮など)は,必要に応じ,トレッドミル運動負荷検査などで,運動制限の要否や程度を評価し指導する.

 自己検脈などにより自己管理できる不整脈もある.上室性頻拍では迷走神経刺激手技を指導する.発作が停止しない場合の医療機関側の対応も,よく説明しておく.

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ポイント

 ペースメーカー植え込みの基礎疾患とペースメーカーの設定を知ることは診療上不可欠.

 検脈の結果,症状と植え込み部位の変化にも注意.

 ペースメーカーに影響を与える因子と対処法を理解する.

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 最近10年間の不整脈治療の進歩はめざましい.抗不整脈薬ではCAST(Cardiac Arrhythmia Suppression Trial)に始まる一連の大規模試験から,副作用,催不整脈作用が指摘され,生命予後,QOLの改善を目的とした再評価がなされるようになってきた.また,アミオダロンやソタロールなどのKチャネル遮断薬が使用可能となった.一方,非薬物療法としてカテーテルアブレーションや植込み型除細動器(ICD)が導入され,治療に用いられている.しかし,カテーテルアブレーションは致死的な不整脈には限界があること,ICDについては根治的ではないこと,適応・合併症など,問題は少なくない.

 不整脈に基づく症状をいかに改善・消失させるか.また,不整脈死をいかに予防するか.これらの様変わりする治療法をふまえ,最近の動向について,4名の先生方にお話しいただく.

理解のための32題

演習 腹部救急の画像診断・1【新連載】

虫垂炎 舩津 宏之 , 八代 直文 , 葛西 猛
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case

 症例:50歳,男性.

 主訴:3日前よりの右上腹部・心窩部痛.腹痛増悪および発熱出現のため来院.

 所見:受診日当日の腹部単純X線写真(臥位正面像)を示す(図1).なお,尿道カテーテルは既往の脊髄麻痺による尿閉のため,以前から留置されているものである.WBC 10,300/μl,CRP 7.31mg/dl.

カラーグラフ 消化管内視鏡検査—知っておきたい基礎知識・19

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 大腸表面型腫瘍の報告は,1977年の狩谷ら1)の報告に始まり,1984年,武藤ら2)によってflatadenomaとして世の中に提唱された.その後,工藤ら3)により表面型大腸腫瘍性病変の多数例の集積結果が報告されるに至って,大腸表面型腫瘍が俄然注目を集めることとなった.従来,大腸癌の発育進展を考えるうえでその中心となっていたのは隆起型(いわゆるポリープ型)の病変であった.しかし数多くの報告により,表面型,特に表面陥凹型腫瘍における生物学的悪性度の高さから,関心は隆起型から表面型に移行していった.

連載

目でみるトレーニング

プライマリケアにおけるShared Care—尿失禁患者のマネジメント・10

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 病院と施設とのshared careの必要性

 介護老人福祉施設における尿失禁の問題は,排泄ケアのみならず総合的なケアの方向性を左右し,QOLにも大きく関与する重要なものである.しかし,施設では専門医の診察を受ける機会が少なく,検査設備も十分ではない.したがって,このような現況では医療の場である病院と生活の場である施設の連携を図り,いかに尿失禁のsharedcare1)を充実させるかが重要な課題となる.

 本稿では,おむつ着用高齢者におけるADLとQOLの特徴,およびADLからみた尿失禁高齢者のマネジメントについて概説した後,病院と施設とのあるべき連携について述べる.

新薬情報・23

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適応■新生児,乳児,幼児におけるRSV(respiratory syncytial virus)感染による重篤な下気道感染症の予防(RSV感染児の治療ではない).具体的には,RSV流行初期における,在胎週数28週以下の早産で12ヵ月齢以下の新生児および乳児,または在胎週数29〜35週の早産で,6ヵ月齢以下の新生児および乳児,または過去6ヵ月以内に気管支肺異形成症(BPD)の治療を受けた24ヵ月齢以下の新生児,乳児または幼児.

剤型■バイアル中に乾燥した剤型で供給される.用時に日局注射用水1mlで溶解し使用する.調整時に注射用水を加える際には泡立てないように穏やかに加え,溶液が渦を巻くように回し,振盪せずに混和すること.調整後は注射液が澄明となるまで20分以上静置すること.

短期連載 医師が出遭うドメスティック・バイオレンス・2

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 多くの臨床医にとって,診療のなかで,患者の背景に「夫や恋人の暴力があるのでは」と疑うような事例の経験は,一度や二度はあるはずである.しかし,プライベートなことだからとか,トラブルに巻き込まれたくないといった理由でその事実を確認することも避け,必要最小限の医療を提供するにとどまることが多かったのではないだろうか.昨年施行されたDV防止法の第六条には,「医師その他の医療関係者による被害者の発見と通報について」と「情報提供の努力義務」が明記された.アメリカにおける全国的な取り組み1)にははるか及ばないが,DV事例の発見と対応に向け,日本の医療も取り組まなければならないときがきた.

内科医のためのリスクマネジメント—医事紛争からのフィードバック・4

不用意なひとこと 長野 展久
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なぜ医事紛争へ発展するのか

 医事紛争へと至る背景には,さまざまな要因が指摘されています.そのなかでも患者側からいっも問題提起されるのが,「真実を知りたいのに説明が曖昧」であることと,「病院側の対応が不誠実」であるという2つの点です.このような説明不足は,インフォームドコンセントを行う際にもしばしば問題となります.日常の臨床で診断や治療を行うとき,インフォームドコンセントを常に意識して患者に説明するように誰もが心がけていると思いますが,実際には,医師が説明したことと患者が理解したことの内容に,大きな隔たりがあることをしばしば経験します.そして各種医療行為の結果に患者が満足しないと,事前説明をめぐって,「言った,言わない」の争いになりがちです.結局のところ,根底にあるのは医師と患者のコミュニケーション不足ではないでしょうか.

 そして患者側が裁判を決意するにあたっては,必ずといってよいほど「背中を一押しする」きっかけがあるといわれています.ある医事紛争では,治療の効果がなく患者が死亡した際の説明内容をめぐってさんざんもめた挙げ句,「私はきちんと説明もしたし正しい医療行為をした.それでも納得しないのなら裁判でもどうぞ」という担当医師の発言が決め手となって,10年以上にも及ぶ裁判に突入したという例もあります.

基本情報

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medicina
39巻7号 (2002年7月)
電子版ISSN:1882-1189 印刷版ISSN:0025-7699 医学書院

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