内科医のためのリスクマネジメント—医事紛争からのフィードバック・4
不用意なひとこと
長野 展久
1,2
1東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科司法医学
2東京海上メディカルサービス
pp.1260-1263
発行日 2002年7月10日
Published Date 2002/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402908800
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
なぜ医事紛争へ発展するのか
医事紛争へと至る背景には,さまざまな要因が指摘されています.そのなかでも患者側からいっも問題提起されるのが,「真実を知りたいのに説明が曖昧」であることと,「病院側の対応が不誠実」であるという2つの点です.このような説明不足は,インフォームドコンセントを行う際にもしばしば問題となります.日常の臨床で診断や治療を行うとき,インフォームドコンセントを常に意識して患者に説明するように誰もが心がけていると思いますが,実際には,医師が説明したことと患者が理解したことの内容に,大きな隔たりがあることをしばしば経験します.そして各種医療行為の結果に患者が満足しないと,事前説明をめぐって,「言った,言わない」の争いになりがちです.結局のところ,根底にあるのは医師と患者のコミュニケーション不足ではないでしょうか.
そして患者側が裁判を決意するにあたっては,必ずといってよいほど「背中を一押しする」きっかけがあるといわれています.ある医事紛争では,治療の効果がなく患者が死亡した際の説明内容をめぐってさんざんもめた挙げ句,「私はきちんと説明もしたし正しい医療行為をした.それでも納得しないのなら裁判でもどうぞ」という担当医師の発言が決め手となって,10年以上にも及ぶ裁判に突入したという例もあります.
Copyright © 2002, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.