medicina 33巻9号 (1996年9月)

今月の主題 レディースクリニック

女性の成熟と加齢

女性の成熟と妊娠 牧野 恒久
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ポイント

●女性の成熟は内分泌機能,特に間脳視床下部-下垂体前葉-卵巣系の機能の確立に負うところが大きい.

●妊娠成立の条件となる排卵現象は,単なるLH(luteinizing hormone)分泌のみでなくLHサージが必要で,このためには視床下部のLH-RH(luteinizing hormone-releasing hormone)が不可欠である.

●妊娠の維持には,排卵周期の成立のほかに,黄体機能,母・児間の免疫相関,子宮環境などが関与してくる.

閉経と更年期障害 寺川 直樹
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ポイント

●更年期障害とは,エストロゲンの欠乏に伴って起こる血管運動神経失調を主体とする自律神経の機能障害と定義される.

●HRTは更年期障害の改善のみならず,高年婦人のQOLにとって極めて有用である.

●HRTに際しては,エストロゲンとプロゲスチンを併用して子宮内膜癌の発生を抑止する.

高齢女性の諸問題 村上 元庸
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ポイント

●高齢者人口に占める女性の割合は高く,高齢女性の診療の機会が増え,内科領域において高齢女性における特徴の理解は重要になっている.

●一般に,動脈硬化抑制的な特徴は閉経前の女性に顕著にみられ,閉経前の女性は男性に比して心疾患の発生率が半分以下と少ない.閉経後60歳以降になると,男女差がなくなる.

●一般にHDL(high-density lipoprotein)の値は,女性はあらゆる年代において男性に比べて高値を示し,高齢になっても減少しない.一方,LDL(low-density lipoprotein)の値は30,40歳代では男性に比べて低値であるが,年齢とともにしだいに増加し,50歳代以降では男性よりも高くなる.

●男性は骨密度の低下がゆるやかなカーブを描くのに比して,女性では閉経後急激な骨密度の低下が生じやすい.骨粗鬆症は,閉経後の女性において顕著である.

●閉経後の一部の女性に起こる急激な骨変化は,主にtrabecular bone(vertebrae, pelvis,flat bone, ends of long bones)に起こる.

●尿路の萎縮,骨盤底諸筋の弛緩,老人性尿道炎,膀胱炎による刺激,脳血管障害などによる中枢からの脱抑制などの要因が絡み,尿失禁をきたしやすくなる.

女性患者をどう診るか

病歴・身体所見のとりかた 加藤 清恵
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ポイント

●緊急性の判断と,内科か婦人科か外科かの判断をまず行う.

●“女性をみたら妊娠”を念頭に置き,性周期の判定をする.

●不定愁訴の鑑別診断を怠らない.

●月経・妊娠・出産歴・薬物歴(経口避妊薬,エストロゲン療法)につき必ず聞く.

●うつなどの精神症状もみのがさない.

●甲状腺,膠原病,婦人科疾患を念頭に置いて診察する.

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ポイント

●女性患者を診察する場合,一般的な疾患以外に女性特有の疾患や女性に多くみられる疾患を念頭に置く.

●閉経前の女性では,常に妊娠の可能性を考慮する.

●不定愁訴の患者で器質的疾患が除外された場合は,うつ病,神経症,更年期障害なども検討する.

●女性の場合,患者本人以外に,家族の意志が治療に影響を与えることも多い.また,治療に伴う審美的な問題も重要である.

妊娠中にみられる問題

妊娠と高血圧 関 顕
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ポイント

●妊娠に特有な高血圧として子癇前症-子癇がある.これは子宮-胎盤の血流低下を基本病変とし,種々の臨床的特徴をもっている.このほか本態性高血圧など,妊娠前からの高血圧に妊娠が加わった高血圧もある.

●妊娠時の高血圧,特に子癇前症-子癇の治療に際しては,その目的をよく理解して行わなければならない.

●降圧薬投与には妊娠時特有の問題があり,未解決の点が多い.

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ポイント

●母体の糖代謝は,妊娠初期から中期で同化が促進し,妊娠末期に異化へと傾く.

●糖尿病合併妊娠は,血糖コントロールが不良の場合,母児ともに合併症が多く,インスリン必要量が増加しケトアシドーシスを伴いやすい.

●妊娠糖尿病は,巨大児などの新生児合併症が多く,後に高率に糖尿病を発症しやすい.

●糖尿病患者の妊娠は,計画妊娠が望ましく,妊娠前の血糖コントロールが重要である.

●先天奇形は受胎から妊娠第7週までの血糖コントロール不良が主因で,高血糖の是正により予防することができる.

妊娠と心疾患 石光 敏行 , 杉下 靖郎
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ポイント

●リウマチ性心疾患が減少し,先天性心疾患の頻度が相対的に増加している.

●弁膜症では逆流性疾患の頻度が高い.

●大動脈弁狭窄例では,妊娠により症状が悪化するので特別の注意が必要である.

●肺高血圧症例では基本的に妊娠は禁忌である.

●チアノーゼ性心疾患には特別の注意が必要である.

●複雑心奇形の術後症例が今後問題になってくる.

妊娠と喘息 長井 苑子
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ポイント

●吸入ステロイド薬を中心とする喘息の基本療法の普及により,喘息は,もはや就労・就学に支障をきたすことは少ない疾患になってきた.

●かつては,妊娠は喘息の悪化をきたす要因とみなされてきたが,適切な管理により安全に妊娠・分娩を行うことができる.

●妊娠中の喘息患者に対して必要なことは,喘息のコントロールが十分でないと胎児における危険性が増すことを教えて,十分な喘息管理を行うことと,現在の喘息治療の安全性について周知・徹底を図ることである.

●母乳中から抗喘息薬が乳児に移行し,重大な障害を起こす危険性は稀である.

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ポイント

●児に生じる異常で唯一明らかなものは,母体由来のTSH(thyroid stimulating hor-mone)受容体抗体による甲状腺機能異常である.

●バセドウ病患者の胎児の甲状腺機能亢進症は,例外的な場合を除けば,母親と同時に治療できる.

●特発性粘液水腫患者の児に生じる甲状腺機能低下症は予測が可能であり,妊婦の管理と生後の適切な治療により,知能障害を回避できる.

●母体の疾患や治療が,奇形発生に直接関与するとは考えにくい.

●妊娠出産による自己免疫性甲状腺疾患の病態の変化は一時的で,長期予後が変わる可能性は低い.

妊娠と感染症 青木 泰子
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ポイント

●女性の尿路感染症の治療にあたっては,妊婦では無症候性細菌尿を含む尿路感染症の頻度が高いことを考慮すべきである.

●胎児に感染し,児に重篤な障害をきたす危険のある疾患としてTORCH症候群が挙げられるが,これらの疾患は不顕性感染が多く,血清抗体価の解釈に注意を要する.

●HIV(ヒト免疫不全ウイルス)キャリアから児への感染率は約1/3である.HBV(B型肝炎ウイルス)はワクチンとHBIG(B型肝炎免疫グロブリン)の投与により,ATLV(成人T細胞白血病ウイルス)は授乳の禁止で感染が防止できる.

●最近,若年者の結核がやや増加しており,妊婦でも診断の遅れをきたさないよう注意すべきである.

妊娠と肝疾患 中園 光一 , 藤山 重俊
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ポイント

●妊娠経過中の肝障害は,妊娠に特異的な疾患,偶発的疾患および以前よりある疾患に分けられる.

●妊娠に特異的な疾患としては,妊娠性脂肪肝や妊娠性肝内胆汁うっ滞などがある.それぞれ母体や胎児に及ぼす影響と予後が異なり,早期の診断が重要である.

●偶発的疾患としては,ウイルス性急性肝炎がもっとも多く,薬剤性肝障害や胆石症などもある.ウイルス性急性肝炎の多くは一過性の症状を示すが,稀に重症化・劇症化することがあるため,注意が必要である.

●妊娠前から存在する肝疾患としてはウイルス性慢性肝炎が多い.出産に際しては垂直感染の予防が必要であり,出産後も児への感染に注意を払うべきである.

妊娠中の外科的疾患 門田 俊夫
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ポイント

●妊娠中は,通常でも食欲不振,腹痛,悪心,嘔吐などの腹部症状が出現し,白血球,アルカリフォスファターゼが増加し,血沈は亢進する.そのため,急性虫垂炎,胆嚢炎,イレウスなどの発見が遅れがちとなるので注意する.

●胎児の成長とともに虫垂の位置が右上腹部外側に移動するなど,診察する際も,妊娠月齢に応じた母体の解剖学的・生理学的変化を念頭に置いて行う.

●診断手技として,超音波検査が簡便かつ安全で,きわめて有用である.

●抗生物質の選択には,胎児への影響も考慮して,有効な薬剤をできるだけ短期間だけ使用する.

妊娠と薬剤の使用 足立 伊佐雄
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ポイント

●妊娠中の合併症に対して使用する薬剤は,必要最小限のものを治療に必要な短期間だけ用いる.

●ヒトにおいて催奇形性が報告されている薬剤は,妊娠4週〜15週末(特に4週〜7週末)には使用しない.

●妊娠中期や後期でも,胎児へ大きな影響を与える薬剤の投与には十分な配慮を行う.

●妊娠中に投与する薬剤や妊婦が知らないで服用した薬剤については,妊婦の過剰な心配を取り除くために,薬剤投与の有益性と副作用の可能性の両者を丁寧に説明する必要がある.

女性と内分泌・代謝疾患

骨粗鬆症 森本 茂人 , 荻原 俊男
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ポイント

●骨粗鬆症は女性に圧倒的に多く,その頻度は閉経期以降急増し,老年期を通じて増加し続ける.本症による大腿骨近位部や腰椎の骨折は,高齢者の寝たきりの主要原因の一つとなる.

●閉経期以降は腰椎X線撮影,骨塩量定量などの定期的な骨粗鬆症検診が望まれる.

●骨粗鬆症の予防には生涯を通じて,十分なカルシウムの摂取,運動などよきライフスタイルの維持が重要である.逆に若い女性の過度のダイエット,月経不順に至る過労などは骨量を減少させる.

●骨粗鬆症の治療には,女性ホルモン,カルシウム剤,活性型ビタミンD,カルシトニン,イプリフラボン,ビタミンK,ジフォスフォネイトなどが用いられている.

肥満 高松 和永 , 伊藤 裕之 , 橋本 浩三
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ポイント

●本邦における女性の肥満の頻度は16.1%で,徐々に低下傾向である.

●肥満者における排卵障害や月経異常を起こす機序には,脂肪組織における性ホルモンの貯留やアロマターゼによる高エストロゲン血症および高インスリン血症に伴う高アンドロゲン血症が,視床下部-下垂体-卵巣系に影響を与えていることが考えられている.

●肥満者における子宮体癌や乳癌の発症と高エストロゲン血症との関連が考えられている.

●治療の基本は食事療法と運動療法で,月2〜3kgの体重減少を目標に行う.

体重減少 山田 研太郎
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ポイント

●女性に多い内分泌疾患で体重減少をきたすものには,バセドウ病とシーハン症候群がある.

●糖尿病は肥満傾向の人が発症しやすいが,発症後は自然に体重が減ることが多い.

●ダイエットのため海草類を取りすぎると,甲状腺機能低下症をきたすことがある.

●心因性食思不振症でしばしばみられる習慣性の嘔吐では,尿中クロール排泄が著明に低下する.

甲状腺機能亢進 年森 啓隆 , 松倉 茂
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ポイント

●甲状腺中毒症の原因は,甲状腺ホルモンの合成の亢進あるいは甲状腺からのホルモンの逸脱によって起こる.

●甲状腺機能亢進は甲状腺刺激ホルモン(TSH)の刺激,TSH以外の刺激(thyroid stimu-lating antibody:TSAb, human chorionic gonadotropin:hCG),甲状腺の過形成ないし自律性腫瘍によるものが主である.

●破壊性甲状腺炎には,自己免疫の関与するものと,しないものがある.

甲状腺機能低下 年森 啓隆 , 松倉 茂
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ポイント

●甲状腺機能低下症の原因は,甲状腺自体にあるか,あるいは中枢性のものである.

●甲状腺機能低下症の原因は,甲状腺組織の破壊あるいはホルモン合成障害である.

●甲状腺機能低下症の原因には,自己免疫異常の関与するものとしないものがある.

●甲状腺機能低下症には,永続性と可逆性のものがある.

女性と感染症

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ポイント

●女性の尿路感染症では約2/3が基礎疾患のない単純性尿路感染症であり,そのほとんどが急性膀胱炎である.20歳代を中心とした性的活動期に多くみられる.

●急性単純性膀胱炎の治療は,3日間の投薬で9割以上が治癒するが,高齢者においてはその治癒率は低く,ある程度,長い投薬を要することがある.

●尿路感染症の予防は,水分摂取,頻回の排尿,刺激物の大量摂取の制限などが挙げられる.

性感染症(STD) 広瀬 崇興
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ポイント

●女性の性感染症(STD)はエイズを含め数多いが,代表的な疾患はクラミジア性子宮頸管炎,腟トリコモナス症,性器ヘルペスなどであり,男性とは疾患頻度が異なる.

●好発年齢は一般的に性的活動の盛んな20歳代であるが,腟トリコモナス症は30〜40歳代である.

●問題点は,これら病原体が無症候性感染してキャリアになることと,卵管性不妊症,産道感染,子宮頸癌などの原因になりうることである.

●重要な点は無症候性感染を含めた的確な診断と治療を,セックスパートナーと同時に行うことである.

女性と循環器疾患

下肢静脈瘤 海老根 東雄
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ポイント

●妊娠・立ち仕事,加齢に静脈壁の脆弱性などの素因が加わり,浅在静脈・交通枝に弁不全を生じ,静脈血の慢性うっ滞状態が招来されて発症する大小伏在静脈の拡張・屈曲・蛇行であり,女性に多い.

●診断は,瘤の存在とその増悪に伴う症状の存在であり,Brodie-Trendelenburg・Perthes試験,血流・形態検査からなされ,瘤の成因と病態の把握のうえで治療法が選択される.

●治療は,軽度のものは圧迫療法,重度のものは手術(ストリッピング)である.最近,硬化療法が積極的に行われており,これは手術することなく硬化剤の注入のみでよく,入院を要せず,瘢痕を作らず美容的であり,これらの治療法の間にあって拡大している.

原発性肺高血圧症 国枝 武義
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ポイント

●最近,新しい治療薬ないし治療法が相次いで開発され,難治で予後の悪いことで知られる原発性肺高血圧症(PPH)が注目を集めるようになった.

●これにはNO(内皮由来血管弛緩因子:EDRF)ガス吸入法とPGI2(プロスタサイクリン)静脈内持続注入療法がある.

●PGI2の携帯用小型ポンプ療法が最先端治療である.この方法には英国方式と米国方式がある.

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ポイント

●女性では閉経以降に冠動脈疾患の危険性が急速に増加する.これは内因性エストロゲン分泌の減少と冠動脈硬化の進展による.

●冠危険因子の影響は,その因子により男女差がみられる.

●中年女性では,運動負荷試験の偽陽性率が高い.その原因として,内因性エストロゲンが関与している.急速に増高するST,septal Qの増加,運動後のST変化の非常に急速な改善,ST変化が中等度から高度の負荷で下壁誘導のみで認められるとき,偽陽性の可能性が高くなる.

女性と消化器疾患

便秘 高橋 裕
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ポイント

●女性の便秘の大半は機能性便秘である.

●女性に便秘が多い原因としては,①腹筋が弱いこと,②排便の我慢,③腸管蠕動を抑制する黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が挙げられる.

●大腸癌などの器質的疾患や全身性疾患により起こる便秘を見逃さない.

●治療の原則は,生活習慣の是正や食事療法が主体である.しかし,患者の訴えを無視せず症状の軽減を図るような合理的な薬剤治療は必要である.

●薬物使用に際しては,刺激性下剤の長期常用や濫用に陥らないようにすることが肝要である.

胆石症 松崎 靖司 , 田中 直見
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ポイント

●近年本邦においては胆石保有者数は漸増し,女性患者が多い.

●“7F”:“female, fat, fair, forty, fertile, flatulent, flabby”.

●成人では6〜10%が胆石を持っている.

●エストロジェンが胆汁中へコレステロールを過剰に排泄する.

●卵胞期には胆嚢収縮能が低下する.

●経口避妊薬の投与は,胆石症の発生を増加させる.

●妊娠中は胆石の発生が多くなる.

●妊娠時の胆石症の診断は,超音波検査が最もよい検査法.

●腹腔鏡下胆嚢摘出術は,美容上も優れているため女性には有用.

●妊娠中に胆石症と診断された場合,原則的には保存的治療を行う.

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ポイント

●本邦の自己免疫性肝炎は男女比は1:7〜1:9で,50歳代の発症が最も多い.

●suppressor T cell機能の低下が想定されるが,本疾患の成因や免疫学的機序は依然不明である.

●橋本病などほかの自己免疫疾患の合併にも注意が必要である.

●プレドニゾロンが治療の第一選択であるが,本疾患は中年女性が多いので,長期治療に際し骨粗鬆症の併発に留意すべきである.

●自己免疫性肝炎の診断基準を満たすC型慢性肝炎も存在し,このような例でのインターフェロン治療には慎重を要する.

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ポイント

●原発性胆汁性肝硬変(PBC)の約90%が女性である.皮膚掻痒感,黄疸を特徴とするが,無症候性のほうが多い.

●無症候性PBCの予後は良好であるが,約20%は症候性に進展する.

●女性の胆汁うっ滞では必ずPBCを鑑別する.診断のポイントは胆道系酵素の上昇,IgMの上昇である.女性でこれらの所見を呈する症例では抗ミトコンドリア抗体(AMA)を検査する.

●肝生検は診断・病期の確定に重要であるが,時にsampling errorがある.

●治療にはウルソデオキシコール酸(UDCA)が有効であるが,進展した肝硬変例では肝移植が必要になる.

女性と血液疾患

貧血 山本 昌利 , 紀平 久和 , 西川 政勝
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ポイント

●女性の貧血のほとんどは鉄欠乏性貧血である.

●妊娠時には鉄の必要量が増すため,鉄分の十分な摂取が必要である.

●高齢の女性にも鉄欠乏性貧血が多いが,癌との関連から消化管出血には十分注意する必要がある.

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ポイント

●特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura:ITP)は,若い女性に頻度の高い疾患である.予後は比較的良好で,治療を必要としない軽症のITPも多いが,妊娠・出産を控えた若い女性の治療が問題となる.

●ITPの患者は寛解例でなくても分娩可能であり,妊娠中・分娩時の治療は一般的な治療に準ずる.ただし,胎児の出血管理を含めた治療方針の決定が大切である.ステロイド剤は維持量などの最小限に留めるべきであり,摘脾術は必ずしも児の血小板減少を予防できないので,慎重にすべきである.蛋白同化ホルモンや免疫抑制剤は使用しない.大量のガンマグロブリンは分娩管理に用い,血小板輸血は胎児の出血のリスクの高いときに適応となる.

●出生後,新生児の血小板数を注意深く経過観察する.

出血傾向 高松 純樹
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ポイント

●女性にみられる出血性素因は決して少なくないが,その多くは特徴ある出血症状や,出血メカニズムのために診断は比較的容易である.病歴,家族歴あるいは出血の種類などを詳細に検討することは極めて重要である.

●点状出血,歯肉出血は通常血小板減少に,鼻出血,抜歯後出血などの粘膜性出血は,血小板の減少と血小板の機能異常の際に認められることが多い.

●関節内出血,筋肉内出血は血友病に特徴的であるが,血友病保因者や後天的に生じた抗体によって第VIII,IX因子活性が低下した場合は,男女とも発症が認められる.

●女性で認められる先天性出血性素因で最も頻度の高いvon Willebrand病では,重症型では時に関節出血の報告がある.

●臍帯脱落部からの出血は先天性無フィブリノゲン血症,先天性第XIII因子欠乏症に特徴的である.女性特有の病態として流産があるが,先天性無フィブリノゲン血症患者,第XIII因子欠乏症では必発である.

●また,年齢別による臨床症状の発現についても留意する必要がある.

女性と膠原病

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ポイント

●慢性関節リウマチは,膠原病の中で最も頻度が高く,女性に多い疾患である.

●妊娠中は改善することが多いが,分娩後再燃する例も多い.

●疾患修飾性抗リウマチ薬や非ステロイド性抗炎症剤,副腎皮質ステロイド,免疫抑制剤などの薬剤を使用するため,妊娠や授乳に際して特別な配慮が必要である.

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ポイント

●全身性エリテマトーデス(SLE)は慢性に経過する自己免疫性疾患で,その90%は女性である.

●女性ホルモンの関与が考えられ,妊娠可能な時期に発症することが多く,分娩後に発症・増悪することが多い.

●治療の目標は,急性期の症状を消失させることがすべてではなく,予想される不可逆的病変を阻止し,必要最少量の投薬で長期寛解を図り,社会復帰させることである.

●妊娠・出産は患者の病状によって可能であるが,妊娠の際の条件,注意点がある.

●疾患や治療に関する患者および家族の十分な理解が必要である.

大動脈炎と血管炎 野中 泰延
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ポイント

●近年,様々な血管炎を,血管炎症候群として総称するようになった.

●血管炎症候群の分類には,臨床上,主たる罹患血管径による分類が適切と思われる.

●様々な血管炎で抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody:ANCA)が検出され,それらを一括してANCA関連血管炎と呼ぶ.

●ANCAにはウェゲナー肉芽腫症に特異的なcytoplasmic ANCA(C-ANCA)と,顕微鏡的PN(polyarteritis nodosa:多発動脈炎),アレルギー性肉芽腫性血管炎,特発性壊死性半月体形成腎炎などで検出されるperinuclear ANCA(P-ANCA)がある.

●大動脈炎症候群の妊娠・出産は通常,健常者と同様であるが,活動性,高血圧,心不全に対する適切な管理治療が必要である.

女性と悪性腫瘍

乳癌 村山 章裕 , 雨宮 厚
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ポイント

●生活様式の欧米化から,日本でも乳癌は増加傾向にある.

●乳癌の根治性を高める意図で,早期発見目的に乳癌検診が施行されている.一般的に触診が一次検診として行われ,異常を指摘された場合のみMMG(マンモグラム)やエコーによる二次検診が行われる.

●検診の有効性は,欧米でrandomized trialの結果,40歳以下では意味がないとされた.しかし日本では,trialなしで検診が大規模に実施されており,効果の統計的有効性はまだ証明されていない.検診の適応対象・方法・有効性を見直す時期に来ている.

●治療では温存療法が標準となった.欧米でrandomized trialが行われ,乳房切除と変わらぬ効果が示された.

●しかし日本では,trialもなく臨床家の勉強不足のため,各施設でばらばらの療法が施行されている.世界の標準的な乳癌治療が日本のどの地域にいても行われることが,21世紀に向けての乳癌専門医の課題である.

卵巣癌 池田 俊一 , 山田 拓郎
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ポイント

●卵巣癌は子宮体癌同様,近年増加傾向にある.

●有効なスクリーニング法はなく,初期には無症状で,進行しても嘔気,腹部膨満といった漠然とした症状しかない.

●固形腫瘍にしては比較的化療効果が期待でき,有効な化学療法(CAP)が存在する.

子宮癌 吉田 祐司 , 佐藤 信二
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ポイント

●子宮癌は細胞診によるスクリーニング方式がとられている.

●子宮癌は,その発生部位によって子宮頸癌と子宮体癌に分けられるが,これらはその疫学的背景も異なり,それぞれの特徴に合った診療を行っていく必要がある.

●子宮頸癌の治療では手術療法と放射線療法の二大療法が中心となるが,最近ではシスプラチン(ランダ®),カルボプラチン(パラプラチン®)などの制癌剤を用いた動注化学療法によって,down stagingをめざす治療が行われている.

●子宮体癌の治療では手術療法が中心となる.根治手術が望めない症例でも合併症が特にない場合,予後因子の検討のために手術を行うことが多い.

●ケースコントロール研究によれば,子宮頸癌が浸潤癌で発見される危険率は,5年以上未受診例に比べ1年ごとの検診で10分の1近くまで下げられる.

●子宮体癌検診では,より効率的で偽陰性の少ない検診対象の絞り込みをしていく必要がある.

女性にみられる問題

不妊症 関 守利
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ポイント

●全夫婦の約10〜15%は不妊症である.

●女性の結婚・出産年齢は上昇しており,結婚生活1年以上で妊娠しない夫婦は不妊症であるということを念頭において,日常診療の中で注意して発見する.早期に不妊症の治療のために受診するように勧める.

●①貧血,②肥満,③最近の体重変動の大きい患者,④代謝性疾患(甲状腺機能,糖尿病),⑤高血圧,心疾患,⑥第二次性徴異常,⑦高プロラクチン血症,⑧クラミジア感染症の女性患者を診察するときは,不妊症の可能性も考えて問診する.

●体外受精・胚移植およびその関連技術の進歩はめざましく,女性の難治性不妊や男性不妊も治療可能となっていることを患者に説明する.

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ポイント

●経口避妊薬(ピル)は血液凝固因子を増加し,アンチトロンビンIII,線溶能を低下し凝固亢進状態を生じる.また,HDL-コレステロールを低下し動脈硬化を促進する.

●ピルの主要な副作用は静脈血栓塞栓症,虚血性心疾患,脳血管疾患,高血圧である.

●喫煙,高年齢(35歳以上),高血圧,高脂血症,糖尿病や循環器系疾患の既往歴を有する婦人は,ピル使用により循環器系疾患を合併しやすい.

●低用量ピルは高用量ピルに比べ,循環器系疾患の合併が少ない.

●ピルは月経異常,子宮内膜癌などの発生頻度を低下する.

●ピルの薬物相互作用にも注意する.

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ポイント

●心身症の診断基準は一般医が臨床で用いうるほど明確にはなっていないため,用語の濫用を避ける必要がある.

●女性に多い心身症的病態や精神障害として,摂食障害,更年期障害,妊娠や月経に関係する精神障害などがある.

●このような疾患の治療では,女性の身体的特性だけでなく,社会的,文化的特性も考慮する必要がある.

●いかなる心身症的病態においても,一般常識的対応ではなく,精神医学や心身医学という医学による診断と治療が不可欠である.

キッチンドリンカー 重田 洋介
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ポイント

●キッチンドリンカーとは,女性にみられる一種の飲酒パターンである.

●キッチンドリンカーをはじめとして,女性の問題飲酒者が増加しつつある.

●女性の中には閉経後,習慣飲酒を開始し,短期間にアルコール依存症になる症例がある.

●女性飲酒家では男性に比して,より少量,より短期間にアルコール性肝硬変症まで進展する.

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ポイント

●セクシャル・ハラスメントは,「家族以外の,利害関係を含んだ他者から受ける性的被害」として定義される.

●セクシャル・ハラスメントに特異的な臨床症状というものは存在せず,うつ状態,ストレス関連障害,身体表現性障害,摂食障害,性機能不全など,多様な疾患が惹起される.

●治療は,信頼される治療者-患者(被害者)関係の樹立を前提とする.「なぜそうなったのか」と質すことは禁忌である.また,精神科医や産業医,労働組合,弁護士などの協力が必要である.

女性の荷おろし症候群 半田 貴士
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ポイント

●育児,子供の教育,老人の介護などが女性に特有な負荷である.

●このような負荷が軽減された後に精神障害が発症することを,荷おろし症候群と呼ぶ.

●荷おろし症候群は更年期を中心としてみられ,精神科診断学的には,状況因性うつ病,不安神経症・心気神経症,アルコール依存症,また少頻度ながら中年女性の一過性幻覚妄想状態などが含まれる.

●患者を取り巻く状況変化に伴う「自己の役割変化」,および変化に柔軟に対応できない性格傾向が問題となる.

化粧品皮膚炎 中山 秀夫
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ポイント

●化粧品皮膚炎は,アレルギーを作る能力の高い色素や香料が野放しだった昭和30〜40年代には極めて多く,黒褐色の奇怪な色素沈着を残す色素沈着型化粧品皮膚炎も多くみられた.

●昭和40年代後半に行われたパッチテストで,原因アレルゲンの約80%が判明,以後は抗原除去治療でよく治るようになり,また厚生省の規制や,Guide lineで予防できるようになった.

●現在では,Propolisや無意味な植物成分などで起こる化粧品皮膚炎や,そこにステロイド軟膏を連用して起こるステロイド皮膚症が問題である.

●現在,世界で日本だけがパッチテスト試薬の市販を禁止しているが,この制度は早急に改める必要がある.

理解のための46題

カラーグラフ 塗抹標本をよく見よう・9

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多発性骨髄腫

 図1は,末梢血中に認められた骨髄腫(myeloma)細胞である.豊かな胞体と偏在した核を有する未熟な形態をしており,典型的な骨髄腫細胞と考えられる.診断後約6年が経過して,病気がかなり進行した骨髄腫患者の末梢血塗抹標本にみられた細胞である.骨髄腫は腫瘍化した形質細胞が,主として骨髄で増殖する疾患である.図2で示すように,骨髄中には多数の骨髄腫細胞を認めるが,末期を除いては,図1のような細胞が末梢血中に出現してくることはほとんどない.このような細胞が末梢血の塗抹標本で認められた場合,その患者の骨髄腫は相当悪化していることが考えられる.

 ごくまれに,病気の初期から,末梢血中に骨髄腫細胞が出現してくることがある.いわゆる形質細胞性白血病(plasma cell leukemia)の場合である.図3はそのような形質細胞性白血病の末梢血塗抹標本である.この症例では,メイ-グリュンワルド-ギムザ(May-Grünwald-Giemsa)染色を行うと,細胞質の周辺が図のように赤く染まる細胞から成っていた.このような細胞を火炎細胞(flame cell:図中→)と呼ぶことがある.

グラフ 高速CTによるイメージング・8

肺の気道病変 森 清志 , 横山 晃貴
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 肺の気道は,気管から左右主気管に分岐したところから始まり,主気管支から葉気管支(I次気管支)→区域気管支(Ⅱ次気管支)→亜区域気管支と次々に同大分岐して約25〜30次分岐を重ねて胸膜に達する(図1).この項では気管を含めたⅡ次気管支までの中枢気道の病変について述べる.

 中枢気道性病変の診断には主に気管支鏡,CTが用いられる.気管支鏡は気管支内腔の病変の診断に,またCTは気管支壁外への病変の進展状況を把握するのに有用である.CTは中枢気道に病変を有する症例では,病変の広がり,性状を立体的に把握でき,手術,レーザー,ステント等の治療のシミュレーションに有用と考える.特に気道狭窄が著しく,気管支鏡の通過が不可能な症例(症例3参照)に,3次元CTはその威力を発揮する.

知っておきたい産科婦人科の疾患と知識・13

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 厚生省(平成6年簡易生命表)の発表では,わが国の平均寿命は女性では83.0歳,男性では76.6歳で世界一の長寿国である.また,現在65歳以上の人口がすでに総人口の14.4%,2018年には25%で,4人に1人の高齢化社会になると推計されている.このような社会情勢の変化によって,特に女性では加齢とともに男性の病態と異なる疾患がみられ,大きな問題となってきた.

 女性は更年期,ことに閉経を過ぎると身体的にも精神的にも変化がみられ,更年期障害,萎縮性腟炎,性交障害,高脂血症,狭心症や心筋梗塞,骨粗鬆症による骨折がみられる(図1).これらの原因は,卵巣から分泌されている女性ホルモンの低下によるところが多く,卵巣ホルモン補充療法(hormone replacement therapy:HRT)でその罹患率を大きく減少させることができる.

Drug Information 副作用情報・6

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リドカイン持続点滴後にみられたショック

【症例】62歳,女性.心室頻拍治療のためリドカインを最初50mg,40分後に30mgを静注後1.5mg/minの速度で持続点滴していたところ,当初184/96mmHgあった血圧が,約4時間後96/66mmHgに低下.リドカインの過量と考え,持続点滴を中止.維持補液のみとしたが,中止2時間後には血圧が78/60mmHgと低下.粘膜症状や喘鳴,四肢末梢の刺激感などアナフィラキシー特有の症状はなかったので,過量中毒型ショックと考えた.ノルアドレナリン2アンプルを400mlの補液に加えて36ml/hrで点滴開始.10分後には100/70mlと血圧は回復.90/110mmHgに収縮期血圧を保つように調節し,ノルアドレナリン開始約9時間後には中止.1978年当時,血中濃度はまだ測定できていなかった.

 このほかクロルプロマジン(ウインタミン®)やハロペリドール(セレネース®),局所麻酔薬のリドカイン(キシロカイン®),ブピバカイン(マーカイン®)などによる過量中毒型ショック例も当院では報告されている.

連載

目でみるトレーニング

医道そぞろ歩き—医学史の視点から・17

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 地中海に近い南フランスのモンペリエ医学校の起源は9世紀初めにさかのぼる.1220年には,この町の枢機卿がフランス最初の医学校の成立を宣言した.第二次十字軍の頃である.やがて13世紀にはボローニヤ,パドヴァ,サレルノと並ぶ医学教育の中心地であった.この頃,ノルマンディ生まれのモンデビユが解剖と外科を教えていた.モンデビユはボローニヤ大学で学んだ人であるが,その著書『外科学』の中に,「内科学と解剖学に通じない者は良い外科医にはなれない.危険を回避することができないのに危険な手術をしてはならない.予想される危険を親や友人に隠してはならない.不治の病人を手術してはならない.金持ちには十分払わせ,貧者に施せ.自慢することは慎み,人を責めてはならない」と書いている.

 モンペリエ医学校はその後18世紀後半(1789年)まで司教の保護下にあり,そのため今でも医学部の本館や解剖館は教会と地続きである.しかし,モンデビユの頃の学則では,入学資格は僧職に限らず,一般人にすでに開かれていた.学生は自由に教師を選んだり変えたりできた.修学期間も最終試験も規定がなく,学生が開業に適当であると評価されると,最後についた教師から医業許可書をもらい,これに司祭の認証を受けた.修学期間が定められたのは1240年からである.修士は2年半,その他の者は3年と定められ,この間,6カ月間はモンペリエ以外の医師の下で実地修業することが定められていた.

medicina Conference 解答募集・20

下記の症例を診断して下さい.
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 症例:65歳,男性.

 主訴:左側腹部痛,全身倦怠感.

 家族歴:父;脊椎カリエス,母;子宮癌,姉;慢性関節リウマチ・乳癌にそれぞれ罹患.

基本情報

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medicina
33巻9号 (1996年9月)
電子版ISSN:1882-1189 印刷版ISSN:0025-7699 医学書院

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