臨床皮膚科 65巻8号 (2011年7月)

連載 Clinical Exercise・47

  • 文献概要を表示

症例

患 者:33歳,女性

主 訴:頸部,上背部,腋窩,前胸部の皮疹

家族歴:母と兄に同症

既往歴:特記すべきことなし.

現病歴:15歳頃から掻痒を伴う丘疹が多発し,夏期に増悪,冬に軽快する傾向にあった.例年になく,7月下旬から皮疹の増悪を認め,当科を受診した.

現 症:項部から上背部,両側頸部に小豆大までの赤褐色の丘疹が多発,癒合していた(図1,2).鱗屑,痂皮,びらんを伴うものも認められた.鎖骨上窩から前胸部,背部中央,腋窩にも紅色から赤褐色の丘疹が散在していた.口腔粘膜,爪甲,掌蹠には異常を認めなかった.

  • 文献概要を表示

要約 症例1:65歳,女性.ソラフェニブ(ネクサバール®)を内服し,10日目より手掌と足底の小水疱と膿疱,手足を含む全身の紅斑を認めた.病理組織学的に,血管炎の所見と血栓形成であった.症例2:46歳,男性.ソラフェニブ内服9日目より四肢,軀幹の紅斑を認めた.病理組織学的に,血管周囲に炎症細胞が浸潤していた.症例3:52歳,女性.ソラフェニブ内服9日目より四肢,軀幹の紅斑を認めた.いずれも腎細胞癌の治療にソラフェニブを処方され,皮膚障害が生じたと考えられた.ステロイド内服外用療法により治癒した.ソラフェニブは,手足症候群をはじめとする,皮膚障害をきたし,患者のQOL(quality of life)が低下する.今回3例の皮膚障害を経験し,うち1例に血管炎を認めた.ソラフェニブによる血管炎の報告は,本邦ではこれまでにない.皮膚障害の機序には不明な点が多く,今後さらなる解明が必要である.

  • 文献概要を表示

要約 1歳4か月,女児.生後9か月頃,右項部の皮下腫瘤に家人が気付いた.徐々に増大してきたため当科を受診した.初診時,径15mmの表面平滑な硬い皮下腫瘤を触れた.下床との可動性は比較的良好であった.また,腫瘤部に一致した皮表には淡い褐色斑と多毛を認めた.生検病理組織では真皮深層から脂肪織内にかけ,索状の線維性組織,未分化細胞巣と,孤立する成熟脂肪細胞の3成分の増殖を認めた.腫瘍直上の真皮内には,エクリン腺の過形成と扁平上皮化生を認めた.以上より乳児線維性過誤腫と診断した.本症は特徴的な病理組織をもって診断されるが,3成分の構成バランスによっては術前の診断が困難である.その際,表面皮膚の臨床像や腫瘍周辺部の組織学的変化,また,乳児に簡便に行うことのできる皮膚超音波検査が診断に有用と考えた.

  • 文献概要を表示

要約 69歳,女性.顔面の皮疹を主訴に当科を受診した.プロピオン酸アルクロメタゾン軟膏を処方したところ外用直後から紅斑および口唇の腫脹が生じた.患者は以前にプロピオン酸アルクロメタゾン,酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン,ブデソニドでパッチテスト陽性であったが,初診時薬剤アレルギーカードを提示し忘れていた.プロピオン酸アルクロメタゾンによる接触皮膚炎と考え外用を中止したが改善しないため,プレドニゾロン30mg/日を投与したところ皮疹は軽快した.成分パッチテストでは主剤のみ陽性であった.また他のステロイド外用剤のパッチテストではプロピオン酸デキサメタゾン,酪酸ヒドロコルチゾンが陽性であり交叉反応と考えた.

  • 文献概要を表示

要約 8歳,男児.生後数か月より発熱を繰り返し,5歳より咽頭痛が持続しているが,細菌感染症や急性ウイルス感染症を支持する検査結果は得られなかった.6歳より夏期,日光曝露後に露出部に萎縮性瘢痕を残して治癒する丘疹が出現するようになった.蚊アレルギーなし.末梢血中の異型リンパ球や肝機能障害は認めず,赤血球中プロトポルフィリンは正常だった.皮疹の特徴や,Epstein-Barr(EB) virus encoded small nuclear RNAが痂皮,皮疹への浸潤細胞ともに陽性であることは種痘様水疱症に一致し,さらに繰り返す伝染性単核球症様症状と末梢白血球中のEBウイルスDNA高値(4.6×104コピー/1,000,000白血球)より慢性活動性EBウイルス感染症を合併した重症型種痘様水疱症と診断した.遷延する伝染性単核球症様症状に続き,露出部に瘢痕を残して治癒する皮疹が出現するようになった場合は,重症型種痘様水疱症を鑑別する必要があると考える.

  • 文献概要を表示

要約 80歳,女性.C型慢性肝炎による肝硬変の既往がある.約1か月の経過で,下肢に掻痒を伴い,遠心性に拡大する,境界明瞭な紅斑が多発した.辺縁の一部はびらん化していた.組織所見は,錯角化,角層下の裂隙形成,表皮の壊死であった.画像検査でグルカゴノーマを疑う所見はなかった.低アルブミン血症,血清亜鉛低値を認めるが,血漿アミノ酸分析は異常なかった.肝硬変に合併した壊死性遊走性紅斑(necrolytic migratory erythema:NME)と診断した.NMEはグルカゴノーマのデルマドロームとして報告された疾患である.本例にみられた肝硬変のほか,吸収不良症候群,慢性膵炎などによる,グルカゴノーマを伴わないNMEの報告がなされており,現在はアミノ酸,亜鉛,必須脂肪酸などの複合的な栄養障害と考えられている.自験例でもアミノ酸,亜鉛製剤の投与で皮疹は色素沈着を残し,急速に軽快した.

  • 文献概要を表示

要約 59歳,男性.青魚の摂食によると思われる蕁麻疹の既往が3回ある.初診2か月前に魚介類系のだしを使用したラーメンを食べ,その4時間後より喉頭部に違和感を生じた.感冒と自己判断し,塩酸チアラミド,トラネキサム酸細粒を服用したところ,約10分後より全身に膨疹が出現した.ステロイド剤の点滴投与にて症状は速やかに軽快した.内服誘発試験で,塩酸チアラミドの内服30分後より全身に膨疹が出現した.トラネキサム酸やアスピリンでは皮疹は誘発されず,塩酸チアラミドによる蕁麻疹型薬疹と診断した.塩酸チアラミドは非ステロイド性・非ピリン系の塩基性抗炎症薬で,酸性消炎薬に比べ蕁麻疹型薬疹の報告は少ない.しかし,使用頻度が低いために薬疹報告例が少ない可能性も否定できない.塩酸チアラミドはアスピリン喘息患者にも使用できる数少ない抗炎症薬の1つで,その安全性を確認することは重要である.

  • 文献概要を表示

要約 6歳,男児.4か月程前より右側腹部と右腰部に褐色斑が出現した.褐色斑は徐々に消退傾向を示すが,時々同部位に赤みを伴うことがあるため当科を受診した.初診時,右側腹部と右腰部に比較的境界明瞭な褐色斑があり,かゆみを軽度認めた.固定薬疹を疑い薬剤内服歴を詳細に問診したところ,感冒症状時に内服していたカルボシステイン(ムコダイン®)が原因薬として疑われたため,内服誘発テストを施行した.カルボシステイン常用量を朝夕2日間内服したところ,褐色斑上に紅斑が出現した.以上より,カルボシステインによる多発性固定薬疹と診断した.カルボシステインによる固定薬疹の場合,内服誘発テストにて皮疹が誘発される期間は,通常の固定薬疹と異なり2,3日間であることが多い.このメカニズムとして時間薬理学的機序が関与し,発症にはある一定の量が必要であることが推測された.

  • 文献概要を表示

要約 62歳,男性.20年前に尋常性天疱瘡を発症し,プレドニゾロン15~25mg/日などで治療されていた.ステロイドパルス療法を1回受け,長期投与されたステロイドの副作用によりヘルペス性髄膜炎を伴う細菌性肺炎や糖尿病,骨折を発症した.その後,約2年前より大量免疫グロブリン静注療法を1年7か月間に9回施行したところ,プレドニゾロンを20mg/日より10mg/日に減量できた.IVIGは自験例に対しステロイド減量効果を示し,今後はステロイド剤の重篤な副作用の回避が期待された.

  • 文献概要を表示

要約 90歳,女性.2009年3月頃より全身と口腔内に水疱とびらんを認めた.同年4月他院で尋常性天疱瘡と診断された.ステロイドミニパルス療法後,PSL 50mg/日投与されるも水疱が新生するため,5月当科に転院した.口腔内と全身に大型びらんが多発癒合し,天疱瘡重症度スコア(PDAI)は121点で,ELISA index値は抗Dsg1抗体670.9,抗Dsg3抗体1,190.0であった.高齢かつ重症で治療選択に苦慮したが,ステロイドパルスと大量免疫グロブリン療法後,PSL 50mg/日投与にて加療した.急速にびらんの縮小とELISA値改善を認め,治療開始2か月後にはびらんは上皮化,ELISA値も陰性化した.大量免疫グロブリン療法は血栓塞栓症などの合併症に十分注意して行えば,感染リスクの高い高齢天疱瘡患者の治療において,有用な選択肢となりうる.

  • 文献概要を表示

要約 63歳,女性.2004年,右前腕,両膝伸側,左大腿,下腿に皮下結節が出現した.皮膚生検で非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認めた.両側肺門リンパ節腫大,眼病変,ACE上昇などの所見よりサルコイドーシスと診断した.また,皮疹は皮膚サルコイド,皮下型に一致した.ミノサイクリン100mg/日内服,ステロイド外用で皮下結節は縮小した.2009年2月左下腿皮疹部の表面に黄色斑が出現した.同部の生検で,肉芽腫病変に加えて,表皮直下に泡沫細胞の集簇を認めた.ステロイド剤外用,トラニラスト300mg/日内服に加えてUVA-1による光線療法を2回/月併用した.UVA-1総量52J照射後黄色斑は消失し,皮下結節も縮小した.

  • 文献概要を表示

要約 67歳,女性.左下顎部の炎症性粉瘤の診断で外科的処置を加えたところ,同部周囲に弾性硬の硬結と凹凸不整の紅斑が残った.病理組織像では真皮全層に拡張した血管に富む線維化および肉芽腫の形成を認め,また真皮深層には好塩基性の異物が大小の集塊をなしており,異物を貪食した組織球と多核巨細胞も認められた.問診により約3年前に両側口角から下顎にかけて皮下に充塡剤としてポリアクリルアミド(アクアミド®)を注入したことが判明したため,ポリアクリルアミドによって生じた異物肉芽腫と診断した.トラニラストの内服とテラコート・リル軟膏®の外用にて徐々に硬結は軽快した.

  • 文献概要を表示

要約 63歳,女性.膵炎の経過中,下肢を中心に暗赤色の拇指頭大の皮下結節が多発し,一部は手拳大の大きさになった.初診時,血清アミラーゼ2,437IU/lで上昇していた.病理組織にて脂肪小葉内の広範な壊死と融解像を認めた.壊死巣の一部では変性した脂肪細胞が核を失い,細胞膜の膨潤した像を呈しており皮下結節性脂肪壊死症と診断した.本疾患はリパーゼなどの膵逸脱酵素が関与して局所の脂肪融解を起こすと推測されている.症例の半数以上において皮疹が膵疾患に先行するため,本症を疑った場合,早急な組織学的検索が必要であると考える.

  • 文献概要を表示

要約 36歳,男性.労作時のうつ熱と無汗を自覚し,当科を受診した.無汗部の皮膚生検では,汗腺周囲にCD4陽性リンパ球の浸潤を確認し,後天性特発性全身性無汗症と診断した.ステロイドパルス療法を計3クール施行し,発汗量は増加した.経過中にコリン性蕁麻疹を発症した.無汗範囲が広く,また無汗症状出現より遅れてコリン性蕁麻疹を合併するなど,過去の報告例より経過が複雑であったが,ステロイドパルス療法にて症状の改善が得られた.

  • 文献概要を表示

要約 66歳,男性.初診の10か月前より陰囊正中部に自覚症状のない紅色疣状丘疹が出現した.徐々に増大し列序性となり,一部が隆起してきたため受診した.初診時,0.5~1.5cm大の表面顆粒状,弾性軟,一部黄色調を呈する紅色腫瘤および丘疹が陰茎部から陰囊中央部,肛門部にかけて線状に配列しており,病理組織像から疣状黄色腫と診断した.また,病変部よりヒト乳頭腫ウイルスは検出されなかった.本邦で報告されている陰囊発症例は単発例が多く,多発例はまれである.丘疹部,腫瘤部の生検像より,発症要因としては表皮増殖と泡沫細胞浸潤の両者が相互に助長しあって進行することが示唆された.

  • 文献概要を表示

要約 60歳,男性.15年前より左頰部に褐色斑があり徐々に増大し,左頰部の大部分を占めるようになった.初診時の淡褐色斑の大きさは7×6cm,その中央は隆起性腫瘤を形成していた.褐色斑の境界は比較的明瞭であり,鑑別疾患として悪性黒色腫が考えられた.ダーモスコピー所見では,白色小結節を多数認めたため,基底細胞癌を第一に考えて生検を行った.その結果,石灰化を伴う基底細胞癌と診断した.腫瘍辺縁より1cm離して切除術を施行し,二期的にcheek rotation flapにて再建した.切除標本の病理組織所見では,腫瘤部は表皮と連続性に好塩基性に染まる腫瘍細胞が大小の胞巣を作って下方に増殖し,好塩基性の無構造物質を含有する大小の囊腫様構造を伴っていた.

  • 文献概要を表示

要約 75歳,女性.既往に濾胞性リンパ腫.初診約2か月前,右下顎部に指頭大の紅色結節が出現した.近医受診し生検でMerkel細胞癌が疑われ,当院を紹介された.初診時,右頰部に33×43mmの皮下硬結とその中央に22×32mmのドーム状紅色結節を認めた.摘出術,再建術,右頸部リンパ節郭清術を施行した.摘出リンパ節はすべて腫瘍細胞陽性であり,頸部に残存リンパ節転移があると考え,術後より放射線照射を開始した.術後2か月目から両頸部腫脹と,前胸部deltopectoral皮弁ドナー部と左前腕部遊離皮弁ドナー部に指頭大紅色結節が出現し,生検にてMerkel細胞癌転移と診断した.CTにて多発肝転移も認めベプシド+パラプラチン療法を開始したが,3コース目でprogressive diseaseとなり中止し,その約1か月後に永眠した.皮弁ドナー部に沿った皮膚転移は,既に全身に非肉眼的に転移していた腫瘍細胞が,皮弁作成時の侵襲に対する創傷治癒機構の影響を受け増殖をきたした可能性があると考えた.

  • 文献概要を表示

要約 83歳,女性.慢性C型肝炎および糖尿病にて加療中である.父親に肺結核の既往がある.3年前から両側下腿に圧痛を伴う貨幣大の暗紅色の皮下硬結が出現し,次第に増加,拡大してきた.Bazin硬結性紅斑を疑い皮膚生検を施行したところ,病理組織学的に類上皮細胞性肉芽腫を認めたほか,ツベルクリン反応およびQuantiFERON@TB-2Gも陽性であった.しかし,同部の組織培養にてMycobacterium intracellulareが検出された.原発となる感染巣の存在を疑い全身精査を行ったところ,CT上右中葉外側肺野に細気管支炎像を認め,胃液培養にて同菌が検出された.また,肝細胞癌および乳癌の合併も認めたため,糖尿病および多重癌による易感染性が誘因となった肺原発の播種型M. intracellulare感染症と診断した.

  • 文献概要を表示

要約 76歳,男性.右側胸部の鳩卵大の潰瘍性腫瘤を形成し,病理組織学的に真皮内にLanghans型巨細胞を混じる類上皮細胞肉芽腫がみられた.Ziehl-Neelsen染色陽性の細長い桿菌を認め,培養でMycobacterium tuberculosisを同定した.右下肺に治療歴のある陳旧性肺結核を有しており,結核性胸膜炎を再燃したことにより生じた皮膚腺病と診断した.抗結核薬多剤併用療法を施行し内科的治療のみで治癒した.皮膚結核についての明確な治療方針はないが,結核菌の耐性獲得を予防するために,結核医療の基準に準じた抗結核薬の多剤併用療法を行う必要があると考えられた.

  • 文献概要を表示

 2011年1月13日から15日にかけて「5th International Symposium on the Biology and Immunology of Cutaneous Lymphomas(ISBICL)」がベルリンで開催されました.このシンポジウムはthe European Organisation for Research and Treatment of Cancer(EORTC)Cutaneous Lymphoma Study Group,the International Society for Cutaneous Lymphoma(ISCL)とEuropean Society of Dermatological Research(ESDR)の共催で,3年に一度,基礎研究から臨床研究まで,皮膚リンパ腫にしぼった内容で毎回ベルリンのCharité大学病院で行われます.

 会場となっているCharité大学病院の講堂(Kaiserin-Friedrich-Haus)(図1)はベルリン中央駅から歩いて数分の距離という好立地にあるものの,旧東ベルリン側にあるため周囲は落ち着いた雰囲気を醸し出していました.遠方からの参加者のためには講堂から歩いて1分ほどのホテルが準備されました.ベルリンを訪れるのは初めてのことでしたが,googleで地図と街並みの写真が検索できるため,駅からの道のりの景色は予め参照しておくことができて初めて訪れた土地とは思えませんでした.おかげで空港からバスに乗りベルリン中央駅に着いたのは既に日が暮れた後でしたが,迷うことなくホテルにたどり着くことができました.出発の直前に欧州が大寒波に襲われたため防寒の備えは万全にしていったのですが,私が到着したときには既に寒波は通り過ぎており,むしろ岡山よりも温かく,準備していった防寒具はほとんど必要のない状態でした.また一般にヨーロッパでは室内の暖房が強いためか温度の割には温かく感じると思います.

--------------------

欧文目次

  • 文献概要を表示

 免疫応答の間に抗体は外来抗原に高い親和性で結合するように選択を受けるが,それには同種リガンドに2価結合する能力が関与している.一方で,B細胞は胚中心で自己抗原に対する交叉反応性すなわち多反応性を再獲得しうる.これはヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus:HIV),Epstein Barr virusやhepatitis C virusといったいくつかの感染では一般的な血清学的特徴である.同種リガンドへの2価結合は常に可能なわけではなく,例えばHIVではウイルスの表面に提示されるgp140糖蛋白質の密度が少ないので,同種リガンドへの2価結合には不向きである.これらの背景から著者らは,HIVに対する抗体反応の過程で,抗体の親和性を増大させる体細胞変異を起こした抗体では,片側が高親和性抗HIV-gp140結合部位,もう片側がHIV分子構造上の低親和性部位という2価の異種リガンド結合(heteroligation)が可能になり,これによって中和能が増大するのではないかと考えた.本論文では,高い力価の中和抗体をもつ6人の患者からクローン化した134種の抗HIV-gp140モノクローナル抗体のうち,75%が多反応性を持つことが示された.また多反応性結合抗体は,個々の結合部位の親和性がさほど高くなくても,異種リガンド結合によってHIVに対する実質上の親和性が増大することが明らかになった.抗体の多反応性と機能の相関を検討した非常に興味深い論文であり,今後抗HIV抗体以外への応用も期待される.

  • 文献概要を表示

【第4回皮膚病理講座:診断編/神戸】

日 時 1日目 2011年9月23日(祝)10:00~17:00

     2日目        24日(土) 9:00~16:00

会 場 神戸大学付属病院臨床研究棟6階 大講義室

    (兵庫県神戸市中央区楠町7-5-2)

【第5回皮膚病理講座:診断編/東京】

日 時 1日目 2011年10月29日(土)10:00~17:00

     2日目        30日(日) 9:00~16:00

会 場 日本医科大学教育棟2階 大講堂

    (東京都文京区千駄木1-1-5)

次号予告

投稿規定

あとがき 塩原 哲夫
  • 文献概要を表示

 若い頃,器などどうでもいいとうそぶいていたのが信じられないほど,焼き物に興味を持つようになった.つい先日,焼き物店の主人と雑談をしていておもしろい話を聞いた.主人曰く「最近は値利きばかりで目利きがいない」というのである.「値利き」とは聞き慣れない言葉なので聞き返すと,その作品の値が出るかどうかにはすごく関心があって詳しいのに,作品の本当の芸術的価値を見抜く力のない人を指すのだという.若い陶芸家の作品の卓抜さを見抜き,その才能を育てていこうとする本当の「目利き」はほとんどいなくなったというのである.このような風潮は何も陶芸の世界だけにとどまらない.あらゆる分野が商業主義,市場主義により支配され,売れるものが良いものであり,売れないものは価値のないものだとする風潮が主流となって久しい.本当に良いものなら安く買えるはずはないのに,良いものを安く作るのが当然だとする主張が堂々とまかり通るようになり,生産者は良いものを作ろうとするよりいかに安く作るかに腐心せざるを得なくなってしまった.

 同じような商業主義は医学界をも度捲しつつある.Impact factor(IF)なるものが存在しなかった時代にも,医学雑誌の序列は何となく存在していた.しかしIFが普及した後の雑誌の序列化は甚だしく,IFの高い雑誌に載った論文こそ正しく,素晴らしいものだという信仰を多くの人々に信じ込ませることになった.結果として,研究者は,IFの高い雑誌に載るような仕事には血道を上げるが,そうでない仕事には見向きもしなくなってしまった.雑誌のほうでも,IFが上がるような論文を多く載せていくことが至上命題となり,IFを押し上げないような地味な論文は次第に隅に追いやられることになった.現在,多くの医学雑誌はこぞってインパクトの大きい基礎研究や大規模な臨床治験を多く取り上げる一方で,症例報告を載せる雑誌はほとんどなくなってしまった.まさに世界中が「値利き」万能主義になった観がある.

著作財産権譲渡同意書

基本情報

00214973.65.8.jpg
臨床皮膚科
65巻8号 (2011年7月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

文献閲覧数ランキング(
6月29日~7月5日
)