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文献紹介 多反応性の抗HIV抗体は異種リガンド結合によって親和性を増大させている
平井 郁子
1
1慶應義塾大学
pp.623
発行日 2011年7月1日
Published Date 2011/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412103009
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免疫応答の間に抗体は外来抗原に高い親和性で結合するように選択を受けるが,それには同種リガンドに2価結合する能力が関与している.一方で,B細胞は胚中心で自己抗原に対する交叉反応性すなわち多反応性を再獲得しうる.これはヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus:HIV),Epstein Barr virusやhepatitis C virusといったいくつかの感染では一般的な血清学的特徴である.同種リガンドへの2価結合は常に可能なわけではなく,例えばHIVではウイルスの表面に提示されるgp140糖蛋白質の密度が少ないので,同種リガンドへの2価結合には不向きである.これらの背景から著者らは,HIVに対する抗体反応の過程で,抗体の親和性を増大させる体細胞変異を起こした抗体では,片側が高親和性抗HIV-gp140結合部位,もう片側がHIV分子構造上の低親和性部位という2価の異種リガンド結合(heteroligation)が可能になり,これによって中和能が増大するのではないかと考えた.本論文では,高い力価の中和抗体をもつ6人の患者からクローン化した134種の抗HIV-gp140モノクローナル抗体のうち,75%が多反応性を持つことが示された.また多反応性結合抗体は,個々の結合部位の親和性がさほど高くなくても,異種リガンド結合によってHIVに対する実質上の親和性が増大することが明らかになった.抗体の多反応性と機能の相関を検討した非常に興味深い論文であり,今後抗HIV抗体以外への応用も期待される.
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