臨床皮膚科 65巻9号 (2011年8月)

連載 Clinical Exercise・48

Q考えられる疾患は何か? 井手山 晋
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症例

患 者:36歳,タイ国籍の男性

主 訴:左手の皮疹と麻痺

家族歴・既往歴:特記すべきことなし.

現病歴:半年前に左手背を強打した.その後しばらくして手指に脱力感を感じるようになり,手背に皮疹が生じた.脱力感が進行し,手指が動かなくなったため整形外科,神経内科を受診したが麻痺の原因は不明であった.皮疹と関係があるかもしれないということで当科を受診した.

現 症:左手背に浸潤を触れる紅斑局面を認めた(図1).左手関節より遠位は麻痺しており,知覚低下も認めた.右手には異常を認めなかった.さらに両側の橈骨神経,尺骨神経,浅腓骨神経の肥厚を認めた.

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要約 24歳,女性.16歳時に左大陰唇の腫瘤を自覚し,徐々に増大したため,2009年12月に当科を紹介され受診した.初診時左大陰唇に122×65mm大の有茎性,多房性の常色腫瘤を認めた.下腹部造影CTでは骨盤内腫瘤性病変を認めなかった.2010年2月,皮膚腫瘍摘出術を施行した.病理組織学的に葉状発育を示し,重層扁平上皮に覆われ,表皮に対して垂直に走行する血管を有し,周囲に大小さまざまな血管が増生していた.紡錘形のstromal cellと膠原線維の増生がみられ,核異型や核分裂像は認めなかった.CD34,ビメンチン染色,エストロゲン受容体染色,プロゲステロン受容体染色陽性であり,線維上皮性間質ポリープと診断した.女性ホルモンによる腫瘍増大が示唆された.外陰部の軟部腫瘍は,頻度は低いが,部位特異性が高く,各疾患の特徴を知っておく必要がある.

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要約 43歳,男性.化学工場の爆発事故の発火源近くで作業しており,全身に熱傷を負い,同日当院ICUに入院した.熱傷面積80%(Ⅱ度30%,Ⅲ度50%)であった.熱傷性ショックに対応後,受傷8日目にスキンバンクより提供された凍結皮膚による同種皮膚移植と自家分層植皮を行った.その結果,熱傷性ショックから離脱でき,また敗血症の併発が予防され,救命しえた.同種皮膚由来の表皮は,一時的に生着して,広範囲熱傷患者の救命率が向上するとされる.同種皮膚移植に関する保険収載の整備,国からの公的補助が望まれる.

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要約 25歳,女性.2000年に潰瘍性大腸炎と診断されプレドニゾロン,メサラジンで治療されていたが,2007年5月より通院を中断していた.2008年7月より下痢・血便が出現し,その後発熱,両下肢の広範囲に皮下の硬結と圧痛を伴う発赤が出現した.発赤部の病理組織像では皮下脂肪織の線維性隔壁にリンパ球,組織球が浸潤しており,結節性紅斑と診断した.メサラジンの内服や白血球除去療法等を開始したところ皮疹は軽快した.自験例の結節性紅斑は膝部を含む下肢の広範囲に発赤が認められ,複数の疹が融合して局面を形成する非典型的臨床像を呈した点が特徴的であった.非典型的な臨床像を呈する結節性紅斑を認めた場合には,潰瘍性大腸炎など全身的な炎症性疾患の合併も念頭に置いて検査・加療を行っていくことが重要と考えられた.

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要約 66歳,女性.右2指の関節炎に対してセレコキシブ,テプレノンを内服していた.これらの内服終了翌日,市販薬の内服後に体幹,四肢などに紅斑が出現し拡大してきたため発症3日後に当科を初診した.当初ウイルス感染による多形滲出性紅斑,市販薬による薬疹などを考えた.プレドニゾロン,塩酸オロパタジンの内服と吉草酸ジフルコルトロンの外用にて1週間程度で紅斑は消退した.その後関節痛が再発し,自己判断にてセレコキシブとテプレノンを内服したところ,数時間後に背部,臀部,上肢などの紅斑と口唇の浮腫が出現した.初診時と同様の治療にて10日程度で紅斑は消退した.パッチテストではセレコキシブで陽性,テプレノンは陰性,DLSTはセレコキシブ,テプレノンとも陰性であった.セレコキシブによる薬疹の本邦報告は自験例を含めてこれまでに11例あり,これらにつき文献的考察を加えた.

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要約 79歳,男性.40歳頃より胸部に角化性丘疹が集簇してみられDarier病と診断された.夏季増悪時にのみステロイドを外用し,良好にコントロールされていた.2008年2月,体幹,四肢に掻痒感の強い蕁麻疹様丘疹が播種状に多発した.個疹は長期間持続し痒疹反応と考えた.病理組織像は真皮の浮腫と単核球,好酸球浸潤であり,表皮変化は軽微であった.しかし次第に角化性丘疹からなる局面が主体となり,2回目の組織像はDarier病に合致していた.経過中,胃潰瘍が見つかりHelicobacter pylori除菌を行った.この際,一過性に全身蕁麻疹様丘疹が新生・多発し,除菌終了後は蕁麻疹様丘疹の新生は止んだ.経過からDarier病患者がH. pylori感染に起因する蕁麻疹様丘疹を合併,その際の真皮への炎症性細胞浸潤がケラチノサイトに作用し,ATP2A2遺伝子の発現に影響を与えて,Darier病の汎発化を誘発した可能性を考えた.

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要約 生後8日,女児.在胎40週3日,胎児仮死のため緊急帝王切開.出生後呼吸障害,心不全,低血糖,血小板減少があり当院NICUに転院した.生後2日右上肢より紅斑伴う皮下硬結が出現した.生後8日目には背部から臀部に地図状,境界不明瞭な紅斑が広がり,皮下に硬い板状結節を触れた.皮膚生検行い脂肪細胞内に放射状沈着物,針状裂隙を認めた.その後,全身状態は軽快し,皮疹も経過観察のみで生後約1か月で瘢痕を残さず消退した.胎児仮死を伴った典型的な新生児皮下脂肪壊死症の1例を経験したので報告する.

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要約 76歳,女性.初診の1年半前より始めたダンベル運動を週1回継続していた.7か月前より両前腕の腫脹が出現した.初診時,四肢のほか,頸部や軀幹にも紅褐色斑と光沢を伴う,やや深く触れる皮膚硬化を広範囲に認めた.両前腕では腫脹と熱感も認めた.手指の硬化,Raynaud症状や爪郭部の出血点はなかった.血液検査では好酸球数の軽度増多,赤沈亢進があり,抗セントロメア抗体,抗Scl-70抗体,抗ss-DNA抗体は陰性であった.前腕からの生検病理組織像では真皮,脂肪織の血管周囲にリンパ球を主体とし,好酸球を混じる炎症細胞浸潤とリンパ球浸潤を伴う筋膜の肥厚を認めた.両前腕・腹部MRI脂肪抑制T2強調画像にて筋膜に高信号を認め,筋膜炎の存在を確認しえた.治療は,プレドニゾロン30mg/日にて腫脹,熱感は速やかに消失し,皮膚硬化も著明に改善した.軀幹,四肢に著明な皮膚硬化をきたした場合は,全身性強皮症,深在性モルフェアとの鑑別が必要である.

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本論文は抹消されました。

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要約 85歳,女性.初診3か月前から左前頭部に正常皮膚色結節が出現し,徐々に増加し,額まで拡大した.皮膚病理組織像では,真皮に紡錘形から類円形,多角形の異型性の強い腫瘍細胞が密に増生し,辺縁では不規則な血管腔の形成と腫瘍細胞の内腔への突出像がみられ,血管肉腫と診断した.高齢で入院治療や化学療法に消極的であり,短期大量電子線分割照射を通院で施行した.治療後2年間経過し,腫瘍の再発・転移は認めていない.まれな臨床像と充実性・未分化な増殖像を呈する血管肉腫でも,電子線照射単独で長期間寛解を維持しうる例があると考えた.

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要約 81歳,女性.左鼻根部の角化性丘疹を近医で切除された.切除標本の病理組織像は日光角化症の所見であり,断端は陰性であった.切除1か月後頃から,瘢痕となった術創部がドーム状に隆起してきた.腫瘤の一部からの皮膚生検病理組織所見は膿瘍であった.その後,腫瘤を全摘して採取組織からの抗酸菌培養を行ったところ,速育菌を検出し,DNA-DNA hybridizationで菌種はMycobacterium chelonaeと同定した.術後レボフロキサシンとクラリスロマイシン内服を行い,再発所見は認めなかった.基礎疾患を有さず,免疫低下状態などがない患者でも,術後瘢痕や外傷部分への本菌による皮膚感染症が生じうることを考慮すべきと考えた.

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要約 17歳,男児,高校生.1週前に左陰股部にかゆみのある落屑性紅斑が生じ,その後,徐々に一部にびらんと小膿疱を伴ってきた.受診時まで治療歴はなかった.高校ではウエイトリフティング部に所属し,自宅でペルシャネコを飼っていた.所属部員や家族に同症はなかった.同部の落屑のKOH法では菌要素が多数密集してみられ,培養では表面がビロード状および一部粉末状で,淡い緑黄褐色の集落が得られた.この形態学的所見とPCR-RFLP法の所見と合わせてEpidermophyton floccosumと同定した.同菌による白癬は近年減少傾向にあるが,集団感染の報告もあり,また非定型的な臨床症状を呈するので日常診療においてなお注意を要する.

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要約 60歳,男性.足白癬に対し自己流の治療をしていたところ,右3,4趾間に潰瘍を形成した.半年間近医で加療を受けたが拡大するため当科を紹介された.右3,4趾間から足底3趾内側,4趾内側にかけて,境界明瞭な黒色壊死を付着する潰瘍があり,緑色の浸出液を伴っていた.鏡検では真菌陰性,創部培養で緑膿菌が検出され,セフタジジム,メロペネムを使用したが潰瘍はさらに拡大した.生検のPAS染色,グロコット染色で皮下脂肪織内に菌糸と分節胞子を確認し,組織培養でTrichosporon mucoidesが検出されたことより深在性皮膚トリコスポロン症と診断した.イトラコナゾールの内服で潰瘍が縮小し,後日植皮術を行い完治した.トリコスポロンは日和見感染症や夏型過敏性肺炎の原因として有名であるが,非免疫抑制者の皮膚に病変を形成することは稀であり,若干の考察を加え報告する.

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要約 55歳,男性.バリ島より帰国後,頭痛や眼の痛みを自覚し,微熱が続いた.両鼠径部リンパ節腫脹や手掌,足底の紅斑が出現し,当院を受診した.軽度の白血球減少,異型リンパ球を認めて中毒疹を疑ったが,海外渡航歴,臨床症状ならびに初診時に行ったデングウイルスIgM抗体検査よりデング熱と診断した.稀だが,重症化した場合は死に至ることがあり,皮膚科でも遭遇する可能性があるので注意を必要とする.

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要約 68歳,男性.初診の2年前より陰茎冠状溝,包皮に掻痒や疼痛を欠く易出血性の発赤,腫脹,びらんが出現した.病理組織学的には表皮は欠落し,真皮に形質細胞主体の稠密な細胞浸潤を認めた.免疫組織化学ではクローン性増殖を強く示唆する所見はなかった.以上より,plasma cell balanitisと診断した.開口部形質細胞症の概念と,治療の有効性について文献的に検討し,plasma cell balanitisとplasma cell cheilitisは海外の文献では誘因も治療法も異なる疾患として扱われており,別個に検討するのが妥当と考えた.

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要約 症例1:83歳,女性.仙骨部褥瘡を契機に生じたガス壊疽に対してデブリードマンを行い,臀部に最大径46×17cmの深い潰瘍が残った.植皮による創閉鎖が必要であったが,患者はパーキンソン病に伴う寝たきり状態と心不全による胸水があり,術後の腹臥位維持が困難かつ危険と思われた.陰圧維持管理装置による陰圧閉鎖ドレッシングを用いて植皮片を固定し,仰臥位にもかかわらず極めて良好な植皮生着に成功した.症例2:77歳,男性.悪性黒色腫の拡大切除およびsubtotal integmentectomy後の足関節部皮膚潰瘍に対して分層植皮を行った.同部は曲面でタイオーバー固定が難しく,同じく陰圧閉鎖ドレッシングで固定し,1週間後,植皮片はほぼ生着した.

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要約 帯状疱疹患者の皮膚科受診実態を明らかにするため,帯状疱疹患者を対象としたアンケート調査を実施した.有効回答を得た3,224例のうち1,920例(59.6%)が女性であり,年代別では50歳台以上の患者が多かった.皮疹出現から2日後までの早期に医療機関を受診した患者は半数以下であり,帯状疱疹であると正しく判断した患者では受診までの期間が短かった.早期に受診した患者で有意に認識率の高かった知識は「片側に帯状に赤み,ぶつぶつなどができる」,「水ぶくれが出る前に痛みが出る」,「お医者さんに行って早く治療したほうが良い」などであった.747例(23.2%)の患者がアンケート調査を実施した皮膚科以外の医療機関・診療科を経由していた.帯状疱疹患者の早期受診を促すためには,患者および一般への疾患啓発とともに,幅広い診療科と皮膚科との連携体制を構築することが望まれる.

印象記

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 1. 世界皮膚科学会について

 2011年5月24日から29日まで,韓国ソウルで,「第22回世界皮膚科学会(World Congress of Dermatology:WCD)」が開催されました.WCDは1889年にパリで開かれてから120年以上の歴史を持つ皮膚科学関連では世界最大の学会であります.ILDS(International League of Dermatological Societies)主催のもとに,今回は1982年の東京以来29年ぶりのアジアでの開催となりました.日本での東日本震災や原発からの放射能汚染による学会参加へのキャンセルが出たとうわさを聞きましたが,蓋を開けてみれば11,000人以上の参加者があり,大変な賑わいを見せました.

 今学会は,ソウル市郊外のCOEXという大変素晴らしい学会場で開催され(図1),しかも,近くにショッピングモールがあるため,お食事処も豊富にあり,韓国冷麺,焼き肉,ビビンバなど毎日楽しく過ごすことができ,日本からの参加者にも好評でした.

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欧文目次

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 Generalized peeling skin disease(PSD)は,アトピー性皮膚炎様症状,喘息,アレルギー性鼻炎を伴う,稀な常染色体劣性遺伝性の魚鱗癬様紅皮症である.PSDの組織学検査では,角質層が顆粒層から剥がれ落ちる所見がみられる.Netherton syndrome(NS)と臨床的・病理組織学的に共通点を持つが,NSの責任遺伝子であるSPINK5に変異はない.PSDの原因遺伝子の同定を行った結果,コルネオデスモシン遺伝子にc.175A>Tという変異が見つかった.この変異はコルネオデスモシン蛋白の59番目のリジンが終末コドンに変化しているnonsense mutationであった.コルネオデスモシンは角質細胞同士を接着するコルネオデスモソームに存在する細胞接着蛋白である.患者皮膚を用いた免疫ブロット検査および蛍光抗体検査にて,患者皮膚ではコルネオデスモシンが全く発現していないことがわかった.この変異をホモ接合体で持つことにより,コルネオデスモシンが完全欠失し,角質細胞の接着が減弱することで角質層の剥離を招き,最終的にPSDを発症すると考えられた.

 患者皮膚から採取したケラチノサイトを用いて三次元皮膚モデルを作成し,皮膚バリア機能検査を行った.患者由来の三次元皮膚モデルでは,表皮の物質透過性が増しており,コルネオデスモシンの欠失によって重篤な表皮バリア障害が起きていることが示された.近年,フィラグリン変異による角質バリア障害がアトピー性皮膚炎だけでなく,喘息・食物アレルギー・アレルギー性鼻炎などのアトピー疾患の発症要因となることが注目されている.PSDではコルネオデスモシンの完全欠失により重篤な角質バリア障害をきたすことで,表皮のアレルゲン透過性が増し,アトピー疾患の発症をもたらすと考えられた.

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 今やダーモスコピーは皮膚科診療において欠かせないツールとなっている.保険収載もされており,悪性黒色腫をはじめとする色素性病変の診断に多大に貢献している.今後ますますその重要性は増してくるであろう.ところで,ダーモスコピーを学び始めて困惑するのが,聞き慣れない用語が多いことに加えて,同様の所見が複数の用語で表現されていることである.どの用語を覚えて使用していくべきなのかを判断しなければいけないことは,初心者にとっては非常に厄介である.しかしながら,国際的に通用する必要最小限の用語をマスターすることは重要である.本書において使用されているダーモスコピー用語は,現時点で最も国際的に通用するものであることを前提に,不要な混乱を招かないように配慮されたうえで採用されている.非常に吟味されており,文中の用語はそのまま記憶して構わないし,安心して読み進めていってよい.初心者にとってこのことは多大なストレスの軽減である.著者の3人は言うまでもなく日本のダーモスコピーの分野を牽引している斎田俊明先生,土田哲也先生,古賀弘志先生である.

 本書のもう1つの特徴は,非常にコンパクトなポケット版であるにもかかわらず,ダーモスコピー入門書として必要な基礎知識や診断手法なども網羅されていることである.記載内容は簡潔で理解しやすく,必要な科学的知見が適切に盛り込まれている.初心者が本書を通読することにより,ダーモスコピーの必要最小限の基礎知識,用語,診断手法が効率的に身につくだろう.私がダーモスコピーを勉強し始めた頃に本書があればと,つくづく残念に思うくらいである.初心者にはまず本書でダーモスコピーの骨格を形成してもらいたい.骨格ができると,その後の肉付けは比較的容易になり,ダーモスコピーの面白さがさらに実感できるようになるだろう.多くの先生方に,その後のさらなる飛躍を期待したい.

次号予告

投稿規定

あとがき 渡辺 晋一
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 最近テレビ番組に出演したが,その番組のおかげで,日本中から患者が殺到し,皮膚科の売り上げは上がったが,私自身の給料は上がらず,大変忙しい毎日である.今さらテレビに出たことを後悔しても始まらない.ところで全国から来院した患者の内訳は,メンタルな問題の患者,今の医学の治療では完治が困難な疾患もいたが,最も多かったのは不適切治療のため,良くならない湿疹・皮膚炎患者であった.そしてその全例がステロイドを保湿剤などで薄めて使用している患者で,なかには保湿剤を使用してからステロイドを混ぜたものを重層するように指導されている患者もいた.外用薬は直接皮膚に使用して薬効を発揮するものである.最近はディフェリンの外用前にも保湿剤を外用するなど,常識破りの治療法が蔓延している(日本では保湿剤がニキビ治療薬になっている!).アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis:AD)患者に対しては,皮膚の炎症を抑えることができる強さのステロイドを直接皮膚に外用することによって,1~2週間後には劇的に皮疹が軽快し,驚くほど患者さんから感謝される.その後はステロイドのランクを下げたり,外用回数を減らし,無治療の状態にもなっている.もちろんAD患者は,夏季とか冬季に再燃することはあるが,そのときの治療も容易で,1~2週間の治療ですむ.確かに掻破によって結節性痒疹になったものは,掻破行動をやめない限り良くならないが,湿疹病変の治療は簡単である.また顔面の湿疹病変の治療もプロトピックによって簡単となった.ステロイドの強いものから弱いものへのステップダウン法は内服ばかりでなく,外用でも当たり前の投与方法であるが,ステロイドを薄めて使用する治療法が日本で蔓延している.専門家(?)がそのように指導しているのか,メーカーの差し金か,あるいは簡単に良くなっては病院の収入が減るためなのかよくわからない.日本皮膚科学会はこの事実をどうとらえているのであろうか.最近の日本皮膚科学会が行った定点調査によると,日本では60歳以上のAD患者がAD患者全体の10%以上を占めるという.これも世界の常識とは異なるデータである.実際この間当科を訪れた65歳の患者は近医皮膚科で6年間ADということで治療を受けていたが,降圧剤による光線過敏症であった.

著作財産権譲渡同意書

基本情報

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臨床皮膚科
65巻9号 (2011年8月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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