皮膚科の臨床 62巻6号 (2020年5月)

特集 付属器疾患 その疑問にお答えします! — ニキビから巻き爪まで Q&A50 —

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付属器の皮膚全体に占める割合は少なく,付属器疾患が生命予後に影響する大きな問題を起こすことは稀です。しかし,通常の皮膚とは構造が異なる器官で,独特の機能を有しているため,無汗症のように体温調整に大きな影響があったり,黄色爪症候群のように内臓疾患の兆候だったりすることがあります。また,脱毛症や睫毛貧毛症,扁平苔癬や乾癬による爪変形のように外見を決める重要な要素となっていて,患者のquality of lifeに大きな影響を持つこともあります。付属器疾患には難治なものが多く,疾患により個別の対応が必要となり,診療の際には通常の皮膚疾患と異なる視点が必要とされます。

第Ⅰ章 毛

総説:毛の構造と機能 天羽 康之
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毛器官は体温維持,体表面の保護など,生命の維持に重要な役割を果たしている。ヒトの毛器官は掌蹠,陰部の一部を除く全身の皮膚に分布する。毛器官は硬毛と軟毛,胎生毛に分けられ,頭毛,眉毛,鬚毛,睫毛,腋毛,陰毛や体部の粗大毛包は硬毛であり,硬毛の分布しない体表面を覆う細く短く軟らかい毛が軟毛である。胎生毛は胎生期の軟毛や硬毛になる前の毛器官であり,構造は軟毛とほぼ同じである。頭毛は成人1人あたり平均約10〜15万本である。成長期,退行期,休止期の2〜6年の毛周期を繰り返しており,ヒトの頭毛では約85〜90%が成長期毛である。1日に休止期の毛髪が50〜100本近く抜け落ちるが,毛髪は正常の毛周期に応じた生理的な脱毛と発毛を繰り返し,体表面の毛器官の密度はほぼ一定に保たれている。この毛周期を維持するためにそれぞれの毛包に毛包幹細胞が分布している。

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男性型脱毛症では前頭部と頭頂部に軟毛化が生じます。診断は特徴的な脱毛パターンにより比較的容易ですが,より正確に軟毛化を確認するためにはトリコスコピーが有用で,所見としては毛直径の不均一が重要です。治療はフィナステリド1mg/日もしくはデュタステリド0.5mg/日の内服や5%ミノキシジル外用を行います。

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慢性・びまん性に脱毛する女性を診察するにあたり,脱毛症の原因が多様であることを理解し,他の皮膚疾患や内臓疾患,既往歴の治療による副作用などとの鑑別が大切です。診療ガイドラインを参考に治療を選択しますが,女性の脱毛症に対する治療の選択肢は少ないため,メンタルケアや生活指導も利用して,生活の質(QOL)が低下しないように治療を考えていきましょう。

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円形脱毛症の診断は,多くの場合,その経過や脱毛斑の性状によって判断されますが,なかには診断に苦慮する症例もあります。その場合,ダーモスコピーによる毛孔所見,皮膚生検などから判断します。円形脱毛症の最初の標的は主にメラニン産生のある成長期毛ですが,経過とともに白髪も脱毛します。脱毛症状はいろいろで「円形」にこだわる必要はありません。単発から多発型,全頭型,蛇行型,体毛も脱毛する汎発型,一方で体毛のみや睫毛,眉毛,髭のみの場合もあります。病理学的には,毛包周囲に稠密な炎症細胞浸潤がみられますが,その程度は病勢にもよります。治療はガイドラインに詳述されています。局所免疫療法は,ステロイド局所皮内注射とともにもっとも推奨される治療ですが,試薬の準備などの点で施行可能な施設は限定されます。急性全頭性に脱毛する場合には,ステロイドハーフパルス療法を検討します。治療選択は,病変部の範囲と病勢を踏まえたうえで選択すべきです。

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先天性か後天性か,年齢,性別,臨床経過,基礎疾患の有無,脱毛パターンの有無に着目して鑑別疾患を絞り,肉眼的観察とトリコスコピー,場合により皮膚生検で確定診断します。治療は診断と病態に基づいて抗炎症,毛の成長と太径化,基礎疾患治療などから選択します。

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先天性毛髪疾患は,生まれつき毛髪に何らかの異常を呈する疾患の総称です。

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毛髪に生じる真菌感染症の多くは白癬菌によるものですが,ときにカンジダも原因となり得ます。代表的疾患としては頭部白癬,ケルスス禿瘡,白癬性毛瘡があり,まれな疾患としてはカンジダ性毛瘡があげられます。いずれも診断は病毛あるいは病変部の鱗屑,痂皮から直接鏡検(できれば真菌培養)で真菌要素を確認することです。治療は原則的に経口抗真菌薬の内服を行います。

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トリコチロマニア(抜毛症)は心理的要因により,患者自らが毛髪を引き抜くことで発症する外傷性脱毛症です。皮膚科医には円形脱毛症をはじめとする他の脱毛疾患を鑑別し,正確にトリコチロマニアの診断を下すことが求められます。トリコチロマニアは臨床的に境界不鮮明な類円形,帯状の脱毛斑を呈し,円形脱毛症における脱毛斑と比べ形が不整,いびつです。また,ダーモスコピーで脱毛斑を観察すると,残存する毛髪の長さが異なるbroken hair,径が不均一なblack dot,trichoptilosisなどが認められます。しかし,円形脱毛症にトリコチロマニアが合併することもあり,両者の鑑別は必ずしも容易ではありません。臨床所見からトリコチロマニアが疑われる場合には,生活環境,家族関係などを詳細に問診し,抜毛行動における心理的・精神的影響が大きいと考えられる症例では,児童精神科,精神科などへコンサルトすべきです。

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トリコスコピーが実臨床で特に有用となるのは,びまん性に生じた脱毛の診断と円形脱毛症の病勢判断です。びまん性に生じた脱毛の診断においては,トリコスコピー所見で切れ毛,黒点,漸減毛,黄色点,短軟毛がみられれば円形脱毛症であり,毛直径の不均一(軟毛化)がみられれば女性型脱毛症です。円形脱毛症の病勢判断においては,切れ毛,黒点,漸減毛は病勢が強いことを示しており,逆に短軟毛は病勢が落ち着き回復期であることを示唆します。

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ウィッグには覆う範囲,作成方法,材質にそれぞれ異なる種類があり,価格も大きな差があります。自身の病状や経済面に合ったものを選ぶことが必要です。

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多毛症は,アンドロゲンによる男性型多毛症(hirsutism)と,アンドロゲンと関係しない無性毛型多毛症(hypertrichosis)に分けられ,原因は卵巣腫瘍,副腎腫瘍,下垂体腫瘍,薬剤性などがあります。多毛症の治療は腫瘍性病変が原因になっている場合は手術による摘出,薬剤性多毛症の場合は,薬剤の変更,中止などを行います。多毛部に対してレーザー治療も治療選択肢にあがります。

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レーザーを,標的組織である外毛根鞘のバルジ領域の幹細胞,毛球部,皮脂腺開口部に照射することで脱毛を行う方法です。

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本剤は,本邦で唯一,厚生労働省の承認を得た睫毛貧毛症治療薬で,約4カ月の継続使用で効果がみられます。一方で外用を中止した場合,2カ月間ほど効果の持続が期待できるといわれています。副作用を避けるため適切使用を指導していくことが重要です。

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ヘアカラーを行っていると一定の割合のユーザーはアレルギー性接触皮膚炎(いわゆる“かぶれ”)を発症します。

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皮膚の構造から眼瞼周囲の皮膚は脆弱で経皮吸収がおこりやすい,刺激をおこしやすい部位です。洗浄剤の影響でバリア機能が低下している状況に加えて,埃や花粉などを無意識のうちに手で払い擦る行為はさらに皮膚のバリア機能を低下させてしまうことになります。眼瞼周囲皮膚が健康でないとつけまつ毛を付ける接着剤による刺激やまつ毛の物理的な影響で健康被害がおこります。

第Ⅱ章 脂腺

総説 脂腺の構造と機能 佐藤 隆
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皮脂腺より分泌される皮脂は,皮表に脂質膜を形成することで皮膚バリア機能調節の一端を担っている。思春期における皮脂の過剰分泌は痤瘡(ニキビ)の発症・悪化に関係し,逆に加齢に伴う皮脂量の減少は乾燥肌の誘発要因となる。また最近,皮脂腺は抗菌作用や神経内分泌および免疫調節作用などの多彩な機能を備えていることも明らかとなり,皮膚の恒常性維持・調節において重要な役割を担っていると理解されつつある1)。すなわち,皮脂腺への理解を深めることは,痤瘡や乾燥肌のみならず新たな皮膚疾患の病態機構解明やその治療法(薬)の開発につながると考えられる。本稿では皮脂線の構造と機能に関して,最新の知見を紹介する。

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思春期痤瘡と思春期後痤瘡に本質的な違いはありません。治療の基本は同じです。しかし,肌質が異なるので,スキンケア方法が異なります。脂性肌の思春期痤瘡患者に,安易に思春期後痤瘡の乾燥肌に対する保湿ケアを指導してはいけません。また,思春期後痤瘡は,ストレスや月経による悪化,不適切なスキンケアなどのさまざまな増悪因子が関与しているため,難治です。思春期後痤瘡の治療に際しては,ガイドライン1)に沿った通常の標準治療に加えて,悪化因子の特定とその排除が必要です。

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尋常性痤瘡は思春期以降に好発し,顔面や胸背部などの脂漏部位に毛孔一致性に皮疹を生じる慢性炎症性疾患です。初発症状は面皰で,炎症を生じて紅色丘疹や膿疱となり,さらに硬結や囊腫へと進行し,治癒後にはときに瘢痕を形成する経過をたどります。痤瘡の発症の病態を理解するには,第1段階の面皰形成,第2段階の炎症惹起時期の2段階に分けて考えることが治療法を考えるうえでも重要です。

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体幹部の痤瘡の鑑別疾患としては,尋常性痤瘡(ニキビ),マラセチア毛包炎,ステロイド痤瘡,夏季痤瘡,集簇性痤瘡などを考える必要があります。

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痤瘡の標準治療で用いる推奨度の高い内服療法は内服抗菌薬で,外用療法はアダパレン,過酸化ベンゾイル,外用抗菌薬とこれらの配合剤です。急性炎症期には配合剤や異なる作用をもつ薬剤の併用療法で早期から積極的に治療し,炎症軽快後には抗菌薬を中止し,面皰改善作用のある薬剤を用いて維持療法を行います。独自性を出すために不確実な治療をするよりも,有効性の確立した治療を確実に行うことが治療の近道です。

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顔面と体幹の痤瘡は,ともに脂腺性毛包に生じる慢性炎症性皮膚疾患です。特に,体幹の中央部は胸部・背部ともに脂腺性毛包が分布しており,顔面脂漏部位と同様に考えてよいです。病態は同じであることから,対処法も同様の方針に沿うのが妥当です。ただし,部位による外用療法の工夫や,鑑別すべき疾患は異なってくるため注意が必要です。

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漢方薬は痤瘡に効果があります。ただし,単独での効果は確立されていません。抗菌薬内服,過酸化ベンゾイル製剤,アダパレンとの併用で効果を発揮すると考えられます。

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レーザー治療や光線治療は痤瘡治療の第一選択とはなりませんが,標準的な薬物治療と併用すると効果的な場合があります。薬物治療抵抗例や抗菌薬が使用できない場合にも用いられます。光の波長によってさまざまな作用をもつため,軽症から中等症の痤瘡や痤瘡瘢痕に対してある程度の改善効果が期待できます。有用性は,複数のランダム化比較試験で確認されていますが,薬物治療との比較やCutibacterium acnesに対する殺菌作用のエビデンスはほとんどありません。治療の改善効果は一過性で,通常は数週間後に認められます。欠点として効果の個人差が大きく効果予測が困難な点や,単独では新生をほとんど抑制できず費用対効果も低い点があります。近年,低侵襲性の光線治療器による在宅療法が海外で取り入れられています。長期間の頻回治療が必要ですが,定期的な照射が痤瘡と治療効果への気づきを高めて治療参加・継続の動機づけとなり,アドヒアランスの改善や満足度向上も認められています。

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ケミカルピーリング(CP)とは,皮膚に化学薬品を塗り,皮膚を剝がすことによって皮膚の再生を促す治療法です。痤瘡において有効ですが,自費診療のため,痤瘡の標準治療が無効あるいは実施できない場合に,CPを適用します。また,用いる試薬や方法,治療時の皮膚の状態により効果がまったく異なるため,施術には注意が必要です。

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面皰内でのCutibacterium acnesC. acnes)の異常増殖は痤瘡の増悪に関連しており,そのため,C. acnesの除菌を目的として抗菌薬が使用されています。近年,日本において薬剤耐性のC. acnesの増加が認められています。特に,ロキシスロマイシンおよびクリンダマイシン耐性のC. acnesが著しく増加しています。抗菌薬の不適切な使用は薬剤耐性のC. acnesの出現・増加に関連し,他の皮膚細菌も耐性化させる原因となります。薬剤耐性菌を出現・増加させないように抗菌薬を使用する必要があります。

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一律に禁止する食品や,奨励する食品はありませんが,食生活の見直しをすることは大切です。最近では,他の慢性炎症性疾患と同様に痤瘡の病態とメタボリックシンドロームに関連した食事指導が注目されています。月経周期と痤瘡の悪化を自覚している女性は多いのですが,そのほとんどは性ホルモンに異常はありません。しかし,月経不順や多毛,肥満などの症状が隠れていないかのチェックは必要です。

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痤瘡患者のスキンケアにはノンコメドジェニックの製品を用いることを推奨します。また適切な洗浄,保湿,遮光が重要であり,保湿剤の種類は肌質,年齢,季節,好みなどを考慮して選択するのがよいでしょう。

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精神的ストレスや環境ストレスにより,中枢神経のみならず皮膚組織においてもストレスホルモンは産生されます。これらのストレスホルモンは皮脂腺に作用し,皮脂産生を促進することで痤瘡発症の原因となり得ます。

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陥凹性瘢痕にはケミカルピーリング,フラクショナルレーザー療法やフィラー注入,隆起性瘢痕にはステロイドの局所注射が主に行われています。また,炎症後色素沈着にはケミカルピーリング,ハイドロキノンやトレチノイン外用など,炎症後紅斑に対してはパルスダイレーザーやロングパルスNd:YAGレーザーなど,血管治療に用いられるレーザー治療が行われています。実際には患者の症状に合わせて,スキンケアやケミカルピーリング,レーザー治療の併用治療を行っています。

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酒皶は「周期的に悪化する特徴的なパターンの顔面中央部の紅斑」と「瘤腫・鼻瘤」が特徴です。酒皶以外にも顔面中央部に紅斑をきたす疾患は複数ありますので,鑑別疾患・合併疾患の検索も酒皶の診断には重要です。その発症機序は,遺伝的背景や環境因子に伴った自然免疫系反応や血管・神経系反応などが関与していると考えられていますが,一義的な原因は不明もしくは存在しないのかもしれません。

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外用治療では,アゼライン酸あるいはメトロニダゾールが有効です。アゼライン酸は20%含有化粧品があります。メトロニダゾールの0.75%製剤は,現在のところ日本では酒皶に保険適用外です。1%メトロニダゾール軟膏を院内製剤して用いてもよいです。内服治療では,丘疹・膿疱型酒皶に対して,ドキシサイクリンあるいはミノサイクリンなどのテトラサイクリン系抗菌薬が有効ですが,40mgドキシサイクリン徐放錠のない日本では用量や投与期間に関して未解決の問題があります。発作性発赤や火照りに対しては,漢方(駆瘀血剤や清熱剤)を用いて症状改善をはかります。毛細血管拡張にpulsed dye laser(PDL)などのレーザー治療,紅斑に対してはintense pulsed light(IPL)などの光治療が有効なことがあります。紫外線曝露や温熱,香辛料の強い食事などの発作性発赤を誘発する惹起刺激を避ける生活指導,スキンケア指導を行うことも重要です。

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整容面での改善を目的とした外科的治療が第一選択です。

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化膿性汗腺炎の診断は臨床的に行います。毛包を中心とした自然免疫の過剰な活性化が病因です。

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生物学的製剤の登場により化膿性汗腺炎の治療は大きく進歩しました。外用薬から内服,広範囲切除術,抗体製剤まで,皮膚科医の知恵や技術をフルに活用し治療にあたる必要があります。

第Ⅲ章 汗腺

総説 汗腺の構造と機能 嵯峨 賢次
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汗腺は汗を体表面に分泌する外分泌腺である。汗は体温調節をはじめとして人体にとって重要な働きをしている。先天的に汗腺が欠損する疾患や,後天的に発汗が低下する無汗症や乏汗症では体温調節機能が低下して熱中症になりやすい。発汗が必要以上に増加する多汗症では日常生活に悪影響を与え,患者の苦痛は大きい。汗が臭う臭汗症では患者の社会生活に悪影響を与えることがある。汗に伴う疾患は周囲の人たちが想像する以上に患者に苦痛を与えている。

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多汗症は全身性よりも局所性のほうが圧倒的に多く,いずれも原発性が大半を占めます。原発性局所多汗症は,腋窩,手掌,頭部,足底で多くみられます。続発性全身性多汗症は,感染症,内分泌代謝異常,神経障害,薬物などが原因となり,続発性局所多汗症は神経系障害,代償性発汗,味覚性発汗などが原因となります。診断に際しては,患者の主訴が正確でない場合があるため,誘発要因などの詳細な状況把握と発汗分布などの検査により続発性多汗症を鑑別し,総合的に判断する必要があります。

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腋窩多汗症の治療は,本邦の診療ガイドラインによると,塩化アルミニウムの単純外用療法が第一選択です。成人の重症例の場合は,A型ボツリヌス毒素局注療法があり,外用療法と併用することもあります。そのほか,内服療法,精神療法,交感神経遮断術,マイクロ波療法といった機器による治療がありますが,予想される効果と副作用,効果の持続性,費用の問題などを考慮し,治療にのぞみましょう。

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原発性掌蹠多汗症(掌蹠多汗症)は,情緒不安定,精神的緊張状態を基盤にして発症することが多く,治療に多々苦労する疾患です。掌蹠多汗症の治療法は,基本的に外用療法,イオントフォレーシス療法が第一選択です。これらの治療に抵抗性の症例のみA型ボツリヌス毒素療法,交感神経遮断術などの適応となります。

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腋窩の皮膚常在菌を減らすため腋窩を清潔にし,乾燥しておく必要があります。腋毛の処理は湿潤環境を抑えるだけでなく,デオドラントが直接腋窩の皮膚に塗布しやすくなるので有効と考えます。デオドラントはライフスタイルに合わせて剤型を選択し使用します。汗で流れたり,衣服に付着したりすると効果は持続しません。まれに接触皮膚炎をおこすことがあり,注意が必要です。

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従来の剪除法(皮弁法)に伴う創縁の皮膚壊死と,剪除吸引法(クワドラカット法)による不確実性を防止するため,筆者は小切開と組織を削除する機器を併用した手術法で,腋臭症の治療を行っています。

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無汗の範囲が全身に及ぶと,暑熱環境下や運動負荷で容易にうつ熱になります(全身性無汗症)。全身性無汗症の診療では,幼小児期はFabry病,青年期は特発性後天性全身性無汗症(AIGA)を念頭に鑑別を行います。Fabry病は手掌・足底を含めて全身性無汗で四肢末端痛を伴います。α-ガラクトシダーゼA酵素活性の測定,遺伝子検査により診断が確定されれば酵素補充療法を考慮します。一方,AIGAでは手掌・足底は発汗が残存し,体幹部に疼痛・コリン性蕁麻疹を伴うことがあります。発症早期,軽症であればステロイドパルス治療が著効します。

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発汗率(時間あたりの発汗量)が少ないこと,汗の性質に変化が生じること,汗が汗腺から真皮内に漏出することにより,汗はアトピー性皮膚炎の悪化に関わります。

第Ⅳ章 爪

総説 爪の構造と機能 東 禹彦
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爪の構造と各部位の名称を図1に示す。爪は指趾末節背面に存在する。爪甲は側爪郭部および後爪郭部によって指趾背面に固定されている。爪甲遠位部では爪下皮角質と爪甲裏面が密着して,爪甲下面に異物が侵入するのを防いでいる。爪郭部皮膚には毛包および皮脂腺,汗腺は存在しない。

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爪の周りに好発する腫瘍として,グロムス腫瘍,粘液囊腫,爪下外骨腫,被角線維腫などがあげられます。悪性化のリスクはほとんどない腫瘍ばかりですが,疼痛や違和感を生じやすく,爪の変形により外観上の問題や衣服などが引っかかるなどの機能上の問題にもなり得るため,治療を必要とするケースが多く存在します。治療の基本は外科的切除ですが,粘液囊腫では保存的治療が奏効する場合もあります。

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爪の色の変化は,爪甲自体の色調変化であることが多いのですが,半透明の爪甲を通して見える爪床の色調変化に由来する場合もあります。色の変化は,白色,黄色,緑色,紅色,褐色,黒色など原因によってさまざまですが,逆にいえば,爪の色の変化から,その原因を推定したり突き止めたりすることができるため,爪の色の診かたをマスターしておくことは皮膚科医にとって重要です。爪の色の変化でもっとも注意が必要なのは,爪の長軸方向に褐色や黒色の色素線条がみられる場合で,メラノーマとの鑑別を慎重に行う必要があります。また,全身性疾患に伴ってみられる爪の色の変化として,慢性腎臓病や肝硬変でみられる爪の白色変化や,呼吸器系病変とともにみられる黄色の爪,アジソン病でみられる黒色の爪などがあり,注意して診察する必要があります。そして,爪の色の変化がみられるのが1本の指(趾)だけなのか,複数(あるいはすべて)の指(趾)なのか,手(あるいは足)だけなのかといったことも,診断に結びつく重要な手がかりとなることから,必ずすべての指趾の爪を診察する習慣をもつことが大切です。

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後天的に生じる爪(爪甲)の変形の原因は多岐にわたります。ハードケラチンとよばれる蛋白質を主成分とする爪甲は,硬く丈夫な組織であるというイメージとは裏腹に,非常にデリケートな一面を有し,爪甲の形状は内因性および外因性の因子の影響を大きく受けます。爪甲を作っている爪母で炎症がおこると,正常な角化を遂げることができなくなるため,不完全な爪甲が作られることになります。炎症の範囲や程度によって,表面の軽度の粗造化から著しく脆く崩れやすい異栄養状態まで,爪甲はさまざまな形状を呈します。また,爪母に異常がなければ爪甲自体は正常に作られるものの,健常な形状を保ったまま伸びていくためには,近位爪郭や側爪郭,爪上皮,爪床などといった爪甲を取り巻く環境がベストな状態に整っていることが不可欠となります。さらに,足の骨・関節の異常や歩行時の荷重の変化,あるいは靴による圧迫などによって,慢性的な機械的外力が作用すると,厚くなったり,偏った方向に伸びたり,過度に彎曲して巻き爪になったり,爪甲はさまざまなパターンの変形をきたします。したがって,変形した爪甲を診察する際には,爪甲の形状だけに目を向けるのではなく,その周囲環境に問題がないかどうか,すなわち内因性か外因性かを意識しながら変形の原因を探っていくことが大切です。

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爪乾癬には爪母病変と爪床病変があります。爪母病変には点状陥凹,爪崩壊,白色爪甲,横溝などがあり,爪床病変には爪甲剝離,爪甲下角質増殖,線状出血,油滴状爪があります。治療の基本は外用療法です。皮疹や爪乾癬によるQOL(生活の質)低下の程度,関節症状の有無を考慮し全身療法の適応を考えます。

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成人発症の爪甲色素線条で,① 先端より基部の幅が太い,② 幅が爪の半分を超える,③ 濃淡が不規則,④ 多彩な色が混在,⑤ 色素線条に一致した溝や亀裂がある,⑥ 爪周囲の色素斑を伴う場合は,メラノーマを疑いダーモスコピーで詳細に検討します。良性・悪性の判別がつかない場合は定期的に経過観察します。乳幼児期に発症した爪甲色素線条は自然消退する特徴があり,成人例と分けて考えます。長期的なフォローアップが必要で,爪甲周囲の皮膚に色素斑を伴う例もありますが,安易に生検せず慎重に経過を観察します。

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爪白癬の診断は病変部に真菌を証明することが必須です。臨床所見のみでの診断は専門家といえども容易ではありません。つまり,爪白癬の診断とは真菌検査です。真菌検査というと難しいように聞こえますが,皮膚科ではそれほど特殊な器具や技術を要さずに日常臨床で対象とする真菌を診療に十分なレベルで同定することができます。爪白癬の真菌検査には直接鏡検(鏡検)と真菌培養があります。これらによる診断で治療には十分です。遺伝子解析は,詳細に原因菌を解析できますが,現時点ではまだ臨床現場で実施できる検査ではありません。

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爪白癬の最新の治療法はエフィナコナゾール(クレナフィン®),5%ルリコナゾール(ルコナック®)といった抗爪白癬治療薬である外用薬と,ホスラブコナゾール(ネイリン®)という新規トリアゾール系経口抗真菌薬の3種類があげられます。

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陥入爪と巻き爪の治療は異なります。陥入爪では,陥入した爪の切除と肉芽腫の除去を行います。巻き爪では彎曲した爪甲の矯正を行います。矯正には,手術や爪アイロン,爪ロボ,金属製・プラスチック製のブレースなどを使用します。

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① 足長・足囲を測り自分の足に合った靴を選択しましょう。

② 靴は踵のカウンターがしっかりしたもので,甲の部分を靴紐やストラップなどでキチンと締めることができ,かつつま先に余裕のある靴を選択します。

③ 足に変形がある場合にはインソールを活用するとよいでしょう。

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ジェルネイルによる健康被害には,アレルギー性接触皮膚炎,爪変形,爪甲剝離,熱傷,疼痛,真菌症,細菌感染症,感覚障害などがあります。ジェルネイルによるアレルギー性接触皮膚炎は,ジェルネイルの成分であるアクリル樹脂の重合が不十分の場合に生じ,爪周囲の皮膚局所だけでなく,手指(爪)が触れる手背,頸部や口唇にも生じることがあります。

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爪病変は,整容面だけでなく,つまむ,引っ掛けるなどの細かい手指の作業が困難となる機能的問題が生じます。ネイルケアを行うことで,整容面だけでなく機能面でも改善が認められます。ネイルケアの長所を生かすと,患者の生活の質(QOL)改善に利用できます。

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目次

奥付

基本情報

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皮膚科の臨床
62巻6号 (2020年5月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0018-1404 金原出版

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