特集 付属器疾患 その疑問にお答えします! — ニキビから巻き爪まで Q&A50 —
第Ⅳ章 爪
Q42 注意すべき爪の形の変化を教えてください。
齋藤 昌孝
1
Masataka SAITO
1
1慶應義塾大学医学部,皮膚科
キーワード:
匙状爪
,
ボー線条
,
厚硬爪甲
,
鉤彎爪
,
反復性不完全爪甲脱落症
Keyword:
匙状爪
,
ボー線条
,
厚硬爪甲
,
鉤彎爪
,
反復性不完全爪甲脱落症
pp.942-949
発行日 2020年5月30日
Published Date 2020/5/30
DOI https://doi.org/10.18888/hi.0000002012
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後天的に生じる爪(爪甲)の変形の原因は多岐にわたります。ハードケラチンとよばれる蛋白質を主成分とする爪甲は,硬く丈夫な組織であるというイメージとは裏腹に,非常にデリケートな一面を有し,爪甲の形状は内因性および外因性の因子の影響を大きく受けます。爪甲を作っている爪母で炎症がおこると,正常な角化を遂げることができなくなるため,不完全な爪甲が作られることになります。炎症の範囲や程度によって,表面の軽度の粗造化から著しく脆く崩れやすい異栄養状態まで,爪甲はさまざまな形状を呈します。また,爪母に異常がなければ爪甲自体は正常に作られるものの,健常な形状を保ったまま伸びていくためには,近位爪郭や側爪郭,爪上皮,爪床などといった爪甲を取り巻く環境がベストな状態に整っていることが不可欠となります。さらに,足の骨・関節の異常や歩行時の荷重の変化,あるいは靴による圧迫などによって,慢性的な機械的外力が作用すると,厚くなったり,偏った方向に伸びたり,過度に彎曲して巻き爪になったり,爪甲はさまざまなパターンの変形をきたします。したがって,変形した爪甲を診察する際には,爪甲の形状だけに目を向けるのではなく,その周囲環境に問題がないかどうか,すなわち内因性か外因性かを意識しながら変形の原因を探っていくことが大切です。
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