INTESTINE 21巻5号 (2017年9月)

特集 大腸腫瘍診断のモダリティと新たな展開─ 存在診断能・質的診断能の向上を目指して

序説 工藤 進英
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さまざまな内視鏡モダリティの登場,発展により,病変の発見,質的診断,治療からなる大腸内視鏡診療は,その向上を遂げてきた.X線診断と内視鏡診断による早期癌診断のスパイラルアップのなかで“幻の癌”とされた大腸Ⅱc病変が発見されたのが1977年のことである.その後,われわれは数多くの大腸Ⅱc病変を発見し,陥凹型腫瘍こそが大腸癌発育のメインルートと信じ,これにde novo癌としての位置づけを与えた.そしてこの大腸Ⅱcの解明に真に重要な役割を担ったのが,拡大内視鏡である.

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見逃しのない精度の高い大腸内視鏡検査を行うために,当センターで経験した,3 年以内に検査歴のある経年発見進行大腸癌を見逃し例として25 例を対象に観察撮影法について検討した.見逃し例の検討から,上行結腸の深いひだ間に対しては1 ひだごとに周回しながら観察,屈曲部に対しては腸管を伸展して挿入・抜去を行い観察,多発憩室のある伸展不良の腸管に対してはスコープが抜けないように保持してゆっくり観察することが必要である.

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大腸内視鏡施行時にスコープ先端に透明フードを装着することにより視野の確保や処置が容易となり,ポリープの検出率が向上し,大腸内視鏡の盲腸までの挿入率の向上や挿入時間の短縮にも有用である.一方,エンドカフの装着により柔らかいフラップがスコープの抜去時にひだにかかるため,ひだの口側の観察しづらい部位や屈曲部の口側でもひだを押さえ込んでめくりながら観察したり,S 状結腸などではひだを押し広げて伸ばしながら観察することが可能である.腺腫検出率や腺腫発見数の向上に有用であるが,盲腸までの挿入率や挿入時間の向上はみられない.

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臨床上の重要性が高い平坦・陥凹型病変・鋸歯状病変は,通常の腺腫と比べ,その肉眼的特徴から白色光観察での発見が比較的困難である.今回,文献的考察とpilot 試験の解析を行い,色素散布(インジゴカルミン)がこれらの病変検出を向上させる可能性が示された.しかしながら,すべての患者に対し,色素散布を全大腸に行うことは煩雑であり,現時点では病変検出のための一つの選択肢と考える.

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大腸表面型腫瘍のスクリーニングは,内視鏡機器の進化とともに白色光(whitelight imaging;WLI)からNarrow Band Imaging(NBI)などの画像強調観察へと変わりつつある.当院でのWLI とNBI の腫瘍発見能の比較検討では,NBIがLST-NG の発見に有用であった.また,陥凹型腫瘍のNBI 所見は,陥凹面が白色調,反応性隆起部はbrownish に視認され,これを“O-ring sign”と呼び,NBI による陥凹型腫瘍発見の特徴像と考えられた.なお,盲腸に限局してWLI→NBI→ インジゴカルミン色素(chromoendoscopy;CE)の順に微小腺腫の発見数を前向きに検討したところ,CE 47 病変>NBI 37 病変>WLI 11病変で,最終観察のCE で発見された微小腺腫が最多であり,CE がそのほかに比較しもっとも有用であった.現状の全大腸スクリーニングには,NBI 観察による盲腸からの抜去観察が有用だが,将来に向けては色素観察を超える画像強調観察の開発が期待される.

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Blue Laser Imaging(BLI)はレーザー内視鏡による狭帯域光観察である.BLI には明るい視野をもつBLI-bright モードがあり,遠景観察に適しておりポリープの視認性が向上する.昨今の本邦の多施設共同研究において,BLIbright観察によりpolyp の発見数が向上することが示されている.一方でLinked Color Imaging(LCI)も狭帯域光観察の一種である.LCI はBLI-brightよりもさらに明るく病変の発見に有用である可能性が示唆される.本稿ではBLI-bright,LCI のポリープ発見における有効性について実例を交えて詳説する.

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Full-spectrum endoscopy(FUSE)はスコープ先端の両側面にCCD レンズが搭載された次世代の内視鏡システムであり,大腸内視鏡検査における病変見逃しの改善が大いに期待されている.海外で行われた前向きランダム化比較試験の結果では,FUSE の腫瘍見逃し率(adenoma miss rate;AMR)が従来型前方視野内視鏡と比較し有意に低値であったと報告された.しかし,その後の前向き試験では腫瘍発見率(adenoma detection rate;ADR)では差がないという報告もあり,現在FUSE の病変発見能における有用性に若干の矛盾も生じている.すでに報告のある欧米の結果とまた本邦で施行されている多施設共同無作為化比較試験(J-FUSE STUDY)の概要を中心に解説した.

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大腸腺腫に対する内視鏡的摘除は,大腸癌の発生率およびその死亡率低下に繫がる一方で,病変の存在診断は100%ではない.その理由の一つに,従来の内視鏡観察では観察困難な半月ひだの裏や屈曲部の存在が挙げられる.この問題の解決策として,オリンパス社からは,従来の直方視レンズと側後方の視野が得られるパノラマレンズによる広視野角の画像が一つのモニターに表示される広角内視鏡extra-wide-angle-view colonoscope が開発中である.

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大腸腫瘍性病変において内視鏡検査は存在診断のみならず,色素法を用いた拡大内視鏡観察により,高い精度の質的診断および深達度診断が可能となる.以前より,当センターでは工藤・鶴田分類に基づいたpit pattern に加え,pit pattern亜分類を行うことで,より詳細な観察を行っている.拡大内視鏡診断では既存のpit pattern 分類に当てはめて診断を行うのではなく,観察したpit patternが周囲と比較しどのように異なっているのか認識し,またその違いが生じた原因を想定することで,病理組織像を考え診断する“思考のプロセス”が重要である.

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2014 年に本邦の「大腸NBI 拡大観察所見統一分類(JNET 分類)」が提唱された.本分類は,vessel pattern とsurface pattern を診断指標としたType1,2A,2B,3 の四つのカテゴリー分類で,Type 1 は過形成/SSP,Type2A は腺腫〜低異型度粘膜内癌,Type 2B は高異型度粘膜内癌/SM 軽度浸潤癌,Type 3 はSM 高度浸潤癌の指標である.Type 1,2A,3 は,それぞれの予想組織型に対し信頼性の高い診断指標であるため,Type 1 は経過観察,Type2A は内視鏡的治療,Type 3 は外科的切除の方針と決定できる.しかし,Type2B は高異型度粘膜内癌/SM 軽度浸潤癌に対する特異度が低いため,色素を用いたpit pattern 診断などを追加し,総合的に深達度診断を行うことが推奨される.

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新しい画像強調観察として BL(I Blue Laser Imaging)や LC(I Linked ColarImaging)がある.BLI は表面微細構造および微小血管構築像が高いコントラストで描出され,LCI は粘膜のわずかな色の違いを強調した画像が描出される.大腸腫瘍に対するBLI 拡大内視鏡観察の診断能についてはNBI 拡大観察分類を用いることによる有用性がいくつか報告されている.過去にNBI 併用拡大観察の統一分類であるJNET 分類を用いた報告はなかったが,今回,当院で行った大腸病変に対するBLI とNBI の正診率の比較検討において差は認めなかった.

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近年,細胞のin vivo 観察を可能とする二つの超拡大内視鏡が臨床応用されており,注目を集めている.すなわち,Endocytoscopy(EC;CF-Y0058,オリンパス,東京)とConfocal laser endomicroscopy(CLE;Cellvizio,MaunaKea Technologies,Paris)の二つである.EC はスコープ先端に光学顕微観察用レンズを搭載した軟性鏡であり,腺腔と核と血管を500 倍率で可視化する.CLE はプローブ先端から発光されるレーザーにより,細胞内に吸収された蛍光色素(fl uorescein)を介した励起光を画像化し,腺腔と血流を1,000 倍率で可視化する.EC もCLE も従来の内視鏡を凌駕する病理診断予測精度をもつが,それに加え未来医療を構築するデバイスとしても期待されている.すなわち,EC は人工知能を介した自動診断システムへの応用,CLE は内視鏡分子イメージングへの応用である.

コラム その他のモダリティにおける診断能向上の検討

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カプセル内視鏡は嚥下するだけで消化管を生理的に近い状態で観察していくモダリティであり,簡便で苦痛のないことが最大の利点である.本稿では,大腸カプセル内視鏡(CCE)の現状と将来展望について概説する.

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大腸腫瘍は,早期の段階から限局性に発育し隆起性病変の形態を呈することから,CT コロノグラフィー(CTC)によるスクリーニング対象として重要である.大腸がんスクリーニングにおけるCTC の検査精度は,ACRIN National CTC Tria(l 米国)1)をはじめとして各国から多施設共同試験の結果が報告され,10 mm 以上の病変の検出感度は概ね90%以上で,隆起型病変の精度は内視鏡検査とほぼ同等であることが示された.しかしながら,表面型病変の検出能は十分とは言えず,検出感度は40〜80%で,隆起型病変の検出感度と比較して低い.とくに腫瘍高が2 mm 未満の場合CTC による検出は困難である.

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抗TNF-α抗体療法はクローン病(CD)に対してもっとも有効な内科的治療法である.インフリキシマブ(IFX)は世界で初めて開発されたキメラ型抗TNF-α抗体であり,当初からチオプリン系免疫調節剤の併用によるCD の寛解維持効果向上が示唆されていた.これは,後年IFX 単剤,アザチオプリン単剤,および両者併用の寛解維持療法を比較した前向き臨床試験(SONIC)で証明されている1). 一方, ヒト型抗体アダリムマブ(ADA)を用いた抗TNF-α抗体療法におけるチオプリン製剤併用の意義に関しては,遡及的検討やそれらのメタ解析があるのみで2),3),未だ一定の結論に至っていない.そこで,われわれはADA とチオプリンの併用効果に関する前向き研究を行った.

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潰瘍性大腸炎関連dysplasia は,その形態の多様性や,背景粘膜の炎症により早期発見が困難だが,近年の内視鏡機器や診断技術の進歩により,潰瘍性大腸炎関連high-grade dysplasia(以下HGD と略す)の検出が可能となってきている1).

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大腸表面型腫瘍のスクリーニングは,内視鏡機器の進化とともに白色光(white light imaging;WLI)からNarrow Band Imaging(NBI)などの画像強調観察へと変わりつつある.当院でのWLI とNBI の腫瘍発見能の比較検討では,NBIがLST-NG の発見に有用であった.また,陥凹型腫瘍のNBI 所見は,陥凹面が白色調,反応性隆起部はbrownish に視認され,これを“O-ring sign”と呼び,NBI による陥凹型腫瘍発見の特徴像と考えられた.なお,盲腸に限局してWLI→NBI→ インジゴカルミン色素(chromoendoscopy;CE)の順に微小腺腫の発見数を前向きに検討したところ,CE 47 病変>NBI 37 病変>WLI 11病変で,最終観察のCE で発見された微小腺腫が最多であり,CE がそのほかに比較しもっとも有用であった.現状の全大腸スクリーニングには,NBI 観察による盲腸からの抜去観察が有用だが,将来に向けては色素観察を超える画像強調観察の開発が期待される.

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目次

次号予告

編集後記 平田 一郎

基本情報

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INTESTINE
21巻5号 (2017年9月)
電子版ISSN:2433-250X 印刷版ISSN:1883-2342 日本メディカルセンター

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