臨床雑誌整形外科 72巻12号 (2021年11月)

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は じ め に

 肩関節脱臼は日常診療で遭遇することが非常に多い外傷であるが,ほとんどの症例で合併症なく徒手整復が可能である.しかし,大結節骨折を伴う肩関節脱臼では,まれに整復操作で上腕骨頚部に著明な転位を生じることがある.本研究では,当科で経験した医原性転位を生じた症例をもとに,その危険因子と対策について検討した.

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は じ め に

 母指手根中手(CM)関節症に対する第1中手骨矯正骨切り術は,ロッキングプレートを用いた固定が可能となり,近年再び良好な成績が報告されている1).特にFutamiらの対立外転骨切り術(abduction-opposition wedge osteotomy:AOO)2)は,疼痛を軽減するメカニズムとして,亜脱臼が改善されることで残存した軟骨部に荷重がかかるようになると推測されている.矯正方向は対立外転方向だけでなく,伸展方向(橈側外転)3),外転方向(掌側外転)4)などの報告があり,いずれの術式がもっとも優れているか一定の見解はない.さらにそれぞれの術式において矯正角度の根拠を明らかにする報告は渉猟しえず,根拠に乏しいと考えられる.

 特にAOOでは画一的に外転対立方向に30°の矯正骨切りを行うのみで,亜脱臼の改善や整復位の獲得がどのように得られているかといったメカニズムが十分には解明されていない.またEaton分類stage Ⅲ以上であっても良好な術後成績の獲得が可能であるが1),その機序は不明である.本研究では,母指CM関節症における亜脱臼を術前後3D-CTを用いて評価することで,本術式の適応と限界を検討した.

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は じ め に

 内反型変形性膝関節症(OA)や特発性大腿骨内顆骨壊死(ON)に対する高位脛骨骨切り術(HTO)は内側大腿脛骨(FT)関節にかかる荷重を外側FT関節へ再分配し,内側の負荷を減らすことで症状緩和を図る術式である.しかし,joint line convergence angle(JLCA)が大きな症例では,HTOにより下肢アライメントが矯正されても外側FT関節の整復が得られず,荷重の再分配は達成されないとも報告されている1).本研究の目的は当院で施行した内側開大式高位脛骨骨切り術(OWHTO)の術後成績とJLCAの関連を後ろ向きに調査することである.

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は じ め に

 近年,変形性膝関節症(KOA)に対する手術方法の一つである膝周囲骨切り術(around the knee osteotomy:AKO)が広く行われるようになってきている1).AKOにはさまざまな手術方法が存在するが,特に内側楔状開大式高位脛骨骨切り術(open wedge high tibial osteotomy:OWHTO)は腓骨の骨切りが不要で脛骨側の骨切りのみであること,術中に矯正角度を調整することが可能であること,専用のロッキングプレートを用いることで早期荷重が可能であることなど利点の多い手術方法であり,良好な術後成績が報告されている2~5)

 肥満はKOAの危険因子であることが報告されており6),OWHTO施行例にも肥満患者が多く存在する.OWHTOによる下肢アライメント矯正により膝関節の症状の改善が期待できるが,術後に肥満が解消するわけではなく,また肥満患者に対するOWHTOの術後成績についての報告は少ない.本研究でわれわれは,肥満がOWHTOの術後成績に及ぼす影響を検討したので報告する.

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は じ め に

 外来診療で変形性膝関節症(膝OA)患者に「靴の外側がすり減るのはO脚のせいですか?」という質問を受けたことが筆者は数度ある.しかし,内反型膝OA患者に外側楔状足底挿板を採型する際に患者の靴のヒール部分を観察すると,外側のみならず内側がすり減っている場合も多い.

 健常者の歩行では膝屈曲30°から最終伸展にかけて下腿が大腿に対して外旋するスクリューホーム運動が起こるため靴底は外側に向かって傾斜し,ヒールカウンターの中心よりも外側の靴底がもっとも摩耗する1,2).健常な若年新兵の靴を観察した研究ではヒール外側部分のみの摩耗がもっとも多く認められた3).ヒール外側部分の摩耗が大きいことで膝関節のアライメント異常を短絡的に疑うべきではないとの指摘もある4).むしろ,靴底ヒール部分内側の摩耗こそが病気の徴候である.特に,膝OA患者ではスクリューホーム運動が破綻することが多いため靴底の摩耗は外側に偏った進行ではなく,外側の摩耗と同時に内側も摩耗する2)

 本研究では,靴底の内側と外側の摩耗の先端を結んだ線と爪先の先端と踵の中央を結んだ線がなす外側の角度である底面摩耗角度2)を膝OA患者と対照者で比較し,次いで膝OA患者の患者背景と底面摩耗角との関連性を評価した.

誌説

新専門医制度について思う 岡田 誠司
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 医師育成のシステムが迷走している.

 私の医学部卒業のころは卒業と同時に進む診療科を決定したうえで,多くの者は出身大学の医局に入局し,研修を積みながら一人前の医師へと成長するというのが一般的であった.ところが,2004年より始まった初期研修制度により母校以外での研修施設を選択することが体制的にも心理的にも容易になり,大学病院以外の,特に都市部での研修病院に高い人気が集まるようになった.さらに,若者が入局前に診療科間での忙しさや報酬などの違いを目の当たりにすることで「どの科が生活の質(QOL)が高いか?」という視点をもつことにつながった.女性医師の増加も大きく関係しているであろうが,結果的に外科や脳外科など多忙な診療科を志望する者は減少し,都市部の皮膚科や精神科などの緊急の呼び出しが少なく定時に帰りやすい科に入局する者が増加した.これが現在の若手医師の「地域偏在」および「診療科の偏在」につながっていると考えられる.県によっては医学部入試に地域枠というのを設けたが,法的な拘束力もなく実効性はほとんどなかった.個人的には20年近く経過したこの新臨床研修制度のどこが,元々の狙いであった医師としての人格育成に役立ったのかはなはだ疑問である.

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 生物学的製剤やアンカードラッグであるメトトレキサート(MTX)の使用割合の増加により,現在では多くの関節リウマチ(RA)患者で寛解導入が可能となった.経時的な経過観察においてMTXや生物学的製剤の使用割合が増加し,それに伴い寛解導入の割合が増加し,中等度や高疾患活動性のRA患者の割合が低下していることが報告されている1).近年beyond remissionが考慮され,生物学的製剤・抗リウマチ薬の減量・中止が試みられている.しかしながら,治療継続をしても寛解継続率は100%を維持できるわけではなく,Reduction of Therapy in Patients with Rheumatoid Arthritis in Ongoing Remission(RETRO)study2)やA Prospective, Randomized Etanercept Study to Evaluate Reduced dose Etanercept+MTXv. full dose Etanercept+MTXv. MTX alone for efficacy and radiographic endpoints in a moderate RA population(PRESERVE)study3)の報告でも20%弱の患者は症状再燃をきたしている.生物学的製剤が中止にいたる理由として一次無効,partial response,二次無効,合併症に伴う中止があるが,合併症に比べて無効例は切り替え治療の効果が少ないことや切り替え回数が多くなるほど,その治療効果・継続率が低下することが知られている4,5)

 生物学的製剤多剤無効であったRA患者でMTX併用下にJanus kinase(JAK)阻害薬であるトファシチニブクエン酸塩(TOF)に切り替えて治療効果が得られた1例について報告する.

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 強直性脊椎炎(AS)は関節リウマチと並ぶ代表的かつ有名な膠原病であり,日本整形外科学会から患者向けパンフレットも作成されている1).しかしながら,わが国での知名度と裏腹に,診断は必ずしも容易ではなく診断遅延がしばしば生じている2,3).筆者は診断が遅延していたASを経験した.日常的な症例であるが,その診断遅延の原因が示唆に富んでいたため報告する.

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 化膿性仙腸関節炎は若年者や妊婦に多く報告されるまれな疾患である.多彩な症状を呈するため腰椎疾患や骨盤疾患との鑑別を要し,早期診断に難渋することがある.治療は安静と抗菌薬投与による保存的治療が原則であるが,膿瘍を形成し抗菌薬投与による反応が乏しいときは外科的ドレナージが適応となる1~4).仙腸関節骨破壊に対して手術的治療を行う場合には掻爬固定術が必要となる5).われわれは後方からの腸骨スクリューロッド固定を併用した前方掻爬固定術を行った化膿性仙腸関節炎の1例を経験したので報告する.

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 滑膜骨軟骨腫症(synovial osteochondromatosis)は,関節内に多数の骨・軟骨性の遊離体を生じる原因不明の良性腫瘍性疾患である.比較的頻度が低いとされる股関節に発生した滑膜骨軟骨腫症に対して,前側方(anterolateral-supine:ALS)アプローチで腫瘍摘出術を施行し,術後2週間で原職復帰が可能となった症例を報告する.

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 未分化多形肉腫(undifferentiated pleomorphic sarcoma:UPS)は,2002年に世界保健機関(WHO)によって悪性線維性組織球腫(malignant fibrous histiocytoma:MFH)に再分類された1).UPSは壮年期でもっとも一般的な軟部肉腫で多くは軟部組織と四肢長管骨に発生するが,脊椎発生はきわめてまれである.われわれはTh11原発UPSの1例を経験したので報告する.

私論

職 人 芸 建部 将広
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 この1年間,医療を取り巻く環境ではコロナ禍のもと,医療体制に関して批判を含めてさまざまな意見がみられる.診療に関して,本邦には大規模病院がなく,人材を有効活用できていないといった意見も散見されるところである.この点と少し関連してくることでもあるが,十数年前から外科医の減少が話題となっている.幸い,各種統計をみる限り整形外科医数に減少はみられないが,今後はどのようになるかわからない.

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 1900年代から世の中に抗菌加工をうたった日用品や家電製品が出回るようになった.日々の手術で使用する各種金属製インプラントが抗菌加工であったらと思ったことはないだろうか.われわれは,整形外科におけるインプラント周囲感染症(periprosthetic joint infection:PJI)の撲滅を目指し,ヨード担持抗菌インプラントの実用化に向けた研究開発を行ってきた.ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone:PVP)とヨウ素(iodine)の複合体であるポビドンヨードは,消毒薬として1800年代から使用され,一般細菌だけでなくウイルスや真菌などへの幅広い抗微生物スペクトルを有しており,耐性菌が出現しづらい,甲状腺ホルモンの構成成分であり生体のアレルギー反応が少ないといった特長があり,われわれはインプラントに抗菌活性を付与するための物質として着目した.金属インプラント表面への抗菌活性の付与には,陽極酸化と電着の技術を応用し,薄い酸化被膜に形成された微細な孔の周囲にポビドンヨードを担持(含浸)させている1)(図1).

カラーフォーラム

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≪は じ め に≫

 人工股関節全置換術(THA)おいて術後脱臼などの合併症を予防するために手術進入法の選択は重要である.飯田ら1)は,THAにおけるDall進入法について詳細に報告し,筆者も本進入法を用いたTHAを施行してきた.

 手術後の関節の安定性も非常に良好であるが,加藤らの報告2)のように本進入法では大転子を切離して縫着するため,切離骨片の転位が生じうる.加藤らは,変形性股関節症に対するTHA施行例の16%に切離骨片の転位が手術後2週以内に発生したとしている.

 筆者も頻度は不明であるが切離骨片の転位手術例を経験し,多くの症例では線維性癒合するため同部の疼痛は訴えなかったが,少数例で疼痛や違和感が遺残した.大転子切離骨片の転位はほとんど大転子の上方かつ前方への転位であるため,筆者は大転子切離に対して切離骨片をパズルをはめるように整復縫着するためのL型骨のみを考案したため紹介する.

今日の問題点

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は じ め に

 近年わが国での平均寿命は延伸しており,2017年の平均寿命は男性81.09歳,女性87.26歳となり,2018年の高齢化率は28.1%と超高齢社会となっている1)

 脆弱性骨折は立位姿勢からの転倒などの軽微な外力によって発生する非外傷性骨折である.骨折部位は椎体,大腿骨近位部以外に肋骨,骨盤,上腕骨近位部,橈骨遠位端,下腿骨などが該当する2).Soubrierら3)は,脆弱性骨折の部位別頻度は,骨盤輪30.7%,仙骨29.6%であり,骨盤部が脆弱性骨折の好発部位であると報告している.高齢化率の上昇に伴い骨粗鬆症患者が増加しており,骨盤脆弱性骨折の報告が散見される4~8)

 われわれは明らかな転倒外傷がなく生じた恥骨脆弱性骨折の5例を経験したため,骨粗鬆症に着目して検討した.

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は じ め に

 仙腸関節は上半身と下半身のつなぎ目に位置し,わずかな可動域を有することで,日常生活でかかる衝撃を吸収する装置として機能していると考えられている1,2).繰り返しや不意の動作で仙腸関節に微小な不適合が生じる[仙腸関節障害(sacroiliac joint disorder:SIJD)]と衝撃吸収装置としての機能をはたせず,異常を知らせるアラームとして上後腸骨棘(posterior superior iliac spine:PSIS)を中心とした腰殿部痛が生じ,時に下肢症状を伴う3).仙腸関節ブロックでPSISを中心とした疼痛が70%以上軽快することで確定診断される4)

 多くの症例は仙腸関節ブロックや徒手療法5,6)で痛みは軽快し回復する.仙腸関節部への剪断力を減じ,SIJDの再発を防ぐ手立てとして,脊柱と股関節の可動域訓練を主体とした運動療法や骨盤ベルトが有効である7).また,腰痛に対する運動療法として,腹部体幹筋,特に腹横筋の筋収縮練習(ドローイン)がある.腹横筋は仙腸関節の剛性を高める重要な筋とされ8),われわれも骨盤ベルトの代替とすべく,腹横筋を中心とした腹部体幹筋力トレーニングを患者に指導してきた.

 しかしながら,ドローインは患者の理解と習得がむずかしく,実施および継続が困難であることや,効果判定の基準がなかったことから医療者と患者側,双方にとって実施する意義の確証が得られていなかった.加藤らが開発した金沢大学式の体幹トレーニング装置(RECORE:日本シグマックス社,東京)[図1]9)は,腹部体幹筋力の数値や経時的変化をモニターで確認できるため,視覚的なフィードバックにより運動方法の理解と習得が得やすく,また腹部体幹筋力の定量化が可能である.本装置はすでに腰痛疾患に対しての効果が確認されている9)が,SIJDへの有効性は不明であった.

 本研究ではSIJDに対し,RECOREを用いて腹部体幹筋力の測定とトレーニングを行い,臨床での効果を調査した.

Vocabulary

凍結乾燥リン酸化プルラン 村岡 聡介
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 プルランとは,Aureobasidium pullulansとよばれる菌が細胞外に産出する粘性多糖類である.1938年にR. Bauerにより見出され,日本でも生産,構造の解析などの研究が行われてきた.形態は白色,無味無臭,非結晶性粉末である.プルランは溶解性があり,液体に溶解すると粘稠な液体となる.また,接着性,造膜性があり,プルラン水溶液を乾燥するとフィルムを作ることもできる.食品のトロ味や菓子への接着加工などの食品への利用や,保湿性,泡立ちの安定性など化粧品にも使用されている1)

連載 革新的技術がもたらす小児運動器難病の新展開――基礎から臨床へ

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は じ め に

 骨腫瘍の発生は骨幹端部が圧倒的に多く,小児骨腫瘍の治療には骨端線,成長障害の問題が常にかかわる.ひとたび骨端線障害を起こすと,下肢では脚長差やアライメントの問題が深刻になり,仮骨延長術などの脚長補正,変形矯正が追加で必要となることもある.腫瘍用人工関節の場合は,成長に伴い延長操作のできるものもあるが,頻回操作による患者負担や延長距離の制限などの問題がある.腫瘍が明らかに骨端線を侵食している症例で骨端線を再生させることは現在の医学ではむずかしいが,腫瘍がぎりぎり骨端線の手前の症例では,さまざまな方法を駆使して骨端線を温存する方向で治療を行っている.本稿では,良性腫瘍,悪性腫瘍の骨端線温存について述べる.

連載 X線診断Q&A

X線診断Q&A 淺沼 邦洋
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Question

 症 例.14歳,男.

 主 訴:左膝痛.

 家族歴:特記すべきことはない.

 現病歴:X年2月17日,ダンスをした後から疼痛出現,歩行困難となり,近医の整形外科を受診し経過観察となった.2日後,症状が改善しないため他院整形外科を受診し,当科に紹介となった.

 身体所見:左大腿遠位部に腫脹,疼痛,圧痛あり.発赤なし,運動時痛あり.

 X線所見:当院初診時左大腿骨X線像を示す(図1).

 血液検査所見:ALP 966IU/l(14歳男性基準値:350~1,350),CRP 1.78mg/dl(0~0.30),Hb 12.9g/dl(13.5~16.8),Ht 37.0%(39.7~50.4),その他一般血球検査,一般生化学検査に異常値なし.

連載 卒後研修講座

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は じ め に

 スポーツ活動は,時としてさまざまな部位に多様な外傷・障害をきたす.これらの多くは軟部組織損傷であり,従来の単純X線検査に頼った診断方法では,その損傷部位を的確に診断することは困難であった.軟部組織損傷を診断することができる画像診断ツールには,magnetic resonance imaging(MRI)と超音波検査がある.MRIでその詳細な診断を行うことは可能であるが,コストや検査に要する時間を考慮すると,すべての軟部組織損傷に対してMRIを行うことは非現実的である.一方,超音波検査は,簡便かつ非侵襲的に,リアルタイムに動きのなかで観察・評価することができる.さらに,ポータビリティにも優れているため,病院外に持ち出してスポーツ現場で用いることも可能である.また,超音波は画像診断ツールにとどまらず,注射や手術などインターベンションのガイドとしても有用であり,スポーツ傷害に対する診療において欠かせないツールとなってきている.

 本項では,まず整形外科領域における超音波診療の優位性について解説し,スポーツ現場における整形外科超音波診療の実際について紹介する.

連載 専門医試験をめざす症例問題トレーニング

骨・軟部腫瘍 山家 健作
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 症 例.64歳,男.

 既往歴:3年前に当院で右肺腺癌に対して右上葉切除を行った.1年前より本人の意向により画像検査は行われていなかった.

 現病歴:約3ヵ月前から誘因なく右大腿部痛を自覚した.当初は歩行時痛であったが徐々に安静時痛を伴うようになった.様子をみていたが軽快しないため,前医を経て当科を受診した.

 初診時所見:歩行は独歩可能であったが跛行があった.右大腿部中央前面に圧痛があった.熱感,発赤はなかった.右股関節,膝関節に腫脹,変形,可動域制限はなかった.神経学的異常所見はなかった.

 画像所見:右大腿単純X線像および単純CT(MPR像)を示す(図1,2).

 血液生化学検査:腫瘍マーカー CEA 153ng/ml(基準値<5.0ng/ml),サイトケラチン19フラグメント18.5ng/ml(基準値<3.5ng/ml).これらはここ1年で漸増していた.

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 症 例.50歳,女.

 主 訴:左手関節痛.

 既往歴:特記すべきことはない.

 現病歴:2年半前より左手関節痛があった.2年前より徐々に痛みが増強した.近医を受診したが原因がわからずに放置となり,最近は可動域制限を認めるようになったため受診した.

 初診時所見:疼痛のため手がつけず,手関節背屈45°,掌屈45°と可動域制限をきたしていた.前腕回内外の可動域制限は認めない.月状骨に一致して圧痛を認める.単純X線手関節正面像および側面像を示す(図1).

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【要 旨】

 目 的:小児のos subfibulareを伴う陳旧性足関節外側靱帯損傷(CLAI)に対する手術の有用性を明らかにすること.

 方 法:2013~2017年に,当科で小児のos subfibulareを伴うCLAI患者に対しossicle切除と靱帯修復を行い,術後早期に全荷重と自動可動域訓練を許可した症例を後ろ向きに調査した.臨床成績は,術前と最終診察時のAmerican Orthopedic Foot and Ankle Society Ankle-Hindfoot Scale(AOFAS)スコアおよびKarlsson-Peterson ankle functionスコアを比較し評価した.

 結 果:31例31足(男15例,女16例)が対象となった.術後平均観察期間は40.7±12.7ヵ月,平均AOFASスコアは術前66.3±2.5から最終96.5±4.9,平均Karlsson-Peterson ankle functionスコアは術前51.7±4.0から最終95.3±6.7と大幅に改善した(p<0.001).手術から体育復帰までの平均期間は11.4±1.6週間であった.

 結 論:小児のos subfibulareを伴うCLAIに対して本術式は有用であった.

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【要 旨】

 目 的:野球選手にとって肩関節の可動域(ROM)制限は肩・肘障害のリスクが高くなる要因の一つとして知られている.本研究では野球選手の肩関節後方tightnessの有無と肩関節後方筋群の硬さをshare wave elastography(SWE)を用いて評価し,その関係性を検討した.

 対象および方法:合計21名の大学野球選手がボランティアとして参加した.ゴニオメーターを用いて肩甲上腕関節の外転・水平屈曲のpassive ROMを測定し,両側の可動域をもとにSTIFF+群とSTIFF−群の2群にわけた.肩後面と下面の筋群の筋厚と弾性を超音波を用いて評価した.

 結 果:投球側の肩関節外転ROMは,STIFF+群とSTIFF−群でそれぞれ114.5°±5.3°,131.3°±5.7°と,2群間で有意差があった(p=0.023).投球側の水平屈曲ROMに関しても,STIFF+群とSTIFF−群でそれぞれ96.6°±4.9°と110.9°±4.8°であり,二つの群間で有意差があった(p=0.014).棘下筋と僧帽筋下部の弾性は,STIFF+群がSTIFF−群に比べて有意に高かった(p=0.018,0.033).

 考 察:本研究では肩関節外転・水平屈曲での制限がある群ではない群と比較して棘下筋と僧帽筋下部の弾性が有意に高く,肩関節後方tightnessの治療戦略においてはこの二つの筋肉が重要である可能性が示唆された.

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 超高齢社会が大きな社会的テーマとなっている現在の日本では,とりわけ高齢世代で人工関節手術の適応となる関節疾患患者が増加している.関節運動機能を回復するうえで人工関節手術は優れた機能再建方法だが,その合併症は多岐にわたり,対応に難渋することも少なくない.本書は,そのような現状に向き合った秀逸な1冊である.総論と各論を設けて,人工関節手術の合併症を整理しながらピンポイントにテーマを絞り,合併症の疫学や病態,その対応方法をていねいに網羅した点が読者にとってありがたい.

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 腰椎椎間板ヘルニアは,日常診療のなかでも頻度の高い,いわゆるcommon diseaseである.多くの整形外科医師にとって,その診断学や治療法は確立されていると思われるが,それらが単なる経験則でなく,科学的根拠に基づくものかどうかを確認する作業は必要である.また,近年の医学の著しい進歩に伴い,疾患に対する診断や治療は常に変化しており,腰椎椎間板ヘルニアにおいてもその例外ではなく,専門知識については常にup to dateしなければならない.そのなかで,本書が10年ぶりに改訂された.初版は2005年に刊行されており,今回で第3版となる.本改訂作業にあたり膨大な労力と時間を費やされた,波呂浩孝委員長をはじめとする策定委員会の先生方および関係者の方々に,心より敬意を表したい.

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 2020年度の日本整形外科学会専門医試験は,新型コロナウイルス感染拡大に伴い,各都道府県に設けられた会場でcomputer based testing(CBT)方式で行われた.ビデオ問題と症例問題による従来の口頭試験がなくなり,筆答試験のみ120分間で計100問と時間を短縮して行われたわけであるが,これにより従来の試験に比べ筆答試験の一問一問の重みはより大きくなったといえる.私は2021年度の専門医試験委員会委員長を務めているが,専門医試験は,受験者が専門医レベルに達しているか判定するのが目的であるのはもちろんのこと,試験対策として過去問や整形外科卒後研修Q&Aに掲載された問題に取り組むことにより,誤った知識や理解を整理する機会を必然的に生み出すことも重要ではないかと考えている.本書は,過去の専門医試験で出題された選りすぐりの良問を収載している.良問を測る基準は,識別指数や正解率などから導き出されるものであるが,それらの条件を満たし,修正や削除を繰り返された計1,188題が最終的に採用されている.別冊の各分野の専門医による解説編も充実しており,専門医試験対策だけでなく,専門医取得後も自らの知識を総点検するために活用できる内容となっている.実際に自分で問題を解いてみて,やはり知識というのは成書を読み流すだけでは身につかず,疑問を解決する過程をふんでこそ記憶に定着することを改めて実感する.

学会を聞く

第51回日本人工関節学会 川原 慎也
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1.は じ め に

 第51回日本人工関節学会が2021年7月7日(水)~8日(木)の日程で,日産厚生会玉川病院松原正明会長のもと,パシフィコ横浜で開催された.

 本学会は人工関節に関する臨床的ならびに基礎的研究の進歩,発展を図ることを目的に1971年に発足し,会員数3,000名余にいたる大規模な学会である.例年2~3月にかけて開催されている学会で,毎年参加している筆者にとっては冬の風物詩であり,楽しみにしている学会である.しかしながら新型コロナウイルス感染症流行に伴い,当初予定していた2021年3月19日(金)~20日(土)の学会開催は延期され,異例の夏場の開催となった.学会事務局は運営に大変なご苦労があったことと拝察する.

 国内での新型コロナウイルス感染者が増減を繰り返すなか,延期すること約3ヵ月,現地とオンラインでのハイブリッド開催という形式での学会開催となった.また,一部のプログラムについては7月9日(金)~31日(土)の期間でオンデマンド配信された.筆者はオンラインで参加した.以下に本学会のプログラムを概説する.

喫茶ロビー

昼休みの楽しみかた 石黒 直樹
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 大学を定年退職してから次の勤め先に勤務して1年が経ちました.勤め先は森の中にある障害児・者専門の病院,福祉施設,研究所をもつ施設です.整形外科学と障害児・者医療との関係は深く,当施設も設立後50有余年を経過し,その間多くの整形外科医が発展に尽力されました.障害児・者福祉の現場からは学ぶことが多くて,今でも手習い状態が続いています.

基本情報

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臨床雑誌整形外科
72巻12号 (2021年11月)
電子版ISSN:2432-9444 印刷版ISSN:0030-5901 南江堂

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