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は じ め に
仙腸関節は上半身と下半身のつなぎ目に位置し,わずかな可動域を有することで,日常生活でかかる衝撃を吸収する装置として機能していると考えられている1,2).繰り返しや不意の動作で仙腸関節に微小な不適合が生じる[仙腸関節障害(sacroiliac joint disorder:SIJD)]と衝撃吸収装置としての機能をはたせず,異常を知らせるアラームとして上後腸骨棘(posterior superior iliac spine:PSIS)を中心とした腰殿部痛が生じ,時に下肢症状を伴う3).仙腸関節ブロックでPSISを中心とした疼痛が70%以上軽快することで確定診断される4).
多くの症例は仙腸関節ブロックや徒手療法5,6)で痛みは軽快し回復する.仙腸関節部への剪断力を減じ,SIJDの再発を防ぐ手立てとして,脊柱と股関節の可動域訓練を主体とした運動療法や骨盤ベルトが有効である7).また,腰痛に対する運動療法として,腹部体幹筋,特に腹横筋の筋収縮練習(ドローイン)がある.腹横筋は仙腸関節の剛性を高める重要な筋とされ8),われわれも骨盤ベルトの代替とすべく,腹横筋を中心とした腹部体幹筋力トレーニングを患者に指導してきた.
しかしながら,ドローインは患者の理解と習得がむずかしく,実施および継続が困難であることや,効果判定の基準がなかったことから医療者と患者側,双方にとって実施する意義の確証が得られていなかった.加藤らが開発した金沢大学式の体幹トレーニング装置(RECORE:日本シグマックス社,東京)[図1]9)は,腹部体幹筋力の数値や経時的変化をモニターで確認できるため,視覚的なフィードバックにより運動方法の理解と習得が得やすく,また腹部体幹筋力の定量化が可能である.本装置はすでに腰痛疾患に対しての効果が確認されている9)が,SIJDへの有効性は不明であった.
本研究ではSIJDに対し,RECOREを用いて腹部体幹筋力の測定とトレーニングを行い,臨床での効果を調査した.
© Nankodo Co., Ltd., 2021