臨床雑誌整形外科 69巻8号 (2018年7月)

  • 文献概要を表示

は じ め に

 加齢とともに骨量(骨密度)は減少し,その70%は皮質骨で生じると報告されている1).皮質骨内のリモデリング亢進は多孔性の増加を招き,それにより骨強度は低下し1),最終的に骨皮質の劣化は大腿骨近位部骨折発生に大きく影響する2)

 大腿骨近位部骨折はひとたび受傷すると急激な身体機能の低下をきたし,また生命予後も不良であるため3~6),近年では心筋梗塞や脳梗塞のような「発作」に例えられ,「hip attack(骨卒中)」とも言われており7),筆者らは骨粗鬆症(性骨折)の最悪の転帰と考えている8)

 大腿骨近位部骨折の発生状況に関して,欧米では2000年ごろを境に発生率が減少に転じている地域が散見されるにもかかわらず,わが国をはじめとしたアジアでは依然増加傾向であると報告されている8,9).Orimoら10)はわが国の大腿骨近位部骨折数は2012年現在,年間約18万例生じており,5年で約20%ずつ骨折数は増加していると報告している.そのため,大腿骨近位部骨折の発生を減少させることはわれわれ整形外科医にとっては喫緊の課題である.

 「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」において,大腿骨近位部骨折抑制効果でグレードA(骨折を抑制するというエビデンスがある)の評価を得たものはビスホスホネート(BPs)の一部とデノスマブ(Dmab)のみであった.

 本研究の目的は,初回導入されたBPs群とDmab群において投与1年後の大腿骨近位部における部位別(頚部,大転子部,全近位部)骨密度変化を後方視的に比較することである.

  • 文献概要を表示

は じ め に

 広範囲腱板断裂に対して用いられる筋腱移行術として,Gerberらが1988年に報告した1)広背筋移行術が現在広く用いられている.しかし,三角筋を肩峰から切離するtwo incision techniqueを用いた術式では三角筋機能不全が成績不良の一因として考えられている.今回われわれは2006年Habermeyerらにより報告された2)三角筋の切離を伴わない広背筋移行術(Habermeyer法)を5例施行し,良好な成績を収めたため報告する.

  • 文献概要を表示

は じ め に

 近年,手術機器,インプラントの発達により脊椎手術は進歩を続けている.extreme lateral interbody fusion(XLIF)やoblique lateral interbody fusion(OLIF)などの腰椎側方固定術(lateral lumbar interbody fusion:LLIF)による低侵襲手術が普及し,椎弓切除を行わず後方支柱を温存した間接除圧が着目されている.間接除圧は大きなケージ挿入による椎体間の開大とligamentotaxisにより除圧が得られるとされるが,その効果は症例によってさまざまである.LLIFの術後成績はおおむね良好であるが1),なかには間接除圧の効果が十分に得られず,直接除圧を行う再手術の報告もある2).間接除圧に影響する因子を調査した報告は散見されるが,いまだ術前に十分に予想できるほどの結論が得られていないのが現状である3).本研究ではLLIFの間接除圧に関与しうる画像的因子を検討し,その影響度を調査した.

  • 文献概要を表示

は じ め に

 腰椎分離症は青年期では腰痛が主な症状であるが,加齢とともに下肢神経症状を呈する例が存在する.腰椎分離すべり症に対する観血的治療として,腰痛が主訴の場合は脊椎インストゥルメンテーションを使用した後方除圧固定術が施行されることも増えてきたが,われわれは下肢神経症状のある症例に対して主に非固定分離部除圧術を施行してきた.今回,腰椎分離すべり症に対する顕微鏡視下分離部除圧術の術後短期成績を検討した.

  • 文献概要を表示

は じ め に

 高齢化のため近年大腿骨頚部骨折の患者は増加し,人工骨頭挿入術の手術件数も増加傾向である.人工骨頭挿入術は後方アプローチで行われることが多く,合併症として術後脱臼がある.人工骨頭脱臼の頻度は2~7%と報告されている1).治療法としては,整復操作のみから外転装具や床上安静などの保存的治療,人工骨頭再置換,人工股関節への再置換などがあげられる2).これらの治療法を患者の全身状態や日常生活動作(ADL)などを考慮して選択する必要がある.われわれは,人工骨頭挿入術後3ヵ月以内に人工骨頭の脱臼をきたした6例を経験した.本稿では術後早期脱臼に対する治療法を検討した.

誌説

改ざんと科学研究 西村 慶太
  • 文献概要を表示

 巷では改ざんが話題になっている.「言った,言わない」,「そんなこと記憶にない」,「改ざんではなく修正だ」などは遠い政治の話で科学研究の世界とは無縁と思いきや,問題が明らかになるにつれ,我々の周囲で起こりうる身近な問題ではないかと思えてならなくなってきた.もっとも本誌が出るころには問題は収束し話題がタイムリーでないことを願うが,せっかくなのでこれを機に科学の世界における改ざん問題について考えてみたい.

 科学研究の不正行為には ① データの捏造・改ざん,② 剽窃(ひょうせつ)が主にあげられる.「捏造」とは存在しないデータを存在するかのように示すことであり,「改ざん」は得られたデータを都合よく変えることである.一方「剽窃」とは盗用のことで,他人のデータやアイディアを適切に引用せずにあたかも自分のもののようにして偽って示すことである.

  • 文献概要を表示

 肩関節脱臼骨折は,日常診療で比較的よく遭遇する外傷であるが,腋窩動脈損傷を合併することはまれである.もし腋窩動脈損傷を合併した場合は,早期に発見し処置を加えないと上肢が広範な壊死に陥るとされている1).今回,肩関節脱臼骨折に腋窩動脈損傷を合併し,重症心不全のため全身麻酔下による観血的手術が不可能であったため,経皮的カテーテルによってステント留置術を行い血流の改善を認めた症例を経験したので報告する.

  • 文献概要を表示

 長母指伸筋(EPL)腱皮下断裂の原因として橈骨遠位端骨折などの外傷,関節リウマチなどの疾患が一般的に知られている.今回,橈骨遠位骨巨細胞腫に対する手術後に発生したEPL腱皮下断裂のまれな1例を経験したので報告する.

  • 文献概要を表示

 Ewing肉腫に類似の組織像を示すがEwing sarcoma breakpoint region 1(EWSR1)遺伝子の再構成が検出されない未分化小円形細胞肉腫の中に,capicua transcriptional repressor(CIC)遺伝子再構成を有する肉腫が存在することがわかってきた1~3).われわれは,CIC遺伝子再構成肉腫と診断した1例を経験したので報告する.

  • 文献概要を表示

 平成24年度内閣府高齢社会白書によると,「高齢者の心身の健康や体力の保持増進を支援することは,国の重要な責務であるとともに,高齢者が生き甲斐を持って健康で活力ある生活を営むためには,定期的,継続的な運動・スポーツが不可欠である」としている1).われわれは活動性の高いスポーツ愛好家の高齢者に生じたアキレス腱再々断裂の1例を経験したので報告する.

  • 文献概要を表示

 当院で経験したmicrogeodic diseaseの1例を報告する.

  • 文献概要を表示

 子宮内膜症は子宮内膜上皮細胞や間質細胞が子宮腔外にて増殖する疾患である.病変は典型的には骨盤内に生じるが,消化管,胸腔など骨盤腔外にも生じうる.体表に発生した場合,軟部腫瘍の疑いで整形外科へ受診することも少なくない.今回われわれは腹部手術歴のない腹壁子宮内膜症というまれな症例を経験したため,若干の文献的考察を加え報告する.

私論

Think globally, act locally 宮腰 尚久
  • 文献概要を表示

 “Think globally, act locally” は,私の好きな言葉のひとつであるが,さまざまな事象に当てはめて使用することができる.「地球規模で考え,地域で行動せよ」という意味から,本来は,環境問題を語る時などに使われることが多いようである.地球規模の環境問題であっても,それぞれの地域での問題はさまざまであるため,ある地域で成功した対策が他の地域で成功するとは限らない.結局は,共通の目標のために,地域特性を生かした対策を講じることが必要である.

 この考え方は,医療にも通じるものがある.例えば,世界保健機関(WHO)をはじめとして,世界規模の健康寿命の延伸を目標に掲げているが,その対策には,当然,地域性がある.先進国では生活習慣病のコントロールがキャンペーンとして重要でも,アフリカ諸国などでは,まずは感染症の撲滅が “act locally” として優先される.

  • 文献概要を表示

 オートファジーとはリソソームにおいて細胞内成分を分解する機構の総称である.その中の一つ,マクロオートファジー(オートファジー)は,細胞質成分を取り囲んだオートファゴソームとリソソームが融合し,その内容物を消化する仕組みである.

 当初,オートファジーは飢餓時に誘導される非選択的な細胞内蛋白質分解機構と考えられていた.しかし近年では,平常時でも恒常的に働くこと,選択的に細胞内成分を認識し,分解する機構も存在することが明らかとなった.2016年にノーベル賞を受賞した大隅良典博士らは,1990年代に出芽酵母においてオートファジー関連遺伝子を次々と同定した1).それらの多くがほ乳類においても保存されていることが明らかとなり,ノックアウトマウスなどのモデル生物を用いた逆遺伝学的解析によりその生理機能の解明がすすんだ.現在までに,オートファジーが細胞内浄化,細胞増殖,シグナル伝達,転写制御,免疫応答・抗原提示,ストレス応答といった多彩な生理機能に関与し,その異常が神経変性疾患,がん,感染症など,さまざまな疾患の病態に関与していることも明らかとなってきた.

  • 文献概要を表示

は じ め に

 整形外科医の立場からは,周術期には抗血栓薬の一時中止が望ましいが,脳梗塞や心筋梗塞など血栓性疾患発症の可能性を考慮すると,手術侵襲の大きさや合併症の程度に応じて個別の対応が必要である1).本研究の目的は,整形外科周術期の抗血栓薬管理の実態を明らかにすることである.

  • 文献概要を表示

は じ め に

 成長期腰痛の原因の一つである腰椎分離症は,急性期である疲労骨折の時期であればスポーツの中断を中心とした保存療法によって癒合が望める.しかし,成長期の子どもたちにとって長期にスポーツ中断を指示される精神的負担は大きいものである.そこで,治療開始の際に治療期間の予測を提示することは有意義であると思われる.癒合までの期間は,骨折進行度によって3~6ヵ月必要と報告されている1)が,実際の臨床現場ではさらに長期間必要な症例もある.われわれは,癒合期間に影響を与える因子を検討し,骨癒合期間を予測することを試みた.

Vocabulary

ADAM12 堀田 昌宏 , 西田 圭一郎
  • 文献概要を表示

 ADAM(a disintegrin and metalloproteinase)は,マトリックスメタロプロテアーゼ近縁遺伝子ファミリー分子で,多機能を持ち,40種類の遺伝子が知られているが,ヒトでは21種類のみが機能していると考えられている.膜型ADAMと分泌型ADAMTS(a disintegrin and metalloproteinase with thrombospondin motifs)に分けられ,膜蛋白のシェディング,細胞外マトリックス分子の分解などを通じて,組織発生,炎症,腫瘍形成など多くの生命現象に関与している.膜型ADAMはプロドメイン,メタロプロテアーゼドメインに加えて,ディスインテグリンドメイン,システインリッチドメイン,細胞膜貫通型ドメイン,細胞内ドメインからなる.メタロプロテアーゼドメインにHEXXHXXGXXH配列を有し,3個のヒスチジン残基にZn2+が配位し,メチオニン残基を含む “Met-turn” 構造が補強することで基質分解活性をもつことができる.このうち,ADAM12は筋管形成に関与する膜貫通型タンパクとして,1995年に本邦よりはじめて報告された1)

 ADAM12はプロテアーゼ活性に加えて,細胞接着や細胞シグナル伝達に働き,頭部と体部,尾部の三つに分けられる.頭部はプロドメインとメタロプロテアーゼドメインから成り,epidermal growth factor(EGF)やinsulin-like growth factor(IGF)レセプターのシグナル伝達に関与している.体部はディスインテグリンドメインとシステインリッチドメイン,EGF様ドメインから成り,インテグリンやシンデカンとの相互作用を介して細胞外マトリックスおよび他の細胞との接触に関与する.尾部は細胞膜貫通型ドメインと細胞内ドメインから成り,細胞内シグナル伝達分子との相互作用に関与している.

連載 X線診断Q&A

X線診断Q&A 川﨑 展
  • 文献概要を表示

Question

 症 例.5歳,男.

 主 訴:左下肢痛,歩行障害.

 家族歴・既往歴:右先天性内反足により手術歴があった.

 現病歴:誘因なく左股関節から膝の痛みを生じた.時々跛行もあり,母親が心配になり近医整形外科を受診させた.その後,紹介され当院を受診となった.

 身体所見:診察時,可動域(ROM)は制限なく,圧痛はなかった.跛行はわずかで,Trendelenburg徴候はなかった.

 血液検査所見:異常所見はなかった.

 X線所見:図1に初診時X線正面像およびLauenstein像を示す.

連載 卒後研修講座

  • 文献概要を表示

は じ め に

 戦後の混乱期を乗り越え高度成長期を経て,さらに世界に類をみない高齢化社会への突入など日本人の生活様式にも変化が生じ,高齢者でもまだまだ長く健康寿命を維持しなければならないという自覚が芽生えてきた.その結果,高齢者のスポーツ熱も高まり,自分の膝を残すことを希望する人が増えてきた.これまでは変形性膝関節症(膝OA)に対しては人工膝関節全置換術(TKA)だけができれば許されてきた膝関節外科医が,最近注目されるようになってきた膝OAに対する外科的治療法の一つである,膝周囲骨切り術(around the knee osteotomy:AKO)を習得しなければならない時代となってきた.TKAとAKOのどちらの手術も目標は膝の疼痛の除去と日常生活動作(ADL)の改善であるが,膝関節を取り去るか,温存するかでは大きな違いがある.本邦においてはこれまで,高位脛骨骨切り術(high tibial osteotomy:HTO)の長期成績が比較的よいことが報告されてきた1~3).しかし近年,脛骨近位だけを切って治療していた時代は終わり,さらに正常に近い膝関節の獲得を目指してAKOという新しい治療概念の時代が幕を開けた.本稿では膝関節外科医であれば知っておかなければならないAKOについて簡単に解説する.

連載 専門医試験をめざす症例問題トレーニング

骨・軟部腫瘍 坂本 昭夫
  • 文献概要を表示

 症 例.44歳,女.

 主 訴:左肘部腫瘤.

 家族歴・既往歴:特記すべきことはない.

 現病歴:1~2年前より,左肘部腫瘤を自覚し,徐々に増大してきた.

 初診時所見:左肘部伸側に7cm大の腫瘤を認めた.

 画像所見:単純X線像で,肘伸展側に楕円形の腫瘤陰影を認め,内部に石灰化を認めた(図1a).MRIで上腕三頭筋遠位の筋膜上に腫瘍を認めた.上腕三頭筋側の腫瘍実質は,T1強調画像で筋肉より軽度高信号,T2強像画像で筋肉よりも高信号を呈した.内部は,T1強調画像,T2強調画像ともに高信号領域がみられ,その高信号は脂肪抑制T2強調画像でも低下せず,嚢胞形成と出血を示唆した(図1b).

 病理組織学所見(針生検):紡錘形細胞の増殖を認め,束状に配列していた.腺管様の上皮性腫瘍成分を認めた(図1c).サイトケラチン(上皮性マーカー)の発現を免疫染色で認めた(図1d).

  • 文献概要を表示

 症 例.15歳,男.

 主 訴:右肘関節痛.

 既往歴:特記すべきことはない.

 現病歴:中学野球部に所属し,守備位置は投手である.6ヵ月前から投球時に右肘関節に痛みを自覚した.次第に日常生活でも痛みが生じ,1ヵ月前から右肘に引っ掛かり感が出現し,当院を受診した.

 初診時所見:右肘関節に発赤や腫脹,熱感はなかった.右肘外側および内側に圧痛を認めた.肘関節可動域(ROM)は屈曲−20°,伸展130°,前腕ROMは回内90°,回外90°であった.

 X線所見:右肘関節X線像を図1に示す.

  • 文献概要を表示

【要 旨】

 目 的:変形性膝関節症(膝OA)の進行関連因子として,近年内側半月板逸脱(MME)に注目が集まるが,機序は不明である.今回,骨棘が内軟骨性骨化と同様の過程を経て形成されるため,骨棘の軟骨成分まで加味するとMMEは骨棘幅と関連するとの仮説を立てそれを検証する.

 方 法:初期の膝OA 50例を対象に,MRIでMMEに加え,whole-organ magnetic resonance imaging scoreで膝OAの構造変化を評価した.内側半月板のT2値と骨棘幅はT2 mapping MRI(T2 map)で計測した.さらに,末期膝OAに対する手術時に切除した骨棘を組織学的に評価し,X線像およびMRIと比較・検討した.

 結 果:膝内側の骨棘は,X線像で40%,MRIで48%に認めたが,T2 mapでは98%に認めた.MMEと各膝OA所見との関連を重回帰分析すると,脛骨内側の骨棘幅がもっともMMEと関連した(β=0.711,p<0.001).MMEが3mmを超えると,内側半月板のT2値が高値であった(r=0.58,p=0.003).さらに,末期膝OA例の骨棘には軟骨成分が存在し,T2 mapと組織切片で測定した骨棘幅が相関した.

 結 論:初期膝OAでは平均約3mmのMMEが存在し,T2 mapを用いるとほぼ全例に脛骨内側に骨棘を認め,その幅はMMEと密接に関連した.さらにMME増大とともに半月板の変性度も増した.

  • 文献概要を表示

【要 旨】

 目 的:Fibroblast growth factor 2(FGF-2)は腱板修復を促進する可能性が示されているが,腱骨間への局所投与法に関する報告は少ない.本研究の目的は上腕骨大結節に作製した骨溝へのFGF-2含有ゼラチンハイドロゲルシート(GHS)投与の腱板修復促進効果についてウサギモデルを用いて検証することである.

 対象および方法:成熟日本白色家兎の左肩棘上筋腱を切離後に大結節付着部骨溝に縫合するモデルを作製し,縫合のみ群(S群),PBS含有GHS投与群(C群),3μgおよび30μgのFGF-2含有GHS投与群(F3群,F30群)の4群を比較・検討した.術後2週,6週,12週に力学試験,組織学的評価,およびマイクロCT評価を行いFGF-2含有GHSの効果を検証した.

 結 果:力学試験では術後12週のF3群とF30群における最大破断力と最大破断応力がS群,C群と比較して有意に高値であった.組織学的評価においては,S群とC群では腱骨間に血管が豊富な疎性線維性組織がみられたのに対して,F3群とF30群では腱様組織の形成がみられた.これらの修復促進効果は術後6週よりみられ,全評価項目においてFGF-2投与群間に有意差はなかった.またマイクロCT評価では全群において約70%に修復組織中の異所性石灰化がみられたがFGF-2の影響はなかった.

 結 論:FGF-2含有GHSの上腕骨付着部骨溝内への投与は生体力学的および組織学的に腱板修復を促進する.

  • 文献概要を表示

 じつにユニークな手術書,というより外科医心がけ帖である.私は魚住孝至著『宮本武蔵―兵法の道を生きる』(岩波新書,2008年)と『宮本武蔵 五輪書』(角川ソフィア文庫,2012年)を手許におきながら本書を読んだ.

 著者の生田義和氏は手外科の名手であり,日本というより世界の手外科パイオニアのお一人でいらした広島大学津下健哉教授の後継者である.そのため内容の具体的対象は手の手術ではあるが,その幅の広さ,内容の深さからいって,整形外科医はもとより,多くの外科医に読んで欲しいなと思う.まさに剣の道は手術に通ずる.

  • 文献概要を表示

 『今日の治療薬2018』が南江堂より出版された.私は,医師になって以来30年あまりになるが,研修医の頃から愛用しているのが,この『今日の治療薬』である.本書を手にすると,右も左もわからない医師になりたての頃を思い出す諸氏も多いのではなかろうか.本書は故水島裕先生,宮本昭正先生らによる1977年の初版発行以来,注意深く丁寧に毎年改訂され,今回,改訂第40版を数えるに至っている.

 整形外科領域における薬物療法の進歩は驚くべきものがある.私が研修医の頃は,関節リウマチ(RA)の治療薬は多くなく,その治療効果も限定的なものであった.四肢の関節拘縮により寝返りさえも困難となった患者さんを目の前にして,なすすべがなかったことを今も思い出される.しかし,メトトレキサートの導入と各種生物学的製剤の登場によりRAの治療成績は劇的に改善し,患者の生活の質(QOL)と治療満足度は大きく向上した.抗RA薬だけでなく,抗菌薬,疼痛治療薬,骨・カルシウム代謝薬,抗血栓薬,抗悪性腫瘍薬などにおいても薬物療法の進歩はめざましいものがあり,自らの専門領域においてすら,うかうかしていると最新知識から乗り遅れてしまいそうな勢いがある.そのような状況の中,『今日の治療薬2018』は,忙しい診療の合間に,自分の専門領域の薬剤を再確認するためには最適の書だと私は考えている.さらに,専門外の治療薬に関して最新の知識を要領よく理解するためにも,本書は大いに役立つ.また,各項目の冒頭には「最近の動向」が記載されているが,学会で話題になっている最新情報をこれほど簡潔に記載されている書籍を私は知らない.

学会を聞く

第30回日本肘関節学会 森谷 浩治
  • 文献概要を表示

1.は じ め に

 日本肘関節学会は肘関節外科の進歩・発展を目的にかかげ,1989年に新潟大学整形外科第4代教授の田島達也氏を会長として第1回研究会が開催された.2003年の第15回研究会(会長:日本大学整形外科第6代主任教授・龍順之助氏)の折に研究会から学会へ改組することが決定され,本年度は節目の第30回になる.今回は長岡正宏会長(日本大学教授)[図1]のもと,2018年2月16日(金)~17日(土)の2日間にわたり東京プリンスホテル(東京都)で開催された.

第48回日本人工関節学会 山門 浩太郎
  • 文献概要を表示

1.は じ め に

 48回目を迎える日本人工関節学会は,高井信朗会長(日本医科大学教授)のもと,2018年2月23日(金)~24日(土)に東京国際フォーラムで開催された.「船」をモチーフに旧東京都庁舎の跡地に建設された同施設は東京の代表的な国際コンベンションセンターの一つであり,5つのホール棟と地下展示ホールにくわえ,レストランや相田みつを美術館などを備える巨大な建築物である.2018年度の本学会では三つのホール棟と対面に位置するガラス棟および駅コンコースから見下ろすことのできる地下展示ホールが使用された(図1).

 本学会のテーマは「進歩と調和 “Progress and Harmony”」であった.これは,1970年に開催された大阪万博のテーマである「人類の進歩と調和」を念頭にされたとのことである.高度経済成長を成し遂げ,米国に次ぐ経済大国となった万博当時の社会状況下における未来社会への期待と公害問題など産業の急発展にともなう諸問題,当時の日本の抱えた矛盾と解決を,人工関節置換術の実施件数がこの10年間において急増しつつある現状に投影したものと聞き及ぶ.実際,肩,肘,手,股,膝,足と多岐にわたる関節のキネマティクスなど工業製品としての人工関節の基礎的なテーマから,患者の日常生活動作(ADL)や満足度の検証といった臨床的なトピックまで幅広くプログラムが設定された2日間であった.

第31回日本軟骨代謝学会 佐藤 正人
  • 文献概要を表示

1.は じ め に

 2018年3月2日(金)~3日(土)までの2日間,名古屋のウィンクあいちで第31回日本軟骨代謝学会が渡辺秀人会長(愛知医科大学分子医科学研究所)により開催された(図1).本学会は,1988年に日本軟骨代謝研究会として発足し,第1回の世話人を故新名正由教授(防衛医科大学校)が務められた.軟骨研究に関わる研究者と骨・関節疾患などの治療に携わる臨床医との相互交流の推進を目的として設立されたと,岩田久名誉教授(名古屋大学)から伺っている.

 渡辺会長が開会のあいさつの際に,今回の学会の特徴を5つ述べられていたので紹介する.第1に会場の利便性を考えて名古屋駅に近いウィンクあいちにした.第2に最新の研究内容を発表いただくために演題募集締切りを大幅に遅らせた.第3に活発な議論を促すために一般口演の各セクションの座長は2名とした.第4にプログラム策定に各分野で活躍されている評議員5名に組織委員として参画していただいた.第5にネット環境を充実させてメールやインターネットのサイトを最大限活用した.

 以上の甲斐あって本学会はすこぶる盛況であった.2日間の合計で227名が参加されたとのことである.また,本学会の特徴として,一会場で参加者全員が同時に各口演を聞き,討論するという原点に戻った開催方法でもあった.今回はポスター発表もなかったので,やや発表時間はタイトではあったが,専門領域の異なる先生方からもフロアから多くの質問が出て,活気にあふれていた.企業の研究者の方々の参加もたいへん多いようにみえたのだが,彼らはほとんど発言せずに熱心にメモをとっていた(Silent Majority).情報収集の場として活用しているようにもみえた.臨床の専門分野は整形外科と歯科口腔領域がやはり多いのだが,基礎の専門分野は多岐にわたり,まさに日本の軟骨に関する最先端の研究発表が行われていた.

喫茶ロビー

  • 文献概要を表示

 文芸書は縦書きで,医学書は横書きである.『日本医事新報』(日本医事新報社)が2011年3月号まで医学書として,縦書きで頑張っていたが,現在は横書きとなって医学書はすべて横書きとなった.文芸書が縦書きなのは,歴史的に大陸からきた書物が縦書きであったことから始まると考えられるが,医学書の横書きはいつから始まったか定かではない.縦書きの文を読むときの目の動きは目が上下に動くが,横書きは目が左から右に動く.目は上下に動いた方が左右に動くより疲れないそうである.

 さらに文芸書と医学書の違いは,文芸書は送り仮名が平仮名で,医学書はある時期まで片仮名であった.松尾芭蕉の『おくの細道』,夏目漱石,芥川龍之介の小説は送り仮名は平仮名であるが,福澤諭吉の『学問のすゝめ』は,明治5年(1872年)の初版では片仮名である.そのころ一般に庶民が読む文芸書は平仮名で,専門家が読むと思われる医学書は専門性を強調するために(?)片仮名であったようである.

基本情報

24329444.69.08.cover.jpg
臨床雑誌整形外科
69巻8号 (2018年7月)
電子版ISSN:2432-9444 印刷版ISSN:0030-5901 南江堂

文献閲覧数ランキング(
6月11日~6月17日
)