書評
『今日の治療薬2018――解説と便覧』
松峯 昭彦
1
1福井大学整形外科教授
pp.884-884
発行日 2018年7月1日
Published Date 2018/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei69_884
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- 文献概要
『今日の治療薬2018』が南江堂より出版された.私は,医師になって以来30年あまりになるが,研修医の頃から愛用しているのが,この『今日の治療薬』である.本書を手にすると,右も左もわからない医師になりたての頃を思い出す諸氏も多いのではなかろうか.本書は故水島裕先生,宮本昭正先生らによる1977年の初版発行以来,注意深く丁寧に毎年改訂され,今回,改訂第40版を数えるに至っている.
整形外科領域における薬物療法の進歩は驚くべきものがある.私が研修医の頃は,関節リウマチ(RA)の治療薬は多くなく,その治療効果も限定的なものであった.四肢の関節拘縮により寝返りさえも困難となった患者さんを目の前にして,なすすべがなかったことを今も思い出される.しかし,メトトレキサートの導入と各種生物学的製剤の登場によりRAの治療成績は劇的に改善し,患者の生活の質(QOL)と治療満足度は大きく向上した.抗RA薬だけでなく,抗菌薬,疼痛治療薬,骨・カルシウム代謝薬,抗血栓薬,抗悪性腫瘍薬などにおいても薬物療法の進歩はめざましいものがあり,自らの専門領域においてすら,うかうかしていると最新知識から乗り遅れてしまいそうな勢いがある.そのような状況の中,『今日の治療薬2018』は,忙しい診療の合間に,自分の専門領域の薬剤を再確認するためには最適の書だと私は考えている.さらに,専門外の治療薬に関して最新の知識を要領よく理解するためにも,本書は大いに役立つ.また,各項目の冒頭には「最近の動向」が記載されているが,学会で話題になっている最新情報をこれほど簡潔に記載されている書籍を私は知らない.
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