臨床雑誌整形外科 69巻10号 (2018年9月)

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は じ め に

 高齢者の骨粗鬆症による骨折は,quality of life(QOL)を著しく低下させ寝たきりになる危険性があり,さらに死亡のリスクが高まるため,近年大きな社会問題となっている.医療費の増大という問題も抱え,今後の少子高齢社会で骨粗鬆症の早期診断による骨折予防が重要な課題となっている.早期に骨折リスクを評価できれば,転倒予防の指導,リハビリテーションや薬物治療を行うことで骨折を予防することが可能となる.本稿ではわれわれは,L5 CTデータを用いて,CT値の年齢推移と大腿骨近位部骨折リスクについて検討を行ったので報告する.

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は じ め に

 成長期腰部スポーツ損傷として重要なものの一つに,腰椎分離症がある.本疾患の単純X線所見としては,斜位像でのテリアネックサインなどが知られているが,片側分離の反対側椎弓根に径拡大や骨硬化像がみられるvertebral anisocoriaと呼ばれる所見(図1)も報告されている1~3).しかし,本所見に関する詳細な報告は多くない.今回われわれは,成長期の腰痛患者にみられたvertebral anisocoriaについて調査した.

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は じ め に

 大腿骨ステムの設置アライメントの是非については従来から議論がなされている.セメントステムにおいては内反位設置が不良な臨床成績をきたしうることが報告されている1,2).セメントレスステムにおいては,機種により固定のコンセプトが多岐にわたることもあり,成績不良につながるという報告3)と成績には影響しないという報告4,5)の両方がある.一方でMurphyらは,内反股におけるセメントレスステム設置では術前計画よりも内反位に設置される傾向があり,その結果,術中の大腿骨オフセットや脚長のアセスメントにはより注意を要すると報告している6)

 ブローチ設置下にX線撮影することでアライメントの評価を術中にすることは可能だが,それにいたるまでの操作は術者の経験と勘に頼るしかなく,至適角度で挿入されているか否かはX線撮影をするまでわからない.以上の観点から,術中のX線撮影に頼らずステムを正確に設置できることを目指し,独自のアライメントガイドを用いた方法を考案した.アライメントガイドがステム設置角度の指標となりうるという仮説を立て,これを検証したので報告する.

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は じ め に

 高位脛骨骨切り術(high tibial osteotomy:HTO)は,変形性膝関節症(OA)または特発性膝顆部壊死症(SONK)に対して有効な関節温存手術である.また活動性の高い患者に対してTomofix(DePuy Synthes社)を代表とした強固な内固定材料を使用することにより,早期のリハビリテーションが可能となっている.HTOの術後合併症の一つとしてlateral hinge fracture(LHF)があげられるが,LHFは開大式楔状(opening wedge)HTO(OWHTO)術後の約18~35%に発生する1)ことや,骨切り部のmicro-motionの増大により骨切り部の遷延癒合や偽関節のリスクが報告されている2,3).一方で,LHFの分類を提唱したTakeuchiら1)は,安定型のLHF(typeⅠ)は術後の免荷や外固定は不要で短期成績は良好であったと述べている.またLHFの評価は単純X線像で行われている場合がほとんどであり5~7),multi-planar reconstruction CT(MPR-CT)などを用いた詳細な検討の報告は少ない9).本研究の目的は,OAまたはSONKに対して施行したOWHTO術後のLHFについてMPR-CTを用いて評価し,X線評価と比較・検討することである.

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は じ め に

 骨粗鬆症患者は背部痛などの痛みを訴えることがある.しかし「骨粗鬆症と診断された患者が訴える痛み」が骨粗鬆(骨塩量減少と骨質低下)に由来するという証拠は乏しい.椎間板変性,脊柱変形,筋量減少症(サルコペニア),微小骨折(マイクロクラック)が痛みの原因の可能性もある.

 本研究の目的は,① 骨粗鬆それ自体は痛みを起こすのか,② 痛みを起こすとすれば疼痛強度はどの程度か,③ 疼痛強度と骨粗鬆の程度との関連性はあるか,を明らかにすることである.

誌説

地域医療と新専門医制度 税田 和夫
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 各分野の学会とは独立した専門医機構によって標準化されるはずであった新専門医制度であるが,予想通り機構が学会とは独立しているとはいえない状況になった.また新制度は地域医療の崩壊を招きかねないということを理由の一つとして,2017(平成29)年度の実施が延期された.専門医制度は,当初から地域単位で研修を行うことが求められていた.地域とは主に都道府県を意味するという理解でよかったと記憶している.そもそも原則的に都道府県の単位で研修を行った場合,人口の少ない,あるいは医師の少ない地域で今まで以上の研修が可能であろうか? しかも,大学病院以外の基幹病院を増やすことが求められ,分母が大きくなるのであるから,当然研修する病院群の規模は小さくなるはずであった.これも地域医療を守るという目的のためであったと理解しているが,細分化すると地域が守れるというのは理解しがたかった.

 私の勤務する埼玉県は人口700万人を抱えるのだが,人口あたりの医師数はもっとも少ない.人口が多いということは,埼玉県出身の初期研修医も多いはずであり,マッチングにより整形外科専攻医が増加するのではないかと密かに期待していた.ご存知の通り整形外科では平成29年度より,全領域においては平成30年度より新専門医制度が実施された.当初予定されたマッチングは実施されず,平成30年度の結果をみてみると,埼玉県内の整形外科に応募した専攻医は,残念ながら少数であった.地域単位で研修するという建前では,埼玉県の整形外科医療はとても維持できない.基幹病院の問題なのであろうか? 学会,機構,行政,専攻医の問題なのであろうか? 1年,立ち止まって得たものは何であろうか?

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 Miller-GalanteⅠ型人工膝関節全置換術(M/G-Ⅰ型total knee arthroplasty:TKA)は,メタルバック膝蓋骨コンポーネントの問題によりメタローシスを発生することが知られている1).本稿では,メタローシスに伴って生じた脛骨の巨大骨欠損に対して,同種骨によるimpaction bone grafting(IBG)を併用して人工膝関節再置換術(revision TKA)を施行した関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)の1例を経験したので報告する.

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 アキレス腱滑液包はアキレス腱と踵骨の間に存在し,これらの間でインピンジされることによりアキレス腱滑液包炎を発症する.その発症には踵骨後上隆起の突出(Haglund変形)の存在が関与し,長距離ランナーに好発することが知られている1,2).今回,保存療法に抵抗する長距離ランナーの両側アキレス腱滑液包炎に対し鏡視下手術を行い良好な予後を得た症例を報告する.

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 原発性鎖骨下静脈血栓症は,Paget-Schroetter症候群とも呼ばれ,血液凝固疾患,膠原病,悪性腫瘍などの血栓性素因や静脈カテーテル留置などの明らかな原因がなく発症する.今回,保存的治療を行い経過が良好であった原発性鎖骨下静脈血栓症の1例を経験したので報告する.

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 肢端線維粘液腫(acral fibromyxoma)は2001年にFetschらによってはじめて報告された新しい概念の良性軟部腫瘍である1).成人の指趾末端に好発し,爪の変形を伴うことが多い.骨が侵食された像を認めたとする報告もあるが,それらに着目した報告は少ない.われわれは辺縁硬化を伴わない骨溶解像を呈した肢端線維粘液腫の2例を経験したので報告する.

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 2018年の日本整形外科学会学術総会2日目のspecialty day,第2会場は最初から最後まで外傷がテーマで,立ち見が出るほどの盛況ぶりでした.私自身,整形外傷医学・医療について考える大変よい機会となり,この企画を立案された,遠藤直人会長と新潟大学の皆様に心より感謝いたします.

 この日,とりわけ面白いと感じたのは「“JOIN-Trauma;Japanese Orthopaedic Association for Innovation and Renovation In Trauma” という勉強会を2012年に当時30代の医師12名で立ち上げ,日本の整形外傷を世界一にすることを目的に,英文論文のreview,若手医師に術前計画などの教育を行っている」,「彼らは,とにかくたくさんの論文を読み切磋琢磨している」という,我々より少し若い世代の先生たちの活躍についての紹介でした.一方で,その日の終盤には「研修医が経験しなければならない疾患の40%が外傷であるにもかかわらず,専門医試験での外傷に関する出題は極めて少ない」,「お偉い教授先生は外傷が大切であると思っていないのではないか?」,「昨年,外傷を専門とされている教授が整形外傷医は絶滅危惧種だと嘆いておられた」,「若い先生の中には本気で外傷をやりたいと思っている人もいるが,居場所がなくどうしてよいのか分からないといっている」など,かなりネガティブな内容で不毛とも思える盛り上がりを見せ,ついには「日本の大学の講師以上で外傷を専門としている者は一体何人いるのか?」と御大が発言されたときには,「そうだ,そうだ」と同調するには余りに寂しい現実を実感しました.「骨折なんて誰でもできる」といわれていた時代に,日本でAO courseを開催し,整形外傷の基本から骨折を安易に治療してはいけないこと,決してしてはいけない治療など多くのことを整形外科医に教育し,医療の面では外傷センターを開設し,外傷患者の集約,治療の質の向上,実地教育環境の整備を行い,外傷医学と外傷医療を文字通り切り開いてこられた先駆者たちが,外傷外科医の将来を危惧しているのです.

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は じ め に

 橈骨遠位端骨折治療に対する掌側ロッキングプレート(volar locking plate:VLP)は,強固な内固定,早期リハビリテーションが可能であり,その安定した術後成績から広く普及している.しかし,その一方で術後の重大な合併症として屈筋腱皮下断裂の報告も散見される.今回,われわれは橈骨遠位端骨折術後の屈筋腱皮下断裂4例を経験し,各症例の発生状況を調査し対策を検討した.

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は じ め に

 肩腱板断裂の患者においては,肩挙上位から上肢を下降する際,外転60°~120°あたりで疼痛を生じたり,drop arm sign様の墜落性の下降動作がみられることがある.Parkら1)は,腱板不全断裂症例72例および完全断裂症例215例について,drop arm sign,painful arc signを調査し,drop arm signは部分断裂の14%,完全断裂の35%,painful arc signは部分断裂の67%,完全断裂の76%にみられたと報告しており,肩腱板断裂患者にとって,肩外転60°~120°あたりでの痛みや,筋力低下が問題となることが多い.

 Taketomi2)は,疼痛を有する腱板断裂患者が腕を降ろす際に徒手抵抗を加えることで,疼痛が軽減ないし消失することを報告している(図1).この報告に基づき,われわれは上肢下降時に疼痛を訴える症例に対して,自ら徒手抵抗を加えながら下降させるように動作指導を行っているが,なぜ疼痛に変化を生じるかは不明である.

 疼痛が軽減ないし減少する原因として,われわれは下降動作に徒手抵抗を加えることにより肩関節周囲筋の筋活動が変化するためではないかと考えた.本研究の目的は,徒手抵抗を加えることによる上肢下降動作時の疼痛の変化を調査し,その際の肩関節周囲筋の筋活動の違いを検証することである.

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は じ め に

 仙腸関節障害の特徴的な疼痛域は,上後腸骨棘(posterior superior iliac spine:PSIS)を中心とした腰殿部であり1),仙腸関節ブロックで疼痛が70%以上軽快する例が仙腸関節障害と診断される1,2).また仙腸関節障害に仙腸関節周辺の靱帯である仙結節靱帯(sacrotuberous ligament:STL)や腸腰靱帯の障害が併存することがある3,4).われわれは,仙腸関節ブロック後に坐骨結節部を中心とした下殿部痛が残存し,仙結節靱帯炎の合併と診断した2例を報告した5).この2例はSTLへのストレッチで症状の軽快が得られたが,症例を重ねるにつれて,STLのストレッチのみで有効な例と,STLストレッチに加え,大腿二頭筋(biceps femoris muscle:BF)へのストレッチも必要な例を経験するようになった.本研究では,STLストレッチの単独症例とBFストレッチ(遠位1/3)の追加を要した症例の特徴を,理学療法初診時の身体所見から比較検討した.

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 末梢神経損傷のうち縫合修復できないような末梢神経欠損に対しては,従来から自家神経移植が行われてきた.近年,正常な神経を犠牲にしないで済むように神経再生誘導管(人工神経)が開発され,本邦でも2013年に臨床応用された1).しかし人工神経は,神経再生が十分でない点や硬い素材のため移植部位が限られる点など課題もある.人工神経が標準的治療となるためには,人工神経による神経再生が自家神経移植に匹敵するもしくはそれを凌駕することが必要である.そのため人工神経を足場として,Schwann細胞や脂肪由来幹細胞などの細胞を付加した,いわゆるハイブリッド型人工神経の研究がすすめられている2)

 これまでわれわれは,既存のものより非常に柔軟な新しい人工神経(ポリ乳酸とポリカプロラクトンの共重合体ポリマー)の開発をすすめてきた3).この人工神経は動きのある関節付近でも移植可能である.また,この人工神経は内層が蜂巣多孔体構造のため,足場として神経再生に有利な細胞を付加することも可能である3,4)

連載 X線診断Q&A

X線診断Q&A 宮﨑 正志
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Question

 症 例.18歳,男.

 主 訴:腰背部痛,両下肢筋力低下.

 家族歴:特記すべきことはない.

 既往歴:うつ病で精神科外来に通院中.

 現病歴:4階から飛び降りて受傷した.強い腰背部,両下肢筋力低下を認め当院へ救急搬送された.

 身体所見:腰背部痛のため体動困難であった.下肢筋力は前脛骨筋,長母指伸筋,腓腹筋および長母指屈筋が両側とも筋力徒手テスト(MMT)3と低下していた.また,感覚も両下腿以下で温痛覚および触覚が6/10と低下していた.深部腱反射は膝蓋腱反射,アキレス腱反射ともに消失していたが,球海綿体反射は陽性であった.

 X線所見:図1に初診時単純X線正面像を示す.

連載 卒後研修講座

人工膝関節全置換術 箕田 行秀
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は じ め に

 人工膝関節全置換術(TKA)は,整形外科分野でもっとも成功した医療技術の一つである.優れた除痛効果・安定した長期臨床成績から,日本でも手術件数は年々増加し,年間約8万件が施行され,今後も増加することが予想されている.したがって,整形外科医にとってTKAは日常的な手術であるとともに,TKAについての知識は必須とされる時代になっている.

 「卒後研修講座」である本稿では,今後整形外科専門医を目指す卒後1~2年の研修医の先生方を対象として,臨床的に必要な知識について概説する.

連載 専門医試験をめざす症例問題トレーニング

骨盤・股関節疾患 神野 哲也
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 症 例.44歳,女.事務職.

 主 訴:右鼡径部痛.

 家族歴:特記すべきことはない.

 既往歴:歩行開始後に右発育性股関節形成不全(DDH)を指摘され,2~3歳時に抜釘術含め二度の手術を受けたが,詳細不明であった.

 趣味・スポーツ:特記すべきことはない.

 生活歴:機会飲酒であり,喫煙歴はない.

 現病歴:半年前から右鼡径部痛が続いている.起床時に右股関節のこわばりがある.歩行開始時や,1時間以上の歩行時に痛みを生じる.左股関節には痛みや疲労感などの愁訴はない.日常生活動作(ADL)では,家事や外出時の車乗降動作などにおいて困難は感じていないが,階段昇段時や蹲踞時にはつかまりを要していた.

 初診時所見:身長158cm,体重50kg.右逃避性跛行を認めた.局所視診上,右股関節外側の大転子付近に縦皮切痕を認めた.右Scarpa三角に圧痛があり,Patrickテスト,屈曲内転内旋(flexion-adduction-internal rotation:FADIR)テストがいずれも陽性であった.股関節可動域(ROM)[右/左]は,屈曲110°/120°,伸展15°/20°,外転10°/35°,内転15°/15°,外旋20°/30°,内旋10°/45°であった.両股関節単純X線像を図1に示す.

小児整形外科疾患 川口 泰彦 , 大谷 卓也
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 症 例.10歳,女児.

 主 訴:跛行,右膝周囲の痛み.

 家族歴・既往歴:特記すべきことはない.

 スポーツ歴:なし.

 現病歴:6ヵ月前頃より,明らかな誘因なく,右膝周囲の軽度の痛みが出現した.日常生活に支障はなかったが,友人に跛行を指摘され,走るのが困難となったため,近医整形外科を受診した.膝関節の単純X線撮影を受けたが異常はなく,関節炎の診断で湿布が処方され経過観察となった.その後も症状が改善せず,他医を受診した.股関節の単純X線撮影を受けるも異常がないといわれ,単純性股関節炎の診断で松葉杖と非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が処方された.しかし,徐々に屈曲制限,外旋位歩行が増悪し,日常生活にも不自由を感じるようになったため当科を受診した.

 初診時身体所見:身長141cm,体重52kg,body mass index(BMI)26.2kg/m2.歩行時の右股関節痛は高度ではなかったが,跛行と外旋位歩行は著明であった.股関節可動域(ROM)[右/左]は屈曲60°/100°,外転0°/40°,内旋−55°/35°,外旋70°/55°であり,右側のROM制限とりわけ内旋制限が明らかであった.

 初診時画像所見:両股関節の単純X線正面像(図1),Lauenstein像(図2)を示す.

連載 最新原著レビュー

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【要 旨】

 目 的:本研究の目的は特発性大腿骨頭壊死症(ONFH)に対する大腿骨頭回転骨切り術(TRO)の15年以上の長期成績と,手術の成績不良に関するリスク因子を明らかにすることである.

 対象および方法:ONFHに対してTROを施行した95例111関節(平均年齢40.1歳,平均経過観察期間18.2年)を対象にした.人工股関節全置換術(THA)への移行とradiological failure(RF)[骨頭圧潰もしくは関節症変化]をエンドポイントとした時の生存分析と,そのリスク因子について検討した.

 結 果:術後15年時の生存率はTHAへの移行をエンドポイントとすると59%であり,RFとすると30%であった.Type C2の広範壊死と年齢>40歳が独立したリスク因子として検出された.

 考 察:ONFHに対するTRO術後の股関節では,高率に変形性関節症(OA)変化が生じることが明らかになった.

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【要 旨】

 目 的:経頭蓋刺激により複合筋活動電位(CMAP)をとらえる脊髄モニタリング(TES-MEP)での定電流と定電圧刺激間のCMAPの波形検出成功率について比較・検討する.

 対象および方法:脊椎手術100(男性53,女性47)例,平均年齢62歳(14~85歳)を対象に,同一症例に定電流,定電圧の経頭蓋刺激を加え,上肢・下肢筋からCMAP波形を検出した.刺激強度は,定電流200mA,定電圧500Vで統一した.振幅>50μVを検出成功と定義し,リスク比で評価した.有意水準5%未満を有意差ありと判断した.

 結 果:測定筋全体評価において,定電圧刺激が定電流刺激よりも検出成功率が高かった(リスク比:1.25[95%信頼区間(CI)1.20~1.31]).

 結 論:最大上刺激条件下でTES-MEPを行う場合,定電圧刺激はCMAP検出において有利である.

Vocabulary

TRAF6 大矢 昭仁
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 TRAFとはtumor necrosis factor(TNF)receptor associated-factorの略でCD40やインターロイキン-1(IL-1)の細胞内シグナル伝達因子として研究された.1994年にRotheら1)がTNFR2に結合する蛋白としてTRAF1および2を報告したのをはじめとして,現在TRAF7まで報告されている.TRAF6はreceptor activator NF-κB(RANK)の直下に存在し,破骨細胞の分化,形成を制御する細胞内シグナルを伝達するとともに,IL-1βやリポ多糖(lipopolysaccharide:LPS)のシグナルも伝達し炎症に関するシグナルも伝達する.このためTRAF6は生体の炎症や骨代謝,癌の発生などさまざまな現象に関与しており,これまでにも多くの研究成果が報告されている.

 近年分子生物学の進歩により,さまざまな細胞にシグナルを伝達する蛋白や,それらをコードする遺伝子の機能が明らかとなってきており,さまざまな遺伝子の変異により発症する疾患の病態などが解明されてきている.遺伝子の研究においては,ターゲットとした遺伝子を意図的に欠損させた動物モデルが有用で,多くの遺伝子に関してノックアウト(KO)マウスが作成され,研究の発展に貢献してきた.TRAF6も例外ではなく,世界中の研究者が競い合うように世界初のTRAF6 KOマウス作成を試みてきた歴史がある.

学会を聞く

第61回日本手外科学会 森崎 裕
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1.は じ め に

 2018年4月26日(木)~27日(金)に,京王プラザホテル(東京都)で本学会は開催された.昭和大学医学部整形外科学講座,第7代教授の稲垣克記会長(図1)のもと,「サイエンスとアートの調和」というテーマがかかげられた.2017年に引き続き2,000名を超える参加者があり,数多くの若手手外科医,そしてハンドセラピストを含めた手外科学会の勢いを実感した学会であった.

 今回初の試みとして,International Bone Research Association(IBRA)が併催された.IBRAのfounding memberであるHermann Krimmer氏らによる講演(図2),IRBAメンバーを交えた討論がなされた.IBRAは2004年にスイスに誕生した団体で,整形外科のみならず,口腔外科領域も含めて臨床・研究を広く扱っている.IBRAでは今後,アジアからの手外科研修の受け入れを予定しているとのことであり,今後の日本手外科学会とIBRAのさらなる関係の発展が期待される.

喫茶ロビー

南満医学堂・満州医科大学 三笠 元彦
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 大正年代に旧満州(現在の中華人民共和国の東北)の奉天(現瀋陽)に二つの医学校があった.満鉄(南満州鉄道)が設立した南満医学堂と,1882年に奉天にきたスコットランドの合同長老教会の伝道医師クリスティが作った奉天医科大学である.南満医学堂は1911年11月に開校され,現地の医師を養成するために作られた(図1).初年度の入学者は日本人20名,中国人8名であった.1922年5月に,予科3年,本科4年の満州医科大学に昇格した.別に中国人学生を対象とする専門部(4年制,1学年定員40名)も設置した.日本の敗戦とともに閉学したが,1945年までに2,600人有余(うち中国人は1,000人)の卒業生を輩出した1,3).一方,奉天医科大学は1912年に開校された.教員は中国人と英国人で,中国人の医師を育成するために作られたもので,初年度入学者50人は全員中国人で,3/4はキリスト教徒であった4)

 南満医学堂の教員としてここに記載できる医師は,山田基先生と太田正雄(木下杢太郎)先生の2人である.山田基先生は,藤田保健衛生大学分院整形外科准教授・山田光子先生の祖父にあたり,1902年に東京大学を卒業し,軍医を経て,1907年に東京大学内科に入局した.1910年10月,安東満鉄医院長を経て,1914年11月に第2代南満医学堂の堂長兼奉天満鉄医院長となり,1920年8月に長崎医学専門学校長に転じた5,6).一方,画家(図2),詩人で有名な木下杢太郎,本名太田正雄先生は1911年3月に東京大学を卒業し,1912年7月に東京大学皮膚科に入局した.1916年9月に南満医学堂皮膚科教授として来満し,4年間学生の教育と診療に従事した7).奉天という土地が芸術的感興を与えなかったためか,奉天では詩集『食後の唄』を刊行したが,医療に没頭していた8).太田先生が報告した眼上顎褐青色母斑は太田母斑と呼ばれ,世界的に認められている.

海外学会の記

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 OARSI(OsteoArthritis Research Society International)は変形性関節症(OA)の唯一の国際学会である.本年は2018年4月26日(木)~29日(日)まで英国リバプールのaccコングレスセンター(図1)で開催された.リバプールといえば,ビートルズの出身地と知られる英国北西部の古い港町である.今でも根強いビートルズファンがいるのか,あるいはサッカー目的か,駅前にはどうみても観光客と思われる人々が多くみられた.筆者は元来,不良を装ったガリ勉中学生であったのでビートルズよりもローリングストーンズが好きということにしていたし,サッカーよりもハンドボールが好きなので,観光にもいかずにずっと学会を聴いていた.

 本年は新しいOA治療に関する演題が多くみられた.これらを含んで,本稿では本学会のトピックスについて概説する.

基本情報

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臨床雑誌整形外科
69巻10号 (2018年9月)
電子版ISSN:2432-9444 印刷版ISSN:0030-5901 南江堂

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