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2018年の日本整形外科学会学術総会2日目のspecialty day,第2会場は最初から最後まで外傷がテーマで,立ち見が出るほどの盛況ぶりでした.私自身,整形外傷医学・医療について考える大変よい機会となり,この企画を立案された,遠藤直人会長と新潟大学の皆様に心より感謝いたします.
この日,とりわけ面白いと感じたのは「“JOIN-Trauma;Japanese Orthopaedic Association for Innovation and Renovation In Trauma” という勉強会を2012年に当時30代の医師12名で立ち上げ,日本の整形外傷を世界一にすることを目的に,英文論文のreview,若手医師に術前計画などの教育を行っている」,「彼らは,とにかくたくさんの論文を読み切磋琢磨している」という,我々より少し若い世代の先生たちの活躍についての紹介でした.一方で,その日の終盤には「研修医が経験しなければならない疾患の40%が外傷であるにもかかわらず,専門医試験での外傷に関する出題は極めて少ない」,「お偉い教授先生は外傷が大切であると思っていないのではないか?」,「昨年,外傷を専門とされている教授が整形外傷医は絶滅危惧種だと嘆いておられた」,「若い先生の中には本気で外傷をやりたいと思っている人もいるが,居場所がなくどうしてよいのか分からないといっている」など,かなりネガティブな内容で不毛とも思える盛り上がりを見せ,ついには「日本の大学の講師以上で外傷を専門としている者は一体何人いるのか?」と御大が発言されたときには,「そうだ,そうだ」と同調するには余りに寂しい現実を実感しました.「骨折なんて誰でもできる」といわれていた時代に,日本でAO courseを開催し,整形外傷の基本から骨折を安易に治療してはいけないこと,決してしてはいけない治療など多くのことを整形外科医に教育し,医療の面では外傷センターを開設し,外傷患者の集約,治療の質の向上,実地教育環境の整備を行い,外傷医学と外傷医療を文字通り切り開いてこられた先駆者たちが,外傷外科医の将来を危惧しているのです.
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