誌説
地域医療と新専門医制度
税田 和夫
1
1埼玉医科大学総合医療センター整形外科教授
pp.1020-1020
発行日 2018年9月1日
Published Date 2018/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei69_1020
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各分野の学会とは独立した専門医機構によって標準化されるはずであった新専門医制度であるが,予想通り機構が学会とは独立しているとはいえない状況になった.また新制度は地域医療の崩壊を招きかねないということを理由の一つとして,2017(平成29)年度の実施が延期された.専門医制度は,当初から地域単位で研修を行うことが求められていた.地域とは主に都道府県を意味するという理解でよかったと記憶している.そもそも原則的に都道府県の単位で研修を行った場合,人口の少ない,あるいは医師の少ない地域で今まで以上の研修が可能であろうか? しかも,大学病院以外の基幹病院を増やすことが求められ,分母が大きくなるのであるから,当然研修する病院群の規模は小さくなるはずであった.これも地域医療を守るという目的のためであったと理解しているが,細分化すると地域が守れるというのは理解しがたかった.
私の勤務する埼玉県は人口700万人を抱えるのだが,人口あたりの医師数はもっとも少ない.人口が多いということは,埼玉県出身の初期研修医も多いはずであり,マッチングにより整形外科専攻医が増加するのではないかと密かに期待していた.ご存知の通り整形外科では平成29年度より,全領域においては平成30年度より新専門医制度が実施された.当初予定されたマッチングは実施されず,平成30年度の結果をみてみると,埼玉県内の整形外科に応募した専攻医は,残念ながら少数であった.地域単位で研修するという建前では,埼玉県の整形外科医療はとても維持できない.基幹病院の問題なのであろうか? 学会,機構,行政,専攻医の問題なのであろうか? 1年,立ち止まって得たものは何であろうか?
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