胸部外科 57巻2号 (2004年2月)

  • 文献概要を表示

これまで縦隔内における腫瘍が上大静脈を圧迫したり,もしくは浸潤により灌流障害をおこした症例は,もはや手術は不可能なものと処理されていた.しかし,最近の血管外科領域の発展や人工血管の改良により,それは可能となり,手術の適応は拡大されつつある.そこで,上大静脈の灌流障害に対する血行再建術において,著者らの経験に基づいた手技上の留意点について,以下のことを述べた.1)直接縫合術,2)パッチ縫着術,3)人工血管によるバイパス手術,4)切除不能な腫瘍を有する上大静脈症候群への対策

  • 文献概要を表示

過去5年間に初回手術として姑息的右室流出路形成術(RVOTR)を行った7例(男児3例,女児4例)の手術成績について検討した.手術時年齢は85±104日で,疾患はFallot四徴症が6例,両大血管右室起始症が1例で,肺動脈閉鎖を3例,主要体肺動脈側副血行路を1例に認めた.術前のPAIは139±87で,RVOTR後遠隔期のPAIは306±156へ増加した.右室開口部の大きさとQp/Qs,PAI,PA圧との間に有意な相関は認めなかったが,右室流出路開口部が大きい症例では肺血流が増加し,PAIも増加する傾向があった.遠隔期に右室流出路の狭窄に対し再手術を要した例を3例認めた.初回術後一期的に根治術を行った症例は3例で,現在7例中5例で根治手術が終了し,1例が根治術待機中である

  • 文献概要を表示

72歳女性.患者は,原発性肺癌(進行度T1N2M0)に対する右下葉切除術後2ヵ月目に胸水貯留が出現し,胸水細胞診にてclass Vと診断され入院となった.入院時,腫瘍マーカーでSLXの高値を示し,胸部単純X線所見では右胸腔内に胸水貯留を認め,胸水細胞診では腫大した腺癌細胞の集塊がみられた.以上より,胸膜癌症と診断し,胸腔内温熱灌流化学療法を施行した.治療後,胸水は改善し,第2病日にドレーンを抜去し退院となった.しかし,治療後3ヵ月の時点で胸腔内細胞診は陰性であったものの,突然の心肺停止にて死亡した.なお,死因を特定することはできなかった

  • 文献概要を表示

小児MICS開心術20例を胸骨閉鎖法によりワイヤー使用群4例(W群),吸収糸使用群7例(S群),吸収糸+体内吸収性胸骨ピン使用群9例(P群)に分け,胸骨変形の有無を胸部X線によるVIとFSIを用いて比較検討した.その結果,VIはW群で19.6±0.8,S群で19.2±2.1,P群で22.3±4.1,FSIはW群で45.6±3.6,S群で45.6±5.4,P群で39.8±8.4と,いずれも3群間で有意差を認めなかった.なお,年齢はW群で130.7±66.0ヵ月,S群で60.0±31.4ヵ月,P群で71.7±35.0ヵ月と,W群とS群,W群とP群で有意差を認めた.また,体重はW群で38.5±23.7kg,S群で18.4±6.2kg,P群で19.7±8.5kgと,W群とS群,W群とP群で有意差を認めた.その他,手術時間,体外循環時間,心停止時間では有意差を認めなかった

  • 文献概要を表示

71歳男性,72歳女性.いずれも急性心筋梗塞に対する緊急開心術後,人工心肺からの離脱困難なため,出血コントロール目的にheparin sodiumu非投与下で経皮的心肺補助装置(PCPS)を実施した.2例ともPCPS回路にはキャピオックスEBSを使用し,大腿動静脈には15Fr送血管と18Fr脱血管を経皮的に挿入した.輸血や輸液を十分に行い,heparin sodium非投与の間はPCPS流量を2.5 l/分に維持するように努めたが,術後の出血量は多く,それぞれ8時間後,16時間後に再開胸止血術を施行した.その後,出血は著明に減少して循環動態も安定し,血栓塞栓症などの合併症もなく経過した.流量を維持すればheparin sodium非投与でも長時間補助が可能であることが示唆された

  • 文献概要を表示

69歳男性(症例1),66歳女性(症例2).いずれも咳嗽を主訴とした.喀痰培養にてMOTT陽性で,PCR法でM.aviumが検出された.胸部X線,CT所見で小型肺癌が疑われ,胸腔鏡下部分切除による肺生検を行った結果,いずれも肺腺癌と診断された.胸腔鏡補助下に症例1は上葉切除+ND2aを,症例2は下葉切除+ND2aを施行し,病理組織学的に症例1は低分化型肺腺癌,症例2は高分化型肺腺癌の確定診断を得た.いずれも術後6ヵ月の喀痰培養はMOTT陰性であった

  • 文献概要を表示

50歳男性.幼少時に心雑音を指摘されるも放置し,全身倦怠感が出現し,カテーテル検査で左室右房交通症,大動脈弁閉鎖不全症(AR),僧帽弁閉鎖不全症(MR)と診断され,手術目的に入院となった.入院時,経食道心エコーでは重度AR,MRに加え,左室右房間のシャントフローを認め,心カテーテルでは左室拡大,右房にて酸素飽和度の上昇を認めた.以上より,先天性左室右房交通症を伴った連合弁膜症と診断し,手術を行った.術中所見では,左室右房交通孔を大動脈弁側より観察すると,右無冠尖交連部より3mm左室側に,黄白色石灰化した12mm径の突出として認め,交通孔を直接閉鎖後,大動脈弁,僧帽弁を切除し,二弁置換術を行った.術後,完全房室ブロック合併によりペースメーカー挿入を要したが,術後6ヵ月の現在,社会復帰している

  • 文献概要を表示

56歳男性.胸痛発作を主訴に,急性心筋梗塞の診断で緊急入院となった.心カテーテルにて#6:100%,#11:99%,#4PD:90%の重症3枝病変が判明し,ほぼ左冠状動脈主幹部(LMT)完全閉塞に準ずる病変であった.そこで,大動脈内バルーンパンピングとPTCRを併用し,責任冠状動脈の再灌流と血行動態の改善を得た後,心拍動下に緊急CABGを施行した.術後造影でCABGグラフトは良好に開存し,左室駆出率も52%と良好で,心エコー検査では術前akineticであった中隔から前壁運動の著明な改善を認めた

  • 文献概要を表示

17歳男性.2歳時より先天性大動脈弁閉鎖不全症(AR)の経過観察中であったが,心カテーテルにてARの進行を認め,手術目的で入院となった.入院時,心電図は洞調律で,左室肥大所見を認め,心エコーでは左室拡張径の拡大,心室中隔と左室後壁の跛行を認めた.大動脈弁尖は3尖で,右冠尖を主体とする弁尖の肥厚,萎縮を認めたが,大動脈弁を介しても圧較差はなく,左室駆出率は56%であった.以上より,ARに対してglutaraldehyde処理自己膜を用いたleaflet extension techniqueを行った.術後経過良好で,術後8日目の心エコーでは左室拡張径と収縮期径の改善がみられ,術後4ヵ月経過した現在,ARの進行はなく社会復帰している

  • 文献概要を表示

61歳男性.増悪する労作時呼吸困難を主訴に,心電図,経胸壁心エコーにて心房細動(AF),心房中隔欠損症(ASD)と診断した.AF持続期間は約1年と推定され,短絡量に比較し症状が高度なことから,心不全の発現にはAFの発生が大きく関与したものと考えられた.そこで,ASD,AFに対しパッチ閉鎖とともにradiofrequency modified maze手術を施行した.手術に際しては,心房性Na利尿ペプチドなどのホルモン分泌能を考慮して両心耳を温存し,左房は肺静脈隔絶のみを行った.術後は体外循環離脱直後より洞調律を回復し,術後10ヵ月の現在,無投薬で洞調律を維持している

  • 文献概要を表示

34歳男性.Stanford B型解離の経過観察中に,突然前胸部痛が出現し,緊急入院となった.既往歴に慢性腎不全があった.入院時CTでは胸・腹部大動脈径の拡大を認めた.入院後に行ったfollow-up CTでは徐々に上行・弓部大動脈の拡大がみられ,MRIにて上行~弓部の逆行解離が確認された.しかし,大動脈逆流,心タンポナーデは認められなかったため,二期的大動脈亜全置換の方針とした.第一期手術では上行・弓部置換を施行し,3週間後に第二期手術として胸・腹部大動脈人工血管置換術を行った.術後は血圧を高めに維持する管理を行い,第二期目術後は透析の離脱に約2ヵ月を要したが,術後造影にて各分枝への血流を確認後退院となった

  • 文献概要を表示

23歳男性.患者はlipomatous hypertrophy of the interatrial septum(LHIS)の経過観察中に体動時前胸部違和感が出現し,精査加療目的で入院となった.心エコー,MRIでは心房中隔および右房後壁を中心に全周性の著しい脂肪腫塊を認め,これによる大動脈閉鎖不全(AR)を中等度認めた.心カテーテル検査では,右室造影にて右室流出路に茎を有する移動性腫瘤の主幹肺動脈への嵌頓を認めた.心房中隔生検では悪性所見は認めなかったが,腫瘍の増大によりARの増強や腫瘍塞栓の可能性が考えられたため,手術を行った.手術所見では心房中隔と右房後壁の脂肪腫をキュサーにて吸引除去後,右室流出路壁の分葉性腫瘍を切除した.病理組織学的に右室流出路の腫瘍は脂肪肉腫と診断された.術後,軽度のAR残存を認めたが,術後12ヵ月経過した現在,再発はみられない

  • 文献概要を表示

日齢37日の女児.日齢36日に急激な呼吸状態の悪化を認め,近医で三心房心を指摘され,著者らの施設へ搬送となった.心カテーテル検査の結果,重症肺高血圧症を伴った三心房心(左上肺静脈の無名静脈への灌流異常合併)と診断し,緊急手術を施行した.手術所見では,左心房内の異常隔壁を可及的に切除後,他に心内の解剖学的異常がないことを確認し,手術を終了した.術後,肺高血圧症の遷延がみられ,経管での栄養を開始し,併せてprostacyclinの内服治療を行ったところ,循環動態の著明な改善を認め,人工呼吸器からの離脱が可能となった.退院時には心エコー上RVP/LVP 0.5まで改善した

  • 文献概要を表示

63歳男性.患者は咳嗽および血痰を主訴に,原発性肺扁平上皮癌Stage IIBと診断し左下葉切除ND2aの手術を行った.しかし,術後2ヵ月目に貧血の増強を認め,上部内視鏡検査で十二指腸球部に出血性の腫瘍が確認された.腹部CTでは,十二指腸球部から下行脚に腫瘤影があり,副腎転移もみられた.十二指腸腫瘍生検の結果,肺癌の十二指腸転移と診断され,輸血などの対症療法を行ったものの,肺炎を併発し徐々に全身状態が低下すると共に術後5ヵ月目に死亡となった

  • 文献概要を表示

48歳女性.患者は左鼠径部滑膜肉腫に対する腫瘍切除術,広範子宮全摘術後の12年後に胸部X線で異常陰影を指摘され,著者らの施設へ紹介入院となった.入院時,胸部X線で左中肺野縦隔側に6cm大の腫瘤陰影を認め,胸部CTでは左舌区に心外膜に接する腫瘤陰影が認められた.洗浄細胞診にて分化型腺癌または小細胞癌が疑われ,手術を行った結果,術中迅速病理診断にて滑膜肉腫の肺転移の診断が得られたため,左上葉区域切除術を施行した

  • 文献概要を表示

45歳女性.患者は右側胸部痛を主訴に,近医で胸膜炎が疑われ,著者らの施設へ紹介入院となった.入院時,腫瘍マーカーのSLXが軽度上昇を示し,胸部X線では右胸水の著明な増加を認め,ドレナージを行ったところ,血性胸水がみられ,細胞診はclass IIであった.胸部CTにて右胸腔内の胸壁に接する58×42mm大の腫瘤を認め,CTガイド下生検にて限局性胸膜中皮腫が示唆されたが,悪性の可能性も考慮し手術を行った.手術所見では腫瘍の肺内浸潤あるいは肺内発生が疑われ,腫瘍・胸膜・右肺下葉合併切除を行った.摘出検体では腫瘍は肺に被包されていたが連続性はなく,病理組織学的に限局性線維性中皮腫と診断された

  • 文献概要を表示

53歳女性.患者はCTによる胸部検診で両側肺に多発性の小結節陰影を発見され,入院となった.既往歴として,40歳時に子宮筋腫のため子宮全摘出術を受けた.胸部単純X線では明らかな異常はみられず,胸部CT所見で右肺に4個,左肺に2個,直径5mm程度の辺縁明瞭な小結節陰影を認めた.以上より,原発巣不明の転移性肺腫瘍を疑い,胸腔鏡補助下に手術を行った.手術所見では左肺2個の腫瘤を切除し,病理組織学的に子宮筋腫からの転移性良性平滑筋腫と診断された.術後経過良好で,右側の腫瘤については術後5ヵ月の現在増大傾向もなく,経過観察中である

  • 文献概要を表示

15歳男子.患者は発熱と咳嗽を主訴とした.近医で縦隔原発の非精上皮腫性胚細胞腫瘍(NSGCT)と診断され,CDDP,VP16,DXRによる化学療法を2クール施行後,手術目的で著者らの施設へ入院となった.前医では腫瘍マーカーのAFPがやや高値を示したが,入院後には正常域まで低下がみられたため,腫瘍を含め肺合併切除を行った.病理組織学的に腫瘍は軟骨・脂肪・扁平上皮・膵組織を含むmature teratomaと卵黄嚢癌からなり,NSGCTと診断された.術後,化学療法を1クール追加し,15ヵ月経過した現在,再発の徴候なく生存中である

基本情報

24329436.57.02.cover.jpg
胸部外科
57巻2号 (2004年2月)
電子版ISSN:2432-9436 印刷版ISSN:0021-5252 南江堂

文献閲覧数ランキング(
5月18日~5月24日
)