胸部外科 78巻1号 (2025年1月発行)

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特集　Reduced-port RATSの実際―コツとピットフォール

特集「Reduced-port RATSの実際―コツとピットフォール」によせて千田　雅之 78巻1号 , 2025年1月 , pp.3

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本邦の呼吸器外科領域にロボット支援下手術（RATS）が導入されて以来，その術式は米国で確立された5ポートが主流であった．胸腔鏡補助下手術（VATS）では3ポートや単孔なのに，RATSで5ポートの穴を開けることに疑問を持った外科医も相当数いたことであろう．そういった中で近年，RATSにおいてもポート数を減らすreduced-port RATSが広がってきている．

1. 二孔式RATS

新しい二孔式RATSのセッティングと実際江花　弘基 , 市場　大貴 , 荒川　智嗣 , 小林　亜紀 78巻1号 , 2025年1月 , pp.4-9

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近年の医療機器の進歩，ならびに腫瘍学的なエビデンスの構築により1），胸部外科領域ではより低侵襲な手術としてreduced-port surgery（RPS）が注目され増加傾向である．従来の開胸手術から胸腔鏡補助下手術（video-assisted thoracic surgery：VATS），そして2018年からはロボット支援下手術（robot-assisted thoracic surgery：RATS）が加わり，現在では術式が多様化している．

二孔式RATSの初期経験鈴木　潤 , 渡辺　光 , 捧　貴幸 , 阿部　昂平 , 星島　一允 , 安田　佐梨 , 塩野　知志 78巻1号 , 2025年1月 , pp.12-17

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近年，本邦での呼吸器外科領域におけるロボット手術は急速に広まっている．特に肺癌に対するロボット支援下手術（RATS）は2022年に年間6,500例以上が行われており，今後のさらなる増加が見込まれる1）．

Reduced-port RATSの工夫松﨑　智彦 , 日下田　智輝 , 松尾　一優 , 真板　希衣 , 中野　圭 , 小野沢　博登 , 壺井　貴朗 , 橋本　諒 , 和田　篤史 , 有賀　直広 , 増田　良太 , 岩﨑　正之 78巻1号 , 2025年1月 , pp.18-23

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2018年4月より呼吸器外科領域のロボット支援下手術（RATS）が保険収載され手術症例が増加しており，今後もさらに増加するものと予想される．RATS肺葉切除術の保険点数が胸腔鏡下肺葉切除と同じであるため，コストの面では不利であるが，開胸，胸腔鏡に続く第三のアプローチ方法として注目されている．

ロボット支援下肺切除術におけるreduced-port RATSの試み中島　崇裕 , 井上　裕道 , 須鴨　耕平 , 梅田　翔太 , 有賀　健仁 , 山中　秀樹 , 蓮実　健太 , 井上　尚 , 前田　寿美子 , 千田　雅之 78巻1号 , 2025年1月 , pp.25-31

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本邦の胸部外科手術の状況をまとめた日本胸部外科学会が発行する“Thoracic and cardiovascular surgeries in Japan during 2021”1）では，ロボット支援下手術（robotic-assisted thoracic surgery：RATS）がはじめて統計上記載され，原発性肺悪性腫瘍手術47,029例に対して4,253例（9.0％）のRATSが行われており，胸腔鏡補助下手術（VATS）34,458例（73.3％）と合わせると，原発性肺悪性腫瘍に対する手術のうち82％超が鏡視下低侵襲アプローチで行われていた．最近ではより多くの症例でRATSが選択される傾向にあり，解剖学的肺切除におけるRATSの割合は今後増加していくことが予想される．

2. 単孔式RATS

da Vinci Xiシステムを用いた単孔式ロボット支援下呼吸器外科手術栃井　大輔 , 須田　隆 78巻1号 , 2025年1月 , pp.33-38

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現在，ロボット手術が呼吸器外科領域でも広まっているが，人間の手で行われている胸腔鏡補助下手術（video-assisted thoracic surgery：VATS）が3～4ヵ所にポートを挿入して行われるのに対し，ロボット支援下手術（robot-assisted thoracic surgery：RATS）では5ヵ所にポートを挿入する必要があり，欠点の一つとなっている．2011年にスペインのGonzalez-Rivasらは肺癌に対する新しい胸腔鏡手術アプローチとして単孔式手術を報告した1）．4 cm以下の傷一つで行うこの手技は，使用する肋間が一つであるため胸部手術後の慢性痛である開胸術後疼痛症候群の発生は減少すると報告されている2，3）．しかしながら一つのポートからすべての操作を行わなくてはならないという操作性の制限から，吻合など複雑な手技を行うことは困難である．

コンソーラーとbedside surgeonが協調して行う単孔式RATS 田根　慎也 78巻1号 , 2025年1月 , pp.39-43

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ロボット支援下手術（robot-assisted thoracic surgery：RATS）はここ数年で本邦でも急速に広がっている．RATSの利点としては，3次元の拡大視野で精緻な操作が行えるため，剝離操作，肺門や縦隔のリンパ節郭清を高い精度で行える点があげられる．また，肺癌に対する薬物療法が大きく進歩する中で進行癌でも威力を発揮し，特に気管支形成術，肺動脈形成術を行う場合においては，卓越した縫合操作を，開胸手術を行うことなく容易に行うことができることは大きな利点である．しかしながら，大部分のRATSを行っている施設ではメーカーが推奨する米国式の5ポートを使用した手術で行っており，従来の胸腔鏡手術よりポート数が増加する．このため，RATSにおいてポート数を減らす試みがなされてきている．

単孔式RATS肺切除術17例の経験と工夫石川　善啓 , 亀田　洋平 , 山田　二三歩 , 稲福　賢司 , 根本　大士 , 浦田　望 , 渋谷　駿 , 鏑木　結衣 , 齋藤　綾 78巻1号 , 2025年1月 , pp.44-49

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単孔式ロボット支援下（URATS）肺切除術はGonzalez-Rivasらが報告し，中華人民共和国や欧州で普及しつつあるda Vinci Xiシステム（Intuitive Surgical社）による新たな肺切除術のアプローチである1，2）．われわれはGonzalez-Rivasの主催したセミナーで直接指導を受け，独自の工夫も加えて2022年12月～2024年3月にURATS肺切除術を17例に実施したので報告する．

ソロサージャリーで行う単孔式RATSと二孔式RATSの実際金田　浩由紀 , 中野　隆仁 , 内海　貴博 , 丸　夏未 , 松井　浩史 , 小林　晶 , 村川　知弘 78巻1号 , 2025年1月 , pp.50-55

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近年，reduced-portロボット支援下手術（RATS）が行われるようになってきたが，2021年にはda Vinci Xi（Intuitive Surgical社）を用いた単孔式RATSが報告され1），短期予後も報告されている2）．本稿では単孔式RATSと二孔式RATSについて，当院での手技を中心に解説していく．

3. 三孔式RATS

良性縦隔腫瘍に対する単孔式RATSと肺悪性腫瘍に対する三孔式RATS 道免　寛充 , 成田　翔 78巻1号 , 2025年1月 , pp.61-66

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呼吸器外科領域におけるロボット支援下手術（robot-assisted thoracic surgery：RATS）が2018年4月に保険適用となって以来，安全な導入を重要視するために日本においては5個あるいは6個の創を作成する方法がとられてきた．近年では低侵襲性を追求する観点から，創数を減ずるreduced-port RATSが注目されつつある．本稿では当院の取り組みを紹介する．

RATSの低侵襲化への取り組みと課題清水　大貴 , 山中　崇寛 , 佐田　諭己 , 豊田　行英 , 稲毛　輝長 , 田中　教久 , 鈴木　秀海 78巻1号 , 2025年1月 , pp.67-72

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肺悪性腫瘍に対するロボット支援下手術（robot-assisted thoracic surgery：RATS）は，2018年に肺葉切除術が保険収載され，2020年に区域切除術がさらに加わり，急速に普及している．当施設では2018年の保険収載を契機に肺悪性腫瘍に対するRATSを導入し，これまでポート配置の最適な方法を模索しながら試行錯誤を繰り返してきた．

まい・てくにっく

上大静脈置換術のコツ松本　桂太郎 , 常塚　宣男 78巻1号 , 2025年1月 , pp.10-11

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上大静脈（SVC）置換術は，特に浸潤型胸腺腫，胸腺癌など前縦隔腫瘍で必要となることが多い．われわれが行っている方法，注意点などを述べる．

１枚のシェーマ

私の最終執刀手術渡邉　善則 78巻1号 , 2025年1月 , pp.24

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心筋梗塞後心室中隔穿孔の急性期手術に対する，縫合部の負荷が均等となる術式として，左室自由壁の健常な部位から乳頭筋直下と大動脈弁直下の中隔にフラットな円形の縫合ラインにプレジェット付き3-0モノフィラメント糸のマットレス縫合を全周におき，60 mmの円に切り抜いたウシ心囊膜パッチ外則を10 mm織り込み，直径約50 mmのお椀状のパッチを作製し縫着する術式を考えていた（図1）．2017年に低心拍出量症候群（LOS），多臓器不全（MOF）の状態となった症例に施行し，手術時間5時間35分，体外循環時間2時間35分，大動脈遮断時間1時間42分で手術を終了し，患者は無事独歩で退院した．奇しくもこの手術が，私の最終執刀手術となった．

胸部外科女性医師のつぶやき

紫式部によせて杉山　佳代 78巻1号 , 2025年1月 , pp.32

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女性外科医として生きることは常に見えない差別との戦いです．初めての患者さんのご家族から「何，あんた医者なの」みたいに横柄な態度を取られることもしばしばですし，患者さんからの「先生，女性なのにすごいね！」という褒め言葉でさえ，見方をかえれば差別です．そして何より，これまでに出会ってきた心臓外科医にはこの差別意識を隠そうともしない人も大勢いました．

連載　未来の専門医を育てる！

チームワークで築く心臓血管外科の未来―東京科学大学の教育プログラム長岡　英気 78巻1号 , 2025年1月 , pp.56-60

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本学における各学年への教育内容は次のようなものである．まず3年次に臨床医学講義として心臓血管外科学の講義があるが，ここまでは他大学の教育カリキュラムと同様であろう．4年次は少し特殊で，プロジェクトセメスター（プロセメ）という研究を中心とした比較的自由度の高い約4ヵ月間が設けられている．心臓血管外科に興味のある学生が数名当科に配属され，各人が研究課題をもち，臨床もしくは基礎の研究を行い，結果を期間終了後に発表するというものである．この間に動物実験に関わることができれば，外科手技の面白さや奥深さに触れることができる．スタッフと交流できることも心臓血管外科を身近に感じることができるよいチャンスである．実際にこのプロセメの卒業生で当科に入局する者は少なくない．

症例

大動脈解離術後早期に上腸間膜動脈解離および腸管虚血をきたした1例髙橋　巴久 , 諸隈　宏之 , 蒲原　啓司 78巻1号 , 2025年1月 , pp.74-78

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はじめに　Stanford A型急性大動脈解離（AAD）に対する外科治療の第一の目的は救命である．したがって術式選択は，術前状態や内膜の亀裂（エントリー）の位置，解離の進展度などから適切に判断する必要がある．われわれは上行大動脈および弓部大動脈にエントリーを有するAAD患者に対して，術前ショック状態であったことから上行置換術を施行し，手術から1週間後に上腸間膜動脈（SMA）解離および腸管虚血をきたした症例を経験したので報告する．

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Contents 78巻1号 , 2025年1月 , pp.1

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編集メモ 78巻1号 , 2025年1月 , pp.80

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目次 78巻1号 , 2025年1月

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胸部外科医の散歩道

ゴルフのススメ鈴木　孝明 78巻1号 , 2025年1月 , pp.73

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パリオリンピックの男子ゴルフで松山英樹選手が銅メダルを獲得しましたね．テレビでも中継され，観戦した方も多いのではないでしょうか．コロナ禍で他人との接触が少ない屋外スポーツということで，ゴルフブームが再来しました．私は時間が許せばゴルフをしています．歳を重ねて飛距離が落ちたかというと逆で，最近の方が球は飛んで曲がりません．その秘密は道具の進化です．最近のクラブは芯を外して当たっても，真っ直ぐ遠くに飛びやすく設計されています．まさにサイエンスの力でまだまだ楽しめそうです．

基本情報

胸部外科
78巻1号
(2025年1月発行)

電子版ISSN：2432-9436 印刷版ISSN：0021-5252 南江堂

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