消化器画像 3巻1号 (2001年1月)

特集 肝細胞癌との鑑別を要する良性腫瘤―画像と病理

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 肝細胞癌の診断はわが国の日常の画像診断の中では大きな比重を占める重要なものである.本特集の意図は単純に肝細胞癌と鑑別の必要な疾患をまとめようとするものであり,特に鑑別が要求される良性肝腫瘤に的を絞ったものである.すでに多くの報告や総論があるがベッドサイドですぐに参考にできるようなmini-encyclopedia的な特集と理解して頂きたい.

 しかしながら,“肝細胞癌と鑑別を要する良性肝腫瘤”というタイトルは単純なようで単純ではない.すでに多くの報告でも明らかなように,“肝細胞癌の画像所見は極めて多彩”である,からである.画像が表現するものは病理像であり,したがって,当然のことながら種々の病理学的亜型あるいは変性を腫瘍内に多く含有する場合はその画像は特異なものとなる.たとえば,肝細胞癌の場合は,腺維性成分の多いものは転移性肝癌や胆管細胞癌と画像は類似し,内部に広範な壊死を伴うものは他の壊死性腫瘍や膿瘍,陳旧性血腫,虚血性偽小葉壊死などと鑑別は容易ではない.その他,強度の脂肪沈着を認めるもの,強度の銅沈着を伴うもの,胆管浸潤を伴うもの,石灰化を伴うもの,なども特異な画像を呈する.一方,乏血性の高分化肝細胞癌は種々の肝細胞性過形成性結節や他の乏血性肝腫瘤との鑑別が容易ではない.極論すれば,特に肝硬変例では,すべての結節性病変が画像診断上肝細胞癌との鑑別が必要と言える.したがって,mini-encyclopediaを目指すのであればこれらをすべて網羅する必要がある.表(次頁)にこれらをまとめてみたが大別すれば,①多血性の古典的肝癌と鑑別を要するもの,②乏血性の高分化肝癌と鑑別を要するもの,③非典型的病理像を示す古典的肝細胞癌と鑑別を要するもの,に大別できるであろう1)

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 疾患概念 肝海綿状血管腫は日常診療で非常によく遭遇する良性腫瘍であり,典型例では,その特徴的所見から画像診断は容易である.しかし,時に種々の変性を伴うものや,増大傾向を示すもの,動脈―門脈短絡を伴うものなど,非典型的な画像所見を呈するものが存在する.血管腫自体の頻度が高いため,これらの非典型例と他の肝腫瘍との鑑別が臨床上問題となることも少なくない.肝腫瘍の診断の際には,非典型的な肝血管腫の存在も考慮に入れ,複数のモダリティの併用による総合的な評価が重要となる.

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 疾患概念 限局性結節性過形成(focal nodularhyperplasia)は正常肝細胞の過形成変化による良性病変である.原因は不明であり,若年から中年に好発し,女性に多いとされている.非硬変肝に発生するが,先天性門脈欠損症の肝内に好発することも知られており1),その成因に肝内血流異常が関与している場合があると考えられている.臨床的には無症状で偶然発見されることが多く,腫瘤が大きい場合に腹部腫瘤,肝腫大,腹部不快感,腹痛を認めることもある.悪性化もなく,肝細胞腺腫のように腫瘍内あるいは腹腔内出血を生じることも稀であるため,治療を要することも稀である.

肝血管筋脂肪腫 松崎 健司
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 疾患概念 肝血管筋脂肪腫は稀な良性の間葉系腫瘍であり,組織学的には血管成分,平滑筋成分,脂肪成分がさまざまな割合で混合して認められる.中年女性に好発し,小病変では症状に乏しく偶然に発見されることが多い.結節性硬化症との関連は10%程度とされ,多発傾向および腎血管筋脂肪腫の合併をみる.自然破裂の報告例は少なく悪性化は極めて稀なため,診断がつけば通常は積極的な治療を行わず経過観察となる.画像上は腫瘍内の脂肪成分の同定が重要であり,dynamic studyや血管造影による多血性と,造影後期相への増強効果の遷延が診断の一助となる.

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 疾患概念 肝細胞腺腫は非硬変肝に生じる肝細胞由来の稀な良性腫瘍で20~40歳の女性に好発する.原因はいまだ不明であるが,経口避妊薬の服用と発生との間に密接な関連がみられるほか,再生不良性貧血に対するホルモン療法後や糖尿病にも合併することが知られている.

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 疾患概念 肝内胆管腺腫は稀な肝腫瘍である.良性で臨床症状を呈することは少ない.開腹術あるいは剖検時に偶然発見されることが多いが,画像検査により発見された報告も見られる.

 本症の特徴は,肝辺縁に位置し,円形の境界明瞭で小さな腫瘤である.Vascularityはさまざまであるが,hypervascularを示し遷延性あるいは遅延性濃染を示す場合が多い.存在部位や大きさが災いし,画像で捉えにくいことがあり,読影の際には注意が必要である.鑑別疾患としては,肝細胞癌のほか転移性肝癌や肝内胆管癌などが重要である.

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 疾患概念 肝腫瘤性病変における非上皮性良性腫瘍としては血管腫が最も頻度の高いものであるが,それ以外にもリンパ管腫,平滑筋腫,神経鞘腫,脂肪腫などの稀なものも発生し得ることが知られている.これらの多くは臨床症状を呈することなく偶然に発見される.その発生頻度において性差はなく,年齢も多様である.これらの中には脂肪を有するもの,多血性のもの,嚢胞性変化を主体とするものなどが存在し,したがって画像上肝細胞癌をはじめとする悪性腫瘍との鑑別診断のひとつに加わり得る.

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 疾患概念 B型,C型肝炎ウイルスマーカー陰性の慢性アルコール性肝障害,特に肝硬変や肝線維症では過形成結節を生じることがある.本結節の多くは結節内に異常脈管が存在するため画像診断上はhypervascularな結節として認められることが多く,肝細胞癌(hepatocellularcarcinoma:HCC)や限局性結節性過形成(focalnodular hyperplasia:FNH)など動脈血流支配が優位な腫瘤性病変との鑑別が問題となる.本結節の病理組織学的な位置付けは現時点では明確ではなく,前癌病変であるか否かも解明されていない.したがって,B型,C型肝炎ウイルスマーカー陰性の慢性アルコール性肝障害に結節性病変をみた場合は生検を含めた慎重な対応が必要である.

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 疾患概念 肝部下大静脈の閉塞,肝静脈の閉塞による血流異常を主たる病態とするBudd-Chiari症候群の発生頻度は低いこともあり,これに合併する肝腫瘍に遭遇する確率も低い.Budd-Chiari症候群に合併する肝腫瘤には肝細胞癌と再生結節が知られている1~4).これら肝腫瘍の発生原因は確立されていないが,臨床的には両者の鑑別は患者の予後を占うのみならず,治療方針の決定にも極めて重要である.ここでは再生結節の画像の典型的な症例を提示するとともに,肝細胞癌との鑑別点について記載する.

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 疾患概念 肝結節性再生性過形成(nodularregenerative hyperplasia of the liver;以下NRH)は1959年,Steiner1)の提唱した病理学的概念で,肝にびまん性に生じる肝細胞の過形成から成る結節で,結節には線維増生および被膜の形成は認められず,周囲の圧迫による萎縮した肝細胞によって境される稀な病態である.NRHの発生機序としては肝内における血流分布の不均衡やインスリンなどの肝細胞増殖因子の関与が指摘されているが,未だに統一された見解がないのが現状である.また,基礎疾患が不明なものから,膠原病,血液疾患などの合併の見られるものがあり,臨床的には非常に多様性に富んだ疾患と言える.

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 疾患概念 Inflammatory pseudotumor(炎症性偽腫瘍;以下IPT)は,原因不明の肉芽組織からなる腫瘤性病変であり,原発臓器としては肺が最も多く,眼窩,口腔内,耳下腺胸膜,肝,胃,卵巣,後腹膜などの多臓器に及ぶことが知られている.肝IPTは,1953年にPackらによって初めて報告され1),線維化の強い悪性腫瘍との鑑別がしばしば問題となる稀な疾患である.

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 疾患概念 肝肉芽腫(hepatic granuloma)とは肝内に肉芽腫を形成する疾患を総称する.原因として,細菌性肝膿瘍の慢性化が最も多いが,結核,寄生虫,真菌などの感染やサルコイドーシスなどの全身性疾患に伴うものが考え得る.画像所見は病期により異なり,新生血管に富んだ時期は早期相から濃染し,その造影効果は遷延する.一方,線維化が進行し肉芽組織が瘢痕化すると,新生血管の減少と相まって遅延性濃染を示すようになる.膿瘍腔はT1強調画像で低信号,T2強調画像で高信号を示すが,膿瘍壁は線維化が高度な場合,T2強調画像で明瞭な低信号を示す.このように画像所見は非特異的ではあるが,膿瘍壁や肉芽組織の線維化を示す像が比較的特徴的であると言える.

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 疾患概念 Peliosis hepatisは,肝,脾の実質内に不規則な血液貯留腔(Peliotic cavity)がび漫性に広がる病態で,悪性腫瘍や結核などの消耗性疾患,AIDS,蛋白同化ステロイドなどとの関係が指摘されている1),軽度の肝機能異常のみ,あるいは臨床症状をほとんど認めないものから,著明な肝脾腫,急性腹症,肝不全,腹腔内出血によるショックなど致死的な場合まで臨床像は様々である2),原因は明らかにされていないが肝細胞壊死,血管炎や類洞内皮障害などが指摘されている.報告例の多くは病変が肝全体に広がり,造影CTや血管造影においてpe―liotic cavityに明瞭な早期濃染を認めないものが多い.ここでは多血肝腫瘍様の所見を呈した1例を紹介した.

限局性脂肪肝 吉川 淳 , 松井 修
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 疾患概念 肝実質にび漫性に脂肪が沈着する脂肪肝(fatty liver)は程度の差はあるが比較的高頻度に認められ,その診断は比較的容易である.一方肝実質に局所的脂肪化が生じた場合は,限局性脂肪肝(focal fatty liver)(change/deposition)と呼ばれ1),多くは門脈本幹以外の静脈血流が直接肝実質に流入する異所性静脈還流(aberrantvenous drainage)が原因となり肝被膜下に出現する.こうした異所性静脈還流と関係なく出現した場合は,脂肪化をもつ肝細胞癌や脂肪を構成成分とする腫瘍(lipomatous tumor)との鑑別が問題となる.

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 疾患概念 Focal spared areaとは脂肪肝における脂肪化を欠く,あるいはより弱い部を指す.多くは肝門,胆嚢周囲に接する肝表面に連なって生じる.門脈本幹を経由しない消化器起源の静脈系が肝に直接流人し,小腸吸収の栄養素を持たぬ静脈血が門脈血に代わって供血されることが主因である(‘nonportal’sp1anchnic venoussupply).また門脈血を欠き動脈血のみが供血する部(広義の動門脈瘻)ではこの門脈系の破格によらずどの部位にも生じ得る.時に原因の推定できぬものもある.脂肪肝に生じた腫瘍との鑑別は部位(前述),形態(肝辺縁に広く接し,楔型,菱型でよりギザギザとした輪郭で円形とは異なる)より多くは容易だが,非定型例ではdynamic study,カラードプラ,MRI oppoged im―age,さらに生検も必要となる.

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 疾患概念 肝偽脂肪腫は稀な肝良性腫瘍様病変であり,その成因については明らかではないが,大腸の脂肪垂が捻れて遊離し肝表に着床して形成されると考えられる.一般に臨床症状を呈することはない.頻度については,剖検にて0.2%と報告されている.背景因子として,男性,肥満,アルコール多飲歴,腹部手術歴などがあげられるが,こういった背景因子がほとんど見られないとの報告もある.腫瘤は,肝被膜直下で右側に多く,孤立性で多くは2cm以下で石灰化を伴うことが多い.病理組織学的には,黄白色から灰色の腫瘤で,線維性の厚い皮膜に囲まれ,内部は変性,壊死,硝子化,石灰化を伴った脂肪織より成っている.

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 疾患概念 大循環系や消化管系の静脈が門脈本幹を介さず直接肝実質の一部や末梢門脈枝に流入することがあり,その部分を門脈本幹外静脈還流域と呼ぶ.いわゆるSappeyの静脈,胆嚢静脈や右胃静脈が有名である.門脈本幹外静脈還流域は,CTAP上は門脈還流欠損域を呈し,CT,MR,超音波検査では,限局性脂肪沈着や限局性低脂肪化を示すことが多く,悪性腫瘍との鑑別が問題となることがある.門脈本幹外静脈還流域が肝硬変に合併した場合は,過形成結節様を呈することがあり,肝細胞癌との鑑別が重要である.

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 疾患概念 胆管性過誤腫(biliary hamartoma)は,肝臓に認められる比較的まれな疾患であり,WHO分類では腫瘍類似性病変に分類されている.臨床的には無症状であり,他の疾患の検査時や剖検時に偶発的に発見されることが多い.成人型多嚢胞腎との合併も知られている.病理組織学的には,胆管系の奇形の一種と考えられており,拡張した小胆管様構造の集簇として認められる.胆管との交通性は認められない.画像上では比較的典型的な所見を呈するものの,発見時の病態により鑑別診断に苦慮する場合がある.

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 疾患概念 異所性の副腎組織は,腹腔内のみならず,肺,脳,脊髄でも認められることがある1).Adrenal rest tumor of the liverは副腎組織(皮質)が肝被膜内(肝実質内)に異所性に存在する病態であり,極めて稀な肝腫瘍である2).この診断を決定するには副腎が肝外の傍腎の正常位置に存在し,肝と副腎の癒合が除外されていることが必要である.また,転移性の肝腫瘍でないことも明らかにされている必要がある.多くは良性の非機能性腺腫であるが,ときとしてクッシング症候群などの内分泌異常を伴なった症例も報告されている2,3).

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 疾患概念 偽リンパ腫(pseudolymphoma)は,他にreactive lymphoid hyperplasia, reactive lympho-reticular hyperplasiaなどと呼称されることがある病変である.悪性リンパ腫との境界病変とされ,リンパ球が増生し,活動性の胚中心をもつリンパ濾胞を多数形成する良性病変である1)

 原因は不明であるが,自己免疫疾患,シェーグレン症候群などとの関連が示唆されている.他には抗てんかん剤使用に続発した報告もある.肝に発生するものは極めて稀である.

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 疾患概念 Edmondsonが,1957年に進行した硬変肝における虚血性壊死を報告し虚血性偽小葉壊死と名付けた.このような病変には消化管大量出血,ショックや糖尿病性ケトアシドーシスなどの既往歴が見られる.その他,繰り返す肝塞栓術,硬変肝における局所性の循環不全や何らかの毒性作用の可能性が一因として考えられる.病理組織学的には,数個の偽小葉にまたがり特に小葉中心に起こる凝固壊死が特徴的である.

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 患者 57歳,男性.

 主訴 全身倦怠感,黄疸.

技術講座 超音波技術の新しい展開

EUSで胆膵をみる 山中 桓夫
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●EUSが何故必要か

 内視鏡下超音波検査(endoscopic ultrasonography:EUS)が臨床応用されて,すでに20年を経ようとしている.EUS用の機器としては,EUS専用の超音波内視鏡と内視鏡鉗子孔を通して,あるいはPTCドレナージチューブなどの細い管腔を通して必ずしも内視鏡を介さないで使用することのある細径超音波プローブが現在用いられている.これらの機器が開発される契機となったのは,超音波のもつ物理学的特性による超音波診断の欠点を補うためである.通常の体表からの超音波検査は,その簡便性と診断情報の多さから実際の診療の場に急速に広まったのであるが,反面超音波減衰や腸管ガスなどの音波伝播妨害による診断困難部の問題もクローズアップされた.胆膵系では,胆嚢管,胆嚢底部,総胆管末端部を含めた膵頭部領域および膵尾部などが診断困難部位として認識されている.これらの領域の病変が疑われる場合や,現在では胆膵の画像診断で最も詳細な描写が可能なことから,他の臨床検査で確認された病変の精密検査法として用いられている.

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Acoustic shadow (音響陰影)

 超音波が伝播するpathwayに強い反射体や吸収体があると,超音波の伝播が妨害されてその後方は無エコーまたは低エコー域になる.この現象をacoustic shadow (音響陰影)と呼ぶ(図1).消化器領域では種々の結石や石灰化病変また肋骨,消化管ガスなどの後方に現れる.肋骨や消化管ガスなどによる“音響陰影”はしばしば診断の妨げになるが,結石の場合は音響陰影の有無がポリープ様隆起性病変との鑑別に役立ち(図2),“音響陰影”の現れ方が結石の種類の判定に役立つ(本誌2巻4号411-417頁2000年参照).

 一般的に“音響陰影”は反射体の種類,大きさ,その位置などによって変化する.周知のごとく,超音波ビームは収束域では細く,その前後,すなわち探触子に近い領域と遠い領域では広くなる.このビーム内の音圧は探触子に近い領域(近距離音場)を除いては,ビームの中心部(中心軸という)が最も高く辺縁部は低い(図3d).結石などの反射体をこのビームの中心部でとらえると,エネルギーの大部分は反射して,その後方に“音響陰影”ができる(図2b,3b).反対にビームの辺縁部で結石をとらえると結石エコーは現れるが,エネルギーの大半は後方に伝わり“音響陰影”は現れない(図2a,3a).

講座 MRIの基礎から臨床応用

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はじめに

 MR用経口消化管造影剤は,消化管内を高信号にして消化管と腫瘤との位置関係の把握を主目的とする陽性造影剤としての用途と,MRCPやMR urogra-phyなどのheavy T2強調画像で消化管の信号を低下させ,目的とする胆道や膵管あるいは尿路のみの良好な画像を得ようとする陰性造影剤としての用途がある.ここでは現在市販されているフェリセレツ(R)を中心に述べたいと思う.

連載 初心者のための超音波診断―体外式US・13

腹腔の読み方 森 秀明
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腹腔の超音波解剖

 腹膜は腹腔の内面を覆う漿膜で,壁側腹膜と臓側,腹膜から成る.この壁側腹膜と臓側腹膜により囲まれた腔を腹腔と呼び(図1),結腸間膜により上結腸間膜腔と下結腸間膜腔に分けられる.上結腸間膜腔は左右の横隔膜下腔から成る.右の上結腸間膜腔には横隔膜下腔のほかに前および後方の肝下腔があり,後方はモリソン窩と呼ばれている.また上結腸間膜腔には肝,小網,胃の後方で,膵の前方に網?と呼ばれる部があり,網嚢孔により腹腔と交通している.下結腸間膜腔は傍結腸溝(傍結腸腔),結腸下腔,骨盤腔から成る.傍結腸溝は上行および下行結腸により左右に分けられ,右方はモリソン窩と交通している.結腸下腔は腸間膜根部により左右に分けられる.骨盤腔は左右の傍結腸溝と連続しており,女性では膀胱と子宮の間に膀胱子宮窩,子宮と直腸の間に直腸子宮窩(ダグラス窩),男性では膀胱と直腸の間に直腸膀胱窩が認められる.

  壁側腹膜と臓側腹膜を合わせたものを間膜と呼び,前胃間膜,後胃間膜,網嚢,腸間膜,結腸間膜に分けられる.

連載 久米エコー:手術のための立体的進展度診断

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〈連載にあたって〉

 こんにちは,二村です.名古屋大学第一外科では,特に肝胆膵領域の進行癌症例に対する拡大手術を積極的に行っています.昨今のQOLを重視した縮小手術の風潮から私たちの拡大手術に批判的な考えをお持ちの先生方もいらっしゃるとは思いますが,根治切除を行った症例の中からしか長期生存例が得られないことも事実で,全国の病院でいったん切除不能と診断された大勢の患者さんが,インターネットで当院を捜し当て,一縷の望みをかけて駆け込んできていることも事実です.これらの大手術を成功させるためには,各種画像診断を駆使した正確な術前進展度診断が必要不可欠です.体外式超音波検査(US)は肝胆膵疾患のスクリーニング検査のみならず精密検査としても有用ですが,肝胆膵領域の進行癌に対するUSによる外科的進展度診断についての解説書は皆無です.当科のUS担当の久米先生は,黙って1時問ぐらい検査を行ったかと思えばまるで腹の中に入って見てきたような診断レポートを書き上げ,実際開腹してみるとレポートそっくりだったという離れ技をやってのけるUSオタクですが,私が検査を見学していても何をポイントに何を考えながら行っているのかさっぱりわかりません.そこで今回から始める本シリーズでは,私が読者の皆さんに代わって,US施行中の久米先生から,検査のポイントと超精密USの秘訣を探ってみようと思います.

研究会紹介

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 研究会発足の背景と10年間の経緯 本研究会は1990年11月に大阪肝穿刺生検研究会として発足した.当時は各種画像診断,特に超音波診断装置の進歩により肝内の小結節性病変の検出が飛躍的に向上した時期である.質的診断のために超音波下での腫瘍穿刺生検が広がり,肝癌の早期診断,微小肝癌の診断熱が高まっていた.しかし早期で小さなものは高分化で異形性に乏しく,また種々の肝癌類似病変の存在もあり画像的にも病理学的にもその質的診断は困難であった.他方,久留米大学谷川久一教授,神代正道教授,国立がんセンター病理部の広橋説雄先生らの検討により最小肝癌の病理学的特徴が明らかにされてきており,臨床現場に即応した最小肝癌をめぐる諸問題,特に生検およびその病理所見に関して検討する場が求められていた.幸い大阪には肝臓病理に造詣の深い先生方が多く,桜井幹己先生(当時大阪市立大学病理学教授),石黒信吾先生(大阪府立成人病センター病理),岡村明治先生(当時関西医科大学中検病理助教授)および関西医科大第3内科井上恭一教授の御協力を得て,大﨑往夫(大阪赤十字病院消化器内科),春日井博志(大阪府立成人病センター第3内科),岡博子(大阪市大第3内科,現大阪市立総合医療センター消化器内科),関壽人(関西医大第3内科,現助教授),工藤正俊(神戸中央市民病院消化器センター内科,現近畿大学消化器内科教授)の5人を世話人とした.

 5年を経過した1995年12月,初期の目的は達成し得たとの認識から,対象を生検症例にとどまらず,治療も含めて広く肝癌,肝疾患とし,臨床例に則して病理と臨床とがフランクに討論する場として改組,名称を大阪肝穿刺生検治療研究会とした.

基本情報

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消化器画像
3巻1号 (2001年1月)
電子版ISSN:1882-1227 印刷版ISSN:1344-3399 医学書院

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