連載 膵癌類似病変―その臨床と病理【最終回】
膵脂肪性腫瘤(脂肪腫あるいは限局性脂肪浸潤)
山口 幸二
1
,
入江 裕之
2
,
田中 雅夫
1
1九州大学大学院医学研究院 臨床・腫瘍外科
2九州大学大学院医学研究院 臨床放射線科学
pp.797-800
発行日 2006年11月15日
Published Date 2006/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1427100237
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本連載も最終回となった.今回取り上げる脂肪腫は膵の限局性腫瘤を呈するため,膵癌との鑑別診断が問題となる.
症 例
症例 66歳,男性.
主訴 全身倦怠感,口渇.
現病歴 全身倦怠感,口渇にて当院内科入院した.血中カルシウムとPTH上昇とともに頸部のUSとCTで甲状腺左葉下極後方に1.5cmの腫瘤を認め,精査,加療目的にて転科となった.
既往歴・家族歴 特記事項なし.
理学的所見 特記事項なし.
血液検査 血中Ca:17.1mg/dl,Na:160 mEq/l,K:3.8mEd/l,Cl:108mEq/l,PTH:28,000pg/ml,インタクトPTH:720pg/ml,膵腫瘍マーカー:CEA:<0.5ng/ml,CA19-9:<6U/ml
頸部US 甲状腺左葉下極に16×10mmの低エコー腫瘤を認める.
頸部CT 甲状腺左葉下極に6~7mmの低吸収な腫瘤を認める.
腹部CT 膵頭部に低吸収域(図1)を認め,造影で明らかな濃染はみられない.
MRI 膵頭部に低吸収域(図2a~c)を認め,増強効果(図2d,e)を認めない.脂肪抑制のT1強調画像でシグナルの低下(図2g)を認め,限局性の脂肪浸潤が考えられる.
MRCP 膵管,胆管に著変を認めない(図3).
術後経過 副甲状腺腫の診断で鏡視下腫瘤摘出術を施行し,術後血中Ca値も正常化し,術後10日退院した.切除標本の病理診断は副甲状腺腺腫であった.術後2年生存中である.
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