訪問看護と介護 23巻9号 (2018年9月)

特集 「面」で支える子どもの暮らし—看護職はいかに連携することができるのか

谷口 由紀子
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医療的ケアや配慮を必要とする子どもの活動するさまざま場で、看護職は安全・健康管理を行なっています。しかし現状、それぞれの場のケアがうまくつながっておらず、「点」で展開されているもどかしさもあるのではないでしょうか。

今年度の報酬改定では、入退院支援加算、学校等と看護の連携などの「看看連携」に対し、報酬が算定できるようになりました。これは医療機関や学校、自宅、活動・遊びの場にいる看護職がつながって、子どもの暮らしを支えていく役割が求められている、すなわち「点」から「線」、そして「面」の看護への転換が期待されているのだと換言できます。

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事例から見える、医療的ケア児らの暮らしと看護

 A君は、生後3か月でデュシャンヌ型筋ジストロフィーと診断され、呼吸器を装着した。その後、経口での哺乳が困難であると診断を受け、経鼻経管栄養となったが、2歳近くまで呼吸器感染をくり返すため、退院できずにいた。ようやく状態が安定し、退院に向けた調整を開始。訪問診療と訪問看護をまずは導入し、退院することになった。

 訪問看護は入院中の在宅移行期から関わり始め、退院後2週間は連日訪問し、状態が安定するよう家族に対する助言指導を行なうと同時に全身状態の管理を行なった。A君の状態は退院後2か月で安定し、側臥位が嫌いなA君に体を動かすことの楽しさ、苦手なことの克服を通じて困難に立ち向かう力を高められるようにした。その後、座ることも大嫌いだったA君は、座位を楽しめるようになった。退院半年後からは、家族と外出することをめざし支援を開始した。

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増加する「医療的ケア」を要する子ども

 近年の周産期・新生児医療(NICU)、小児救急医療、人工呼吸器療法などの医療技術の進歩より救命・生存率が上がりました。そうしたなかで、後遺症などにより重症心身障害児は増加しています。今、全国で2万5000人前後が在宅生活をされており、その約半数が「医療的ケア」が必要と推定されています。また、筋疾患、難病などの基礎疾患を持ち「医療的ケア」を必要としながら在宅で生活を送る小児も、同様に年々増えています。

 このような状況を背景に、「医行為」の範囲の見直しなど法整備が進み、支援の輪が広がりつつあります。介護職員等によるたんの吸引等の実施に関わる制度(2012年4月施行)もそのひとつで、研修を修了すると「認定特定行為」として介護職や教員などが医療的ケア児へ対応することが可能となりました。

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 当院は鹿児島県鹿児島市に位置する地域の中核病院です。鹿児島県には、早産児や低出生体重児、病気を持つ新生児などのハイリスク新生児の治療を行なう「NICU(Neonatal Intensive Care Unit、新生児集中治療室)」を有する施設が3施設あり、それぞれが明確な役割分担の下、連携しています。

 2次施設である当院NICUは、在胎週数30週以降の早産児の急性期医療や、3次施設の空床確保のため、状態が安定した早産児の転院を受け入れ、発育・発達の支援、家族の支援、地域と連携した退院支援を提供する場として機能しています。定床は19床(NICU9床、GCU〈Growing Care Unit、発育発達支援室〉10床)で年間入院数は約200名です。

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 当ステーションは、東京都北区に事務所を構えています。北区は人口34.9万人で、区内に都電の走る下町情緒あふれる街です。1998年にこの地に訪問看護ステーションを設立しました。

 職員数は看護師22名、作業療法士2名、理学療法士1名、介護支援専門員2名、相談支援専門員1名、看護補助者1名、事務員4名です。2017年度は444名の方に訪問させていただきました。年齢や疾病、傷害の種別に関わらず、すべての方に訪問看護を提供し「いきいきと安心」を理念に看護の実践を積み重ねています。

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 小児医療が地域へ、在宅へと進むなか、学校(特別支援学校および小・中学校)においても、医療的ケアを必要する子どもの支援体制を整えていく必要性がますます高まっている。文部科学省の動きも大きく(「学校における医療的ケアの実施に関する検討会議」)、近年、課題の明確化や方向性の検討が進んできた。

 そのなかで、学校も地域包括ケアシステムの渦のなかに巻き込まれながら、障害のある子どもの支援体制を他機関・他職種とつながりながら展開する視点が急速に入り込んできている。

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 社会福祉法人むそうは、東京と名古屋に5つの児童発達支援事業「ほわわ」(以下ほわわ)を運営しています。ほわわが行なう児童発達支援は、各事業所につき1日の定員は5名(上限1日8名)で、登録している子どもは30名前後です。主たる対象を重症心身障害児とした体制(表1)で運営しており、看護師は各事業所に1人ずつ配置されています。

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 当センターは医療型障害児入所施設として、県内でもとくに医療依存度の高い利用者の短期入所を受け入れています。小児病棟は3棟132床で、そのうちの20床を短期入所用として利用しています。2017年度は243名の在宅重症心身障害児者(以下、在宅重症児者とする)が、延べ938件短期入所を利用しており、概ね超重症児、準超重症児、呼吸器管理の利用者が偏りなくいます。

 小児在宅医療では、重症児と医療的ケアを必要とする児(以下:医療的ケア児)を対象としますが、これらの子どもたちが、病気や障害を持ちながら地域で家族と暮らすには、多くのサポートが必要です。当センターにおいては、これまで重症児を中心に看てきた経緯があるため、看護職・福祉職にとって「歩ける医療的ケア児」や「経口摂取可能な呼吸器装着児」などを受け入れることはまだまだハードルが高いです。多様なニーズに対応できる力とアセスメント力、環境を整えるなどの必要性を感じています。

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 医療的ケアとは、口腔・鼻腔・気管カニューレ内の吸引、経管栄養など、従来は医療職によって担われてきた行為であるが、在宅の重度障害児・者の増加に伴って、親・家族だけでなく教員や福祉施設職員も実施することが必要になってきた医療的生活維持行為をいう。

 暮らしや育ちに医療的ケアを必要とする子ども(以下、医療的ケア児)が増えている。2016年度、何らかの医療的ケアを必要とする0歳から19歳未満の在宅の児童は1万8272人で2005年の約2倍、うち人工呼吸器装着児は3483人で約13倍となっている*1。成人での正確なデータはないが、医療的ケア児が成人になるだけでなく、中途障害や進行性疾患などが加わってさらに多くなると考えられ、生活介護事業や居宅訪問型事業でも問題になっていることが推察される。

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 それぞれの地域に、それぞれの役割の看護師が連携し、継続した支援を受けられることは、子育てをしていくご家族の「よりよき健康の保障」となり、どんなに重い障がいがあっても、この地域で暮らしていけるという安心感につながると考えます。

 一般的に「看看連携」というと、「個別ケースを通じて関係機関の看護職がつながり、子どもへの看護を展開していくこと」ととらえられているのではないでしょうか。しかし、私が佐賀県の看護職の仲間たちとつくってきた看看連携は、それにとどまらず、さらに広い範囲での連携であったと考えます。次の3つを実現しながら、個別ケースに対する看看連携の仕組みを構築していったように思うからです。

❶人材の調達を目的とした県看護協会との連携

❷福祉事業所で看護職としての活動をともにする他事業所との連携

❸人材の育成を目的とした教育機関との連携

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 千葉県の北西部に位置する柏市は、人口42万人の中核市です。柏市には大学病院と市立病院を中心に、総合病院が何か所かありますが、重症心身障害児や医療的ケア児への後方支援の役割をはじめ、積極的に役割を担う医療機関はほとんどなく、近隣市の在宅医療機関、あるいは周産期医療センターが子どもたちの医療の担い手となっている状況です。

 反面、生活を担う障害福祉サービス、とくに喀痰吸引を行なうヘルパー事業所や医療的ケア児に対応可能な通所施設は複数あり、2012年には東葛地域の市町村が協働し、短期入所への対応も可能な入所施設「光陽園」も設立されました。

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 山形県看護協会(以下、当協会)は、行政からの依頼を受け、他機関と協働するかたちで訪問看護空白地域に訪問看護ステーションのサテライトを開設した(図)。本稿では開設するまでの経緯と、それに伴う地域の変化を紹介する。

 今特集に関連し、医療的ケアや配慮を要する子ども・家族にどのような影響を与えるものになったのかも触れたいところだが、結論からいうと現状はサテライト開設を受けて児・家族が在宅移行に結びついた事例が生まれるには至っていない。そこで、ここではどのような必要性から現体制をつくったのか、そして今、どんな準備があるのかを記すにとどめる。

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始まりは小児訪問看護研修

 千葉県における医療的ケア児等への看護職の育成事業は、2011年千葉県障害福祉課単独事業として小児訪問看護センター事業が始まり、2013・2014年の厚生労働省小児等在宅医療連携拠点事業を経て、現在に至っています。事の発端は、2011年度の千葉県障害福祉課療育支援専門部会が実施した「県内重症児生活実態調査」の結果で、県内訪問看護ステーションで小児への訪問看護に対応できるステーションの割合は30%台で、保護者からは「利用したくても受けてもらえない」といった意見が寄せられたことでした。

 ステーション側の受けられない理由の大半は、「小児経験のある看護師がステーション内にいない」「研修がなく、どのように子どもたちを看護してよいかわからない」といった回答で、県内で統一した小児訪問看護が提供されるよう、研修を実施することとなりました。そこで上記療育支援専門部会の下部組織として千葉県障害福祉課が主宰した「訪問看護研究会」にて、研修プログラムについて議論し、作成しました。訪問看護研究会メンバーには、筆者をはじめとした療育支援専門部会医療職委員4人に加え、千葉県医師会、千葉県周産期研究会から医師、千葉県看護協会、千葉県訪問看護連絡協議会からは看護職、千葉県庁障害福祉課相談支援専門部会から相談支援専門員、千葉県こども病院や千葉リハビリテーションセンターの看護管理者が参画しました(現在も年に数回開催)。

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 近年、継続的に医療的ケアを必要とする重症心身障害児者が増加する一方、そのケアの現場で重要な役割を担う看護師は慢性的に不足しています。それは岐阜県も例外ではありません。

 このような状況に対して、岐阜県看護協会では実際にケアに当たる場をつくること、そして人材育成を連動させた取り組みを行なっています。

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 一般社団法人日本小児看護学会は、1991年に発足し(前身の日本小児看護研究学会)、子どもの健康と福祉に貢献することを目的に、実践、教育および研究の発展と連携に努めて参りました。主に大学などの教育研究機関または医療機関などに所属する2174人(2018年6月末日現在)の会員から構成される本学会の今後の取り組みについて、社会的背景と関連づけてご紹介します。

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 私は1996年から小児の在宅地域支援を行なっています。この間、訪問看護師として、退院直後の乳幼児期から成人期に至るまで、さまざまな児の成長発達を見てきました。

 医療的ケアや配慮が必要な子どもたちは、安心・安全が優先されてしまいがちです。そのため、刺激が少ない状態で、そっとしておく時間が長くなってしまうことがあります。しかし、その子の成長発達を促してくためには、年齢相応の体験とそれに伴う刺激が欠かせません。その点では、看護職ができることもあると考えています。

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「日常的に医療的ケアを必要とする子どもを支援するにあたっては、地域の看護職の連携が必要だ」。

医療・福祉・教育の領域の関係諸機関・職種が分野横断的に連携し、子どもへの支援体制を築くことが要請されているなか、ある意味、それは当然の指摘かもしれません。

では、医療・福祉・教育領域にいる看護職以外、つまり他職種からみたとき、看護職にはどのような役割が期待され、どんな連携が求められているのでしょうか。

今回は、そんなことを考えてみる座談会を企画しました。

連載 在宅ケア もっとやさしく、もっと自由に!・108

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 西日本豪雨、なんであんなに集中して降ったのでしょうか? 日本の亜熱帯化は本当に起こっているのではないかとさえ思ってしまいます。

 被害に遭われた地域の皆さま、その地域で頑張っておられる訪問看護・訪問介護の皆さまに、心からのお見舞いと声援をお送りいたします。

連載 認知症の人とその家族から学んだこと—「……かもしれない」という、かかわりの歳月のなかで・第17回

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これからの介護スタイルを導くグループホーム

 家族人数と嫁中心の介護形態が劇的に減少し、女性の介護離職の問題や遠距離介護が目立つようになった頃に、認知症グループホームは、これからのケアの公共化における新しい住まいとして構想され制度化された。それにより、これまでのように開設時に膨大な資金がなくとも、障害者施設や老人介護施設の実践経験を認知症ケアに活かしたいと願う者に経営の道が拓かれた。一方で利益先行のグループホームが急増したため、当時私は、家族や本人の自助する力を削ぐような時代になりはしはないかと密かに案じもした。しかし今後も、グループホームは、認知症700万人から先の時代の介護スタイルの原型になる役割を果たすに違いないと思うようになった。

 なぜか。第一に、グループホームという「住まいの場」と居住する本人と家族や地域の「居場所」のバリアが小さく、地域参加型のケアが進んだこと。第二に、スタッフ(資格や職種を問わずケアに従事する職員)が、日々平々凡々の価値とケアの価値の調和を立ち止まって看る力をつけたこと。たとえば、命のあるかぎり生活の基本的ケアを行なうなかで、グループホームが地域の社会資源としての役割を担っているという自覚とともに「看取りなしでは理が通らぬ」といって始められた看取りケアの流れはその力の表われだろう。第三に、「手伝って、と言われるようになった」と喜び、その当人の自立を喜ぶスタッフの生活パートナーとしてのまなざしのなかで、既成の公共性や専門性への疑義を発信する旗手が各地に生まれてきたこと。第四は、グループホームケアの哲学と建物設計のマッチングが成功したこと。即ち、在宅ケアサービスの各メニューと連結あるいは連携させるアイディアを実行に移すことが容易になったことがある。

連載 どう読む!? 在宅医療・看護・介護政策・第33回

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 厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」(岩村正彦座長)が7月9日に議論を再開した。この日の検討会には、医療界がまとめた意見書の内容が紹介され、2020年3月の取りまとめに向けて9月以降、医師に対する時間外労働規制の検討が本格化する。

 先の通常国会の最重要法案となっていた働き方改革推進関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)が6月29日に成立し、時間外労働の上限規制は来年4月から、短時間労働者および有期雇用労働者に対する不合理な待遇差の禁止は2020年4月から施行されることになった(中小企業はいずれも1年遅れの施行)。

連載 シンソツきらきら・第21回

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 毎年、新卒から訪問看護師になる人の数が増えてきているため、今年度3年目になったという方、また3年目の方を育てているという方も以前より増えてきたのではないでしょうか。本連載では、これまで主に新卒1〜2年目の方のエピソードをご紹介することが多かったので、今回は新卒3年目の時に私が経験したことをご紹介したいと思います。

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目次

今月の5冊

Information 学会・研究会情報

バックナンバーのご案内

次号予告・編集後記 小池 , 青木
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今年3月末のこと。「何か新しいことを始めよう」。そう思いまして、4月1日から日記をつけてみることにしました。1〜2行の日もあれば、ズラズラと書き連ねる日もある不安定さで、「記録」とはなかなか言い難いのですが、今のところ続いています(3日坊主にならないなんて我ながらすごい)。●そんな日記を読み返すと、4月2日、今号特集について谷口先生と打ち合わせています。そして「知らないことばかり」と、医療的ケアを要する子どもをめぐるテーマへの理解の浅さを綴っていました。それから数か月が経ち、編集後記を書いている今も「知らないことばかり」です。しかし、まだこの領域は十分に整備されていないこと。それでも、現場の方々の地道な取り組みがあって、地域の子どもたちを支援する仕組みになっていくことが、皆さんの原稿から見えてきました。「連携が必要」という当たり前の主張が、自分のなかで現実味を帯びたような感覚。まだまだ取り扱いきれないこのテーマ。次はどのようなかたちがいいのか、検討中です。…小池

うりずんは、「子どもたちが友だちと楽しく遊び、両親は介護から離れひと休みできる場所」として、設立6年目を迎えた栃木の認定NPO法人(髙橋昭彦理事長)です。その会報で輝く子どもたちの笑顔に、大人たちこそ支えられていることを実感します。弱さは強さだし、逆もそう。どちらかだけってあり得ないのですね。●6年ぶりに本誌に帰任しました。月刊誌が皆様のお役に立てるよう努めます。…青木

基本情報

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訪問看護と介護
23巻9号 (2018年9月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

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