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これからの介護スタイルを導くグループホーム
家族人数と嫁中心の介護形態が劇的に減少し、女性の介護離職の問題や遠距離介護が目立つようになった頃に、認知症グループホームは、これからのケアの公共化における新しい住まいとして構想され制度化された。それにより、これまでのように開設時に膨大な資金がなくとも、障害者施設や老人介護施設の実践経験を認知症ケアに活かしたいと願う者に経営の道が拓かれた。一方で利益先行のグループホームが急増したため、当時私は、家族や本人の自助する力を削ぐような時代になりはしはないかと密かに案じもした。しかし今後も、グループホームは、認知症700万人から先の時代の介護スタイルの原型になる役割を果たすに違いないと思うようになった。
なぜか。第一に、グループホームという「住まいの場」と居住する本人と家族や地域の「居場所」のバリアが小さく、地域参加型のケアが進んだこと。第二に、スタッフ(資格や職種を問わずケアに従事する職員)が、日々平々凡々の価値とケアの価値の調和を立ち止まって看る力をつけたこと。たとえば、命のあるかぎり生活の基本的ケアを行なうなかで、グループホームが地域の社会資源としての役割を担っているという自覚とともに「看取りなしでは理が通らぬ」といって始められた看取りケアの流れはその力の表われだろう。第三に、「手伝って、と言われるようになった」と喜び、その当人の自立を喜ぶスタッフの生活パートナーとしてのまなざしのなかで、既成の公共性や専門性への疑義を発信する旗手が各地に生まれてきたこと。第四は、グループホームケアの哲学と建物設計のマッチングが成功したこと。即ち、在宅ケアサービスの各メニューと連結あるいは連携させるアイディアを実行に移すことが容易になったことがある。
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