訪問看護と介護 23巻8号 (2018年8月)

特集 看護小規模多機能型居宅介護で質の高いケアと経営を両立させる—調査結果と現場からみえてきたポイント

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2012年度介護報酬改定で誕生した看護小規模多機能型居宅介護(当時は複合型サービス)は、全国で400事業所を数えるまでになり、医療依存度の高い人の対応や病院と在宅とのつなぎ役、看取りの場など、地域で着実に役割を果たしています。一方で、地域密着型サービスでありながらすべての市町村に行きわたるほどには普及しておらず、現場からは利用者の確保や人材育成・定着に悩む声も聞こえてきます。

そんななか、2016年度に行なわれた経営実態調査などから、「地域のニーズに応え、質の高いケアを提供すること」と「経営の安定」を両立させるポイントがみえてきました。

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看多機の運営・経営は難しい

 「複合型サービス」として始まってから6年目、「看多機」となってから3年目のいま、看護小規模多機能居型宅介護事業所(以下、看多機)の設置数は、全国で400を超えた(2018年4月時点)。少しずつ増加している一方で、看多機は比較的小規模な事業所であり(2017年度調査*1では平均介護職員常勤換算数は9.4±3.1人、平均看護職員常勤換算数は5.2±3.0人)、かつ複合的なサービス提供(通い、泊まり、訪問介護、訪問看護)を行なうという特性をもつことから、運営・経営は難しい側面が多く、そのことが参入事業者の増加を阻む一因となっていることも指摘されている。

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小多機から取り組んできた看取り

 看多機の前身に、通い・泊まり・訪問介護を組み合わせたサービスとして2006年に誕生した小規模多機能型居宅介護(小多機)がある。包括報酬による柔軟なサービス形態からさまざまな期待があったが、現実には利用者の平均要介護度2・3という“軽症者向け”のサービスとして使われていた。そんななか、「3年間で30人を看取った小多機」として注目されたのが、広島県尾道市にある有限会社ブレイクスルーが運営する「びんご倶楽部 高須」。看護師が施設長を務め、医療的ケアの必要な人、認知症があるがん末期の人などを積極的に受け入れ、地域在宅医療体制において大きな役割を果たしていると話題になった。

 その施設長だった佐古田専美(ひろみ)さんを管理者として、2015年に同社が開設した看多機「森のくまさん」。登録利用者のほとんどが認知症やがん末期、神経難病、心不全、それらを合併してもち、医療依存度の高い方だ。

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 統括所長で看護師である福田裕子さんと、代表者で介護福祉士である光宏さん夫婦が立ち上げた株式会社まちナース(旧・ケアラーズジャパン株式会社)は、「まちのなかに看護師がいて、気軽に医療・介護・健康について相談できる場をつくりたい」という想いから、2011年に訪問看護ステーション「まちのナースステーション八千代」を開設。さらに2015年に、看護小規模多機能型居宅介護「まちのナースステーション八千代 むすんでひらいて(以下、むすんでひらいて)」をオープンしました。地域の人が気軽に集えるコミュニティカフェ「まちこカフェ」とともに運営しています。

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地域のニーズに応えて事業を展開

 神奈川県川崎市麻生区岡上で、看護小規模多機能型居宅介護(看多機)「ナーシングホーム岡上」を2013年4月に開設してから、5年半が経とうとしています。「ナーシングホーム岡上」は、2011年から運営していた訪問看護ステーションと、2014年9月に新たに開設したヘルパーステーションおよび居宅介護支援「ゆらりん」を併設しています。

 そして、2016年10月には、児童発達支援・放課後等デイサービスの「KIDSゆらりん」を増設しました。当初は旧訪問看護ステーションの事務所で開設していましたが、今年7月にサテライト型看多機「ゆらりん家」を始めるにあたり、同一建物内に移転しました。

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 倉本富士夫さん(仮名・84歳)は9年前に脳梗塞を患い、右片麻痺、失語症、車いす生活。長男家族との二世帯住宅ですが、日中は高齢の妻と二人暮らしです。

 4年前の正月、誤嚥性肺炎で入院した際に手術不能の直腸がんが見つかりましたが、高齢であること、化学療法や外科的治療は負担が大きすぎること、また予後も3か月程度と予想されたことから、積極的治療はしない方針になりました。

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「看多機」の設立背景と沿革

 国民の多くに「最期まで家で過ごしたい」との希望があるにもかかわらず、現実には、医療依存度が高ければ自宅での暮らしを断念せざるを得ない状況があります。

 日本看護協会では、その要因を探るため、医療機関、訪問看護ステーション、がんセンター、在宅療養するご利用者・ご家族に対してヒアリングを行ないました。すると、「家族が在宅介護で疲れて、レスパイト的な入院が多い」「家族の不安、疲弊によりターミナル期の2〜3週間を支えきれない」「医療依存度の高い人を受け入れてくれるショートステイがない」という声が聞かれました。そして中重度者の在宅療養に対応するためには、病状の変化時や家族のレスパイトにも対応でき、在宅療養上の不安や疑問を気軽に相談できる機能を一体的に有するサービスが有効と考えました。

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 山梨県看護協会では、県からの委託を受けて、2017年度から県内の訪問看護師を対象に「トータル・サポート・マネジャー養成事業」を行なっています。本稿では同事業の紹介と、事業の手応えを修了者の声を交えて紹介します。

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早期からの緩和ケアの課題

 2010年、「早期からの緩和ケア」という取り組みがアメリカで発表されました*1。これは、遠隔転移のある肺がん患者さんに対して、症状緩和の専門家である緩和ケアチームが終末期からでなく診断早期から介入するという取り組みです。

 結果、早期から緩和ケアチームが介入した群は、生活の質が改善し、病状の理解が進み、効果が乏しいとされている終末期の抗がん剤治療が減りました*2・3・4・5。診断早期から複数の医療の専門家が関わることがよいという結果だと思います。

連載 在宅ケア もっとやさしく、もっと自由に!・107

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 生まれるときも病院、死ぬときも病院。そんな時代が長く続いた結果、生と死の瞬間やその前後のケアは、本人や家族のもとを離れ、医療的管理がなされたなかで行われるものになってきています。

 在宅での看取りも増えてきたとはいえ、まだ少数派の域を脱していません。在宅での看取りに向けてチャレンジしたけれど、うまくいかず、結局は病院にお願いすることになった、そして「やっぱり在宅は無理だよね」と後ろ向きになってしまう。地域にはそうしたケースも少なくないようです。

連載 認知症の人とその家族から学んだこと—「……かもしれない」という、かかわりの歳月のなかで・第16回

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早川一光先生の姿に老年期の英知をみた

 認知症の人とその介護家族と、私の出会いの場をさりげなくセットしてくださり、それ以降も「これからやでエ〜」と折々に背中を押してくださった「わらじの医者」の早川一光先生*1が、この6月に亡くなられた。94歳だった。

 NHKでETV特集として放映された『こんなはずじゃなかった—在宅医療 ベッドからの問いかけ」を視聴された方もいると思うが(インターネット上でも閲覧することが可能)、私たちに、先生が伝えたかったことは何だったのだろうとずっと考えている。

連載 どう読む!? 在宅医療・看護・介護政策・第32回

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 政府は6月15日、「経済財政運営と改革の基本方針2018(骨太方針2018)」と「未来投資戦略2018」を閣議決定した。

 骨太方針2018では、新たな財政健全化目標として、「2025年度のプライマリーバランス(PB)黒字化をめざす」としたうえで、2019〜2021年度を「基盤強化期間」と位置づけ、社会保障を中心とする改革を進める考えを示した。

連載 シンソツきらきら・第20回

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 「人材不足だから新卒訪問看護師を雇った、と言われるのは悲しい」。ある新卒訪問看護師がそう話し始めた。

 話を聞くと、訪問看護の管理者が集まる会議に同席した際に、新卒訪問看護師を雇うべきか否かという話題になり、「人手不足だから雇っていくべきだ」という結論に至ったと言う。今後の超高齢社会に対し、新卒訪問看護師の普及が地域の医療提供体制構築の有効な対策になり得ることは確かであるが、「私の存在が“人材不足を解消する道具”として認識されているような状況が、とても悲しかった」と気持ちを打ち明けてくれた。単なる言葉のあやと言ってしまえばそれまでだが、「1人の看護師のキャリアをどう考えるか」という観点からみれば、実にハッとする一言である。

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目次

今月の5冊

Information 学会・研究会情報

バックナンバーのご案内

次号予告・編集後記 小池 , 栗原
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森のくまさんの佐古田さんの現場のお話にはぐっときました。「誰かの訴えを聞いたらほっとけない」。そういう、理屈や打算ではなく、素朴な思いに突き動かされたエピソードの多いこと! ただ、それで結果的に「経営面も悪くないのだ」という話を伺うと、結局は地域のニーズに応え続けるという基本のところに戻ってくるのかと感じます(当然、相川さんの経営者としての目も無視できない要因なのですが)。●事業所に歴史と物語あり。それを実感しました。各地の看護小規模多機能型居宅介護のお話も聞いてみたい。自薦推薦のご連絡もお待ちしております。…小池

本号の編集作業も終盤に差し掛かったころ、西日本豪雨が起こりました。特集でご登場いただいた看多機「森のくまさん」のある広島県尾道市でも大きな被害がありました。被害に遭われたみなさまに、心よりお見舞い申し上げます。1日も早い復興をお祈りするとともに、弊誌でも災害支援や対策など、お役に立てる記事を企画していきたいと考えています●今回の特集テーマは看多機。3年前にも見取り図と写真で先進事例をご紹介させていただきましたが、今回はカラーページでレポートしてみました。現地を取材させていただいた感想は、やはり「百聞は一見に如かず」ということ。記事で少しでもその臨場感をお伝えできれば幸いです。…栗原

基本情報

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訪問看護と介護
23巻8号 (2018年8月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

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