胃と腸 40巻4号 (2005年4月)

特集 消化管の出血性疾患2005

序説

消化管の出血性疾患 飯田 三雄
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消化管からの出血は,吐血,下血,血便といった肉眼的に明らかな異常としてとらえられる顕出血と,潜血反応で初めて判断できる程度の少量出血である潜出血に大別される.特に,前者で急速に大量出血がある場合にはショック症状を呈し,迅速なショック対策および出血源の検索・止血治療が必須であり,救急医療の対象となる.一方,後者でも持続的に出血が続く場合には,顔面蒼白,易疲労感,全身倦怠感,動悸などの貧血症状が緩徐な経過で出現してくる.また,消化管出血の原因は多岐にわたり,消化管疾患だけでなく,肝・胆道・膵疾患や全身性疾患などもその原因疾患として挙げられる.したがって,消化管の出血性疾患の診断と治療について,最新の知識を整理し理解を深めておくことは日常臨床において極めて重要と考えられる.本増刊号はこのような背景から企画された.

総論 1.消化管出血に対する初期対応と診察手順

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要旨 消化管出血の症状である吐血と下血についてその臨床における初期対応を述べた.吐血では新鮮血のこともコーヒー残渣様のこともあるが,Treitz靱帯より口側の消化管出血に起因すると考える.吐血量,既往歴,飲酒,ストレス,薬剤服用などの病歴聴取は重要である.早期に上部消化管内視鏡検査を行い,出血部位の同定が第一歩である.下血では便の色調が重要で,黒色便では上部消化管からの出血が多く,暗赤色~鮮血便では大腸からの,さらに排便後の鮮血出血では肛門病変(ほとんど内痔核)からの出血を考える.問診では抗生物質やNSAIDs服用の有無,海外渡航歴,心・肺・腎疾患の有無,腹痛の有無などの確認が必要である.ショック状態での対応では全身管理とともに出血量の把握と輸液や輸血による循環血液量の改善が必要である.経鼻胃管の挿入後,できるだけ早い時期に緊急上部消化管内視鏡検査を行い,出血源の診断と止血を完了させる.実際の臨床では消化管出血は60歳以上の高齢者が64.6%を占め,上部消化管内視鏡検査では52.6%は胃内に新鮮血ないし凝血の残存を認め,また,出血源不明が9.6%に認められた.

総論 2.消化管出血に対する画像診断法と今後の展開

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要旨 上部消化管出血に際して実施される内視鏡検査について,原因疾患,内視鏡検査の適応・禁忌,検査の手順などについて述べた.緊急内視鏡検査は,通常の内視鏡検査に比べて患者の全身状態が不安定であることが多い.その点で,より慎重な内視鏡操作や観察が望まれる.出血に対しては種々の方法を選択して止血を行うが,内視鏡的止血術に固執し患者の生命を脅かすことがあってはならない.外科的手術への移行など,その他の手段を選択するタイミングを的確に判断することも極めて大切である.

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要旨 顕出血を契機に下部消化管内視鏡検査の施行された610症例の疾患名の内訳は,炎症性腸疾患を除いて頻度の高い順に①痔・肛門疾患,②虚血性大腸炎,③進行癌,④非特異性腸炎,⑤腺腫・早期癌・その他のポリープ(若年性ポリープ),⑥憩室症,⑦感染性腸炎,⑧薬剤性腸炎,⑨血管性病変(angiodysplasia,portal hypertensive colopathy),⑩直腸粘膜脱症候群,⑪その他の腫瘍(肉腫,カルチノイド,MALTリンパ腫,血管腫,腸管子宮内膜症),⑫放射線腸炎,⑬腸管嚢胞様気腫症だった.以上の疾患に施行された内視鏡検査の種類および疾患別の症状,内視鏡所見の検討から顕出血を訴えた症例の内視鏡診断の現状を解説した.

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要旨 消化管の各種出血性疾患に対する体外式超音波法(以下US法)の診断的意義について述べた.近年の内視鏡機器の発達により以前に比べ緊急内視鏡検査は安全に行え,また各種の局注療法,熱凝固療法,クリッピングなどの内視鏡的止血操作も確立されてきており,それぞれ良好な成績が得られている.しかしながら,消化管出血時には条件が不良なことも多く,十分な検査や止血処置ができないことも少なくない.消化管領域における各種出血性疾患には悪性腫瘍をはじめ炎症性疾患や循環障害に伴う疾患があり多岐に及ぶ.US法では直接病変を描出することのみならず,消化管以外の他臓器の検索から原因疾患を絞り込むことも可能であり,更に非侵襲的で安全な検査であることを考慮すると,内視鏡検査に先立って行われるべき検査法である.内視鏡やX線診断等の従来の診断法にこれらのUS法を加えることでより効率的に治療方針を決定でき,また病態生理の把握にも役立つ.

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要旨 近年の内視鏡診断および内視鏡観察下治療の進歩は著しいものがある.消化管出血の診断はもちろんのこと,内視鏡的な止血成績も極めて良好である.しかしながら,小腸出血などの一部の下部消化管出血症例では出血部の同定でさえ困難な症例も存在する.血管造影法は動脈内に直接造影剤を注入し,出血した血管を描出する方法である.血管造影検査に引き続き,出血動脈の塞栓術を施行することも可能である.本稿では消化管動脈性出血の血管造影診断とIVR治療について述べる.

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要旨 消化管出血の診断は,一般的に内視鏡検査が第一選択とされるが,特に小腸からの出血の場合,内視鏡での観察は困難である.続いて試みられる検査法として,出血シンチグラフィーと血管造影がある.特に出血シンチグラフィーは低侵襲的で,血管造影より鋭敏であることより日常臨床でしばしば実施される.しかし,プラナー像では空間分解能に劣り,出血源の正確な局在診断にしばしば難渋する.そこで,われわれはSPECTとCT画像の融合像あるいはSPECT装置とCT装置が合体したエミッションCT装置の有用性を考える.

6)ダブルバルーン内視鏡 山本 博徳
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要旨 ダブルバルーン内視鏡は深部小腸への内視鏡挿入を可能とした新しい挿入概念に基づく内視鏡である.ダブルバルーン内視鏡の特徴は腸管を短縮しながら深部へと挿入していく挿入性のみならず,深部小腸においても発揮される優れた安定性にある.ダブルバルーン内視鏡の出現によりこれまでは困難であった小腸全域における内視鏡検査・治療が可能となった.小腸出血は消化管出血の中でも最も診断,治療が困難なものであったが,カプセル内視鏡,ダブルバルーン内視鏡の実用化によりこれまでとは比較にならない精度での診断,治療が可能となった.ダブルバルーン内視鏡を用いた消化管出血の診断および治療に関して解説した.

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要旨 カプセル内視鏡は,従来のチューブ型の内視鏡とは全く異なり,被検者が自分でカプセル内視鏡本体を飲み込むだけで検査ができる新しい画像診断法である.現在,小腸を対象とした画像撮影専用タイプ(PillCamTMSB,GIVEN Imaging 社)が最も普及していて,その最大の適応は原因不明消化管出血である.その中で一番多くみつかるのは小腸のangiodysplasiaで,Crohn病,ポリープや腫瘍,NSAIDsによる粘膜傷害などもみつかっている.現在の機種では生検などの処置ができないが,ダブルバルーン式小腸内視鏡との組み合わせによって,より有効な小腸出血の診断治療が可能になる.

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要旨 内視鏡検査時に出血性病変を認めた際には,病変をよく洗浄し,詳細に観察することが重要である.出血性病変の中には,しばしば悪性疾患が含まれており,慎重な鑑別診断を要する.上皮性腫瘍では病変辺縁の粘膜内に境界明瞭な領域性を有する病変が存在するのが特徴である.潰瘍性病変,陥凹性病変では形態,潰瘍底・陥凹内の性状,辺縁の所見に注目し鑑別をすすめる.隆起性病変では立ち上がり・表面の性状,周囲の所見に注目し鑑別を行う.また,拡大内視鏡による異常血管や腺管構造の観察は鑑別診断に有用である.一方,十二指腸病変では常に全身疾患との関連を念頭に置き鑑別診断を行うべきである.

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要旨 出血性小腸疾患は,大きく炎症性疾患,腫瘍性疾患,血管奇形などの疾患群に分類可能であるが,通常その診断過程においては血便の性状に応じて他の消化管内視鏡検査が先行して行われる.その場合,他の消化管の随伴病変が小腸疾患診断の手掛かりとなることも少なくない.また,原因疾患によっては特徴的な臨床像や病歴などを有するものも多い.さらに,その小腸画像所見は各疾患群によりある程度共通した特徴を有している.したがって,出血性小腸疾患の診断に際しては,他の消化管の随伴病変,臨床像および病歴なども加味して,各疾患の小腸病変の画像的特徴を念頭に置き,総合的に鑑別を行っていくことが必要である.

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要旨 大腸出血性疾患を頻度順に述べると大腸癌・大腸ポリープ,炎症性腸疾患,虚血性大腸炎,大腸憩室,感染性腸炎であった.また,大腸出血性疾患の頻度を年齢別に検討したところ,炎症性腸疾患が若年群では最も高頻度で,大腸癌・大腸ポリープは中年群・高年群で最も高頻度にみられた.また,感染性腸炎は若年群や中年群で,大腸憩室は高齢群・中年群で,急性出血性直腸潰瘍症は高齢群で,虚血性腸炎はどの年代群でも比較的高率に認められた.大腸出血性疾患のうち急性発症で血性下痢を伴うものは,虚血性腸炎,感染性腸炎,抗生物質起因性腸炎などが考えられる.慢性的な血便は,大腸癌,潰瘍性大腸炎,アメーバ赤痢,腸結核,Crohn病,腸型Behҫet病,単純性潰瘍が考えられる.大量の血便排出は,憩室炎,vascular ectasia,急性出血性直腸潰瘍,潰瘍性大腸炎,Crohn病などが考えられる.脳血管障害などの重症基礎疾患を有し長期臥床中の高齢者が,無痛性で大量の新鮮血排出を来した場合,急性出血性直腸潰瘍であることが多い.

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要旨 消化管出血に対する内視鏡的止血法以外の内科的治療と外科的治療のタイミングについて述べた.緊急内視鏡検査,各種内視鏡的止血法の進歩によりほとんどの消化管出血例は保存的に治療が可能となったが,いまだに大量出血のためショック状態から離脱できない症例が存在する.静脈瘤出血以外の上部消化管,下部消化管いずれにおいても大量出血例については可能であればinterventional radiology(IVR)を行い,IVRにより循環動態が安定すれば内科的治療を継続するか,待期的手術を考慮する.静脈瘤出血には症例によってB-RTOやTIPSも有効である.消化管の大量出血例では,内視鏡的止血法に固執せず,早めに外科医,放射線科医と連絡をとりIVR,外科的治療のタイミングを逸してはならない.患者の状態を的確に判断すると同時に,自分の内視鏡治療の力量を正確に把握することが肝要である.

疾患各論

1.食道・胃静脈瘤 小原 勝敏
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要旨 食道・胃静脈瘤は上部消化管出血の主要な出血源であり,出血により肝不全を来したり,大量出血では致命的となる.出血時の緊急内視鏡検査による診断は極めて重要であり,直ちに内視鏡治療による緊急止血を可能とする.いまや,静脈瘤治療は多様化し,病態に応じた適切な治療法を選択できるようになった.したがって,静脈瘤治療は安全かつ効果的で,患者のQOLの向上が得られる手技であることが要求される.そのためには,1つの手技に固執することなく,患者の全身状態や肝障害の程度,門脈血行動態に応じた適切な治療法の選択と併用が重要である.

2.Mallory-Weiss症候群 星原 芳雄
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要旨 消化管出血で来院した患者で,繰り返し嘔吐しているうちに吐血を来した場合には,本症候群の可能性が高い.早急に内視鏡検査を施行して診断を確定し,止血が必要であれば確実に施行することが重要である.

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要旨 出血性食道炎は消化管出血の鑑別診断の1つに挙げられる疾患であり,近年その頻度は増加しつつある.特に,高齢者の原因不明の貧血や吐血症例では念頭に置く必要がある.食道炎の主な原因は胃酸の食道への逆流で,プロトンポンプ阻害薬が治療に奏功する.逆流性食道炎からの出血はロサンゼルス分類でgradeC,Dの重症型が多く,再発の防止のためにはプロトンポンプ阻害薬による維持療法が必要である.

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要旨 消化管癌腫からの出血は,正常上皮粘膜が欠損していることや,腫瘍における新生血管の増生,また,血管の脆弱性によることが推測される.進行食道癌症例では出血を契機に発見される症例は少なく,嚥下障害を主訴に診断されることが多い.進行食道癌症例における出血の特徴としては,致命的な大出血を起こす危険性が挙げられる.癌表面からの出血のみならず,癌性潰瘍や腫瘍の壊死変性のため大動脈や大動脈から直接分枝する固有食道動脈や気管枝動脈への穿破によるものである.一瞬にしてショック状態となり,何らかの止血処置を施行する間もなく回復困難な状況となることが多い.臓器特殊性を踏まえての食道癌出血の現況と対策について報告した.

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要旨 acute gastric mucosal lesion(AGML)では,軽度の出血は発生していると考えられるが,吐・下血といった顕性出血の頻度は低く,われわれの早期上部消化管内視鏡患者での検討では頻度は5.4%であった.AGML患者の大部分は軽症であるので,原因除去とプロトンポンプ拮抗剤またはH2受容体拮抗剤の投与により数日で軽快する.しかし,重篤な合併症を有する大量出血患者では厳重管理が必要である.AGML発生要因は不明(40.5%),薬剤服用(32.4%),飲酒(16.2%),ストレス(10.9%)の順であった.AGMLの内視鏡所見から,①出血性胃炎型,②多発びらん・潰瘍型,③出血性びらん型,④発赤胃炎型の4型に分け,特に,観察時に出血を認める①~③の内視鏡所見を図説した.これらの型は単一でみられることもあればいくつかの組み合わせでみられることもあった.

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要旨 gastric antral vascular ectasia(GAVE),diffuse antral vascular ectasia(DAVE)は,消化管出血による貧血の一要因として,1984年にJabbariらにより提唱された疾患概念である.内視鏡所見が特徴的で,胃前庭部に放射状またはびまん性に配列する発赤像(毛細血管拡張像)を呈する.その発生機序はいまだ不明であるが,肝硬変や自己免疫性疾患,高ガストリン血症,慢性腎不全等の疾患に高率に合併するという報告がなされ,種々の病因説がある.本症の治療法は,従来,外科的治療が主に行われていたが,現在は内視鏡的治療が第一選択となっている.

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要旨 胃潰瘍・十二指腸潰瘍からの顕出血に対する診断,病態,治療について述べた.診断,治療ともに内視鏡検査が有力である.診断では内視鏡検査にて露出血管を見い出しForrest分類のIa,Ib,IIaでは直ちに治療を行う必要がある.内視鏡的治療を行うには露出血管を適切な視野にもってくることが重要であり,時には先端フード装着が有効なことがある.内視鏡治療の方法には種々あるが自身の得意な方法を修得することが肝要である.胃潰瘍・十二指腸潰瘍に対する内視鏡的止血率は高い.しかし数%ではあるが止血困難例があり,出血死も存在する.内視鏡的止血に固執することなく次の治療法を選択すべきである.

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要旨 上部消化管出血に対する緊急内視鏡検査で診断された疾患中の胃腫瘍の頻度は5%前後で,そのうちの大半は胃癌からの出血である.顕性出血を来した胃癌は進行した症例に多く,占居部位は胃下部に少ない.進行癌肉眼型では2型,3型に多く,4型,類早期癌が続く.早期癌の大半は癌巣内活動性潰瘍を伴った陥凹型である.顕性出血を伴った場合,特に早期癌において初回内視鏡検査での正診率が低い.胃悪性リンパ腫からの顕性出血は少なく,内視鏡止血が困難な場合が多い.間質成分が少なく,組織が脱落しやすいことがその理由として推論されている.このほか,GISTや脂肪腫,血管肉腫,過誤腫,迷入膵など様々な顕性出血を来した胃腫瘍が報告されている.

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要旨 非特異性多発性小腸潰瘍症は,慢性持続性の潜出血と非特異性の浅い多発性小腸潰瘍を特徴とする疾患で,これらの臨床病理学的特徴はCrohn病,腸結核,単純性潰瘍とは全く異なっている.肉眼所見では極めて境界明瞭かつ,横走,斜走ないし融合性の粘膜下層にとどまる潰瘍が認められる.長期的には潰瘍は狭窄を伴いながら難治性・再発性に経過する.X線所見では非対称性の硬化所見や変形,浅いバリウム斑として描出される.本症の報告は決して多くはないが,今後小腸内視鏡の普及により本症の発見頻度が増加する可能性が示唆される.すなわち,本症は慢性・持続性の消化管出血患者では鑑別診断として常に念頭に置くべき疾患と思われる.

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要旨 小腸の形態診断はX線検査が中心であったが,近年,カプセル内視鏡やダブルバルーン法小腸内視鏡検査の出現でやや様変わりしつつある.これらは特に小腸疾患が原因である消化管出血の診断に有用である.当科では出血源の検索として25症例39回のダブルバルーン法小腸内視鏡検査が行われ,20例(80.0%)で何らかの所見が認められ,さらに11例(44.0%)では出血源の特定が可能であった.小腸腫瘍が原因であったのはgastrointestinal stromal tumorの1例のみであった.小腸腫瘍が消化管出血の原因となることはまれであるが,検索が不十分のため発見が遅れることも多い.また,各腫瘍別に発現しやすい症状や症候も異なっている.本稿では小腸腫瘍中,比較的頻度が高い原発性腺癌,悪性リンパ腫,gastrointestinal stromal tumor,脂肪腫について各疾患の出血の頻度やその他の臨床的事項を中心に概説した.

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要旨 虚血性大腸炎は,出血を来す代表的な下部消化管疾患である.重症例では壊疽型や狭窄型へ進展する場合があり,病型診断が治療法の選択に重要である.壊疽型や狭窄型への進展例では,大腸内視鏡で評価した病変部粘膜が暗赤色調を呈し浮腫も高度で,特に壊疽型では灰緑色調を呈する.合併する潰瘍も深く,腸管全周に及ぶ場合が多い.治療は,一過性型は保存的治療で良いが,壊疽型は緊急手術が必要である.なお狭窄型では,発病後1か月以上経過しても全周性狭窄部に開放性潰瘍が残存する例では外科手術を考慮する.虚血性小腸炎はまれな疾患で下血を来す頻度は低いが,全周性の管状狭窄へ進展し,外科手術が必要になる場合が多い.

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要旨 腸型Behҫet病(BD)・単純性潰瘍(SU)で臨床症状を術後再発例からみると,腹痛が63%に対して出血は20%であった.出血例は吻合部に多発潰瘍が認められた.出血早期では浮腫状粘膜に打ち抜き様潰瘍がみられ,次に不整形潰瘍になり,次いで潰瘍が明瞭となった.しかし,BD・SUでみられる典型的な潰瘍に比べて潰瘍辺縁の炎症性の盛り上がりは軽度であった.治療としては無水エタノール1回の撒布により止血できたが,潰瘍を瘢痕化するためには複数回の撒布が必要であった.

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要旨 薬剤性腸炎は薬剤の投与により腸管にびらんや潰瘍などの炎症性変化を生じ下痢や下血などの臨床症状が惹起される疾患であり,下血を来す代表的なものに急性出血性大腸炎とNSAIDs起因性腸炎がある.急性出血性大腸炎は右側大腸に好発し,合成ペニシリンなどの抗生物質投与によって引き起こされてアレルギーや微小循環不全,腸内細菌叢の変化などが原因と考えられている.一方,NSAIDs起因性腸炎は全消化管に起こり,近年になって大腸病変からの出血例も報告が増加してきており,prostaglandin合成障害による粘膜防御機構の破綻や腸管粘膜の透過性亢進などが原因と考えられている.これらの2つの疾患は,Helicobacto pylori除菌療法の適応拡大や高齢化社会を反映して今後さらに増加することが予測される.本稿では,消化管出血を来す薬剤性腸炎として急性出血性大腸炎,NSAIDs起因性腸炎を中心に述べる.

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要旨 Crohn病331例中,血便は28.6%にみられ,うち20例(6.0%)はショック症状を伴う大量下血例であった.大量下血は,腸切除歴のない症例では回腸からのものが多く,ほとんどが活動期にみられた.その再出血例も含め,腸切除歴のある症例の大量下血は,回腸吻合部の活動性の低い病変からのものが多く,ほとんどは臨床的緩解期の出血であった.出血部位の同定には,数日以内に行う経口洗浄法前処置下の大腸内視鏡検査が最も有用であった.同前処置による出血の増悪はなかった.治療としては内視鏡的止血術,腸切除とも再出血率が非常に高かった.積極的な腸切除は避けるべきである.HENによる再出血予防効果は少なかった.

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要旨 潰瘍性大腸炎は血便を来す疾患の中で最も一般的であり,経過中血便を呈さない潰瘍性大腸炎はないと言っても過言ではない.慢性の粘血便や下痢を主症状とするが,診断は生検を加味しても除外診断であり,特に感染性腸炎との鑑別が必要で,初診時には便培養が必須である.活動期の内視鏡検査は前処置なしで慎重に行い,決して無理はしない.注腸X線検査は希釈したバリウムにprednisoloneを混入して行う.潰瘍性大腸炎の経過中に下血を来したときには,再燃のほかに,高齢者では虚血性変化による縦走潰瘍の合併を,治療中に高熱を伴う下血をみたときにはサイトメガロウイルス感染の合併も考慮する.10年以上の長期経過例で下血をみるときには癌の合併も念頭に置き検査を進める.また,外科手術後の下血をみるときには,回腸嚢炎の存在も念頭に置く.このように,潰瘍性大腸炎患者における血便・下血をみるときには,患者の年齢,病状等を考慮しながら鑑別診断を行うことが重要である.

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要旨 下痢を伴う血便患者に遭遇した場合,感染性腸炎も念頭に置き,病歴の聴取,細菌学的検査を行う.鑑別診断上速やかに大腸内視鏡検査がなされるので感染性腸炎の内視鏡所見を熟知しておく必要がある.特徴的所見は,カンピロバクター腸炎におけるBauhin弁上潰瘍,腸炎ビブリオ腸炎においては大腸に所見が乏しくBauhin弁の腫大と終末回腸のびらん,腸管出血性大腸菌腸炎における右側結腸ほど高度の所見を示す縦走ないし全周性潰瘍などであるが,しばしばみられる左側結腸の縦走潰瘍は虚血性大腸炎との,散在性ないしアフタ性びらんは他の感染性腸炎との鑑別を要する.アメーバ赤痢ではタコイボ状びらんなど特徴的所見に加え生検組織診断も有用である.

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要旨 大腸腺腫や早期癌では,大きな隆起性病変以外で顕出血を呈することはまれで,進行大腸癌でも大量出血を来すことは少ないが,有症状大腸癌の中で血便の占める割合は大きい.当院で血便を主訴に大腸内視鏡検査を受けた患者の17%に腺腫・癌が発見された.これらの腫瘍が出血源でなかったものも含まれている.たとえ痔や憩室からの出血であっても,大腸腫瘍が並存している可能性があるので,それを念頭に置いて内視鏡検査を施行する必要がある.便潜血反応は,感度・特異度に問題が残るものの,有症状者よりも早期の大腸癌発見の契機としては有効である.

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要旨 急性出血性直腸潰瘍は動脈硬化の要因を背景に血流低下の準備状態にある高齢者が,何らかの理由で寝たきり状態になることから,下部直腸の粘膜血流の減少を来し惹起される急性の虚血性粘膜障害と考えられている.原疾患が改善し,止血がなされれば本症の予後は良好とされており,止血が非常に重要である.ほとんどの場合は内視鏡的に止血可能であるが,不可能であれば経肛門的結紮術も考慮する.本症と診断した後は再出血と潰瘍の治癒促進のため,患者を仰臥位で放置せず適宜体位変換を行うことが重要である.

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要旨 放射線照射性腸炎は婦人科領域や泌尿器科領域の悪性腫瘍に対する放射線治療後に発生するものであり,現在もなお重要な診療対象疾患の1つである.診断は放射線治療歴の聴取とともに手術痕や皮膚硬化の理学的所見が参考となる.診断は内視鏡検査が有用であり,毛細血管拡張,潰瘍,狭窄,瘻孔に留意する.治療は出血例には各種の薬剤による注腸療法や内視鏡的焼灼術が,狭窄例には内視鏡的拡張術が試みられている.内科的治療抵抗例に対する外科的治療は術後合併症の可能性を考慮して慎重な検討が必要であろう.長期経過例では癌誘発の可能性が生じるが,通常の癌と比較して形態や組織型に違いがみられるため,詳細な内視鏡観察が重要である.本疾患は,関係診療科の緊密な連携と長期間にわたる厳重な経過観察が必要である.

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要旨 粘膜脱症候群は消化管粘膜の逸脱による慢性的な機械的刺激によって生じる疾患で,直腸や人工肛門近傍に認められる.直腸粘膜脱症候群ではいきみの習慣を認めることが多く,直腸下部前壁に隆起性病変や潰瘍形成がみられる.一方,cappoly posisの成因は不明で,粘血便や粘液下痢を訴えることが多く,しばしば低蛋白血症を認める.直腸からS状結腸が好発部位で,典型例では表面に粘液が付着した多発性広基性病変が半月ひだにそって認められる.従来,両者は類縁疾患と考えられてきたが,臨床症状,内視鏡所見,病理組織所見,治療経過に相違がみられることから,成因が異なる別の疾患である可能性が高い.

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要旨 腸管嚢胞様気腫症は,腸管壁内の含気性嚢胞を特徴とする疾患で,基礎疾患の有無で特発性と続発性に分類される.成人では無症状のまま偶然発見されることが多いが,腹部膨満,下血,下痢などの症状を契機に発見されることもある.X線検査では,腸管壁に沿った嚢胞状または直線状のガス像が特徴的で,内視鏡所見では頂部に発赤を伴う柔らかい粘膜下腫瘍様隆起を呈する.有症状例では高圧酸素療法や抗生剤投与が試みられる.

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要旨 腸管子宮内膜症は性成熟期の女性の直腸・S状結腸に好発する.腹痛,便通異常,便柱狭小,腹部膨満,血便などの症状がみられ,約半数で月経前から月経中に症状が増悪する.画像診断上は粘膜下腫瘍として捉えられることが多いが,腸管壁への浸潤の程度によって画像所見に様々なパターンを来す.X線では横走ひだの集中を伴う粘膜下腫瘍様の隆起や,鋸歯状の辺縁が特徴的である.粘膜面に病変が存在する場合には,大小不同の顆粒集簇ないし敷石像類似の所見,網目状構造がみられる.月経周期による所見の変化は本症に特異的である.内視鏡でも同様であるが,全体像の把握はX線が優れており,生検診断も低率である.

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要旨 消化管の血管性病変は,血管拡張から悪性腫瘍まで多くの疾患が含まれる.自験例を提示しangiodysplasia(AGD),arterovenous malformation(AVM),hereditary hemorrhagic telangiectasia(Rendu-Osler-Weber病),血管腫,Dieulafoy潰瘍,について述べた.AGDは,72歳男性の上行結腸でみられ,アルゴンプラズマ凝固(APC)治療を行った症例である.AVMは,小腸に広範に拡がり術前出血部位の同定が困難であった59歳男性の症例を提示した.Rendu-Osler-Weber病は,83歳の高齢者で高度の貧血があり,繰り返す鼻出血,粘膜の毛細血管拡張を認め,胃AGDに対しAPCを行った症例である.血管腫は,61歳男性の下行結腸にみられた海綿状血管腫手術例である.Dieulafoy潰瘍は,36歳男性で,胃穹窿部の病変で止血に難渋した手術症例である.

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要旨 食道憩室に由来する消化管出血は,極めてまれで,食道壁内偽憩室症,Zenker憩室(咽頭食道憩室)など数例が報告されているに過ぎない.十二指腸憩室は,大腸憩室に次いで多いが出血はまれで,以前は外科的治療や動脈塞栓術が選択されることが多かったが,1990年以降内視鏡的治療での止血例が多くなっている.小腸憩室は,Meckel憩室以外は後天性の仮性憩室で,その約80%は空腸,約15%が回腸,5%が空腸・回腸に発生する.外科治療を要する小腸憩室の頻度は,炎症:3.5%,閉塞:2.8%,出血:2.1%である.大腸憩室は,仮性憩室であり,その頻度は年齢とともに上がり,局在については,以前から欧米では遠位側に多く,アジア地域では近位側に多いと報告されている.当科での集計では,8,014例の大腸内視鏡症例で,21%に憩室を認め,そのうち56%は右側に,26%はS状結腸に,18%は両方に存在していた.大腸憩室出血では,一般に先端キャップを装着して,適時吸引を加えて憩室内腔を観察して出血部位を確認して,クリップを用いた憩室口閉鎖術が行われている.

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要旨 肛門部の主な出血性疾患である,内痔核,裂肛,扁平上皮癌,悪性黒色腫,類基底細胞癌について述べた.内痔核の出血は鮮紅色で,多くの場合排便時のみ出血する.鑑別疾患としては,直腸脱,直腸粘膜脱症候群,直腸腫瘍などがある.裂肛は疼痛が主で,出血は拭紙につく程度の少量の鮮血である.扁平上皮癌は,放射線感受性が高いため放射線治療が第一選択である.悪性黒色腫は血行性遠隔転移が多いことから予後は悪い.類基底細胞癌は放射線化学療法が有効である.肛門腫瘍を正確に診断するためには,臨床の現場で頻回に肛門鏡検査を行い,普段から多くの痔核病変や正常肛門を観察しておくことが肝要である.

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はじめに

 消化管出血の内視鏡止血処置のうち純エタノール局注法は浅木ら1)により考案された手法で,穿刺針以外の内視鏡処置具が不要な,安価で施設と場所を選ばない非常に確実性の高い治療法である.エタノールの強力な組織脱水・固定の作用で単回の内視鏡での永久止血が可能であり,動脈性出血を来す消化性潰瘍の急性期において劇的な治療効果を発揮する.しかし,その強力な作用機序から続発する潰瘍の拡大や穿孔などの偶発症を引き起こすこともあるため,適切な方法での施行が必須である.本稿ではエタノール局注法での止血術に関して概説する.

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はじめに

 消化管出血を来す疾患は多数あり,日常診療において遭遇する機会は多い.上部消化管では胃潰瘍,十二指腸潰瘍,Mallory Weiss症候群の頻度が高く,下部消化管では大腸憩室出血や虚血性大腸炎が大多数を占める.下部消化管出血では緊急内視鏡検査を要する頻度は低いが,上部消化管出血では出血性ショック時に生命に危険が及ぶこともあり,迅速な診断と的確な処置を要する.

 消化管出血の治療における第一選択は内視鏡的止血術であり,多数の止血法が考案され,その治療成績が向上していることは周知の事実である.それぞれの止血法の特性を理解し病変の状態を把握したうえで,止血法を選択することが重要である.本稿では HSE(hypertonic saline-epinephrine)による止血術について概説する.

3.AS局注法 岡 志郎 , 田中 信治
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はじめに

 polidocanol(Aethoxysklerol(R) 以下 AS)は,食道静脈瘤の緊急出血時や地固め療法に硬化剤として広く用いられている薬剤であり(通常,細い静脈瘤出血で血管内注入が難しい場合に用いられることが多い),その良好な止血成績が報告されている1)2)

 近年,胃潰瘍に対するその優れた止血効果の報告も散見されるようになり3)~5),安全で簡便な消化管出血の止血法として ASの使用頻度が高くなっている6)~8)

 本稿では,AS による止血機序,実際の使用法,使用上の注意点についてわれわれの使用経験も踏まえて述べる.

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アルゴンプラズマ凝固法の機序

 アルゴンプラズマ凝固法(argon plasma coagulation ; APC)はアルゴンガスを媒体として高周波により凝固を行う非接触型高周波凝固法である.その凝固メカニズムは,プローブ内に流されたアルゴンガスがプローブ先端で高周波電流によりイオン化され,アルゴンプラズマ流となって組織の表層を凝固することによる.標的部位はアルゴンプラズマ流が到達すると瞬時に凝固が完了し,それにより組織の抵抗が上昇するが,高周波電流は抵抗の低い組織に向かう特性を有するため,組織抵抗が上昇した同一部位への連続凝固はなされない.また,プラズマ流はプローブと同軸方向に直線的に伸びるだけでなく,側方に放射状に障害を回り込むように進展しながら,電導性のある出血部位を選択的に凝固し,凝固の完了していない低抵抗の組織に向かう特性を有するため,自動的に均一でばらつきのない凝固層,乾燥層を形成することが可能となる.

5.ヒート・プローブ法 山野 泰穂
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はじめに

 ヒート・プローブ法は内視鏡止血法の中で機械的止血・熱凝固法に属し,接触型の止血機器である.近年,内視鏡止血術の主流はクリップ法やアルゴン・プラズマ凝固法であり,内視鏡室においてヒート・プローブ法の活躍の場が失われつつあるのが現状であるが,本法について解説する.

6.高周波電気凝固法 高鍬 博
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はじめに

 高周波電気凝固法は高周波電流の通電による発熱で,血管内血液の熱凝固,血管壁の収縮,周囲組織による血管の圧迫,血管壁の接着などを起こさせて止血する方法である.

 本法は平塚ら1)により開始されたが,当初使用された単極電気凝固子は通電による組織障害の広がりが予測しにくく,時には深く焼けて穿孔の偶発症があることなどの問題があった.しかし,現在使用されている双極電気凝固子では,粘膜に接触している近接した 2 個の電極の近傍にのみ電流が流れるため,組織凝固は表層に限局し深層障害の危険が少ない.

7.クリップ法 小野 裕之
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はじめに

 近年早期癌に対する切開剥離EMR(endoscopic submucosal dissection ; ESD)が広まりつつあり,出血に対する対処がより重要となっている.

 クリップを用いた止血法は,アルゴンプラズマ凝固法や止血鉗子による把持凝固法と並んで,消化管出血に対する止血法として頻用される手技である1)

 クリップ法は,直接血管を物理的に把持し止血,結紮可能な方法であり,止血できた場合の確実性は高い.したがって,本法は動脈性の噴出性出血や,血管が確認できるような潰瘍からの出血など,比較的出血量の多い場合に用いられる.一般に多発びらんなどの静脈性oozingやびまん性出血には他法が行われることが多い.

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はじめに

 endoscopic submucosal dissection(ESD)の普及を妨げていた最大の原因は,術中出血であった.しかし,近年高周波止血鉗子を用いた止血法が確立され,安全かつ確実な ESD が急速に普及しつつある.最近ではこの高周波止血鉗子を出血性胃潰瘍に対しても使用しているため1),本稿ではその使用法と特徴を述べる.

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はじめに

 現在,フィブリン接着剤(fibrin glue ; 以下 FG)は組織癒着,縫合部の補強,創傷部ケア,関節腔の保護,消化管吻合不全の予防や実質臓器の止血,および気胸や気管支瘻等の難治性瘻孔の治療に使用されている.内視鏡的には出血性の食道胃静脈瘤,胃潰瘍の治療を目的に使用されている.今回,内視鏡的止血術としてのFG注入法について報告する.

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はじめに

 消化管出血は,われわれがしばしば遭遇する緊急性の高い疾患の1つである.近年の内視鏡診断および内視鏡観察下治療の著しい進歩により,特に上部消化管出血に対してはそのほとんどが止血可能である.しかしながら下部消化管出血,特に小腸や中枢側結腸からの出血では出血部位の同定でさえ困難なこともある.このような症例の中で,内科的治療が奏効せず血管造影による動脈塞栓術や開腹手術による止血術が必要とされる症例は25%程度とされている1).従来このような消化管出血には開腹止血術が行われてきたが,重篤な基礎疾患や大量出血による全身状態不良のため致死率が高く,全身麻酔でさえ施行できない症例が存在する.そこでより侵襲性が低く,しかも出血点のみをピンポイントに治療可能でより多くの正常組織を温存できる点で血管造影による動脈塞栓術は期待される止血術の1つと考えられる.本稿では動脈塞栓術の対象となる病態と治療について述べる.

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生検後の出血

 血液疾患や肝硬変などの基礎疾患によって止血機能が非常に悪い患者や抗凝固剤,抗血小板剤の服用者を除けば,生検後の出血は極めてまれである.その正確な頻度は不明であるが,日本消化器内視鏡学会の偶発症に関する第3回全国調査報告1)では,パンエンドスコープと大腸スコープを使用しての出血の頻度をそれぞれ0.001%,0.007%と報告している.すべてに生検がなされているわけではないし,この中にはEMRやポリペクトミーに伴う出血も含まれているので正確な数字は算出できないが,生検後の出血の頻度は数万件に1件程度と推測される.

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はじめに

 消化管出血の診断,治療において内視鏡検査の重要性は高い.上部消化管や大腸では静脈瘤硬化療法,EVL(endoscopic variceal ligation),クリップ,エタノールやHSE(hypertonic saline epinephrine)の局注,アルゴンプラズマ凝固(argon plasma coagulation ; APC)など有効な内視鏡的止血術が確立されている.しかし小腸においては内視鏡の到達が困難であったことから,内視鏡診断や内視鏡止血が力を発揮することができないでいた.われわれの開発したダブルバルーン内視鏡は経口的,経肛門的の両ルートで深部小腸への内視鏡到達を可能とし,小腸全域における内視鏡診断,治療を実現した1)~3).ダブルバルーン内視鏡は深部小腸においても優れた操作性を発揮するため,出血点を的確に狙った有効な内視鏡止血が可能となった.本稿ではダブルバルーン内視鏡を用いた小腸出血の内視鏡的治療を中心に解説する.

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欧文目次

編集後記 浜田 勉
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 日常診療では消化管出血例に遭遇することがよくある.この症状に対して手際よく臨床的に対応することは第一線で従事する消化器科医の大きな役割であり,同時に,その力量が問われることでもある.通常の顕出血例に対し,速やかに内視鏡検査を施行し,出血源を同定,診断することがまず求められる.種々の検査手順に加え,認識しておかねばならない疾患とその基本的な画像をまとめて学ぶことが本増刊号の企画のねらいであった.独自のデータを駆使しつつ出血症状に視点を絞って解説していただいた本文に各執筆者の熱意のほどがうかがえる.本書を内視鏡室に常備し,呈示された症例をじっくり見つつ,今後の診療に役立てていただけることを期待している.

 今回,特に小腸疾患への新しいアプローチの方法として,体外式腹部超音波検査,ダブルバルーン内視鏡やカプセル内視鏡の画像が呈示され,今後,出血源不明とされた症例への有用な手段として臨床で用いられることになると推察された.一方,小林や松本が示した小腸 X 線像は極めて鮮明で,この領域でのバリウム造影検査の重要性は十分認識しておかなければならないだろう.

基本情報

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胃と腸
40巻4号 (2005年4月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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