臨床栄養 147巻4号 (2025年9月発行)

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重症心身障害児者・医療的ケア児者の食と栄養ケア実践ガイド

序文口分田　政夫 147巻4号 , 2025年9月 , pp.403-404

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【Part.1 総論】重症心身障害児者の栄養管理口分田　政夫 147巻4号 , 2025年9月 , pp.406-413

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KeyPoint

・重症児者は，呼吸障害や消化管通過障害，筋緊張の変動といった病態を合併することが多く，摂取エネルギーの決定には個別の評価が必要である．

・体重の栄養管理への活用には，実際の体重以外に，痩せ/肥満判定のための標準体重と投与カロリー決定のための修正体重が使用できる．

・投与エネルギー量が適切であっても，たんぱく質や微量元素が欠乏している可能性もあるので，栄養成分ごとの評価と補充も重要である．

【Part.2 重症心身障害児者の栄養管理にかかわるアセスメント】栄養アセスメント小林　弘治 147巻4号 , 2025年9月 , pp.414-421

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KeyPoint

・栄養アセスメントに体組成を用いることは，身体を構成する要素を定量的に評価でき，時系列での比較により栄養介入の効果や悪化の兆候を把握するための有力な方法である．

・食事内容，機能，病状などと合わせて総合的に評価を行うことがポイントとなる．

【Part.2 重症心身障害児者の栄養管理にかかわるアセスメント】摂食嚥下機能の評価と食形態淺野　一恵 147巻4号 , 2025年9月 , pp.422-427

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KeyPoint

・重症児の食べる力を評価するには，口腔嚥下機能，防御機能（咳嗽力，栄養状態，呼吸機能），食環境（食形態，姿勢，食具，介助方法）の適合性などを総合的に評価する必要がある．

・適切な食形態を用いて経口摂取を継続することは，摂食嚥下機能の発達や強化につながり，反対に不適切な食形態は機能に悪影響を及ぼす．

・「発達期摂食嚥下障害児（者）のための嚥下調整食分類2018」は，不足する機能を補完し，かつ摂食嚥下機能発達を促進することを目的として策定された発達期を対象としたものである．

【Part.2 重症心身障害児者の栄養管理にかかわるアセスメント】消化管機能障害の評価と栄養中谷　勝利 147巻4号 , 2025年9月 , pp.428-434

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KeyPoint

・重症心身障害児者ではさまざまな要因が消化管機能に影響し，栄養面での予備力も少ないことから，早めの適切な対応が必要になる．

・日常診療の中で病態を正確に把握しておき，時機を逸することなく適切に対応することが重要で，可能であれば予防的な対応を行う．

【Part.3 栄養管理の実際】栄養摂取能の実際と可能性永江　彰子 147巻4号 , 2025年9月 , pp.435-439

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KeyPoint

・重症心身障害児者の基本的な病態は，発達期の脳障害に基づく．脳障害からくる嚥下の観点で時に経腸栄養が必要となる．

・重症心身障害児者の消化管に関連する合併症は，基礎疾患の病態に由来するものだけでなく，経腸栄養の負の影響も念頭に置く必要がある．

・2022年5月「経腸栄養分野の小口径コネクタ製品の切替えに係る方針の一部見直しについて」（医政安発0520第1号）により国際規格への切替え期限は破棄され，旧規格との併用が決定した．

【Part.3 栄養管理の実際】栄養投与経路確立に向けて小児外科医の果たす役割山内　健 , 亀井　一輝 , 田口　匠平 147巻4号 , 2025年9月 , pp.440-444

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KeyPoint

・離乳期以降も経鼻胃管栄養が必要な重症心身障害児では，胃瘻造設を考慮する．

・胃瘻の利点は，もっとも生理的なミキサー食を投与できることだが，経鼻胃管抜去による摂食・嚥下能の改善も期待できる．

・胃瘻造設法にはPEG，腹腔鏡補助下PEG，腹腔鏡手術（内視鏡非使用），開腹術がある．各術式の利点，欠点を考慮し施設に合った術式を選択する．

・経胃空腸瘻は，胃食道逆流や胃排出能低下時に用いられるが，合併症には十分に注意する．十二指腸以下の通過障害では，空腸瘻，バイパス術も検討する．

【Part.3 栄養管理の実際】経腸栄養剤の種類と選択上村　由美 147巻4号 , 2025年9月 , pp.445-451

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・重症心身障害児者の各種必要栄養量は「日本人の食事摂取基準」とは異なるものも多い．

・近年，食品タイプだけでなく医薬品タイプでも，十分な栄養成分をもつ経腸栄養剤が増えてきている．

【Part.3 栄養管理の実際】腸内環境からみた食事の重要性 -栄養方法が重症児者の腸内フローラに与える影響と食物繊維などプレバイオティクスの効果田沼　直之 147巻4号 , 2025年9月 , pp.452-456

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・腸内フローラを構成する細菌種や細菌数が減少し，腸内フローラの多様性が低下した状態をディスバイオーシスという．

・重症心身障害児者の腸内フローラ解析の結果，食事の経口摂取群に比べて経管栄養群では菌叢の多様性が低下しており，ディスバイオーシスの状態にある．

・胃瘻からのミキサー食注入を取り入れるなど，腸内フローラがディスバイオーシスに陥らないように栄養管理を行うことが重要である．

【Part.3 栄養管理の実際】知っておきたい半固形化栄養材短時間摂取法（半固形化法）の基礎知識合田　文則 147巻4号 , 2025年9月 , pp.457-461

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・半固形化法は，生理的な食物（半固形栄養材）の摂取により生理的な消化吸収が得られる胃瘻栄養法である．

・胃食道逆流の原因は胃内圧の急速な低下であり，胃瘻のほぼすべての致命的合併症は非生理的な液体に起因した医原性の合併症（液体栄養剤症候群；liquid formula syndrome）であり，半固形化法はそれを解決する胃瘻栄養法である．

・ポイントは，十分な高粘度（20,000 mPa・秒）の栄養剤やミキサー食を広口径のデバイスで十分な量を短時間（5～15分）で注入することである．

【Part.3 栄養管理の実際】ミキサー食注入法が合併症予防，栄養状態，生活の質に与える効果について淺野　一恵 147巻4号 , 2025年9月 , pp.462-467

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・半固形状のミキサー食を注入することにより，嘔吐，ダンピング，下痢，耐糖能異常などの経腸栄養合併症の症状が軽減できる.

・自然界に存在する多種多様な栄養素をバランスよく摂取できる.

・注入時間短縮，自由度の高い注入姿勢，介護負担軽減，家族と同じ食事が楽しめるなどのQOL向上により，本人と家族の満足感が得られる.

【Part.3 栄養管理の実際】食事，ミキサー食，水分摂取など調理の工夫石橋　久美子 147巻4号 , 2025年9月 , pp.468-470

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・ミキサー注入食は調理食を利用した栄養摂取方法である．経管栄養剤との大きな違いは，五感を使い食事を楽しめる点だと考える．

・手元調理は利用者の状態を見ながら，①細かく砕く，②とろみを付ける，③必要なものを加えることができる，安全な食事である．

【Part.3 栄養管理の実際】栄養摂取における姿勢と体位，筋緊張，変形胸郭への対応椎名　英貴 147巻4号 , 2025年9月 , pp.471-476

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KeyPoint

・栄養摂取は，食物の口腔内への取り込み，咀嚼・嚥下，消化吸収と多様なプロセスから成り，姿勢と何らかの関連性をもつ．

・姿勢管理は筋緊張の調整と姿勢コントロールの発達促進の観点に基づき，医学的アプローチ，理学療法的アプローチ，装具・器具によるアプローチを用いて行われる．

・食事時の姿勢設定では，座位保持装置による体幹角度の設定と頭部の位置関係の設定がポイントとなる．

【Part.3 栄養管理の実際】排泄支援と栄養 -重症心身障害児者の排泄看護の視点から山口　綾子 , 宮﨑　和歌 147巻4号 , 2025年9月 , pp.477-481

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・脳性麻痺の排便機能は人によって異なる．

・解剖生理から排泄の機序を理解し，障害されている機能をアセスメントする．

・腸は独自の神経系があり，腸内細菌叢のバランスが重要である．

・抗菌薬の使用などにより腸内細菌叢のバランスが変わると，便の性状に影響する．

【Part.3 栄養管理の実際】糖代謝異常，腎機能障害，心不全時の栄養管理渡邉　誠司 147巻4号 , 2025年9月 , pp.482-486

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・重症心身障害児者は，恒常性維持のための諸臓器の未熟性，低・異形成から代謝・力学の低機能がある．そのため，体への負荷に対する対応がむずかしい．

・また，成長のためのエネルギー需要の増大，長期の不動のため筋量低下が起き，重要な栄養素の予備力不足が顕在化する．

・本稿では，病態に応じた栄養療法・対処法を概説する．

【Part.3 栄養管理の実際】呼吸障害や血液ガス・電解質異常と栄養管理竹本　潔 147巻4号 , 2025年9月 , pp.487-491

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・重症心身障害児者の呼吸障害は，急性と慢性に分けて考える．

・栄養管理の指標としてたんぱく質，脂質以外にも酸塩基平衡とNa・K・Clに注意する．

【Part.3 栄養管理の実際】口腔機能の問題と栄養状態改善に求められる支援田中　信和 147巻4号 , 2025年9月 , pp.492-495

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・重症心身障害児者の口腔機能は，定型発達とは異なる特徴をもつ．

・口腔機能発達の遅滞や早期喪失などにより，食塊形成が種々の段階・程度障害され，誤嚥や窒息の原因となることがある．

・口腔機能に起因する問題は，栄養摂取という観点からは訓練よりも支援的な対応が必要とされるものが多い．

【Part.4 栄養素欠乏と合併症およびその対応】微量栄養素欠乏と対応 -亜鉛・銅・セレン・カルニチン徳光　亜矢 147巻4号 , 2025年9月 , pp.496-500

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・亜鉛は体内で多くの役割を担っているが，重症児者では欠乏しやすいうえに欠乏症状がわかりにくく，注意が必要である．

・銅は亜鉛の補充時や，銅の配合量が少ない製品での経腸栄養施行時には欠乏を意識し，不可逆的な神経症状が出現しないうちに対応を行う．

・カルニチンは配合されていない製品での経腸栄養施行時や特定の抗てんかん薬内服時の欠乏に注意する．

【Part.4 栄養素欠乏と合併症およびその対応】長期経管栄養管理における消化管合併症とその対応種子島　章男 147巻4号 , 2025年9月 , pp.501-510

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・長期経管栄養管理における合併症について，びわこ学園医療福祉センター草津での自験例を中心に解説する．

・経管栄養の投与経路や使われるデバイスごとに分けて，それぞれに特徴的な合併症を紹介する．

【Part.4 栄養素欠乏と合併症およびその対応】たんぱく栄養不良とその対策口分田　政夫 147巻4号 , 2025年9月 , pp.511-516

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・たんぱく栄養不良の検出には，体タンパク量の測定に加えて，アルブミン値が指標となる．

・肥満であっても，たんぱく栄養不良が存在する．

・対応として，脳性麻痺タイプや年齢に応じた適切なNPC/N比の栄養，Fischer比の高い良質なたんぱく質の補給が重要である．

【Part.4 栄養素欠乏と合併症およびその対応】ビタミン欠乏の病態とその対応桒原　晶子 147巻4号 , 2025年9月 , pp.517-520

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・重症心身障害児者では合併症や抗てんかん薬，抗菌薬の長期的使用により，ビタミン欠乏が起こる．

・重症心身障害児者の主な合併症である骨粗鬆症・骨折には，ビタミンDおよびビタミンKの欠乏がかかわる．

・具体的な補給量は明確ではないものの，欠乏リスクが高い者に対し，サプリメントによる介入が勧められる．

【Part.4 栄養素欠乏と合併症およびその対応】下痢と便秘の要因・病態および薬物療法と栄養管理片山　珠美 147巻4号 , 2025年9月 , pp.521-525

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KeyPoint

・重症心身障害児者では重度の運動障害・知覚障害，投与薬剤の影響で排便に困難をきたしやすい．

・便通のメカニズムを概説し下痢や便秘の要因の理解を助けるとともに，よりよい排泄が得られるための全身管理について考察する．

【Part.5 NST活動】重症児者施設のNST 活動① -重症心身障害児者の長期入所施設のNSTの運営について園田　祐介 147巻4号 , 2025年9月 , pp.526-530

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・重症心身障害児者の長期入所施設である当施設で，2023年度から栄養サポートチーム（NST）加算取得運用を開始した．

・NST活動にあたって，回診が必要な対象の選定，選定の基準の決定には工夫を要する．

・長期入所施設では，全職種が入所者の状態に疑問をもてるかどうかがNSTチームの質の維持・向上につながる．

【Part.5 NST活動】重症児者施設のNST 活動② 下平　翔太 147巻4号 , 2025年9月 , pp.531-535

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・個別対応の多い重症心身障害児者にとって，多職種で取り組むNST活動は重要な役割を担っている．

・身体計測値や必要エネルギー量等は，標準的な基準には準拠しないことが多く，多面的観点からアプローチを試みる．

・低栄養だけではなく，過栄養による健康障害にも留意しつつ，個々にとって最適な栄養管理の提案が求められる．

【Part.5 NST活動】重症児者施設のNST 活動③ 浦川　有香 147巻4号 , 2025年9月 , pp.536-541

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・当センターの摂食嚥下障害対策部会は，栄養管理委員会の下部組織として設置され，NSTを含めた院内での活動を担っている．

・摂食嚥下障害対策部会とは別に療育部内にも摂食嚥下障害看護認定看護師を中心として，病棟のスタッフにより構成されるリンクナース会が存在する．部会とリンクナース会は密に連携を取り，現場における活動が円滑に進むよう努めている．

・ケース会議は医師・看護師長，看護師，支援員，心理指導員，理学療法士，作業療法士，言語聴覚士，管理栄養士，歯科衛生士，医療ソーシャルワーカーで構成され，全入所者に対して情報交換を行い，問題点，個別支援計画などを討議する．

【Part.6 特別な状態における栄養の対応―事例を中心に】痩せについて位田　忍 147巻4号 , 2025年9月 , pp.542-546

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KeyPoint

・栄養評価として，成長曲線での評価およびSGAが有用である．

・消化管機能と呼吸機能の両方の評価をしながら，治療の選択をしていく．

・胃瘻食（ミキサー食）による栄養支援は有用である．

【Part.6 特別な状態における栄養の対応―事例を中心に】がん終末期の食事支援の事例北川　真理 147巻4号 , 2025年9月 , pp.547-551

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・緩和ケアとは，疾患による心と体の苦痛を和らげ，自分らしい生活を送れるようにするケアである．

・痛みや不安に対し，薬物療法や物理療法とともに，心理的支援が重要である．

・病態に沿った栄養療法の下、本人の希望を尊重した食事提供は，生きる楽しみの一つとなれた．

【Part.6 特別な状態における栄養の対応―事例を中心に】食物アレルギー高増　哲也 147巻4号 , 2025年9月 , pp.552-556

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KeyPoint

・ミキサー食の普及にともない，食物アレルギーについての対応が求められる事例が目立っている．

・食物アレルギーは，症状が誘発される食物，条件に対しては除去をするしかない．

・あらかじめ特定の食物を摂取しなければ予防になるとは言えず，安全な範囲内で広く食物を摂取することが望ましい．

【Part.6 特別な状態における栄養の対応―事例を中心に】ケトン食療法熊田　知浩 147巻4号 , 2025年9月 , pp.557-561

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KeyPoint

・ケトン食は炭水化物，たんぱく質を制限し，脂質を多く摂取することで体内でケトン体を産生させる難治てんかんの食事療法である．

・ケトン食療法は難治てんかん患者の3〜5割に有効であるが，3カ月間試みて効果がなければ無効と判断し中止する．

・ケトン食中は尿路結石や微量元素欠乏などの合併症に注意する．

【Part.6 特別な状態における栄養の対応―事例を中心に】在宅の重症心身障害児者・医療的ケア児者田中　総一郎 147巻4号 , 2025年9月 , pp.562-565

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KeyPoint

・在宅での栄養指導は母親をはじめとした保護者と管理栄養士の楽しい会話の場にもなり，家にある調理器具を用いるため，家族による再現性が高く定着しやすい．

・経腸栄養剤から同等の栄養量の食品への置き換えによって，食べる喜びとつくる喜びを引き出し，微量元素などの補充も考慮している．

【Part.6 特別な状態における栄養の対応―事例を中心に】在宅・学校・施設との栄養情報共有松田　佳代 147巻4号 , 2025年9月 , pp.566-569

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KeyPoint

・ケトン食とは，体内でケトン体が多く産出されるように考案された食事のことであり，施設において在宅ケトン食の情報収集は重要である．

・当センターでは特別支援学校へ通学する患者の食形態や摂取栄養量，食物アレルギーの有無について冊子などを用いて詳細に情報を共有している．

・施設間で情報共有を行う際には，正確な食物アレルギー情報の把握と周知が求められる．

【Part.7 トピックス】術前栄養介入天江　新太郎 147巻4号 , 2025年9月 , pp.570-574

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1　重症児者における術前栄養管理が必要な外科治療

重症心身障害は，脳障害に引き続きさまざまな合併症が起こる．これらの合併症では外科的な治療の介入が必要となることがあるが（表1），なかでも呼吸と栄養に関連する合併症に対する外科治療では，術前栄養介入が必要となることが多い．

呼吸障害では，上気道（咽頭・喉頭）狭窄に対して気道を確保する場合，呼吸不全により長期の人工呼吸器管理が必要な場合には単純気管切開術が選択される．しかし，嚥下機能障害による呼吸障害では，誤嚥性肺炎を防止しつつ気道を確保する必要があり誤嚥防止術（喉頭気管分離術や声門閉鎖術）が選択される．

嚥下機能障害があり経口摂取は困難であるが，唾液誤嚥は起こさない状態であれば胃瘻造設術の適応になる．食道裂孔ヘルニアなどが合併している症例では，その病態に合わせて噴門形成術などが付加される．

【Part.7 トピックス】「食べることは生きる力」 -注入で食事ができる喜び下釜　櫻子 147巻4号 , 2025年9月 , pp.575-578

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【Part.7 トピックス】緩和ケアの視点からみた栄養管理余谷　暢之 147巻4号 , 2025年9月 , pp.579-581

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1　はじめに

食事は栄養を補うためだけでなく，楽しみや安らぎを得るためにも重要である．重い病気を抱えて生きる子どもをもつ親や介護者にとって，子どもの食事のニーズが満たされているかどうかは大切な問いである．食事の介入は子どもの生活の質を向上させ，症状を緩和する場合もあり，その支援は緩和ケアの視点からも重要である．

緩和ケアが必要な状況にある子どもたちは，基礎疾患や治療の副作用，身体活動レベルなど，さまざまな要因により，エネルギー必要量が変動することがある．多くの場合，活動レベルが低下してくると代謝機能も低下するため，必要に応じた栄養量の調整が重要になる．

ここでは，緩和ケアの視点から重症心身障害児（以下，重症児）において栄養摂取が負担になる状況について取り上げ，その対応策について述べる．

【Part.7 トピックス】多職種が連携するチーム医療での情報共有竹内　典子 147巻4号 , 2025年9月 , pp.582-584

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1　はじめに

当センターでは，多職種連携として6つのチームが日々活動している．そのなかの一つの栄養支援チーム（NST）の下部組織である摂食嚥下ワーキンググループ（以下，WG）は，NSTの前身組織として2002年に発足した．当時，当センターを利用する重症心身障害児者の多くが摂食や嚥下に関するリスクをもち，利用者の高齢化や重症化が進むにつれて摂食嚥下機能の退行や不全が顕著になってきており，安心・安全な食事が提供できるように迅速な対応が求められていた．

発足から23年が経つ現在，摂食嚥下にリスクのある利用者の食事が，楽しく，かつ安全に進められるようになることを目的として，個々の利用者の摂食機能レベルに合わせた食形態や食事介助方法の検討など，種々さまざまな取り組みを継続して行っている．メンバーは医師，歯科医師，摂食嚥下障害看護認定看護師（以下，CN），各病棟看護師，保育士，管理栄養士，調理師，言語聴覚士（ST），薬剤師，歯科衛生士で構成されており，必要な場面では理学療法士（PT）や作業療法士（OT）も参加している（図）．多職種がそれぞれの専門性を活かしてかかわっており，また，メンバーは自身の所属とWGをつなぐ役割を担っている．このようなグループの運営には職員間の情報共有が重要になる．本稿では，当センターの事例を紹介する．

【Part.7 トピックス】味わう喜び，コミュニケーションとしての栄養（療育的側面） -料理教室での地域連携北川　真理 147巻4号 , 2025年9月 , pp.585-587

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1　はじめに

「食事」は栄養学的な役割とQOLや社会性を高める役割をもつ．「食べる」ことは生きることであり，私たちの体と心を支えてくれる．それは誰にとっても同じであり，障害の有無によって変わるものではない．

本稿では重症心身障害児者（以下，重症児者）の抱える課題や環境の中で，よりよい食の形を求めて試行錯誤してきた取り組みを，これまでの経験とともに紹介する．

【Part.7 トピックス】カルシウムアルカリ症候群 -現代のミルクアルカリ症候群安西　真衣 147巻4号 , 2025年9月 , pp.588-590

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1　はじめに

「カルシウムアルカリ症候群」という名前を聞いたことがあるだろうか．血液検査で特徴的な血清カルシウム値の上昇がみられる病態である．

本稿では，現代の「ミルクアルカリ症候群」であるカルシウムアルカリ症候群の概要とその治療，発症の予測等について解説する．ビタミンD製剤とマグネシウム製剤を両方服用する場合は，とくに留意したい．

【Part.7 トピックス】災害時の食事支援を経験して越田　雅代 147巻4号 , 2025年9月 , pp.591-593

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1　はじめに

2024年1月1日16時10分，能登半島地震が起こり，最大震度7の大規模災害が発生した．当院のある七尾市内も震度6強であった．元旦に起きた大規模災害であり，市内の食材等の納品業者は営業できず，市場も被災し，地元業者から食材を調達できない状況となった．地域全体が断水し，遠方から納品する業者は道路の陥没や亀裂を避け，迂回経路を使い配送に時間を要した．想定をはるかに上回る今回の震災において，当院での対応を振り返り今後の課題に関して述べる．

【Part.7 トピックス】栄養と薬剤との関連，栄養不良を改善する薬剤秋葉　陽子 , 口分田　政夫 147巻4号 , 2025年9月 , pp.594-596

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1　はじめに

重症心身障害児者は，中枢神経障害を基礎として，多岐にわたる臓器の合併症を有していることがある．とくに，てんかんがあり，複数の抗てんかん薬を服用していることが多い．

抗てんかん薬のなかには，食事と相互作用があるものが多く^1），注意を必要とする．表に，食事と薬剤の相互作用として報告されているものを記した．

【Part.7 トピックス】栄養に関する診療報酬・法律・制度奈倉　道明 147巻4号 , 2025年9月 , pp.597-598

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栄養ケアが関連する厚生労働省の分野としては，医療（診療報酬）と高齢者介護（介護報酬）と障害福祉（障害福祉サービス等報酬）の3分野があり，令和6年（2024年）度はこの3分野で同時に報酬改定が行われた（トリプル改定）．それぞれについて解説する^1-3）．

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目次 147巻4号 , 2025年9月 , pp.401-402

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編集後記 147巻4号 , 2025年9月 , pp.600-600

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基本情報

臨床栄養
147巻4号
(2025年9月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0485-1412 医歯薬出版

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第6位日本におけるサルコペニア肥満の定義と診断基準加藤久詞,浅原哲子臨床栄養 146巻 4号 pp. 466-471 (2025年4月1日) 医歯薬出版
第7位総合病院における精神科リエゾン活動と管理栄養士の接点　精神科リエゾン,緩和ケア,認知症ケアサポート山本賢司臨床栄養 143巻 2号 pp. 162-167 (2023年8月1日) 医歯薬出版
第8位 CKDの栄養管理におけるエネルギー加藤明彦臨床栄養 147巻 2号 pp. 168-175 (2025年8月1日) 医歯薬出版
第9位【Part.1 総論】重症心身障害児者の栄養管理口分田政夫臨床栄養 147巻 4号 pp. 406-413 (2025年9月25日) 医歯薬出版
第10位「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を公表・他臨床栄養 144巻 4号 pp. 596-597 (2024年4月1日) 医歯薬出版

臨床栄養 147巻4号 (2025年9月発行)

重症心身障害児者・医療的ケア児者の食と栄養ケア実践ガイド

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