臨床婦人科産科 50巻6号 (1996年6月)

今月の臨床 妊娠と自己免疫疾患

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免疫系による自己と非自己の識別

 生体における免疫系の役割は“非自己”を排除して“自己”の保全を図ることにあるとされる.非自己としては外界から侵入してくる微生物・異物・輸血や移植による他の個体の細胞や組織,自己から生じる変異細胞・ウイルス感染細胞・老廃化した細胞や組織などが想定される.

 この機能を果たすためには2つの段階が必要である.ひとつは,非自己と自己とを明確に識別することであり,もうひとつはそうして識別した非自己を排除する過程である.前者を求心経路,後者を遠心経路ということがある.

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 不明な部分は多いが,X染色体上の遺伝子の関与,あるいは性ステロイドホルモン・性腺刺激ホルモン分泌の影響などにより,自己免疫疾患は女性に多く発症し,しかも生殖年齢に好発することが知られている.また,免疫学・分子生物学の進歩によりその病因・病態の解明がすすみ,治療法あるいは産科学的管理が確立されつつあることともあいまって,難病とされていた自己免疫疾患を持つ女性にも妊娠・出産の機会が与えられるようになり,自己免疫疾患合併妊娠の症例は増加してくる傾向にある.

 したがって,自己免疫疾患の発症や予後に及ぼす妊娠の影響を知ることは,内科医だけでなく産科臨床医にとっても今後の重要な課題と考えられる.

Overview

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 自己免疫疾患は,自己の生体成分に対して異常な免疫反応をもたらし,その結果生じる自己抗体や自己反応性Tリンパ球が組織障害をもたらす疾患群である.正常入においても,時に自己抗体を認めることがあるが,臨床的に症候を伴っていない場合には自己免疫疾患には含まれない.自己免疫疾患には数多くの疾患が含まれるが,ここでは,その分類,考えられている病因,組織傷害機序と病態にっいて述べる.

自己免疫疾患をもつ妊婦の管理

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 甲状腺機能異常を起こす代表的な疾患はバセドウ病,橋本病といった自己免疫性甲状腺疾患であり,若年女性にもよくみられるものである.これらの疾患がうまく管理されていない場合,妊娠の可能性や経過に少なからず影響が及ぶことはよく知られている.しかし,これは甲状腺ホルモンそのものの増減による影響であって,甲状腺ホルモンさえうまく正常化できれば健常人と変わりない結果が期待できる.しかも自己免疫そのものの治療は困難であるが,甲状腺機能のコントロールは慣れれば比較的容易である.甲状腺に対する自己免疫(とくに自己抗体)自体による悪影響を示唆する報告は皆無ではないが,一般には認められていない.甲状腺機能は,健常妊婦においても妊娠中の内分泌的・代謝的な変化のために揺動が起こりうるので,判断を誤らないよう注意が必要である.

 自己免疫性甲状腺疾患は,妊娠中の軽快・出産後の増悪がもっとも明らかにみてとれる自己免疫疾患のひとつである.ホルモンの増減としてあらわれるため自覚症状からも検査上も見いだしやすいからである.出産後の増悪はとくに出産後自己免疫性甲状腺症候群と総称される.

2.SLE 石川 睦男 , 栁沼 裕二
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 全身性エリテマトーデス(systemic lupuserythematosus:SLEと略)を合併している場合の妊娠は原疾患そのものが妊娠によって病態が変化することから,妊娠中,産褥期といえども治療を続けながら厳重に管理しなければならない.その一方で妊娠中の薬剤,とくに免疫抑制剤の使用については催奇形性の点で十分慎重でなければならないとともに,SLE自体が胎児,新生児に与える影響をも考慮しなければならない,そこで本稿ではSLE合併妊娠の病態,診断,検査,治療について概説する.

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 ITP(Immunological Thrombocytopenic Pur—pura/Idiopathic Thrombocytopenic Purpura)は,自己の血小板に対して抗体を産生することによって,血小板が破壊されるために起こる疾患であり,若い女性に好発するため,妊娠を契機に発見されることも少なくない.妊娠に合併したITPは母体のみならず児に対しても出血の危険を及ぼすため,その妊娠分娩管理に関する多くの報告がなされている.一般に急性型のITPは小児期に先行するウイルス感染により発症し,ほとんどが一過性であるのに対して,慢性型のITPは成人に好発し,自然寛解するものは少ないとされている.われわれの施設においても毎年数例のITP合併妊産婦の管理を行っており,以下にその管理指針について解説する.

4.MCTD 木戸口 公一
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MCTD(混合性結合組織病)の病像

 混合性結合組織病は,ようやく最近になって独立した疾患単位として認められるようになった.全身性エリテマトーデス(SLE),進行性全身性強皮症(PSS),多発性筋炎(PM)にみられる症状が混在し,オーバーラップ症候群との区別はいまだ明確に定義されていないが,厚生省研究班のMCTD診断の手引き(表1)が国際的にも評価されるようになってきた.SLEと同様女性に好発する疾患で,まとめると

 ①高力価の抗nRNP抗体(必須条件)

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 進行性全身性硬化症(progressive systemic sclerosis:以下PSS)は手指先端の皮膚の硬化で始まり,レイノー現象や関節痛を伴う.そしてしだいに四肢・顔面・体幹に病変が及び,やがては全身諸臓器の炎症性線維性硬化性病変へと進展していく疾患である.さらに心臓・肺・腎などに病変が波及しその機能障害を伴う場合はとくに予後不良となる.

 本邦においては厚生省特定疾患調査研究班により本疾患の診断基準が示されている(表1).

6.重症筋無力症 合阪 幸三
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疾患の概念

 重症筋無力症は骨格筋の神経筋接合部の異常による疾患で,その原因としてはシナプス後のアセチルコリンレセプターに対する免疫学的な抑制が関与しているとされている.その結果,レセプター機能が低下し,よく知られているような易疲労性,脱力感等の症状をきたすこととなる(図1).女性に多く(男性の2倍),主症状としては,眼瞼下垂(普通は非対称性),複視,咀嚼障害,嚥下困難,構音障害(鼻声),四肢の脱力,全身倦怠感など,骨格筋における麻痺症状もしくは高度の易疲労性などが挙げられる.発症の年齢ピークは20歳代で,それゆえ産科的にも合併症としてみられる可能性が高い(図2).なお本疾患の筋麻痺は運動などによる疲労性の筋収縮力低下として現れるのが特徴で,夕方になると眼瞼下垂や鼻声,咀嚼・嚥下障害が出現することから初めて気づかれることが多い.本疾患はテンシロン10mgの静注により劇的な症状の改善がみられ(テンシロン試験),臨床的にはこの方法により診断される.

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 潰瘍性大腸炎(以下UC)は増悪と寛解を繰り返す突発性炎症性腸疾患である.わが国におけるUCの年間発病率は,人口10万人あたり1985年0.29,有病率は1989年6.741)で,男女とも若年者に多く,発症のピークは10歳代から20歳代にある.女性の妊娠年齢が20歳代に最も多いことから,女性のUC患者が妊娠する可能性は高く,妊娠の偶発合併症としても注目される.発症原因は不明で,免疫病理学的機序や心理学的要因の関与が考えられている.妊娠や分娩を契機にUCが発症,再燃あるいは増悪し妊娠の継続が困難となる症例もあるが,妊娠が正常に経過し,出産も正常にできる場合も多い.

8.大動脈炎症候群 村上 雅義
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 大動脈炎症候群は,大動脈とその主要分枝および肺動脈幹に狭窄・閉塞または拡張病変をきたす原因不明の非特異的炎症疾患である.

 1908年に眼科医である高安1)により網膜血管の異常として発見された.その後,“脈なし病”さらには“大動脈弓症候群”の一疾患として扱われてきたが,1960年頃より炎症による動脈障害が大動脈弓にとどまらず大動脈やその分枝幹動脈にも及ぶ症例の多いことがわかり,“大動脈炎症候群”,“高安動脈炎”と呼ばれるようになった.

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概念

 ベーチェット病は,皮膚・粘膜・眼症候群に包括されているが,これに属する他の疾患とは明らかに区別される一疾患単位をなす.口腔粘膜のアフタ性潰瘍,皮膚症状,ブドウ膜炎,外陰部潰瘍のほかに,関節,消化管,血管系,中枢神経系,心肺,泌尿器の病変による症状もみられる全身疾患である1)

10.抗リン脂質抗体 青木 耕治
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 自己免疫疾患のなかでもとくにSLE,MCTDあるいはITPなどを合併した妊娠においては,抗リン脂質抗体を必ず測定すべきである.以前より,SLE合併妊娠には,流産・死産が多いことが報告されていたが,1980年代中頃より,この流産・死産と自己抗体としての抗リン脂質抗体との密接な関係が明らかにされてきたからである.抗カルジオリピン抗体(抗CL抗体),ループスアンチコアグラント(LAC),梅毒血清反応の生物学的偽陽性を示す抗体などが,いわゆる「抗リン脂質抗体」である.

 抗リン脂質抗体は流産・死産以外にも血栓症,血小板減少症などの一部によく検出されており,1986年にこれらを一括して『抗リン脂質抗体症候群』とすることが提唱された.また最近,SLE患者の場合を『続発性抗リン脂質抗体症候群』として,その他の原発性と区別することが提唱されている1)

自己免疫疾患と胎児・新生児

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 自己免疫疾患では抗核抗体をはじめとする多種自己抗体の出現を認める.自己抗体の一種類である抗Ro(SS-A)抗体は,シェーグレン症候群で高率に陽性となるが,全身性エリテマトーデス(SLE)や慢性関節リウマチ(RA)などの自己免疫疾患でもしばしば認められる.一方,1983年に初めて先天性房室ブロックと,母体の有する自己抗体のうち抗Ro(SS-A)抗体との強い関係を示唆する報告1,2)がなされて以来,自己免疫疾患合併妊婦の周産期管理における胎児不整脈,とくに胎児房室ブロックの重要性が示唆されるようになってきた.

 本稿では自己免疫疾患が胎児に与える影響のなかでもとくに胎児房室ブロックについて概説する.

2.新生児頭蓋内出血 三村 俊二
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 母体の自己免疫疾患による胎児,新生児への影響については,基礎疾患の病態が胎児胎盤系に及ぼす結果としての症状,例えば胎児発育不全などと,自己抗体の胎盤移行により胎児,新生児に原疾患と同様の病態が生ずる場合に大別される.本稿の主題は新生児頭蓋内出血であるが,これは母体の自己免疫疾患との関係で考えると,母体側の原因疾患は,抗血小板抗体の産生が病態の一部を形成する疾患群,すなわち特発性血小板減少性紫斑病(以下,ITP),全身性ループスエリテマトーデス,混合性結合織病に事実上限定される.また,このうち後2者においては,新生児に生ずる病態として血小板減少症は認められるものの,実際に出血傾向を伴い頭蓋内出血を生ずることは経験的にもまた文献報告上もまずみられない.したがって,本稿ではITP母体の胎児あるいは新生児における血小板減少症による頭蓋内出血という点に焦点を絞ることにする.

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 全身性エリテマトーデスsystemic lupus ery—thematosus(SLE)は全身の結合組織に病変を起こす自己免疫疾患である.多彩な臨床症状を呈する多臓器障害が特徴で病変は脳神経系,心臓,肺,肝臓,腎臓,皮膚,筋肉,関節,リンパ節などに起こる.組織学的特徴としてはフィブリノイド変性,壊死性血管炎,核変性,リンパ球,形質細胞の浸潤などがみられる.SLE合併妊娠の母親から出生した新生児の全身に環状または円盤状の紅斑が出現することがあり,これを新生児エリテマトーデスneonatal lupus erythematosus(NLE)という.

クリニカルポイント

1.胎児採血は有用か 川鰭 市郎
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 胎児採血(fetal blood sampling:FBS)は,フランスのDaffosらが1983年に超音波ガイド下に臍帯に直接針を入れて採血を行ったことに始まるとされているが,それ以前にも採血が行われたことがあったようである.ただし,これは胎児鏡を用いたものであり,腹壁から針を刺す方法に比べて危険性の高い方法であった.

 FBSは,従来の母体から間接的に情報を得るのとは異なり,胎児そのものの情報が明らかになるため,何らかの疾患を有する胎児の管理指針の決定や分娩の時期など,さまざまな点での指標となるものである.この画期的な検査法が施行されるようになって以来,得られる胎児の情報量は飛躍的に増え,また詳細になってきた.わが国においても現在では,妊娠20週以前でも胎児採血が行われる場合があるようになってきている.

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 「フロッピーインファント」とは,筋緊張が低下しているため,体が柔らかくぐにゃぐにゃしているように感ずる状態の乳児をさす(図).患児を臥位の自然肢位で観察すると,四肢はだらんと床についたままで動きは少ない.また,患児の両手を持ち引き起こすと,頭部は後方に垂れ,両上肢は伸展したままで肘は屈曲しない.患児を腹臥位で腹部を支え水平に持ち上げると,体幹は逆Uの字状に屈曲し,頭部,四肢ともにだらんと下垂する反応を示す.原因としては表1に示すように,筋疾患以外にも脊髄を含む中枢神経障害(頭蓋内出血,脳奇形,脊髄性筋萎縮症など),染色体異常症,代謝性疾患(甲状腺機能低下症,ミトコンドリア病など),結合織異常症など多種の疾患があり,「フロッピーインファント」はいわゆる症候名である.

 ところで,母体が自己免疫疾患に罹患している場合,IgG型の自己免疫抗体が経胎盤的に児に移行し,胎児または新生児に種々の症状を引き起こすことはよく知られている.例えば全身性エリテマトーデス,自己免疫性甲状腺疾患(橋本病,Basedow病),特発性血小板減少性紫斑病,重症筋無力症などである.しかし,これら疾患の中で出生児が「フロッピーインファント」を呈するのは重症筋無力症であるので,ここではとくに重症筋無力症母体より出生した児に関して詳述することとする.

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 近年の周産期医療の進歩によりこれまで妊娠や妊娠継続が困難とされてきた母体合併症が,妊娠,分娩が可能となり,これに対しその母体,胎児,新生児予後を左右するうえで適切な周産期管理が重要となってきている.とくに自己免疫疾患は,児の転帰に影響を及ぼすことが多く,その母体合併症の周産期管理は重要な位置を占めている.

 自己免疫疾患合併妊娠の周産期管理は,大きく3つのポイントが挙げられ,①妊娠そのものが疾患へ及ぼす影響,②疾患が妊娠経過,母体,胎児,新生児に及ぼす影響,③疾患の治療薬が妊娠経過,母体,胎児,新生児に及ぼす影響を理解し,その管理を行うことがたいせつである.しかし,自己免疫疾患といっても多岐にわたり,それぞれの疾患の病態,管理はさまざまであり,各疾患ごとに個別化して考えなければならない.さらに,まれな疾患も多く,症例数も少なくその周産期管理に一定の見解が出ていない疾患もある1)

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 何らかの薬剤が投与された母体から出生した児の管理は,そのまま,妊婦に投与された薬剤が胎児にどのような影響を与えるかという問題に還元できる.また新生児に何らの影響を残さない薬剤は,安全な薬剤ということもできる.

 したがって,ここでは薬剤が胎児に与える影響を概論しながら,新生児管理のあり方を,主として自己免疫疾患関係に使われる薬剤を具体的にあげながら触れる.

連載 シリーズ 胎芽の発育と形態形成・6

眼の発生 塩田 浩平
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 胎齢22日頃から前脳壁の一部が側方へ向かって突出し,眼胞optic cupが形成される.これが将来の網膜と視神経の原基である.眼胞に接する頭部側面の皮膚外胚葉は,眼胞の誘導inductionを受けて局所的に肥厚し,水晶体板lens placodeになる(図1).

 眼胞は間もなく外側から陥入し,ワイングラス状の形をした二重壁の眼杯optic cupができる(図2).眼杯の内層と外層は互いに異なる組織へと分化し,前者が網膜脳層(網膜神経層 neuralretina,狭義の網膜)に,後者が網膜色素上皮層pigment retinaになる.眼杯腔(視室optic cav—ity)は後に消失し,網膜神経層と網膜色素上皮層が互いに密着してここに網膜(広義)ができる.

連載 Estrogen Series・5

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 大腸癌の疫学的特徴を調べてみると,内分泌機能との関連が示唆される.更年期後のエストロゲン使用(HRT)が増大するなかで,その大腸癌との関連を調査することは意義のあることではないだろうか? 著者らは,この目的でウィスコンシン州の女性を対象にHRTと大腸癌発生との関連をpopulation-based case-control studyにて調査してみた.

 疾患群(case)は,大腸癌(colon cancer)と診断された480名の女性と直腸癌(rectal cancer)と診断された214名の女性である.コントロール群は1,622名の正常な女性である.これらの調査対象には,あらかじめ手紙を出したあとで,25分間の電話によるインタビューを行い,HRTを含む大腸癌のリスク要因を調べた.

連載 産婦人科クリニカルテクニック

ワンポイントレッスン—私のノウハウ

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 最近では少産化が著しくなり他に重大な合併症や疾患を持たない妊婦の場合は,積極的に流早産を防止する努力が必要である.妊娠初期および中期の頸管無力症で胎胞の膨隆を伴った症例の治療には苦心することが多い.この処置で重要な点はいかに破水をさせず,頸管の縫縮を行うかである.私の考案したバルーンメトロイリンテルとその挿入器を用いて胎胞を子宮内に還納し,McDonald頸管縫縮術を行って生児を得た10数例を経験したので,その方法を述べる.

 方法 妊婦にサドルブロック麻酔を行い,麻酔の固定化とレベルを確認後に抗子宮収縮剤を点滴で投与しつつ、截石位で導尿後,外陰部の消毒を十分にし強度の骨盤高位にした.腟内を消毒する際には破水を避けるため細心の注意を払い,同時に子宮頸管および腟の分泌物の細菌培養と,もし感染があれば起炎菌の感受性試験を行えるように資料を採取し、術野の被布をした.バルーンメトロイリンテルと挿入器は筆者が,20数年前に考案した神津式K—メトロイリンテルの一式である(図1),元来は誘発分娩時の頸管開大を目的としたものであるが,このような症例では比較的簡易に膨隆した胎胞を還納させ,頸管を閉鎖するために役立つことがわかり利用した.

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 分娩時会陰切開後に創部の適合がふできなために,腟口がゆがんで左右不均等になり,人に見せる部分でないからよいが,美容形成上醜い状態になることがある.もともとこの部分は中央切開の場合はよいが,側方切開のときは切開した創部への力学的な緊張度が均等でなく,ズレが生じやすいのでよほど正確な創部の適合が必要である.

 そこで私は切開する前に行う局所麻酔用の浸潤麻酔の注射が終わったら,その注射針の先端をつかって図①のように軽く傷つけてマーキングして,その後に切開(図②)している.分娩終了後にそのマーキングの部分を正確に適合するように縫合すれば(図③),元の状態への創部の癒合が期待できる.

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 米国では,18歳以下の児の10万人以上が脳性麻痺(CP)と推測され,その1/4は歩行できず,30%は知能発育遅延(MR)で,毎年CP児にかかる費用は5,000億円である(NEJM 330:188,1994).CPの発生を予知できる臨床的に有用な危険因子が長年検索されてきた.

 KubanらはCP発生の疫学的研究を行って危険因子をいくつかに分類した.その分類は,妊娠前(流早産歴,過長月経周期),妊娠中(社会的低階級層,先天奇形,胎児発育遅延,双胎,胎位異常),分娩前後(胎盤早期剥離,新生児脳症)などの危険因子であるが,これらがわかっていても,臨床的にはCPを予防するという面では有用とは言えない.

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 出血が母体死亡の主たる原因である現在,その予防,管理は重要である.このため1985年から10年間に当科で子宮摘出術を行った10症例の病因,背景,適応,臨床経過などをレトロスペクティブに検討した.

 成績 手術適応は癒着胎盤および前置胎盤6例,子宮破裂3例,子宮内感染1例であった.10例中5例は止血不能による母体搬送であった.出血量は6例が4,000ml以上あり,全例に輸血が必要であった.癒着胎盤の4例は帝王切開既往症例で,今回前置胎盤の症例が4例であった.子宮破裂は全例経産婦であり,陣痛誘発または促進を行った症例であった.感染は巨大筋腫合併例で,子宮内感染,腎孟炎よりDICとなり,子宮摘出を行った.

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 我々は1990年3月以降,不育症に対してループスアンチコアグラント(以下LAC),抗核抗体,HLAtyping,染色体検査,夫婦間リンパ球混合培養試験などを含む総合的なスクリーニングを開始し,1994年12月現在79名の患者を取り扱ってきた.その結果,これまで14例(18%)においてLAC陽性を認め,そのうち11例においてプレドニン+少量アスピリン療法あるいはツムラ柴苓湯による治療を行った.今回,これらLAC陽性を示した患者の治療成績について検討を加えたので報告する.この14例の内訳は,①原発性不育症10例,続発性不育症4例,②初期流産のみ12例,中期流産2例,③反復流産8例,習慣流産4例,④抗核抗体陽性6例(うち2例はSLE),抗核抗体陰性8例であった.治療を施行した11例の詳細は,プレドニン+少量アスピリン療法のみ3例,柴苓湯のみ6例,柴苓湯無効のためプレドニン+少量アスピリン療法に変更1例,柴苓湯+プレドニン+少量アスピリン療法1例であった.治療成績は,対妊娠当たりでみると,総妊娠回数16回中,流産8回(50%),出生および妊娠継続例8回(50%)であり,対症例当たりでみると,治療後妊娠成立したのは9症例であり,出生および妊娠継続例6例(67%),流産3例(33%)であった.プレドニン+少量アスピリン療法のみを施行した3症例では,2例が生児を得,1例は流産に終わった.

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 尿中LH値の簡易測定による排卵予知の成績を向上させるために,超音波下の卵胞径計測と組み合わせ,尿中LH値の簡易測定の結果を正確に判断することを試みた.主としてクロミフェン投与患者に対し,経腟超音波下の卵胞径計測を行いつつエルチェックFTを施行して排卵日の予知を試みたところ,60周期/61周期,98.4%において排卵日を正確に予知することが可能であった.このとき,エルチェックFTによる尿中LH値がピークとなった日,すなわち排卵日の前日において,最大卵胞径は少なくとも18mm以上となっていた.最大卵胞径が18mmとなってから排卵するまでに要した日数は,最大6日であった.クロミフェン投与周期における最大卵胞径増加率は2.31±1.49mm/日(平均値±2SD)であった.以上より,効率よく正確にLHサージを捕捉するためには,最大卵胞径が15〜17mmになったら,エルチェックFTによる尿中LH値の測定を開始すればよいと考えられた.

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 破水の診断法として腟腔内液中のAFPを非侵襲性に,かつ迅速に同定する目的で,抗AFPモノクローナル抗体を用いた改良型羊水中AFP測定試薬(MHS−03B)を開発し,より均一に検体採取が可能な外筒付綿棒を用いてMHS−03Bの破水診断における有用性の検討を14施設で行った.

 1995年7月から1996年1月までの期間に,妊娠37週未満の定期検診を受診する外来妊婦および入院患者(破水感を訴える症例または破水が疑われる症例も含む)の合わせて1,000例を解析対象とした.

基本情報

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臨床婦人科産科
50巻6号 (1996年6月)
電子版ISSN:1882-1294 印刷版ISSN:0386-9865 医学書院

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