今月の臨床 妊娠と自己免疫疾患
自己免疫疾患をもつ妊婦の管理
6.重症筋無力症
合阪 幸三
1
1帝京大学医学部附属市原病院産婦人科
pp.788-790
発行日 1996年6月10日
Published Date 1996/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902564
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疾患の概念
重症筋無力症は骨格筋の神経筋接合部の異常による疾患で,その原因としてはシナプス後のアセチルコリンレセプターに対する免疫学的な抑制が関与しているとされている.その結果,レセプター機能が低下し,よく知られているような易疲労性,脱力感等の症状をきたすこととなる(図1).女性に多く(男性の2倍),主症状としては,眼瞼下垂(普通は非対称性),複視,咀嚼障害,嚥下困難,構音障害(鼻声),四肢の脱力,全身倦怠感など,骨格筋における麻痺症状もしくは高度の易疲労性などが挙げられる.発症の年齢ピークは20歳代で,それゆえ産科的にも合併症としてみられる可能性が高い(図2).なお本疾患の筋麻痺は運動などによる疲労性の筋収縮力低下として現れるのが特徴で,夕方になると眼瞼下垂や鼻声,咀嚼・嚥下障害が出現することから初めて気づかれることが多い.本疾患はテンシロン10mgの静注により劇的な症状の改善がみられ(テンシロン試験),臨床的にはこの方法により診断される.
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