臨床外科 73巻7号 (2018年7月)

特集 最新版 “腸閉塞”を極める!

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 腸閉塞は今も昔も外科医にとっては実に悩ましい疾患である.救急外来では頻度も高く,日常遭遇することが多い疾患であるが,その治療選択は難しい.原因は何か,絞扼しているのか,保存的治療でよいのか,緊急性はないのか,多くの事柄を総合的に判断しなければならない.特に,夜間,深夜においては,経験の多くない若手が1人で判断しなければならない場面もあるであろう.

 本特集では最新の診断・治療を紹介し,手元に常に置いておきたい腸閉塞診療指南となることを目指した.

初期対応と診断

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【ポイント】

◆腸閉塞・イレウスが疑われる場合,病態について精査を進めるとともに,全身状態(特に脱水や電解質異常)の評価と補正・管理を早期より行う.

◆腸閉塞・イレウスが血行障害を伴う場合,緊急手術の遅れは生命予後にかかわる.

◆機能(麻痺)性イレウスの場合,緊急手術の要否はその原因となる疾患あるいは病態による.

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【ポイント】

◆腸閉塞の診断をする場合,横断像だけではなく適宜MPR像を利用し,腸管の走行を丹念に辿る必要がある.

◆腸管だけではなく腸間膜の所見や血管の走行も診断に有用である.

◆絞扼の有無の診断には造影CTが有用であるが,単純と造影の双方を撮影するほうがよい.

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【ポイント】

◆緊急手術が必要な症例の除外が前提である.

◆減圧チューブ,水溶性造影剤,漢方薬を使いこなす.

◆5日以内に改善しなければ手術を検討する.

手術適応のポイント 川合 一茂
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【ポイント】

◆緊急手術の適応は臨床所見・血液検査所見・画像所見を総合して判断する.

◆造影CTにて絞扼された腸管の造影不良の所見があれば,緊急手術が必要な可能性が高い.

◆腹部手術後の癒着性イレウスで絞扼の所見がないものは,イレウス管などによる保存的加療で治療可能な場合も多いが,手術治療が必要となる可能性を常に念頭において治療を行う.

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【ポイント】

◆癒着性イレウスに対しては,早期に胃管,イレウス管などで減圧を図る.

◆腹腔鏡下イレウス解除術において腸管を把持する場合は,細心の注意を払い,鋭的剝離を心がける.

◆状況により小開腹を加えるなど,腹腔鏡下手術に固執することなく安全な手術をめざす.

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【ポイント】

◆絞扼性イレウスは腸管の血流障害を伴うイレウスで,原因には,①炎症性索状物,②内ヘルニア,③軸捻転,④結節形成などがある.

◆高度な持続的腹痛などの絞扼性イレウスを疑う理学所見を認めた場合は,すみやかに造影CTを施行し,早急に診断をすべきである.

◆治療が遅れると,腸管壊死,腸管穿孔を発症し,急速に敗血症性ショックなどの重篤な病態を発症するため,絞扼性イレウスを疑った時点で外科的治療を躊躇すべきでない.

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【ポイント】

◆腸閉塞のCT画像を見た場合,鼠径部ヘルニアの有無を確実に確認する.

◆発症12時間程度経過した嵌頓ヘルニア症例では,用手還納できても経過観察入院を考慮する.

◆臍ヘルニア・腹壁瘢痕ヘルニアの嵌頓症例では,緊急手術の際には原則としてメッシュは使用せず,二期的な修復を検討する.

◆鼠径部ヘルニアの嵌頓症例では,腸管穿孔による汚染がなければ,腸管切除を要した症例でもメッシュの使用は許容される.

小児腸重積症 藤雄木 亨真 , 藤代 準
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【ポイント】

◆小児腸重積症は発症後すみやかな診断・治療が必要であるが,病初期は胃腸炎症状と似ており,診断は難しい.

◆非観血的整復術(高圧浣腸)で90%近く整復され,非整復例は腹腔鏡または開腹手術を行う.

◆病的先進部を認める例は年齢とともに上昇し,5歳以上は約60%近くにのぼるため,注意が必要である.

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【ポイント】

◆小腸腫瘍は上皮性腫瘍,非上皮性腫瘍,悪性リンパ腫,続発性腫瘍,ポリープに大別され,多種多様である.

◆いずれの小腸腫瘍も閉塞機転や腸重積の先進部たりうる.

◆画像診断で,小腸腫瘍が腸閉塞の原因と考えられた場合でも,腫瘍の質的診断を含む正確な術前診断は困難で,診断と治療を兼ねた外科的治療が選択される.

◆手術時の所見に応じて,小腸切除,リンパ節郭清,バイパスなどの術式を考慮する必要があり,臨機応変な対応が求められる.

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【ポイント】

◆大腸癌による腸閉塞では,閉塞の状態とともに浸潤,転移の状態も把握して治療方法を決定する.

◆腸管の条件のよいもの,特に回腸結腸吻合で再建できる右側結腸癌には一期的切除再建を検討する.

◆減圧法としてステント治療が開発され,有効かつQOLの高い方法であるが,経肛門イレウス管や一時的人工肛門造設による減圧も対応可能な方法である.

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【ポイント】

◆外科的治療に際しては,術前に狭窄部位を詳細に把握するよう努め,十分なインフォームド・コンセントのもとに手術適応を決定する

◆内科的治療には減圧ドレナージチューブ留置,消化管ステント留置,オクトレオチド投与がある.

◆経口摂取不能な胃癌腹膜播種症例に対する臨床試験が複数進行中である.

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【ポイント】

◆慢性偽性腸閉塞症(CIPO)の診断は,①慢性の腸閉塞症状,②腸管拡張所見,③器質的狭窄を認めない,の3項目が基本となる.

◆CIPOは原発性と続発性に分類され,鑑別が重要である.

◆治療の中心は栄養管理・薬物治療であるが,難治の場合には外科治療が考慮されることもある.

◆小腸限局型・大腸小腸型では腸管切除の有効率は低いため,胃瘻造設や小腸瘻造設などの減圧手術にとどめる.

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【ポイント】

◆癒着防止材であるセプラフィルムが開発され,消化器外科領域での手術において幅広く使用されるようになってから,明らかに術後腸閉塞症例は減少している.

◆一般的な術後腸閉塞の予防としては,術後の経口摂取開始時期や内容,薬物治療,早期のリハビリ開始など,複数の治療法の組み合わせが有用である.

◆腹腔鏡手術などの低侵襲手術の積極的な導入は,癒着を減らす効果的な工夫の一つである.

◆手術操作では,組織・腹膜の損傷を最小限に留め,丁寧に止血するなどの原則をしっかり実践していく必要がある.

大量小腸切除後治療 上野 豪久
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【ポイント】

◆大量小腸切除後には消化吸収障害のため短腸症となり,中心静脈栄養による管理が必要となる.

◆短腸症が長期にわたる場合には合併症に気をつけながら小腸リハビリテーションを行い,中心静脈栄養からの離脱を目指す.

◆中心静脈栄養から離脱できずに合併症をきたした場合には,小腸移植による治療を検討する.

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 1999年,米国疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)は「手術部位感染の予防のためのガイドライン,1999」を公開した.そして,2017年5月3日に改訂して「手術部位感染の予防のためのガイドライン,2017」を公開した1).1999年の公開から,実に18年ぶりの改訂である.

 改訂ガイドラインは,外科手術全般の手術部位感染(surgical site infection:SSI)の予防のための勧告を含む「コアセクション」と,人工関節置換術に適用される勧告を含む「人工関節置換術セクション」によって構成されている.予防の努力はすべての外科手術をターゲットとすべきであるが,人的かつ経済的負担が最大である手術に特にターゲットを当てるべきであるとして,「人工関節置換術セクション」が独立して記述された.本稿では勧告のポイントをQ & A方式にして記述するとともに,WHOなど他の機関のガイドラインとの比較も行った.

Reduced Port Surgery—制限克服のための達人からの提言・7

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はじめに

 ○needlescopic cholecystectomyとは

 reduced port surgery(RPS)のうち,トロッカーのサイズを減じた手術はneedlescopic surgeryと呼び,3 mm以下の径のトロッカーを使用すると定義されている1).したがって,厳密にはすべて2〜3 mmのトロッカーで行うのがneedlescopic cholecystectomyであるかもしれない.しかし標本の摘出を考慮して,腹腔鏡挿入のトロッカーは11 mm,エネルギーデバイスやクリップを使用するためのトロッカーは5 mmを用いるのが一般的であろう.したがって本稿では,11 mm,5 mmのトロッカーをそれぞれ1本,ほかの2本に2〜3 mmの器械を用いる4孔式の腹腔鏡下胆囊摘出術をneedlescopic cholecystectomyと呼び,これを解説する.

*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2021年7月末まで)。

急性腹症・腹部外傷に強くなる・4

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 消化管穿孔は,潰瘍,憩室,腫瘍などが原因で,消化管に“穴”があく病態であり,多くの場合,強い腹痛を主訴に来院します.今回は,外傷や異物による消化管穿孔を除く,上部消化管(胃,十二指腸)穿孔と下部消化管(大腸)穿孔に関して説明します.

病院めぐり

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 当院は,イギリスのシェフィールド,ドイツのゾーリンゲンと合わせて「刃物の3S」と呼ばれる岐阜県関市にあります.鵜飼いで知られる長良川の中流に位置する人口9万人の地方都市で,中濃医療圏37〜38万人を担う中核病院です.昭和23年に岐阜県産業会中濃病院として開院,同年に岐阜県厚生農業協同組合連合会設立とともに改称,平成12年に現在地にICUを新設して移転し,今年で70年です.当科の歴史も開院時からで,消化器外科・乳腺内分泌外科を担当しています.現在はベッド数495床(一般病床402床,地域包括ケア病床44床,緩和ケア病床20床,感染病床6床,救命救急センター23床)で,当科は46床です.当科の所属する医局は名古屋大学第二外科で,新専門医制度では名古屋大学病院を頂点としたネットワークのなかの県立多治見病院,一宮市立市民病院,市立四日市病院の三つの基幹病院の下の関連施設となります.

 現在の当科のスタッフは常勤医師6名です.手術を受ける患者さんの高齢化が進んでいますが,50歳台3名,40歳台1名,30歳台2名とスタッフの高齢化も進んでいます.5名が消化器外科を,1名が乳腺内分泌外科を担当しています.なお平成26年より,岐阜大学第一外科から40歳台の呼吸器外科医1名が着任し,年間80例の呼吸器外科手術をこなしています.

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要旨

大腸癌術前症例の大腸内視鏡検査直後に,空気を大腸内に残し腹部造影CTを行い,3D-CT angiography(3D-CTA)とCT colonography(CTC)を同時撮影する術前シミュレーションを36例に行った.全例で検査時に副作用や偶発症を認めなかった.血管支配・血管走行の確認,切除範囲・残存腸管の長さ,主腫瘍と併存するポリープとの位置関係,非治癒切除因子の有無などの十分な術前情報を,最小限の腸管前処置で効率的に得られた.腹腔鏡視野を想定した3D-CTA・CTC画像を術前に作成し,術野と対比しながら閲覧した.全例で術中偶発症はなく術後経過は良好であった.本方法は,high volume centerではない地方小規模病院においても施行可能で,大腸癌症例において適正かつ安全な腹腔鏡下手術を施行するうえで有用である.

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要旨

腹壁瘢痕ヘルニアの修復に際し,メッシュが汎用されているが,感染リスクのある症例では禁忌とされている.今回,卵巣癌の局所再発で直腸切除を施行した患者の腹壁瘢痕ヘルニアに対しmodified shoelace darn repair法と,大腿筋膜パッチによる補強を併用した1例を経験した.下腹部を中心とした腹壁瘢痕ヘルニアに対し,腹直筋鞘前葉を反転縫合し,筋鞘切離縁同士をshoelace縫合した.さらに,筋鞘の欠損した腹直筋を覆うように大腿筋膜による補強を行った.術後経過は良好であり,本法は特に腹直筋後葉を欠く下腹部のヘルニアに対し有用なオプションになるものと考えられた.

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要旨

症例は26歳,男性.健診にて腹腔内腫瘤を指摘されたため,当院へ紹介され受診した.精査すると膵頭部に長径10 cmの多房性囊胞性腫瘤を認めたが,膵頭部との境界は一部不明瞭であり,膵内病変か膵外病変かの判断は困難であった.確定診断には至らなかったが,悪性腫瘍である可能性を否定できないことを考慮し手術を施行した.膵頭部を授動すると,腫瘍は後腹膜から発生しており,膵頭神経叢第Ⅰ部との連続性を認めた.周囲への浸潤は認めず,腫瘍を一塊として摘出した.病理組織所見ではS-100蛋白陽性であり,膵頭神経叢第Ⅰ部由来のSchwannomaと診断した.膵頭神経叢から発生したSchwannomaは非常に稀であり,文献的考察を加えて報告する.

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要旨

症例は78歳,女性.近医で胃粘膜下腫瘍を指摘され当院を紹介された.精査にて径20 mmの内腔発育型胃gastrointestinal stromal tumor(GIST)とリンパ節転移が診断された.手術は腹腔鏡内視鏡合同手術(laparoscopy endoscopy cooperative surgery:LECS)と転移リンパ節を含めたpick-up郭清を行った.術後病理組織診断で腫瘍は22×18×15 mm,紡錘形細胞が束状に増殖し,柵状配列や花筵配列を形成していた.免疫組織染色で胃GIST,リンパ節転移と診断された.リンパ節転移を認めておりclinically malignantと診断し,イマチニブの術後補助化学療法を施行した.術後1年で再発徴候は認めていない.リンパ節転移を伴う胃GISTに対するLECSと転移リンパ節pick-up郭清は,低侵襲手術として選択肢の一つと考えられた.リンパ節郭清の意義も含めた文献的考察を加えて報告する.

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要旨

患者は60歳代,男性.肝門部胆管癌(Bismuth-Corlette分類TYPE Ⅳ)に対し,術前に門脈P5を穿刺し門脈右枝に経皮経肝門脈塞栓術を施行したが,のちの造影CTで門脈右枝へ血流残存を認めた.既存の塞栓状態を破壊しないために門脈P3穿刺による追加塞栓を行った.その際に肝動脈A3遠位と門脈P3に動脈門脈短絡形成を合併したが,残肝予備能の改善を認め,拡大右葉切除,胆道・門脈再建術を施行した.術後7か月目,門脈圧亢進症による軽度の脾腫,汎血球減少,残肝機能低下を認め,動脈門脈短絡の残存が原因と考えられた.経肝動脈的に塞栓術を施行した.その後,門脈圧亢進症の改善を認め,初回手術から4年8か月現在,無再発生存中である.

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要旨

症例は67歳,男性.多発肺転移,大動脈周囲リンパ節転移を伴う直腸癌に対してmFOLFOX6+パニツムマブ療法を施行していた.化学療法施行中に原発巣の穿通による肛門周囲膿瘍を合併したため,腹会陰式直腸切断術を施行した.術後70日目から化学療法を再開したが,10日後に発熱と腰痛が出現し当院を受診した.造影CT検査で大動脈周囲に膿瘍形成を認めた.抗菌薬治療を開始したが,入院後9日目の造影CT検査で感染性大動脈瘤の切迫破裂と診断し,ステントグラフト内挿術を施行した.化学療法によるリンパ節の腫瘍細胞壊死,膿瘍形成からの感染性大動脈瘤と考えられた.

ひとやすみ・165

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 診療を介して知り得た情報を論文として公表し,他の医師と共有することは臨床医の責務であると私は思う.杉山政則先生は『臨床外科』2018年1〜5月号で,英文論文執筆のコツを詳細に連載した.私も和文論文を投稿する際に心掛けている要点を紹介したい.

 論文の投稿時には,掲載したい医学雑誌の傾向や形態に合致させて執筆することが大切であり,雑誌のレベル(少なくともISSN国際標準逐次刊行物番号付き)も考慮する.また投稿規定を熟読し,規定に忠実に沿った論文を作成する.なお必ず指導医に検閲を依頼するとともに同僚の意見をも受け入れ,唯我独尊にならないように心掛ける.

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 画像機器とカラー写真印刷技術の驚くべき発達により,有用な画像診断アトラスが多数出版され,応接に暇がないほどである.このような状況はもちろん医学の進歩にとって歓迎すべきことではあるが,少し不満を抱かざるを得ないのも事実である.

 19世紀のはじめ,フランスの内科医ラエンネック(1781-1826)は聴診器を発明・開発し,当時の医学に大きな進歩をもたらした.彼は,患者の生前の詳しい聴診所見と死後の剖検所見の照合を重ね,その成果を900頁に及ぶ大冊(間接聴診法,または,この新しい探究法に主として基づいた肺と心臓の疾患の診断に関する研究,1819)にまとめた.このような間接所見と直接所見を統合した書物が後ろに控えておれば,安心この上もない.

1200字通信・119

ICとIC 板野 聡
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 先日のことですが,ある先生が医局に戻ってくるなり,「説明を無断で録音されたのですが,あれっていいんですかね」と困惑した表情で切り出されました.どうやら,説明の途中で,相手がレコーダーを隠し持っていることに気付かれたようですが,さすがに,その場では声を荒げることもせず大人の対応で切り抜けられたようでした.その患者さんに関しては,看護師さんからも「病室で点滴のラベルを撮影したり,点滴の様子を動画で撮っている」との報告があったそうです.普段はもの静かな先生だけに,その困惑ぶりが深刻であると感じましたが,なんと答えて良いやら判らず,こちらも困惑した次第です.

 実は,私にも以前に同じような経験があり,そのときには,録音されているとわかった時点で録音するのであればあらかじめ言っていただくことや,動画を撮影している現場に出くわしたときには病院内の個々の物品や人物の撮影はお断りしたことを思い出しました.

昨日の患者

寄り添う老夫婦 中川 国利
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 市中病院の外科外来には様々な症状を訴える新患患者に加え,術後患者も来院する.さらには初診時の疾患はすでに完治しても,よろず相談的に来院し,折々の話を語る患者も存在する.これら馴染みの患者の話を伺えるのも,市中病院ならではの楽しみである.

 80歳代半ばのKさんは,10年ほど前に胃癌で手術をした患者である.術後経過は良好であったが,「庭木の手入れで怪我をした」「転倒して腰が痛い」などと訴えては,しばしば来院する.そして近況を語ってくれる.

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目次

学会告知板 第45回日本膵切研究会

原稿募集 「臨床外科」交見室

バックナンバーのご案内

次号予告

あとがき 瀬戸 泰之
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 腸閉塞は急性腹症の代表的疾患であり,その頻度も高い.原因も様々であり,治療法の選択も悩ましい.保存的でいいのか,緊急手術の適応なのか,特に夜間,休日などで若手外科医が当直しているときなどは,その対応に苦慮する場面も多いかと思う.筆者も当直していた若いころの苦い経験を昨日のようにしばしば思い出す.若手外科医は本特集を隅々まで熟読し,侮れない急性腹症である“腸閉塞”を極めてほしい.

 開腹手術がほとんどであった時代は,その後の癒着による腸閉塞手術自体が,さらなる原因を作ってしまう“poly-surgery”と危惧されていたものである.自分が執刀した症例が腸閉塞になってしまい,それもまた自分が治療しなければならない際には自責の念にかられてしまう.昨今は,腹腔鏡手術における腸閉塞の頻度は開腹術のそれより明らかに少なく,かつ腸閉塞手術自体が腹腔鏡で行われるようになってきていることが本特集から読み取れる.これも時代の進歩と実感するが,絞扼性腸閉塞の手術はいまだ開腹下で行われることも多いと思われる.原因が何であれ,絞扼してしまう前に,手術も含めた適切な治療を検討することが肝要であることは今も変わっていない.若手外科医が腸閉塞を目の前にして治療法選択に苦慮した場面では,躊躇せずただちに上級医にコンサルトしてほしいし,上級医も厭わず丁寧に教えてほしいものである.腸閉塞を経験しない外科医はいない.本来その原因を作ってはいけないことが外科医にとっては一義的であるが,やはり外科医皆が腸閉塞治療の達人になっていただきたいとも感じるところでもある.

基本情報

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臨床外科
73巻7号 (2018年7月)
電子版ISSN:1882-1278 印刷版ISSN:0386-9857 医学書院

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