臨床外科 73巻6号 (2018年6月)

特集 こうやって教える・学ぶ 高難度消化器外科手術—新エキスパートへの登竜門

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 医療安全の観点から,ある一定以上の難度の手術は術者資格が求められる時代となり,各領域で高難度手術の認定制度が導入されつつある.しかし,合格率は依然として20〜60%と狭き門である.すなわち合格するものもいれば不合格のものもいる.その差は本人の資質によるのか,それとも教え方によるのだろうか?

 患者に迷惑をかけないように教育をするためには,平易な症例から徐々に高度な症例を経験させなければならないが,その際の手術の難易度評価は施設によってどのように決めているのであろうか? どの程度の難易度のものを専攻医に執刀させるのか? また,指導者が術者として手技を見せるときのポイントはどこか? 一方,専攻医としては,どうやって指導者の手技を学ぶべきか,何ができれば次のステップに進めるのかが知りたいところであろう.

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【ポイント】

◆手術のコンセプトを理解する:Openも内視鏡外科手術も,さらにはロボット支援手術も一つの手術道具に過ぎない.手術に必要な解剖と手技のコンセプトを理解することが,手術を習得する近道である.

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【ポイント】

◆自施設の手術チーム環境を把握し,それぞれの役割を理解し,腹腔鏡下胃切除に対して同じ目標をもつことが肝要である.

◆郭清においては,適切な安定した視野展開を行い,剝離可能な神経外側の層を保持するように心掛ける.

◆再建においては,リネアステープラーの使用法や体腔内での縫合結紮手技に習熟しておき,確実な再建をめざす.

*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2021年6月末まで)。

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【ポイント】

◆“The chance favors the prepared mind”.常日頃から血管や層の解剖を学習し,個々の症例での術前準備(血管構築,手術シミュレーション)と全身状態の把握を徹底する.

◆当科では,卒年を問わず,疾患・手技とその根拠の理解度を事前に確認して執刀させる.そのため先発完投が難しい場合でも,手技を難易度に応じてパート分けし,術者レベルに合わせて執刀させ指導している.

◆執刀した手術ビデオを編集し上級医の前で解説してもらい,手技の改善や理解度の向上に努めるよう指導している.

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【ポイント】

◆腹腔鏡手術の手技向上に必要な必須条件は,hand-eye coordinationである.

◆技術認定医試験合格の近道は,完成され定型化された手術を真似ることである.その教材として視聴覚教育動画は有効である.

◆腹腔鏡手術の専攻医への教育法としては,「継投・続投型」指導法が有効である.

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【ポイント】

◆低侵襲手術で直腸癌手術の全部を施行できるわけではない.安全な手術のみを目的にしてしまえば,郭清が甘くなり根治性を落とすことになる.それでは本末転倒である.われわれは,患者のあらゆる状況に責任をもつ外科医でなければいけない.

◆外科医は,知を伝承した医師であると同時に,匠の技と心をもつ職人でもある.

◆標準治療である開腹手術では,執刀医と助手との間に一種の師弟関係が成立して,手術を通じて技術を伝承するチャンスが際限なくある.

◆開腹手術と同様の根治性と安全性を担保できる技術と解剖学的知識をもたない医師が行う手術ならば,低侵襲とは言いがたい.

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【ポイント】

◆ロボット支援下直腸低位前方切除術は,ロボット手術の特徴を有効活用することにより,骨盤内で自由な手術操作が可能となり,術者の思い描いたラインで切離ができる.

◆デュアルコンソールによる手術教育は安全かつ効率的であり,今後の新しい教育モデルとして期待される.

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【ポイント】

◆腹膜翻転部以下の直腸剝離はS4から神経血管束にかけてのアーチを意識して剝離を行い,神経損傷や出血をきたさないようにする.

◆膀胱下腹筋膜をNo. 283領域とNo. 263領域の境界として認識することで,出血の少ない定型的な側方郭清が可能になる.

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【ポイント】

◆taTMEは直腸癌に対する腹腔鏡手術の弱点(狭骨盤,巨大腫瘍などの症例の下部直腸周囲の剝離・切離の困難さ)を補うものとして導入された.

◆本術式は腫瘍学的あるいは機能温存の観点から治療成績向上が期待されているが,まだそのエビデンスは十分でない.

◆本術式の歴史はまだ浅く定型化も不十分で,尿道損傷など重篤な合併症の可能性もあるため,適切な段階を経て施行することが望ましい.

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肝胆膵

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【ポイント】

◆質の高い高難度肝切除を行うには,拡大鏡の装着と細い縫合糸の扱いの習熟が必須である.

◆各パートではなく手術全体の流れのなかで,術者や助手の役割を明確に教える.

◆各種手術器機やエネルギーデバイスの性能・原理を理解させ,それに基づいて肝切除手技を理論的に教える.

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【ポイント】

◆マネジメント:保険収載の適応拡大に伴って安全性に配慮した腹腔鏡下肝切除の導入が求められる.Difficulty Scoring Systemによる症例選択や,learning curveに配慮したトレーニングシステムを構築する必要がある.

◆基本手技:チーム・施設の実情に合わせて適切なデバイスを選択し,CUSA法やClamp-crushing法などの手技を定型化することが肝要である.

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【ポイント】

◆日本消化器外科学会専門医取得可能レベルの外科医による修練開始が望ましい.

◆執刀前に前立ちを十分に経験すべきである.

◆手技については毎回自己評価および指導医による評価を受けて,技術の向上に努める.

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【ポイント】

◆門脈浸潤範囲を術前画像で評価し,グラフト間置も含めた門脈再建方法と門脈離断部位を検討しておく.

◆門脈離断部位への的確な到達法とともに,上腸間膜動脈からの膵頭動脈枝などの先行処理手技に習熟する必要がある.

◆手術成績の安定には,的確な門脈吻合手技の習得と同時に,吻合部の過緊張やねじれの回避が重要である.

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【ポイント】

◆間膜(胃結腸間膜・胃脾間膜)の切離と網囊腔の開放のポイント:術者と助手が協力し,胃と結腸を持ち上げ,カウンタートラクションをかけながら行う.

◆膵の授動のポイント:膵後筋膜と腎前筋膜の疎性結合織(無血管野)を剝離層として進める.

◆脾静脈の剝離とテーピングのポイント:助手はラパロガーゼを俵型に丸めて膵体部を丁寧に押し下げることにより,術者は安全に脾動脈を確認できる.

◆脾動脈のテーピングのポイント:Toldt fusion fasciaを血管シーリングデバイスにて開放する.

◆膵切離のポイント:膵剝離には,十分に時間をかけた切断が膵被膜の損傷を回避し,術後膵液漏の予防となる.

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【ポイント】

◆急性胆囊炎症例では,術前に胆囊の炎症所見,手術難度に影響する患者の背景因子を把握しておかなければならない.

◆急性胆囊炎に対する腹腔鏡下胆囊摘出術では,解剖学的なランドマークに基づき,適切な層での剝離が最も重要な手術手技である.

◆慢性胆囊炎症例は,手術難度が高度となるため,腹腔鏡下胆囊摘出術に習熟した術者が執刀すべきである.

英文論文を書いてみよう!—なかなか書けない外科医のための集中講義・6【最終回】

とにかく書いてみよう 杉山 政則
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 これまでの5回の連載では,「英文論文を書くことは思ったほど大変ではない.ぜひ書いてみよう」と言って,論文作成のコツを述べてきた.しかし,英文論文を書こうと思っても,初めて書くときは心理的なハードルを高く感じたり,忙しい臨床の中で執筆作業がなかなか進まないこともあるだろう.

 今回,連載の最終回では,どのように論文を書く気を起こすのか,その方法について述べたい.

病院めぐり

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 当院は埼玉県川越市にあります.同市は,埼玉県の中央部からやや南部に位置し,109.13 km2の面積と35万人を超える人口を有する都市です.毎年10月には川越まつりが行われ,最大の特長は江戸「天下祭」を今に再現した山車行事で,精巧な人形を乗せた絢爛豪華な山車が,小江戸川越の象徴である蔵造りの町並みを中心に町中を曳行します.昨年は2日間で73万人が県内外・外国から訪れました.2016年12月にユネスコの無形文化遺産に登録されています.

 当院は1969年に設立され,1989年に現在の住所に新築移転,1996年に医療法人財団献心会が設立されました.1997年には第1回の日本医療機能評価機構認定病院となり,2011年に医療機関で日本初の日本経営品質賞,2016年には日本サービス大賞優秀賞を受賞しております.主な施設認定としては,日本外科学会,日本消化器外科学会,日本大腸肛門病学会の修練施設,日本消化器内視鏡学会指導施設,日本消化器病学会認定施設となっており,40床の小規模病院ですが消化器内視鏡センターを併設しており,消化器科専門病院としてこれまで多くの消化器疾患の治療を行ってきました.

Reduced Port Surgery—制限克服のための達人からの提言・6

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はじめに

 単孔式腹腔鏡下胆囊摘出術は1997年に初めて報告されて以来,近年徐々に増加してきている1).単孔式腹腔鏡下胆囊摘出術は従来の腹腔鏡下胆囊摘出術に比べ整容性は良好であり,合併症に差はないと報告されているが,手術時間の延長が問題とされている2,3).その原因はマニピュレーションアングルの欠如による器具の操作性低下と考えられる.われわれは,超細径器具と彎曲可変型鉗子によりマニピュレーションアングルを復活させ,単孔式腹腔鏡下胆囊摘除術を行ってきたので,術式の詳細について報告する.

*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2021年6月末まで)。

急性腹症・腹部外傷に強くなる・3

胆石・胆囊炎 鳴海 雄気 , 村上 隆啓
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■病歴と身体所見

 先日,念願だった急性虫垂炎の執刀を初めて経験し,その日は興奮のあまり眠れませんでした.そんな外科医としての自覚が芽生え始めた頃,今日もまた救急室から腹痛のコンサルトがありました.やはり,僕は外科医になるべき運命のもとに生まれてきたのでしょうか?

ひとやすみ・164

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 かつて出産は女性だけで行うものであり,産科医以外の男性が立ち会うことは非常識とされていた.しかしながら子育て参画が尊ばれる昨今,我が子の出生に立ち会う父親も多くなりつつある.私は3人の息子を授かったが,出生時の私のかかわり方を紹介する.

 最初の子供が生まれたのは,外科研修2年目であった.40年ほど前は現在よりも産科医が少ないこともあり,研修先の病院では通常の分娩は助産師が主に行い,問題がある分娩にのみ産科医が立ち会うことが慣例であった.午前1時55分という深夜でもあったため,分娩担当は当直のベテラン助産師1名のみであった.そこで初産で不安の強い妻の希望もあり,私も立ち会った.

昨日の患者

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 昨今,隣国の中国や朝鮮との関係がとかく険悪である.しかし日本は隣国とヒトや物の交流を古来より続け,そして良きにつけ悪しきにつけ影響を互いに受けてきた.さる中国人の手術を執刀したことから認識した,市民外交の重要性を紹介する.

 20年ほど前になるが,中国から仙台に留学中の娘さんを訪れたHさんが急性胆囊炎となった.そして腹腔鏡下胆囊摘出後に,「中国に是非来てください」と語り,連絡先を教えてくれた.

1200字通信・118

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 「大丈夫だなんて,おまえ,医者が軽はずみに結果を約束するなよ」

 小脳腫瘍の手術を勧め,患者さんから同意を得た主人公に,その患者をともに診ている脳外科医が言います.

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目次

バックナンバーのご案内

あとがき 遠藤 格
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 先日の第118回日本外科学会は大変興味深いプログラムが目白押しで楽しませて頂いた.そのなかで,『外科医のインセンティブ導入を目指して』という企画が興味深かった.ハーバード大学ブリガムウィメンズ病院で心臓血管外科医として活躍されている金子剛士先生によれば,米国では病院に支払うフィーと外科医に支払うフィーがほぼ等しいという.佐賀大学の能代先生によると外科医が5%ほどのフィーをもらっているという.同様の取り組みは当院でも過去に行われたが,残念なことに1年でなくなった.佐賀大学ではインセンティブが付いてから病院経営は改善し,現在でも存続しているとのことである.大変羨ましい限りである.やはり人間は自らやりたいという気持ちになると凄い業績を上げるということだろうか.

 外科医のインセンティブを重視し過ぎる国になると,外科医は後輩を教えると自分の取り分が減る事を心配するようになるかもしれない.ヒポクラテスの誓いによれば,医師はその弟子には技術知識を報酬なしに授けるべし,とある.現在,日本はインセンティブがない病院がほとんどであり,後輩を教えるのは当然無償である.日本の外科医はヒポクラテスの誓い通りに後輩を教え続けているわけである.教えるのを止めれば,10年後の外科医療が崩壊するのは目に見えているからである.

基本情報

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臨床外科
73巻6号 (2018年6月)
電子版ISSN:1882-1278 印刷版ISSN:0386-9857 医学書院

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