看護学雑誌 44巻12号 (1980年12月)

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はじめに

 ‘遊び’という言葉は,小鳥や小犬が飛んだり跳びはねたりする活動から,人間の大人が行う規則の厳しい儀式的なゲームまで,いろいろな種類の活動に使用される.特に,人間の子ども時代の遊びは,生活そのものと切り離して考えられないので,古くから大人たちの関心を引くものであった.しかし,これを学問の分野のこととして取り上げ,組織的な観察を通して子どもの発達との関係,その治療的・教育的意義などを広く議論するようになったのは,20世紀に入ってからのことである.

 最近では社会の急激な都市化の進行に伴って,大人の余暇の過ごし方とともに,子ども時代の遊びとその意義が再検討されつつある風潮があるようである.

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はじめに

 子どもが,遊ばない,遊べない,といわれるようになって20年近くなるという.子どもに遊びを取り戻そうと,小・中・高等学校においては,‘ゆとりの時間’が設けられたし,地域の中では,児童公園,児童館の整備,集団遊びの援助と,大人たちはやっきになっている.筋力や骨の弱い子ども,敏捷さがない子ども,不器用な子ども,子どもの非行の増加など,これら子どものもつ問題は,‘子どもたちは,遊びの活動をとおして心身を発達させ,集団遊びの中で自立心を養い,社会性,道徳性を身につけていく’という遊びの意義を,大人たちに再認識させたようである.

 小児看護においては,小児科看護から小児看護に移行したときすでに,入院生活の中での子どもの遊びの重要性が確認されたが,十分に子どもたちを遊ばせていると言いきれる現状ではない.どうしたら子どもたちを楽しく遊ばすことができるかと,工夫や努力が続けられているが,病院という特殊環境では,遊びの要素である遊び場,遊び道具,遊び仲間,遊び時間を十分にそろえることができにくいことや,子ども自身が何らかの障害をもっているのだから,遊びを発展させることができなくてもしかたがないとする考え方に安易に流れる.

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 あれはもう2年も前のことであろうか,私の働く病棟に1つだけある個室に,1年近くも入院している患児の付き添いである老人から,こんなことを言われたことがあった.

 ‘看護婦さんには,お金をあげなければ,私の孫と遊んでもらえないのでしょうか’

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はじめに

 こどもの成長,発達にとり,遊びの経験は極めて重要である.当院の小児病棟(乳児,幼児,学童の3病棟)では,なんらかの疾病をもって入院してきた病児ひとりひとりを,その安静度や行動範囲,治療の特殊性などに応じて,存分に遊ばせるという考え方のもとに日々看護に当たっている.今回は当院の幼児病棟を取り上げ,遊びの実際を報告する.

 以下,まず2事例を紹介し,年間行事のなかの‘夏祭り’について述べ,病児の遊びについての若干の考察を加える.

心身障害児の訓練と遊び 東 則子
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はじめに

 遊びが子どもにとって重要であることはよく知られていますが,障害児にとってもその本質は変わりません.障害児は遊びを通して,その残された機能のなかで自己の可能性を確かめ,高めようとします.遊びは,日常生活動作(ADL)自立の訓練にも深いかかわりを持ち,訓練(学習)とは分化できないものと言えます.障害によって発達・成長が著しく阻害されているように思われがちですが,決してそうではありません.周囲からの刺激によって,その子供なりに発達していると言えます.

 障害児にとって遊びは日常生活そのものであり,それは‘生きることにつながるのではないでしょうか.重度の障害児だからといって,安静を強いてベッドに寝かせているだけではなんの発達もみられません.むしろ,退行するのみでしょう.いかなる状態であっても,子どもから遊びを奪ってはならないと言えます.

病児と遊びを見つめるなかで 内田 昌江
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 子どもの遊びとは,その豊かな想像力のゆえに,現実の材料の乏しさに拘束されず,無限にテーマの広がりを可能にします.そのなかで,楽しみを得るために自由な活動が展開されていきます.しかし,その本来自由であるべき活動も,病気になったり入院すると中断され,行動・環境などさまざまに制限されてきます.そうした制限のなかで,子どもたちの遊びはどのようにみていけばいいのでしょうか.

 単調なベッド上安静に加え,各種の検査による苦痛のある毎日の生活の中で,欲求不満や緊張感が高まり,その解消のためにも遊びの果たす役割は大変重要です,また遊びが,無意識のうちに,その子の身体的・精神的発達,社会性の発達,情緒の安定化,自発性・自主性の獲得,知的能力の開発などに大きく関与している面を考えると,著しい成長発達が示されるこの大切な時期に入院しなければならなくなった子どもたちに,私たちは,もっと多くの働きかけをしていかなくてはならないと思います.

ホスピス イギリスの末期医療の現場報告・12

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聖隷福祉事業団の‘ホスピス’計画とそのねらい

 柏木 第1回の国際ホスピス大会に出席して,各国がそれぞれに工夫して,その国民性,国情また医療制度に合ったホスピスの持ち方をしているように思ったのですが,ひとつの国の中でも,例えばアメリカ合衆国のようにいろんな形態のホスピスがあるということがよくわかりました.そこで,日本においてホスピスの設立を考えていくときに,日本の国情に合ったというか,どのような形でそれを進めていったらいいのかということを,これから少し話し合ってみたいと思います.

 ひとつの例として,私たちの淀川キリスト教病院では,建て物を持たずに,チームとしてのホスピス的な働きを,過去7年間ぐらいずっとやってきているわけです.患者さん自身はそれぞれの病棟に入院しており,ホスピスというチームというか,プログラムがあって,紹介を受けた患者さんに対して,こちらから出かけて行ってチームでケアしていくという働きをしているわけです.これはプログラムとしてのホスピスで,建て物はないわけです.

ナーシングホーム アメリカ合衆国の医療と看護の実態・12

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合衆国の医療を支える2つの保険制度

 アメリカ合衆国(以下,アメリカ)の社会には,医療について2種類のシステムが存在するといわれます.自費すなわち自分のかせぎの中から,医療費を捻出できる人々のための医療システムと,所得が低く,無料あるいは低額の負担で,慈善医療を受けるしかすべのない人々のための医療システムということになります.自費医療と慈善医療というのが,長い間のアメリカの医療の2本の柱ともいうべき仕組みでした.もちろん後者の医療を受けることは,大いなる社会的不名誉とされてきました.

 これらのシステムのもとで医療を受ける人々について,更に詳しく分けると,前者の医療を受ける人々は更に2つの階層に分かれます.ひとつは小児科や内科の専門医をかかりつけの主治医としている富裕な階層,つまり上流階層と中流階層の上半分に属し,入院すれば個室あるいは2人部屋に入ることのできる人々です.もうひとつは,専門医でない一般医をかかりつけの主治医としている階層,つまり中流階層の下半分に属し,入院すれば2人部屋を使える階層で,地方や郡部の小都市,農村部等rural areaと呼ばれるところの住民らはほとんどすべてこの階層に属します.

マイ・オピニオン

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 我々は,本紙を素材として,毎号,学び批判し,そして話し合いの場を,集団でまたは個人で持つことを習慣としています.日夜絶えることなく続けられる医療の,チームメンバーの中には,看護婦もあり准看護婦もあります.私は,医師の立場として,本誌1980年8月号‘マイ・オピニオン’欄での道廣睦子さんの論旨に,いろいろの意味で強力に引かれるものを感じました.そしてそれに続く10月号,11月号の‘マイ・オピニオン’を読むにつれ,その感を更に深くせざるを得なかったのです.

 看護業務に携わる人の資格の一本化に関する議論は,当初はそれぞれの立場から激しく行われていたようでしたが,ここ2年くらい前からは,どうも准看廃止論のみが圧倒的であり,ともすれば本質的な問題点から遠く離れた場での議論のみがすべてを制圧したような感すら抱かざるをえないようです.そのような時代的背景の中にあっての道廣さんの論旨の,最も人をしてうならせるものは,准看教育の立場にある教務主任としての,日常生活体験から得られたありのままの感じを,素直に,しかもなにびとに対しても遠慮することなく述べていることです.根本的には准看廃止に賛成されながらも,やはりその前に解决しなければならない現場の諸々の問題を,赤裸々な姿においてとらえ,提案していることであろうと思います.

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当病棟では,1975年6月以来‘長期にわたり尿道留置カテーテルを挿入している患者のカテーテル抜去’というテーマで看護研究に取り組んできた.それ以来,高度の意識障害があり,尿路感染を併発している場合でも,留置カテーテル(以下,バルンと略す)抜去は可能ではないかと考え,急性期を脱し,慢性期に移行した時点で,バルン抜去が可能か否かを検討した上で速やかに抜去するという方針で看護してきた.しかし,このテーマで研究した3年間を振り返ってみると,すべての患者にその看護方針が貫けたとは言いきれない.遷延性昏睡にいたった老人女性の場合,男性に比べて,早期バルン抜去への姿勢,努力が弱いのではないかと思われるが,陰部びらんを形成している老人女性患者について,バルン抜去へと導くことができたので,その看護の実践について報告する.

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はじめに

 保育・養護は小児看護の原則である.重症心身障害児(以下,重障児と略す)の看護においてもこの原則は変わらない.私は,当病院の重障児病棟において,病児の復活能力を引き出すことを看護の目標に,2週間(正味8日間)の実習を行った.そして一重障児とのかかわりの中で,比較的良好な反応を観察し,我々を含めた周囲のかかわり方によって,病児の復活能力を引き出す可能性のあることに気づかされた.その経過を振り返り報告する.

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山登りが好きで、その体力づくりが動機で始めたジヨギングだつたが、今では訪問看護という激務に耐えるための体力づくりへと変わつてきた。老人とのつきあいのなかに看護の手応ええお感じ始めたというフレッシユナース。

バイタルサイン・9

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吸息と呼息 吸息と吸気とを同様な意味で使う人もいるが吸息を現象,吸気を吸息ガスとして区別する入もいる.ここでは後者の立場をとることにする.

 健康者の安静呼吸では,吸息(約1秒)と呼息(約15秒)の間に約1秒くらいの休息期がある.これが呼吸数16回でほぼ1分となる(図1 ①).量的には,もちろん1回ごとの吸気と呼気は等しい.この等しい気量を通過させるのに,吸息より呼息が長いのは,吸息では呼吸筋(外肋間筋・横隔膜など)が能動的に収縮し,呼息ではむしろそれらの筋の受動的弛緩によっているからである.しかし,これが努力呼吸となると,補助呼吸筋をも動員して,吸息にも呼息にも能動的な筋収縮が伴う.そして吸息と呼息の時間的関係も変わつてくる.

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 入院中の子どもの生活には変化や刺激が少ない.しかし,たとえ病気で入院中であっても,子どもの成長・発達にとって,日々の生活のなかでの変化や刺激は,遊びとともに欠かすことのできないものである.そこで,病状によるさまざまな規制のあるなかでも,子どもらしい夢や希望を育て,生活に変化やうるおいをもたらすためにさまざまな試みがなされている.

 看護婦や保母による子どもたちとの遊びのほかに,七夕,夏祭り,クリスマスといった年間行事の開催もそうした試みである.兵庫県立塚口病院の小児病棟では,この年間行事をボランティアが中心となって自主的に運営し,子どもたちから大歓迎を受けているが,そのうちの‘夏祭り’行事を写真で紹介する.

輸液 ある個人教育の経験より・12(最終回)

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輸液剤のカリウム濃度

カリウムは98%が細胞内液

 近藤 今までは‘ナトリウムと水’のことだけを中心に考えてきましたが,最後にカリウムのことを少し取り上げてみたいと思います.先生,説明をお願いします.

 和田 そうですね.脱水症というのは,細胞外液が失われるわけです.そういう意味で,まず細胞外液の主成分である水とナトリウムのことをしっかり学んでおこうというのが,ぼくの主張です.今までの話で,そのへんは大分よくわかってきたと思うので,少し細胞外液を離れたことにも踏み込もうというわけです.

性の臨床・11

性の臨床と看護 河野 友信
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‘性の臨床と看護’というテーマですが,単に性疾患や性障害の看護に関することだけでなく,広い意味に解釈して,臨床看護において性にかかわることを全般的に取り上げたいと思います.

 医療が患者中心であり,看護が人間学的な看護を目指すとき,できるだけ患者の人間的なニードに応えるようにするのが,看護の重要な役割と思いますが,このような立ち場で医療に臨むとき,性の問題は避けることはできません.

呼吸器病Q&A・9

肺癌 岡安 大仁 , 福田 幸子
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肺癌は世界中て増えている

日本では最近25年間で13倍増

 Q 前回は‘肺結核’について話していただきましたが,今回は‘肺癌’についてうかがいたいと思います.

 肺癌は年々増加の傾向を示しているといわれていますが,実際の数値の上ではどのような変化を示しているのですか。

滅菌と消毒・5

消毒法の実際 林 和枝
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 病院などで観血的処置(検査や手術など)のために患者に直接使用する医療器材(以下‘医材’と略す)の無菌準備に際して,‘消毒法’を選択すべきか,あるいは‘滅菌法を選ぶべきかの判断は,医療に携わる者は常識として持っていなければならない.できるなら‘滅菌法’を選択すべきである.しかし,消毒で十分に間に合うものもある.

 昭和20年代以降の日本の病院などでは,シンメルブッシュ煮沸消毒器から高圧蒸気滅菌器への移行および転換が,急テンポで行われた.かつて医療現場においては,煮沸消毒器が主役であったが,現在では少しずつ姿を消し始めているのではないだろうか.

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 病棟に出入りする度にドアにかける鍵の音。窓には逃走防止用の鉄格子。精神科の閉鎖病棟という言葉からまず連想されるのは鍵。「いったい、この患者さんたちに対して鍵なんかいるのだろうか、そんな素朴な思いが自然とスタッフの間から出てきたんです。一般社会とあまりにも違った場所で、社会に通用しないことがあまりにも多いのに社会復帰だなんて……」

 若いスタッフから出てきたこのような思いや、一九六九年の精神神経学会の金沢学会(既成の精神医学界への強烈なノン)などが刺激になり、閉鎖病棟を考え直そうとする空気が生まれてきた。「それに僕ら東北人はバカ正直なんでしょうか、組合運動で医療労働者は患者のためになれ、なんて言われるとついその気になってしまって……」

こんにちはメヒコ 看護交換留学記・12(最終回)

民族的なお祭りと行事 古瀬 敬子
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数々の新しい出来事に目を見張り,心踊らせて,言葉のハンディには観察と行動をもって見聞した,メキシコの看護事情と生活体験についてのお話は,いよいよ最終回を迎えました.まだまだ思い出は沢山ありますが,今回はいかにもメキシコらしい宗教的・民族的色彩の濃い行事や習慣をお話ししましょう.

余白のつぶやき・17

ガーデンパーティ べっしょ ちえこ
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大阪千里山で、保良せきさんの米寿の祝賀会が催され、私も伝記の執筆者として招かれて行ってきた。看護界や教育界から、彼女にゆかりの人が五百人も集まるという盛大な会であった。

 その日のためにご子息から贈られた、ピンクの総レースの豪華な衣装がよく似合って、保良さんはさながら客間の女王といった貫禄。彼女が足をとめ、彼女が歩を進めるところへ、満堂の、視線という視線、嘆声という嘆声がなだれるのである。こういう人を花のある人というのだろう。幼稚園時代保良さんの教え子だったというオペラ歌手の東敦子さんが、特別出演でアリアを数曲歌ったけれど、さすがの世界的プリマも、押し出しという点では老師に一歩ゆずった。

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情動あるいは精神因子が症状の発現に直接関係を有することが証明できる眼科的疾患群を‘眼心身症’と定義するが,この眼心身症の中の1つに心因性弱視があり,ヒステリー性弱視もこの中に入る.

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〔商晶名〕コレグラフィン Cholegrafin(タケダ)

〔薬効〕造影剤

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基本情報

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看護学雑誌
44巻12号 (1980年12月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

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