ナーシングホーム アメリカ合衆国の医療と看護の実態・12
老人問題の受け皿としてのナーシングホーム
岡本 祐三
1
1阪南中央病院内科
pp.1307-1311
発行日 1980年12月1日
Published Date 1980/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661919116
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合衆国の医療を支える2つの保険制度
アメリカ合衆国(以下,アメリカ)の社会には,医療について2種類のシステムが存在するといわれます.自費すなわち自分のかせぎの中から,医療費を捻出できる人々のための医療システムと,所得が低く,無料あるいは低額の負担で,慈善医療を受けるしかすべのない人々のための医療システムということになります.自費医療と慈善医療というのが,長い間のアメリカの医療の2本の柱ともいうべき仕組みでした.もちろん後者の医療を受けることは,大いなる社会的不名誉とされてきました.
これらのシステムのもとで医療を受ける人々について,更に詳しく分けると,前者の医療を受ける人々は更に2つの階層に分かれます.ひとつは小児科や内科の専門医をかかりつけの主治医としている富裕な階層,つまり上流階層と中流階層の上半分に属し,入院すれば個室あるいは2人部屋に入ることのできる人々です.もうひとつは,専門医でない一般医をかかりつけの主治医としている階層,つまり中流階層の下半分に属し,入院すれば2人部屋を使える階層で,地方や郡部の小都市,農村部等rural areaと呼ばれるところの住民らはほとんどすべてこの階層に属します.
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