看護学雑誌 45巻1号 (1981年1月)

特集1 看護婦が患者になってみえたこと

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本誌 今日は患者体験を持った看護婦さんに集まっていただきました.患者になるということは,健康な時と違った次元で何かが見えたのではないかと思っています.みなさんそれぞれどんな病気になって,患者になって,実感としてどんなことを思われたか,ということから話していただきたいと思います.

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入院歴

 14歳,虫垂炎から腹膜炎を起こし21日間入院.15歳,狸紅熱で15日間入院.20歳,腎臓結石で43日入院.34歳,第3子が在胎8か月に入ったばかりで早産しかかり67日間入院.4回の入院経験から,最も看護というものを身近に感じたのは,4回目の入院の時です.今は病院勤務ではなく施設で働く者ですが,今回の入院を通して初めて,今なら少しはましな病棟勤務ができるのでは,と思わされ,7年前の病院勤務のころの自分を深く反省もさせられました,その当時は,人並に患者の立場になっての看護とか,看護とは何ぞやと一応悩んだつもりでした.

 1回目,2回目の入院は田舎の市民病院.若い看護婦は病棟に1名いるかいないかで,後はベテランの中年の看護婦ばかりでした.言葉には方言も交じり,病院全体がのんびりした感じでした.2回とも秋だったせいか,患者さん同士が裏山で栗拾いをしたりしていました.

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出産以外で入院したことのない私は,昨年7月に,変形性頸椎症で初めて2週間の入院生活を体験した.

 臨床未経験のまま保健婦として保健所に就職した私は,以前から,ぜひ一度臨床看護に携わってみたいと考えていた.しかし,20年余り過ぎた現在までそれが実現されずにいたが,今回,患者という受け身の立場ではあるが,臨床看護の場面に接する機会にあい,病気による痛みはあったが入院に対する期待のようなものも抱いていた.

特集2 ウイルス肝炎をどう防ぐか

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 ウイルス肝炎は,古くから肝炎ウイルスにより起こると考えられていながら,肝炎ウイルスの分離・同定が困難だったため,長い間ウイルス学的な面からの研究が行われなかった.1965年Blumbergらによるオーストラリア抗原の発見を契機として,肝炎ウイルスの研究が進み,現在ではA型肝炎ウイルス(HAV)およびB型肝炎ウイルス(HBV)の分離・同定が可能となっている.

 さらに血中HA抗体,とくにIg M-HA抗体の測定によりA型肝炎,血中HBs抗原の測定によりB型肝炎が確定診断されるとともに,A型肝炎,B型肝炎のいずれにも属さない非A・非B型肝炎の存在が明らかにされている.

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はじめに

 血液透析療法では,対象とされる疾患の大部分が慢性腎不全であり,患者は長年にわたり反復透析を行う必要がある.また長時間の体外循環時には,実施者はどうしても患者の血液に直接触れる機会が多く,患者の周囲や使用器具が血液で汚染されることも避けられない.従って患者の中に,血液を媒体とする感染源を有する者が1人でもいれば,透析室における感染の可能性は極めて大であると考えられる.

 古くから血清肝炎と称されていたB型肝炎の実体が解明されるにつれて,透析室でのB型肝炎の感染防止,すなわちHBs抗原対策が種々検討されるようになったのも,このような透析業務を背景にしているからにほかならない.その結果表のごとく,透析室における肝炎発生は年々減少の傾向がみられている.当院透析室においても,B型肝炎発生防止のため,年々看護管理面の検討を重ねてきたが,その実際について述べてみたい.

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はじめに

 B型肝炎が院内感染症としてとみに注目を集め,それぞれの施設でB型肝炎に対する予防対策が検討されていることは既に周知のとおりである,当院では,1973年5月に院内感染防止委員会が発足し,各種感染症に対する基本的な考え方や具体的な対処の方法を定めて感染症の管理を行っている.本稿では当院の院内感染マニュアルに基づいて,感染症患者に対応する職員の教育と健康管理,HB抗原陽性患者の看護管理についてその現状を報告する。

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何が服薬上の問題点か

 日野原 12月18日のカンファレンスを始めましょう.症例を松島さんからお願いします.

 松島 患者は和○明○さん.44歳の男性です.特発性心筋症(PMD)で,過去2年間,このクリニックで経過を見ています.初診時は,上腹部の膨満感という主訴でしたが,PMDと診断され,薬物療法としてジゴキシン,ラシックスを,それから血圧が少し高いということでアルドメットを用いていました.診断はPMDによる心不全ということで,約3か月は完全な安静,その3か月後は,自宅で運動量を少しずつふやし,6か月で会社に出られるまでになりました.経過は良好で自覚症状はほとんどないというところまできたのですが,今年の11月になって…….

いのちの現場で したたかに生きる看護婦を追って・1

家族の入院 長岡 房枝
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私の手元に日看協から送られてきた“協会ニュース”がある.1面の‘看護は対話’の活字がまず初めに目に飛び込んだが,次に‘家族の入院’というタイトルに目が引きつけられた.‘市民との対話集会’を知らせる記事であったが,この活字が目に入ったのは,看護と対話に関する問題を身近なこととして考え続けていた時期であったからであろう.

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はじめに

 入院患者の老齢化と悪性疾患の増加は,手術適応者の高齢化をすすめ,看護の内容を質量ともに繁雑にし,日常の看護の手抜きを余儀なくする状況を生み出している.

 患者数を日勤看護婦数で割り出す単純な勤務の割り振りは,時には,検査,診療の介助だけで手一杯のことがあり,それらの,どうにでも終わらねばならない仕事が,すべてに優先して行動表を埋めてしまう.そして,わずかばかりの残り時間が,本来の看護のために当てられるのである.患者は,連日の事に慣れてしまい何も言わなくなってしまう.

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高齢者の非感染性疾患を対象とし,可動性・支持性・無痛性など関節機能の回復を目的として,人工股関節置換術が導入されて以来,既に10数年を経過し,すぐれた成績をあげている.反面,感染,骨とセメントとの間のゆるみ,術後の不良肢位による脱臼・骨折などの合併症も報告され,種々の問題が提起されている.

 人工股関節置換術の場合,術後の不良肢位により脱臼の危険性があり,また,起立荷重の時期的問題など,術後のリハビリテーションの良否が術後看護上重要な位置を占めると考える,今回,術後の運動に対して不安の大きかった患者が,松葉杖歩行可能になるまでの人工股関節置換術後のリハビリテーション看護について検討したので,ここに報告する.

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はじめに

 筋萎縮性側索硬化症(以下,ALSと略す)は,運動神経系統を選択的に侵す進行性の神経疾患で,難病の1つに指定されており,薬物療法にも大した期待が持てないのが現状である.このような治癒見込みのない患者の生命の維持を可能にしているのは,患者自身の生に対する意欲と,家族の温かい励まし,そして,医療従事者による行き届いた治療および看護であると言えよう.私たちは,ALSの末期状態に脳出血を合併し,重篤な呼吸困難を呈した患者の看護を通して,観察の重要性と症状の変化の早期発見,早期処置の必要性を再認識する機会を得たので報告する.

素顔のナース

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半分は山へ登りたくて、半分は精神科をやりたくて、中央アルプスのふもとにある駒ケ根病院を選んだ。注射ばかりの内科は、自分が器械になっていくみたいでいやになり、精神科を選んだ。雪がない夏は沢登りが多い。

バイタルサイン・10

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気道には声門のように生理的にも狭い部位はあるが,それなりに呼吸に際して異常に音を発するということはない.しかし,特別な狭窄を生ずると,呼吸に際して,本人にもまた周囲にも聞こえるほどの異常な音を発することになる.これが喘鳴(wheezing)である.喘鳴を普通の喘鳴(wheezing)とストライダー(stridor)に区別するのは意味がある(図).というのは,ストライダーは喉頭喘鳴であって,いわば上部の気道の狭窄によって生ずるヒー・ヒーといった比較的高音で耳に近く聞こえる喘鳴だからである.

カラーアトラス 褥創・1

多発性化膿性褥創 木村 哲彦
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患者:H.K.男性,26歳

 原疾患名:先天性脊椎破裂による脊髄性対麻痺

マイ・オピニオン

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本誌1980年8月号の道廣睦子,9月号の坂本須恵子および10月号の阿部悦子諸先生方のマイ・オピニオンの記を,非常に強い関心をもって読ませていただきました.私も同じく准看護婦廃止を主張しておりますが,前記諸先生とは異なった見解をもっております.

 世の中は,職業人があって職業が生じるのではなく,なんらかの需要があって職業人が生じるのであり,時代の需要にあった職業人こそ,真に求められるのだと思います.例えば今日の時代では,アメリカ製の立派な大型車よりも,日本製の小型車のほうが需要が大きいように,社会もしくは医師・患者がもし,若い看護婦を必要とするならば,それにあった看護婦を養成しなければならないということにもなりましょう.

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アルゼンチンの首都,ブエノスアイレス市にあるニッカイ診療所(centro medico mutual NIKKAI)は,在アルゼンチン日系人約3万2000人のための医療機関として,1974年に開設された.ニッカイ共済会の会費と,とぼしい日本政府からの財政援助で運営費が賄われており,経営は苦しい.

 現在,前田英康医師(アルゼンチン国籍)と事務局の儀間和子さんの2人以外は,みなアルゼンチン人の医師,看護婦などによって活動が支えられている.かつて,日本人看護婦がいて親しまれていたが,現在,看護婦はアルゼンチン人のマリア・エレナさんだけである,ニッカイ診療所を訪れる日本人の多くが‘日本人の看護婦さんがいてほしい’と訴える.

くりにかるふぁーまころじー・1

臨床薬理学とは 佐久間 昭
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臨床薬理学とは,実験薬理学の原理を踏まえて,臨床における薬の理論と実際について研究する学問であり,常態および病態におけるヒトでの薬の科学的研究にかかわる.

 ヒトでの薬の研究といっても,具体的な内容は広範にわたる、第一線の臨床医には‘目の前の特定の患者に特定の目的で薬を用いるとき,その患者の利益を最大にするような薬の選択,用量と用法の決定’がゆだねられている.ときに薬を‘用いない’という選択が最善のこともある.この際に,許された危険性の枠内で薬の効果を引き出すのに実際に役立つ情報を整理し提供することが,臨床薬理学の大きな役割になる.

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複数の病院が組織としてシステム的に協力運営して,病院機能の実施を行う形態を,Multi(複数の)病院システムという.病院がチェーンとしてつながっていることから,チェーン・ホスピタル(Chain Hospital)と呼ばれることもある.呼び名から想像されるように,アメリカ合衆国において話題となったこのシステムは,わが国においても最近話題になっている徳州会に代表される試みとして,身近なものになりつつある.

 このマルチ・ホスピタル・システムには,いまだ明確な定義はない.1つの組織が複数の病院を運営する例としては,わが国にも96の国立病院,156の国立療養所があるが,これをマルチ・ホスピタル・システムと呼ぶかには問題がある.アメリカ合衆国にある同じような在郷軍人病院を,マルチ・ホスピタル・システムとは呼んでいないことと似通っている.

コンピュータを学ぶ人のために・1

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連載にあたって

●コンピュータを学び始める前に

 コンピュータ,コンピュータ,コンピュータ.どこを向いてもコンピュータばやりである.これに対して腹立たしい気持ちを持つ人もあるだろう.また逆に,なんとか理解せねばと焦る人もあるだろう.そのどの人たちの考えも,それなりに根拠がある.しかし,コンピュータがすばらしいとか,くだらないとか決めつけるのは,ちょっと待っていただきたい

性の臨床・12

性と犯罪 河野 友信
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 性のからんだ犯罪や情痴事件は,人の低次元での関心をひくために,娯楽新聞,ある種のテレビ番組,そして通俗週刊誌などでは,必ずといっていいほど毎回取り上げられています.性と犯罪はそれほど結びつきやすく,事件としても頻度の高いものなのでしょう.

 近年,大きなニュースとなった性犯罪や性のからんだ事件を2,3あげてみても,強姦殺人犯として人々を恐怖におとしいれた小平義雄(1946-47年),大久保清(1971年),小野悦男(1974年)などは,その事件の凶悪さのために,いまだに多くの人の記憶に残っているはずです.

呼吸器病Q&A・10

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原因不明の全身性肉芽腫形成疾患

 Q 今日は‘肺サルコイドーシス’についてお話を伺いたいと思います.まず,肺サルコイドーシスといわれると,原因不明で肺門のリンパ節腫脹が特徴であるというようなことがすぐ頭に浮かんでくるのですが,どういう病気なのか,もう少し詳しく説明していただけますか.

 A そうですね,サルコイドーシスは原因不明の疾患で,全身の臓器,例えばリンパ節,肝臓,脾臓,筋肉,皮膚,骨などに類上皮細胞による肉芽腫をつくる疾患です.しかし,結核でも肉芽腫をつくりますが,結核のように,肉芽腫の中が乾酪壊死に陥ることがないのが1つの特徴です.そのような肉芽腫が肺にできた場合が,肺サルコイドーシスです.

滅菌と消毒・6

中央滅菌材料室 林 和枝
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中央滅菌材料室(以下‘中材’と略す)は,病院などの病棟・外来・手術室などで使用する医療器械・器具・材料(以下,総称して‘医材’と略す)の滅菌ならびに供給を行うとともに,これらの使用済み医材を回収し,洗浄処理を行った後,次の使用に備えて中央管理する部門である.診療のために無菌操作および既滅菌医材が不可欠の存在であるのと同様に,中材の存在も不可欠である.

 疾病の治療・検査・診断の目的で使用する医材の準備,調達は,過去および現在においても,その行為を介助する看護者の業務である.このことから,ほとんどの施設において,看護婦が中材の管理を行っている.

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 自衛隊病院勤務が長かったせいか、産婦人科と手術室を除くすべての科を経験したが、本格的にリハビリテーション看護に取り組んだ経験はなかった。

 ここの病院は看護中心のリハビリテーション施設と聞きますが、前からリハビリには興味がありましたか。「特に強い興味というほどではなかったのですが、まあ私にもできるだろうと割合簡単に引き受けたんです。でも勉強していけばいくほどリハビリに頭を突う込めば突っ込むほど難しくなっていくんですね……」治らぬ患者には看護主体のケアしかないというのがこの病院の方針のようですが、具体的には?「リハビリはやはり看護主体でなければできませんね。急性期の患者さんであれば治療をどうしても優先しなければならず、看護業務の九〇%までが診療介助だと思うんです。でもここはその反対に診療介助は看護業務の一〇%にもならないし、あとは全部看護だと思っています。だから実質的に看護が主体になりますね。具体的には沢山ありますが、機能障害をもった患者さんですから、ほとんどの行為に介助がいります。でももちろん必要以上に援助したら患者さんは自立できない。そのへんにリハ看護の特徴はあると思います。手を貸してあげたくても手を出さず、患者さんができるところまで待つ。どうしてもできないところは援助するが、いつも目は離せない。そういうところに手がかかるんですね

ビバ!ラプラタ アルゼンチンの日系人とともに・1

アルゼンチンへの旅立ち 藤原 美幸
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連載をはじめるにあたって

 ‘アルゼンチンでの生活はどうでしたか’はともかく,‘どんな成果がありましたか’という問いほど答えにくいものはない.しかも周囲の人々が知りたがっているのは,まさにその事なのである.さて,どう答えるべきか.返答に窮するあまり帰国以来の私は,自閉症を決めこみ,この種の問いから逃げ続けていたのだった.

 出発前の愛想よさはどこへやら,帰国後,面倒くさそうに接する私に‘苦労してきたな’と,友人は感じたようだ.異文化をかい間見たという,カルチャーショックから立ち直るための一手段としての逃避も加わっていたのかもしれないが,‘1年や2年外国へ行ったことで格別何がどう変わるものでもないわ’と開き直るのは少々残念でもある.‘何かがあったはず’と,いまだにその何かを捜しているのであるが,こんな情けない心境に陥っているのも,アルゼンチン行きを決定するまでのいきさつが原因しているようだ.外国という異なった環境に自分を置いてみることで,何かがつかめるのではないかという目論見はあったのだが,しかし,それはあくまでも‘何か’という抽象的なものであって,具体的な目標ではなかった.いうなれば‘何でもみてやろう’式の焦点の定まらないままの旅立ちであった.

余白のつぶやき・18

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午後四時、三日まえから難渋していた原稿にやっとケリがついた。どこかがひどく渇いている。いつもの言恋病。そういえばこのところずっと人との対話がなかった。ふいに衝かれたようにダイアルを回す。小玉香津子さん宅へ。おられるかしら。

 小玉さんは、すぐれたナイチンゲールの研究家、翻訳者としてお名前だけを存じあげていた。五月にある場所で人から紹介され、しばらくお話しして別れた。それだけの間柄である。それだけの間柄て用もないのに藪から棒の長電話では誰でも面くらうだろう。小玉さんもはじめは戸惑っておられたが,そこはそれ聡明な彼女のこと、私の発信する暗号をすぐに解読して、チャンネルを合わせて下さった。えんえん一時間。

 人は喉が渇くように対話に渇くことがないだろうか。私にもよくそんなときがあって、やみくもに発信のキイを叩。しかし世の中には、忙しい人や忙しがってみせる人が多くて、閑人から送る秋波はたいてい拒絶される。

基本情報

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看護学雑誌
45巻1号 (1981年1月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

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