看護学雑誌 41巻1号 (1977年1月)

特集 管理から看護へ

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Ⅰ.はじめに

 日ごろのベッドサイドでの仕事感覚の中で,看護の‘人のする,人への働きかけ’という基本的な条件を忘れているわけではないが,現実的にはその条件を満たすような活動を組みたてることは,とても難しい,そして,その難しさを,私たち臨床に携わる者は,今までのところ病院という機構組織やベッドサイドにあふれかえっている未分化的雑用のせいにしたり,時間的制約を理由に,(そうはできなかった)者の後ろめたさをどこか奥深いところに隠して,それらについて自ら追求するようなことは少なかった.

 同じように,昨今では‘看護’の理論化や学問としての体系化について,いろいろうんぬんされているのだが,そうした理論や主張のうち,現実的なベッドサイドにとって明らかに説得力をもたないと思われるものや,時には理論のはなはだしく臨床離れした感覚になかばあきれていても,なおその本音を言うことはさし控えているようなところがある.少なくとも臨床にある者なら,理論的予測や象徴的表現でとらえた看護の内容が,現実的な運用の段階で,‘そうはうまくいかない’ことについては,骨身にしみて知っているはずである.

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はじめに

 私が看護の仕事についてから,既に8年余りが過ぎた.スタートは内科であったが,まもなく精神科に移り,現在はおもに20代の重症精薄の人人とのかかわりをもっている.

 その間,私は時にうろたえながら,私自身がこうありたいと願う看護者としてのあり様と,周りが私にこうあれと求めてくる看護者としてのあり様との食い違いに,とまどい続けてきた.8年余りも続けていると,知らないうちに周りが求めるままに行動していることもあり,仕事を終えて帰る道々,引き裂かれる思いで耐え難くなったりもした.

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はじめに

 私が初めて精神科病棟勤務になって10か月近くたったある日のこと,Sさんという患者の清潔への働きかけを通して,私としては援助と思った看護行為が,患者にとってはいったい何だったのか,と問い直さざるを得ない体験をした.

 たまたま当時,日本看護協会主催の精神科看護研修会に参加する機会を控えていたので,この体験を研修課題として取り上げて,私の行った看護行為を見つめ直してみたいと思った.事例提供,討議,助言,文献探索等の研修の中から,自分の行った看護を見つめ直し,問い直して,気付き,学んでいった過程を,もう一度振り返ってみたいと思う.

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 医学の進歩とともに診断・治療も高度なものとなり,それに伴っていろいろな医療器具・器械も導入され,患者が器械類と相対する場面が多くなっている.そうした中で看護はどのような位置を占めているのであろうか.

 モニターとかテレビはまだ特殊な場合であって,まだまだ直接患者と接しなければならない場面が多いのだが,診断・治療・処置の介助に要する時間が非常に多くなり,その割合に看護人員は増えず,したがっで忙しく,1日の仕事をいかにして要領よく時間内に終わらせるかということに努力する結果,患者に対して機械的になっていはしないであろうか.

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はじめに

 ‘昔々,美人と秀才が“肺病”になった時代の終わりのころのことでネ,ボクも例にもれず肺病になって……’期待どおり学生たちはニヤニヤする(このごろの若者は妙に気が優しくて,教師の下手な冗談にもちゃんと付き合ってくれるのである).これという個性的な才能も持たぬ私には,若き日に死に直面しつつ過ごした5年間の療養生活の体験は,大学教師という商売にとっても,ほとんど唯一の,かくれた精神的財産であり,肺浸潤に始まる肋膜炎・腹膜炎・肩胛関節炎・上膊骨カリエス・腎臓結核・副睾丸炎等々のたくさんの病名と,体のあちこちに残る手術の傷あとやカリエスの瘻口のあとの引きつれは,私の大事な勲章である.

 思えばあれからもうじき30年になる.あの病院生活の思い出は,私にもかつてあった‘抒情詩の時代’の思い出に重なる.──そのころ“保健同人”という療養誌の短歌欄に投稿したりしていた私に,一度だけ自作の歌をみせてくれた,確か山形出身の看護婦のKさん.彼女が私たちの病室に飾ってくれた小さな七夕飾り.家族の手紙をわざと背中に隠して来てハイと渡してくれたときのいたずらっぽい笑顔.彼女だけではない.

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 病院は病者のためにあるものだし,その病院の規則も患者の療養生活が守られ,治療に専念できるように作られたはずです.しかしその規則がいつの間にか患者のためではなくなっていることに気付きます.日常の看護の中で,そのような経験などについて話し合っていただきました.

マイ・オピニオン

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 今日‘医療とは何か’という論議よりも,むしろ‘医療とはいかにあるべきか’という論議がなされているなかで,看護はいまだに‘看護とは’とか‘看護は専門職たりえるか’とかの社会的位置づけへの努力にとどまっている.これは,医療のなかでの看護の立ち遅れを意味しているのではないかといわれているが,つい最近まで生と死が交錯し流動的な人間現象の展開される現場の中で,病む人の悩みとそれを確かに受けとめ得ない自分の無力さに押しつぶされそうな経験をしていた者として,つくづくとその意味の深さと重要さを考えさせられている毎日である.

 看護業務を考える時,確かにある一面では進歩発達した医学技術の実践の中でどの部分を分担するのかとか,あるいは患者の生の臨床経過の情報を医師に報告するとか,その他多くの医師のサブシステム業務に忙殺される現状のなかに我々はある.

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はじめに

 当病棟は,産科婦人科混合病棟であり,入院患者の1/3が癌疾患です.外陰部癌は,婦人性器癌の3-5%と非常に少ないといわれております.私たちにとっても初めての症例でありました.良い看護,患者中心の看護を強調しながらも,毎日処置や介助に追われているのが現状です.患者にとって良い看護とは何なのか,反省の意味を含めて,看護活動の一端を報告します.

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はじめに

 国立療養所和歌山病院に重症心身障害児病棟が併設されてから,既に6年を経過した.そのなかで特に看護は暗中模索のうちに進められ,常に重心児の看護の問題が大きく私たちの日々の業務の中での問題提起として投げかけられている.今回取り上げた,ダウン症候群患児の事例は,この問題解決の糸口として看護者の意欲がいかに大切であるかということを再認識させられ,この患児の成長過程を報告し,看護の働きかけにいささかの検討を加え,重心児の看護研究の一端を報告する.

死への看護・1

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はじめに

 現代社会においては,‘死’は医療や看護の失敗とみなされる.そして死にゆく患者は,‘うまく死ぬ’(die well)ために必要な精神的・身体的サポートを受けることが非常に少ない.しかし,看護側がチームを組んで,組織的に‘死’にアプローチすれば,患者,その家族,看護するスタッフの3者が利益を受ける.

 これは,‘死への看護’にチーム的なアプローチを試みているタフト大学のクラント教授の言葉です.確かにこれまでの医療の世界は,死の否定,生命の延長にその重点がおかれてきました.従って老人や死にひんしている人々など,既にその回復が不可能である人々は,医療の中で不十分な配慮しか受けることができませんでした.医学の発達に伴い,病院で死を迎える人々は年々増加しています.死の否定,生命の延長を目指す病院が,人々の死ぬ場所になっているというのは皮肉なことです.‘病院の任務は患者の治療と更生にある’という考えが強すぎると,死にゆく患者を扱う場合,欲求不満と葛藤が生まれ,患者に対して,十分な配慮がなかなかできにくいわけです.

人間関係・11

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‘集団的エゴイズム’の問題

 さて,人間の利己主義を詳しく検討した有名な箇所で,ラインホールド・ニーバーというキリスト教の思想家は,こんなことをいっている.

 集団の持つ傲慢(ごうまん)さは,本来は個人のなかに根をもっているけれども,いったん形成されると,その集団の1人1人を支配するような権威を持ってしまうものである.極端な場合,その集団の権威は,無条件的な要求を個人に突き付けることにもなる.例えば,国家である.お国のために,という旗じるしが,あらゆる個人の権利を踏みにじった歴史的事実を,わたしたちは骨身にしみて知っている.

ユニホーム

十全二ッ橋病院 松本 政子
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淡いグリーンでソフトムードを

 従来のユニホームは白でしたが 病院の内装がグリーン系統なのでそれに合わせ ソフトなムードをつくりだすために白をさけ 淡いグリーンにしました.

 衿はスタンドカラーで 前が6cmほど開いているので首が動かしやすく 首すじがすっきりしてみえます.衿からすそ上30cmまでをファスナーにしましたので 頭からかぶらず着用できて便利です.

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 大腿骨頸部骨折や変形性股関節症では,術後ギプスを腰から患肢足尖まで広範囲に巻き,3か月くらいの臥床期間を必要とする.このような患者の排泄の介助において,1)心身の苦痛,不安の軽減,2)排尿の失敗によるギプスの汚染防止,3)褥瘡の予防,4)介助者の労力軽減,5)健肢の筋力低下の予防などを目的に,脊損患者がベッド昇降時に使用しているリフトにヒントを得て,介助用具の工夫をした.

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 板橋区の都養育院内に 寝たきり老人 病弱老人のための近代的なナーシングホームが完成した.このナーシングホームは 医療・看護サービスやリハビリテーション機能を備え また軽症の老人たちが家庭復帰にそなえてADL(日常生活動作)などの訓練を受ける‘ハーフウェイハウス’を併設しており これまでは別々だった福祉と医療=生活の場(老人ホーム)と看護の場(病院)をひとつにした 日本でも初めての施設である.

 欧米では 医療・福祉・看護が一体となったこうしたナーシングホームやハーフウェイハウスが 老人のための施設としてごく一般的な制度となっているが 日本ではまだ制度化されていないため このホームも現在の医療法上では‘特別養護老人ホーム’として運営されることになる.

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 カフカの“変身”の中で,一夜にして虫になってしまった主人公は,妹にえさをバケツに入れてもらう.妹は泣きながら兄に語るが,虫となってしまった主人公は何も語れない.

 ‘私はいつもこのカフカの虫のことを思っていました.全くこの虫と同じなんです.分かっていても語れないもどかしさ……’脳性麻痺のために言語障害がある箙さんの口から初めに語られた言葉は,この虫のことであった.

ホームヘルパー跳びある記・1

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 看護婦をしていたころから,奥秩父の山を歩き回り,すっかり秩父に魅せられてしまったという星さんの住まいは,そんな山の懐にいだかれた農家の2階にある.

 寝たきりの老人を訪問し,全身清拭をし,爪を切り排泄の世話をすると,‘ヘルパーさんはそんなことまでするの’と驚きの声で迎えられたという.15年間全く入浴しなかった老人の体は全く形容できないほどで,爪などはまるで止まり木にとまっている鳥の爪のようだったと,ヘルパーに出た初期のころの驚きを語ってくれる.

内視鏡検査と介助の実際・1

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はじめに

 今日,内視鏡検査は消化管や気管支を初めとして非常に広範囲にわたっており,各種疾患の診断には放射線検査とともに欠かすことはできない.内視鏡検査法と診断学は年々進歩向上し,また,内視鏡器械も年とともに機種が増し,かつ複雑・精巧になってきている.内視鏡検査に従事する医師がこれらに精通し,研究を積んでいかなければならないことはもちろんであるが,内視鏡に携わるパラメディカルの人々もまた,多方向にわたる内視鏡業務をよく理解し熟練していなければ,安全で正確かつ円滑な内視鏡検査を遂行することは難しい.

 ‘内視鏡パラメディカルワーカー’とは医師以外の内視鏡医療従事者の意味であって,我々の調査によると,その大部分は看護婦である.次に内視鏡パラメディカル業務を大別してみると,まず第一に患者を中心とした看護業務,次に器械の保存・維持を中心とした業務,そして予約や資料などに関する事務とに分けることができる.

ICU看護の実際—北里大学病院の場合・1

ICUの歴史と看護 伊藤 敦子
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はじめに

 米国では1950年代に理論的・組織的試みがなされたというIntensive Care Unit=ICUが,重点病棟という名称のもとに,順天堂大学付属病院に日本で初めて設置されたのは昭和39年であるといわれています.以後10余年,耳新しかったICUの横文字も,日本麻酔学会用語委員会で‘集中(強化)治療棟(または部)’と訳されながらも,そのままICUという語が定着しています.

 また,ICUに働く看護婦のための研修コースも,各病院によるものだけでなく,昭和49年日本看護協会に4週間コースが生まれ,昭和50年には神奈川県立看護大学校に6か月コースが設けられるなど,なおいっそう発展する兆しが明ちかです.北里大学病院においても,開院当初よりICU・CCUとして設置し,5か年を経過して目的を果たし得ていると自負しています.

‘私’と‘あなた’の対話・10

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はじめに

 読者諸姉は,看護臨床のなかで患者さんが立ち直り,元気になってくれると,うれしいし,これで責任を果たした,との満足感や成功感を覚えられるであろう.しかし,患者さんにいい変化があらわれなかったり,亡くなったりしたとき,がっかりし,失敗の苦味を味わいつつ,どこがまずかったかを反省するに違いない.

 実は,私も心理治療(カウンセリング)にかかわるなかで,これと同じような体験をもつことがしばしばある.

目で見る移動・介助の実技・11

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胸腰髄損傷者のベッド上での寝返り法(腹臥位から仰臥位へ)

人的介助(2人)による場合

 1.図1-aのように2人の介助者は同じ側に位置する.患者の頭は介助者側に向けておく.患者の左腕は手掌を上にして,腰の中央あたりまで真っすぐ伸ばして入れる.

 頭側の介助者は一方の手(右手)を患者の腋窩を通して肩の後面へ持ってくる.他方の手は反対側の肩部後面へおく.下半身側の介助者は一方の手(左手)を右大腿の下を通して左大腿中央部を保持し,他方の手(右手)は股関節の上で骨盤前面を保持する.

切り取りカード 看護ミニ事典

POS(Problem Oriented System) 紀伊國 献三
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 POSはProblem Oriented Systemの頭文字をとった略語であり,問題志向型システムと訳される.この言葉は現在Vermont大学の内科教授Lawrence Weed博士によって1964年来提唱されたPOMR(Problem Oriented Medical Record=問題志向型診療記録)による新しい医療提供のシステムを示すものである.このシステムの献身的なわが国での推進者である,日野原重明博士の著書“POS”の副題が‘医療と医学教育の革新のための新しいシステム’とあることからもそのねらいがうかがわれる.

 一言で言えば,POSは,医療を利用する人(患者)の医療上の問題点(Problems)の1つ1つに焦点を合わせ,問題の所在をたえず追求し,それを志向(Oriented)しつつ,問題を持つ患者にとって最良の解決方法を計画し実施していくというシステムである.

切り取りカード 新しい薬の知識

ブメタニド(Bumetanide) 斉藤 太郎
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〔商品名〕ルネトロン Lunetoron(三共)

〔薬効〕ループ利尿剤

基本情報

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看護学雑誌
41巻1号 (1977年1月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

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