死への看護・1
なぜチーム・アプローチが必要か
柏木 哲夫
1
1淀川キリスト教病院精神神経科
pp.65-69
発行日 1977年1月1日
Published Date 1977/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918061
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はじめに
現代社会においては,‘死’は医療や看護の失敗とみなされる.そして死にゆく患者は,‘うまく死ぬ’(die well)ために必要な精神的・身体的サポートを受けることが非常に少ない.しかし,看護側がチームを組んで,組織的に‘死’にアプローチすれば,患者,その家族,看護するスタッフの3者が利益を受ける.
これは,‘死への看護’にチーム的なアプローチを試みているタフト大学のクラント教授の言葉です.確かにこれまでの医療の世界は,死の否定,生命の延長にその重点がおかれてきました.従って老人や死にひんしている人々など,既にその回復が不可能である人々は,医療の中で不十分な配慮しか受けることができませんでした.医学の発達に伴い,病院で死を迎える人々は年々増加しています.死の否定,生命の延長を目指す病院が,人々の死ぬ場所になっているというのは皮肉なことです.‘病院の任務は患者の治療と更生にある’という考えが強すぎると,死にゆく患者を扱う場合,欲求不満と葛藤が生まれ,患者に対して,十分な配慮がなかなかできにくいわけです.
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