看護学雑誌 41巻2号 (1977年2月)

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Part 1.この20年看護はどれだけ前進したか

 日野原(司会) 今回は阿部先生と高階先生においでいただいて,看護婦の将来を,私たち医療に従事する医師はいったい今どういうふうに考えているか,医師の側からどういうふうな問題をそこに見いだしているか,また10年先20年先の日本の看護は,どういうゴールに向かっていくべきであるか,そのためにどんな教育なり,研修なり,自己学習なりが企画され,実践されるべきかというようなお話をしたいと思います.

 阿部先生は長く医学教育のほかに看護教育にも理解を持たれ,多年の教育経験を持っておられます.現在は,慈恵医科大学の付属病院長として,大きな病院を管理する地位におられますし,この中での看護の問題は現実に非常に大きな問題になっていますから,そういう材料を踏まえて,しかし慈恵医科大学の付属病院の問題というのではなしに,日本全体の病院におけるナースの問題としていろいろご意見をいただきたいと思います.

問診は看護技術でもある 堀川 直義
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看護婦は情報サービス業

 問診というと,とかく医師だけの専門技術のように思われがちである.もちろん医師にとっても重要な診断上の技術であるが,実は,看護婦にとっても,欠くことのできない看護技術の1つである.

 医師も看護婦も,近ごろの流行のことばでいえば情報産業の担い手である.医は仁術で産業などとはとんでもない,という古風な考え方は別として,教育も医療も知識産業とされている.マッハルプ(F.Machlup)の有名な“知識産業論”によれば,彼は知識産業を,教育産業,研究開発産業,コミュニケーション産業,情報機械産業,情報サービス産業などに分類するが,医療は‘情報サービス産業’の1つとされている.医学そのものは研究開発産業だし,医学教育は教育産業に入るが,医療は‘情報サービス’なのである.そして,この医療という情報サービスに従事する人びととしては,医師,歯科医師,看護婦,保健婦,助産婦,整骨医,獣医などをあげている.

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思うような発展をしていない看護の現状

 連日,忙しく追い回される病棟での業務.時折,ふと我に返って問いかけてみる.これでよいのだろうか,このまま現状に押し流されて,なるがままにまかせてよいのだろうか.

 現在,看護の現場で突き当たる様々な問題は,私にはかつて看護学校を卒業したてのころに次々と感じた疑問と,余り違いがないような気がしてならない.当時は,いかに解決・改善すべきかと真剣に悩み,私も他の若い人たちと同じように,改革・発展がすぐにもできると信じ,やるべきだという意欲にかられていた.なぜ,上層部の人たちは,思い切って着手しないのかと,いら立たしくさえ感じて過ごしたものである.

マイ・オピニオン

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 ‘看護休暇がほしい──医療や社会福祉が不備な現状では,長期の病気老人をかかえやむなく退職の婦人も……’(1976年11月19日付朝日新聞)の要求運動の記事を目にとめた時,一瞬読むことをためらった.とうとう来るものが来た.

 ‘はい,お薬です’〈ありがとう〉‘検温をお願いします,ここに置きます’‘お食事いかがですか’〈ありがとう,半分いただいたでしょうか〉これらのやりとりは直接患者に対してのものではなく,看護婦と付き添い者との元気な手や声や表情によるやりとりである.妻か娘ででもない限り,排泄の世話になることは遠慮と慣れない便器を使用することからすっきりとした排泄感がない.看護婦なら手際よく排尿介助をやってもらえ,気持ちもよくなるのではなかろうかと,心臓は動悸を打ち,冷や汗がじっとりとにじむ.我慢できるぎりぎりのところまで我慢し,忙しげな看護婦を勇気を出して呼んだその第一声が‘付き添いさんはどうしたの’であった.‘我慢していたのネ’でもなければ‘冷や汗をかいて……,早くおっしゃってくださいネ’でもなかった.いくら努責してももうダメだった.

ベッドサイドの看護

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はじめに

 近年透析療法は目覚ましい発達をとげ,小児透析においてもその恩恵に浴しているが,長期におよぶ場合,種々の問題があり,全く安全とは言い難い.

 小児透析患者の問題点の1つとして,精神衛生管理があげられるが,小児の場合,特に人格形成,精神発達の過程にあることから,治療そのものが精神的ストレスにならないような援助が必要であり,できれば日常生活のリズムの1つとして受容させることが長期透析の場合望ましいと考える.

学生の研究

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はじめに

 人間はこの世に生を受けたからには必ず死を迎える.老人においては,その避けられない事実が若者以上に目前に迫り,心理状態に,微妙に影響していると思われる.老人心理と回復意欲(闘病意欲)の関係は,身体的変化よりあきらめの気持ちが生じ,そのことがますます回復意欲を減退していくのではないかと感じる.

 私は過去3年間の実習で多くの患者を受け持ち,回復意欲のない老人へのアプローチの方法について,考えさせられる場面にたびたび遭遇した.その中で,種々の障害,疾患に悩みながらも,意欲をもち始め,徐々に明るさを増すようになった事例と,極度にがんこな性格であったためか,コミュニケーションがうまくもてず,ラポールに失敗した事例を通じ,患者へのアプローチのあり方について考えたので発表する.

死への看護・2

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患者と家族の必要

 ‘死への看護’において,患者と家族の必要を満たすことがその基本になると思います.死に至る病を持つ患者と家族は,実に多くの必要を持っています.その必要を正確に知り,それを満たすためには,看護側が強力なチームを組む必要があります.チームは患者と家族の真の必要は何かということに,いつも目を向けていなければなりません.1人の胃癌患者とその家族の必要に対してなされたことを通して,チームの働きを紹介します.

人間関係・12

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看護婦と医師

 敗戦日本がアメリカに占領されたおかげで,アメリカ的な考え方が,あらゆる面で流入した.現在の医療や看護の状況は,アメリカからのまことに多くのものを受けてでき上がってきたのである.とりわけ,戦前はまったく医師の下働きとして職業的独立性がほとんど認められていなかった看護が,専門家として独立するに至るこの30年の動きは,アメリカ看護界からのまことに強い影響のもとにあった.事実,アメリカからきた何人かの優れた指導者が,日本各地に滞在して,強力な指導力を発揮した例を聞くのである.

 そこで,アメリカ流のナーシングの概念が日本に持ちこまれた、持ちこまれたといっても,なかなか身には付かないし,その上,日本的医師集団の根強い反撃をかってきている.だから,なかなか根づかないのも当然といえるのである.

‘生’と‘死’の選択—欧米の動き・3

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1.ドラマチックな“カレンその後”

 カレン裁判を本誌が特集したのは,昨年の8月号であったが,その後も安楽死をめぐる重要な動きが,カリフォルニア州での自然死法成立などにみられる.カレン嬢のその後とともに,今回はこれに触れながら,問題の核心は何かを指摘したい.

 カレン嬢の運命をめぐる展開は,その後もドラマチックであった.最大の意外性は,レスピレーターから離されたあとも,ずっと生き続けたし,いまなお生き続けているはずということである.

ユニホーム

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清楚で機能的に

 機能的であることを考え 裾はあまり狭くせず歩く歩幅に合わせ自由に開閉するよう膝下両サイドに2本のダーツを入れ 歩行の便をはかりました.背の中心の内側に幅広いダーツをとり 上肢の上げ下げに際して袖付けの部分にひきつりが生じずに 袖付け部分のほころびを作らぬよう 特に仕立に注意を払いました.

 前面両サイドにあるポケットは大きめにし 看護業務の7つ道具といわれる品々を収納する袋式のものを作り ユニホームのポケット内に安全針で固定するようにしました.

アイディア

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 定型的乳房切断術後の補正装具は 前胸部の欠損が広範囲にわたり 患者の体型によってもその大きさが異なるために 1人1人に合わせて外観を美しく整えられることと 患部の皮膚の血行が悪くならず装具によってすれることがなく患部の保護ができるようなものが要求される.しかも 若脱が容易で簡単に作れ 洗たくに耐え 安価であることなど多くの条件が必要である.

 私たちはこれらの条件を満たすようなブラジャーを工夫し 以来退院指導に実際の作り方の指導を行っており 社会復帰への不安を少しは和らげられるものと喜ばれているので ここに紹介する.

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 日本赤十字社医療センター(足達さだ子看護部長)の前身の日本赤十字社中央病院が創設されたのは1886(明治19)年のこと.1922(大正11)年に創設された日本赤十字社産院と中央病院が1972年に合併して 全国赤十字病院の基幹病院として医療センターが発足してから満4年になる.合併と同時に 敷地の半分を売却し 約150億円かけて新病院の建設が進行していたが 昨年5月に落成式が行われて始動し 新年を迎えてようやくフル回転し始めた.

 寒風の吹き抜ける老朽化した病棟の廊下を 自転車に乗った白衣が駆ける‘日赤名物の’風景はもう見られない.しかし古い歴史と伝統の1ページとして そのイメージはいつまでも語り継がれていくに違いない.古き良き時代よ グッドバイである.

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明治43年勅令〈日本赤十字社ハ救護員ヲ養成シ救護材料ヲ準備シ陸海軍大臣ノ定ムルトコロニヨリ陸海軍ノ戦時衛生執務ヲ需助ス〉

 昭和16年の日赤の養成所を卒業するかしないかですぐ召集されてしまったんです.3年生が遠足に行って帰ってみると卒業ということでウムを言わせられませんでしたね.翌年3月が卒業予定なのに10月に強制卒業させられたので繰り上げ卒業ですね.そして1個班26名で日赤救護班埼玉県班が編成されて,すぐに病院船で要貝として広島に集結し軍属として処遇されたんです.

ホームヘルパー跳びある記・2

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 ヘルパーの派遣対象は,老人福祉法の条文に示されているように,老衰や心身の障害,傷病などにより,日常生活を営むのに支障があるもの,いわば自分で自分の始末ができない人々なのである。

 ケースの1つ1つは,社会的背景や個人の問題が集積していて,ヘルパー1人がいくら気負ったところで,丸抱えのめんどうをみることなど到底不可能だし,第一そんな気負い過ぎは不遜(そん)であると思う.ヘルパーの仕事は,地域社会の中でケアし,医療や福祉機関のスタッフとの連携プレーの中で,ひとつの役割を分担しているにすぎない.しかし最も身近に,しかも数多くケースと接触していることから,実際的な身の回りの世話をするとともに情報を収集し,他機関へ伝達できる点で,病院における看護の観察と似た性格を持っていると思う.

内視鏡検査と介助の実際・2

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 内視鏡検査の予約と,患者に対する検査のオリエンテーション,すなわち全般的注意,指導や理解などの説明は,内視鏡業務のうちでも大切な仕事である.これらは事務的要素が大きいため,よく訓練された事務員でも可能ではあるが,しばしば内視鏡や医学全体にわたる理解と知識が要求されるので,医学教育を受けた看護婦,それも内視鏡専任看護婦によることが最も望ましい.

ICU看護の実際—北里大学病院の場合・2

ICUの看護管理 伊藤 敦子
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1)ICUにおける看護の特徴

 ICUの看護業務は常に不定です.患者は全科にわたり,新生児から老人までを対象とします.入退室も処置・検査も24時間中あり,いつ緊急事態が発生するかもしれない,計画の立てにくい部所といえます.しかし,それゆえにいっそう計画的に業務をすすめる必要があります.

 本院では,表に示したように,胸部外科,脳外科の手術直後の入室が比較的多いため,その手術日に当たる月・火・木曜日の入室患者は多くなります.しかし,それだけで入室患者数や在室患者数を曜日別に傾向づけることはできません。過去5年間の月間入室者数をみてみると,総入室者数の多い月は平均在室日数が短くなり,常に緊急度の高い患者が頻繁に入退室することを示しています.なおその変化には,ICU入室対象疾患が発生しやすいと言われる季節や,手術件数による差はほとんどないと言えます.

‘私’と‘あなた’の対話・11

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自分が自分でどうしようもないやっかいさを担う私たち

 私たちは自分のうちに,自分のことなのだが,どうしても自分のことと認めたくない部分をもっている.‘私がもっとスマートだったなら’‘私が結婚していたなら’‘私にもっと能力があったなら’あるいは‘私があんな失敗さえしなかったなら’等々.

 そしてこうした部分は,からだに侵入する病原菌が炎症に伴う痛みや苦痛を起こすように,‘私’という世界になじめない異物となって,私たちを苦しめる.

目で見る移動・介助の実技・12

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ベッドから車椅子への移動・介助

人的介助による場合

 ①第4回‘急性期過ぎて脊柱の安定性が認め られた場合のベッド上での移動・介助’の(1),3の説明に同じ.患者を側臥位にする.

切り取りカード 看護ミニ事典

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 化学組成 Poly-Chlorinated-Biphenylの略称で,ベンゼンを加熱して生ずるビフェニールに,鉄を触媒として塩素ガスによって塩素化した合成化合物で,天然には存在しない.

 工業製品は単一化合物でなく数種のPCBが混在している.結合する塩素数により物理化学的性状か多少異なり,油状,白色結晶,透明樹脂状を呈する.

切り取りカード 新しい薬の知識

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〔商品名〕エスキノン Esquinon(三共)

〔薬効〕抗悪牲腫瘍剤

基本情報

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看護学雑誌
41巻2号 (1977年2月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

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