看護学雑誌 37巻2号 (1973年2月)

マイ・オピニオン

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 新しい看護理論の展開,仮説検証的看護研究の必要性……

 ‘看護は実践することによってその価値を評価することができる学問である’というコトバを毎日くり返しながらも,ともすると臨床看護という‘動’の川の流れに洗われ,すり減ってゆく小石になりそうな不安を覚える昨今である.‘量よりも質,精鋭化されたナースの援助は患者の満足度を充足させる’ある教授が述べられたひと言であるが,臨床で量にあえいでいる中間管理者としては,のどの渇きを覚えるコトバであり,自然の治癒力が患者に働きかけるように最良の状態をととのえ保つためには,多くのケア,積み重ねられるケアが絶対に必要であり,そのことは量の充足とは切り離すことのできない問題と考えられるが……

 意欲を持ち続けながらも,卒後教育の体系の不備,指導者の研究的姿勢の少なさに方向も方法もつかめないままに暗中模索の自己研修に悩む臨床看護婦像は,わが国における看護教育界と臨床看護とのひずみの表出であり,当然関連される卒後教育の不備を如実に物語っている姿であると思う.

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はじめに

 ちょうど10年ぐらい前に,チームナーシングという形の看護におけるチームワーク論が導入された,その後,実際の臨床の場で,その理論が組織化・実用化され,活用されている.一方では,いわゆるチームナーシングの体制は形どっていないが‘看護をすること’は,病院という組織に組み込まれる時点で,必然的にチームワークの原則に立脚したものである,という理解がきわめて一般的になっている.

 この‘看護をする’ときの基本的な形のチームワーク論をここで再考し,看護婦がそのチームワークのなかで果たすべき役割を全うすることによって,より専門職業的な側面を加えてゆくことができるようにとの趣旨をもって,この一文をまとめてみた,つまりどのような‘看護のしかた’をしている現場でも(チームナーシングをしていようといなかろうと),看護者が複数になった時点で,ただちに基本的に考えられるべきチーム理論の概略であり,リーダーシップをとる看護婦のあり方である.

ベッドサイドの看護

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 近年,平均寿命が延び,人口の老齢化が進むにつれ,成人内科における老人患者の比率は,今後増加の一途をたどることが予想される.したがって,私たち看護にたずさわる者が,長年社会に貢献し豊富な人生経験をもつ老人の‘老いて病む’苦しみを理解し,療養生活を援助することは,一層重要になっていくと考えられる.

 ここに着眼し,老人に対する心理の理解と看護の実際を具体的な展開に添ってまとめた.なお,事例については,老人のもつ多面的特性の理解という点で2例を取り上げてみた.

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 医学の進歩に伴って平均寿命が著しく延びており,老人の数も増し,身体の障害者もふえてきている.特に岩手県では,脳神経疾患が第1位を占めており,全国的にも上位を占めている.‘アタッタラ人生終ワリダ’などといわれているように,長期療養を必要とすることから,経済的,身体的理由で家族から見放される場合が往々にしてある.

 脳神経疾患患者でも意識不明の患者からリハビリを行なっている患者までさまざまであるが,なかでも意識障害患者の看護にあたり,複雑な病態生理を理解するとともに,高度な看護が要求され,刻々と変化していく病状の観察および看護計画の必要性を痛感し,ここにその1例をあげて皆様のご批判を仰ぎたいと思う.

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 近年,医学の急速な進歩に伴って,わが国でも平均寿命は著しく延びてきた.日本人の平均寿命は,男女ともに70歳を越え,世界で3本の指にはいる長寿国になったといわれている.

 ここ15年間の寿命の延びは著しく,したがって年齢別構成も以前とはかなり変動し,いわゆる老年者が増加している.

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当病院が重症心身障害児(者)を収容して,現在まで2年6か月になり,常時64名の看護にあたっている.看護するにあたって,今まで経験しなかった種々の難問題に直面しており,そのなかの1つが拒食である.当病棟においては,拒食する子供は約30%で,そのなかで特に激しい拒食を長期間続けている14歳の少女を例に,多角的に環境,嗜好,看護の面などより原因をつきとめ,快く食事をさせることを目標に,考察・研究を行なったので報告する.

カンファレンス・2 淀川キリスト教病院

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 全人的医療というコトバがいわれ始めて久しくなります.その目的にかなうためには,従来の医師・看護婦らのほかに,医療社会事業的な面からの働きかけが重要となってきます.当病院では,病院開設時より医療社会事業部が設置されており,現在4名のケースワーカーが働いていて,医師・看護婦・事務職員から委託された精神的問題をはじめ,社会的,経済的問題のある患者に対し援助にあたっています.その際,ケースワーカーと看護婦の役割と範囲については,明確な境界線をひくことができず,ケース・バイ・ケースの微妙な関係となってくるので,チームのカンファレンスをもつことが必要となってきます.

 次に紹介するカンファレンスは,ネオググソフトという睡眠薬による自殺を3回試みたが失敗し,その結果,中毒性肝炎を起こした23歳の女性患者について,その患者の退院後,ケースワーカー・看護婦チームの反省としてもたれたものです.

文献の紹介と考察・2

臨床看護へのアプローチ 木原 陽子
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 わたくしが精神病理学・医学・経済学のごとき,それらに依拠するのは,いかなる統一体をそれらが編制(フォルメー)するかと自問する時だけであろう.また,いかなる権利によって,空間中に自己の特殊性を規定する分野,時間中に自己を個別化する連続性を要求することができるか? いかなる法則によってそれらは自己を編制するか? いかなる言説的出来事の基礎のうえに,それらは明確な輪郭を示すか? そして,最後に,それが,一般に認容された,ほとんど制度的な個別性において,いっそう堅固な統一体の表面効果でないかどうか,と自問するときだけである──ミシェル・フーコー1)

学生の研究

小児と死 竹内 和子
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はじめに

 ‘看護婦が話しかけても全然しゃべってくれない児’というふうにシンちゃんを紹介され,とまどいと不安でいっぱいになりながら,シンちゃんの凧が1つ飾ってあるだけの暗く,色彩に乏しい病室にはいって行きました.憔悴の色がかすかにうかがえる,ことば少なく,おとなしそうな母親,そして感情のない目で私を瞥見したまま全く無関心そのもののシンちゃんにはじめて会いました.

 神経芽細胞腫の疑いで,確定診断名のないまま,予後不良で長くはないだろうと言われた患児を受け持ち,9歳の患児がどのように‘死’を迎えていったか,それを看護者はどのように援助していったかをここに1症例研究として皆さまにご報告するとともに“小児と死”について看護者の立場をふまえ,人間としてどのように関与しうるか,未熟ながら研究をすすめていくうえで悩み考えたことなどを発表してみたいと思います.皆さまのご意見ご指導などいただけましたら幸いと存じます.

カラーグラフ 職場のユニホーム・6

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えりはスタンドカラーにし ウエストには同じ太さのベルトを縫いつけ 全体にきっちりとした感じにまとめました.

腕の上げ下ろしに無理がいかないように そでは少し太めに そで山には2箇所にダーツを入れました.胸と背中は 共布の裏当てでしっかりとさせ 前の打ち合わせを少し深くとり 約0.5cm幅でミシンステッチを入れています.前には 長いファスナーを使用して着やすくしました.カラーとウエストの部分は 真白の小さなボタンにループをかけ はりつけポケットはやや大きめです.

カラーグラフ アイディア

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看護者にとって 動線を短くすること ムダな労力を省くこと 能率をあげることは必要不可欠なことである.

だれでも“待たされる”ことはいらだつもので 特に病人にとっては耐えがたい苦痛となるものだが 弱者の立場にある患者は いらだたしい苦痛を すぐ医者や看護婦にぶっつける訳にはいかない.

カラーグラフ 人体臓器の正常と異常・11

呼吸器系(3) 金子 仁
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肺癌 最近クローズアップされてきた癌である.肺内の気管支粘膜細胞が癌化する.組織学的に扁平上皮癌・腺癌・未分化癌に分ける.時にはこれらが1つの癌組織に混在することもある.肺癌はせき・血痰が主症状でエックス線 喀痰細胞診などで決定する.ことに細胞診は決定診断である.

グラフ 看護界ニュース

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 日本看護協会(会長 小林冨美栄)が主催する‘第4回国民の健康を守る看護大会’は昨年12月12日 日本看護協会看護研修センター講堂に会員約220名と24名の市民が参加して開催された.

 ことしは 昨年の街頭デモのようなはなやかなアッピールは行なわれなかったが 討論会“国民の健康と看護”(司会 井上澄恵・木下安子)がもたれたほか 討論会と併行して保健婦・助産婦・看護婦が専門家の立場から 市民の‘健康相談’に応じるコーナーと 家庭でできる介助を実際に行ない そのポイントを指導する‘家庭看護講習会’が企画されて話題をよんだ.

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 今や自動車製造で名高い東洋工業株式会社 その本社工場に隣接して7階建ての付属病院がある.昭和13年に医務室が開設され 昭和25年に付属病院がその後昭和36年に 近代的設備を整えた現在の総合病院が誕生した.

 企業体病院と言えば従業員の健康管理が合い言葉である.ところが東洋工業病院においては 幅広い意味での健康生活への貢献が病院のポリシーとなっている.つまり従業員は就労中といえども自由に診療を受けることができ疾病の早期発見・治療が励行されている.また 入院生活の快適さの因子となる環境の整備についても 騒音 照明 冷暖房 換気などについて 昭和36年の設立当初から完備されている.さらに病院利用者も約3万3000の従業員ばかりでなく その家族 関連会社 地域住民へと大きく門戸が開放され 利用者は年々増加しつつある.

連載 看護の原点“助力論”・2

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夏のある日の電話

 46年の夏のことです.忘れもしません.5月9日に発病したのです.ちょうどその日は,兵庫県立厚生専門学院の保健学科に集中講義に行っていました.

 ‘どうもからだの調子がおかしいな’と感じながら,朝10時から夕方5時までの学習を済ませて帰りました.

連載 看護関係の心理・2

患者にどう接するか 小此木 啓吾
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きちょうめんな指示を出すドクター・A

 ある病棟ミーティングで,2人の精神科医の意見が対立したが,これがきっかけで,看護婦さんたちの間にも論争が起こった.

 自分が精神療法をしている患者さんについて,その病棟の看護婦さんには,詳しい報告と説明をし‘今は不安が強いから,やさしくいたわり,気持ちが静まるように支持(サポート)してください’とか‘彼女は回りの人々を挑発して,カッカさせゴタゴタする傾向が強いから,いちいちそのさそいに乗らないように注意してください’とか‘彼は,甘えるのがじょうずで,甘えながら自分の言い分を通すたちだから,もうちょっと厳しく,きっぱり要求は拒否してください’などと,看護上の処方箋を出すのを常としているのがドクター・Aである.そしてドクター・Aは,看護婦たちに対して,このような連絡をきちょうめんに,しかもこんせつにする点で,看護婦さんたちにも信頼され,評判もよかった.

連載 死と看護・2

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死の定義

 死を直前にした患者には,死の定義の無意味なことはいうまでもない.彼らが求めているものは‘死とは何か’という医学的(生理学的)な定義ではなくて‘どうして私は死ななければならないのか’また‘私はまだしなければならない多くの問題が残っているのに,なぜこんなにも早く死ななければならないのか’という問いである.

 しかし,多くの死に至る病いの床に横たわっている患者は,このように確かな疑問をもつとはかぎらない.‘私はなぜ病気で寝ていなくてはならないのか’に始まるといってよい.そして‘早くこの病気の痛みから開放してほしい’という現実的な問いに願望が終始するだろう.

連載 看護のための集団力学入門・11

集団発達の諸段階 岡堂 哲雄
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安定と変容の対立

 人間は生涯,休みなく変化していく.不安定のときには常に安定を求めるし,安定しすぎていると思われるときには必ずそれを突き崩そうとして緊張する.そこでふたたび,安定を求めて行動する.個人の精神生活における安定願望と変容願望の対立と同様な現象が,集団のなかにも観察される.本章では,どのような集団が変化しやすいのか,集団を変容させる条件は何か,もし変化するとしたらどのような方向を示すのだろうか,さらに,集団の発達過程はどのように理解できるか,といった問題を取り上げて考えることにしよう.

 集団には,かなり長期間変化しないで続く,安定した構造をもつもの(安定集団),および一時的あるいは持続的に変化し続ける集団(不安定集団)とがある.また,どんな集団でも,その形成初期には不安定であるのが当然だし,また集団を取り巻く外部状況の変化の余波を受けて集団を改造しなければならないときにも,不安定となる.

連載 医学と文明・2

ガンの水平思考 水野 肇
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ガンと自然治ゆ

少し唐突な感じを与えるかもしれないが,まず‘ガンが自然に治った’という話から始めよう.

 今から20年も前のことだが,北海道から当時28歳の男が東北大学内科の黒川利雄教授(現・ガン研究会病院長)の所にやって来た.診察すると,外から触れるぐらいの鶏卵大の胃ガンがあって,歴然とした手おくれだった.患者の母親のたっての希望で,武藤東北大教授が手術したところ,リンパ腺転移もひどく,十分にガン細胞がとれずに,残したまま閉じた.まず,半年の寿命とみられたが,8年間も元気に生存,結局,脊椎カリエスで死んだ.

2色ページ 統計

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 図は横軸に看護婦数,縦軸に補助者数をとり両者の対応値を1956年から1970年まで結び.1970年に矢印をつける.

 看護婦数そのものは1970年一般病院にもっとも多く,ついで一般診療所の有床,無床と精神病院とが,ほぼ同数でつづく.補助者数は有床診療所にもっとも多く,ついで一般病院,無床診療所,精神病院,結核療養所につづく.

2色ページ 老年病学・2

老年病の特徴とは何か 亀山 正邦
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老年者の死因

 厚生省の死亡統計によれば,わが国の死因の第1位は脳卒中であり,全死亡の24.7%を占めている.第2位は癌(15.2%)第3位は心臓の疾患10.8%,第4位は老衰7.0%,第5位は不慮の事故で5.7%である.これを年齢別にみると,60歳から79歳までは,第1位脳卒中,第2位,第3位は,心臓の疾患または癌が分け合っている.80歳以上になると,死因の第1位は老衰である(1965年).

 表1は,浴風会病院における60歳以上の老年者剖検例の死因調査である.表中,単一死因例とは,単一疾病が主要死因と考えられた例であり,複合死因例とは,2種以上の疾病が同時に直接死因と考えられた例である.単一死因例は男64%,女80%にみられている.直接死因としてもっとも多いのは肺炎を主とする呼吸器疾患で,全体の41%を占めている.神経および感覚器系疾患とは,脳血管障害例を主とするもので,全体の20.2%を占めている.循環器系疾患は19.7%である.伝染病および寄生虫病として19.1%があげられているが,その大部分は,感染病であり,なかでも褥創感染が多い.消化器系疾患は14.6%,新生物は7.6%,性および泌尿器系疾患は2.8%である.しかし,これらの直接死因の多くは,いわゆる末期疾患(terminal illness)ともいわれるべきもので,多くは,その誘因疾患をもっている.

2色ページ 臨床薬理学・14

妊婦と薬剤 保刈 成男
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 女性への薬剤の使用は,性周期・妊娠・分娩・産褥・授乳などの関係で男性の場合より微妙な点がある.とくに妊娠時には,妊娠に伴う違和や併発する各種疾病に対して,医師の指示に従い,あるいは妊婦自ら薬剤を購入して使用することがあるが,常に妊婦自身に対する作用のみでなく,児に対する影響をも考慮にいれておく必要がある.

 10年程前のサリドマイド禍以来,妊婦の服薬はかなり減ってきたように思われるが,山田の大阪での調査(昭46)では,産科外来で妊娠管理中に投薬されたものは84%にも達し,そのうち10%以上が更に自身で保健薬を購入して用いていたという.妊婦への薬剤使用の理由と使用薬剤の種類については表1に示した.

2色ページ ナースと臨床検査・7

血液検査(1) 寺田 秀夫
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はじめに

 血液検査は臨床検査のなかでも,日常の診療にあたって,必ず1度は行なわれるもので,血液病の診断・治療さらに予後の判定に重要であるばかりでなく,すべての疾患と関連を有するたいせつな検査である.

 若い未婚の女性で頭痛・息切れを訴え,顔色が貧血性である場合は,本態性萎黄貧血が考えられ,この病気は銀行・デパート・会社などのindoor workerには非常に多く,また貧血全体からみても,最も頻度の高い疾患である.また急激に始まってきた貧血と出血性素因ならびに発熱を有する患者をみた場合,まっ先に疑うべきは急性白血病である.

2色ページ ライフサイエンス入門・2

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ライフサイエンスの内容と周辺

 分子生物学 ライフサイエンスといえば,分子生物学が1つの重要なトリガー(引き金)としての役目をはたしたという意義はきわめて大きい.とくに分子レベルから生命の最小ユニットを検討し,人工生命の合成や遺伝情報の解明に肉迫している実績はやはりライフサイエンスの主流として認めてよいであろう.分子生物学と同義語として近いものに生物物理学があり,これには,分子以上のマイクロなレベルでのアプローチの方法が含まれる.

 生化学,生体高分子学 いわゆる化学的なアプローチとしては生化学があり,発生や生殖の生化学,生体エネルギー代謝,酵素などのエネルギー変換あるいはホルモンによる生体の制御,最近では,脳における記憶物質などは生命現象の解明に役立っている.

資料

全国進学コース看護学院一覧

基本情報

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看護学雑誌
37巻2号 (1973年2月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

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