看護学雑誌 37巻1号 (1973年1月)

マイ・オピニオン

看護を演技する 斉藤 みつえ
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 看護の専門化がきわめてむずかしいといわれる要素のなかで,この業務の性格,すなわち日常的ともいえる平易性ということが非常に大きな問題となっているように思われます.

 いうまでもなく,看護の本質は心身を包括した生活の援助であります.

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‘きかい’とは何か

 私はかつて“看護で扱う医療器械—その原理と操作手順”(医学書院)の執筆を担当した.その書は1968年に書き始め,1969年の春に脱稿したものであるが,その冒頭の‘はじめに’の中で,私は次のようなことを記している.

 医療業務にたずさわる私たち看護婦は,毎日の業務のなかで好むと好まざるとにかかわらず,非常に数多くの器械・器具を扱うのでありますが,現実には看護婦がそれらの器械・器具について,正しく,科学的な裏づけを基に,理解するための参考文献はほとんどなく,医師によって書かれたもの,あるいは製作者のカタログなどに頼るほかない実状であることを知るにつけ……

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不安へのアプローチ

 病人は,すべて治癒するとは限らない.いかに医学の進歩した現代においても,不幸の転帰をとる人はまだあとをたたない.肝硬変症は,肝疾患の中核であり,種々の肝障害の終末像であるといわれている.それだけに,けっして予後のよい疾患ではない.常に死を考えずにはいられない長い闘病生活,小康状態を保つことはあっても,けっして治癒という陽光にはめぐり会うことのできない患者にとって,精神的不安は多大である.

 患者の家族と私たち医療チームの努力にもかかわらず,悪化の一途をたどった肝硬変症患者の心理の推移を紹介し,未熟な私のとった言動をふり返るとともに,もう一度予後不良患者に接すべき私たちの態度を考えてみたいと思う.

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 術後の合併症の予防,患者の苦痛の緩和,回復への助長などを目的として体位変換,早期離床が強調されている.これらの分野における術後管理は,私たち看護婦に委ねられており,適切な看護ケアは患者の回復への援助として大きな役割を果たしているといえよう.

 しかしながら,体位変換,早期離床に対する明確な看護基準を定めることは,疾患の種類,術後の患者の状態を考慮しながら行なわなければならず,また多忙な外科病棟では術後処理に追われ患者のケアに費す時間が少ない現状である,などのことから多くの問題が残されている.

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 四肢の一部を失うということは,身体的には,これまでなじんできた社会適応のしかたを変えさせるのみならず,心理的には,患者自身の身体に対するイメージを,ひいては四肢の部分欠損による社会的劣等感で,自分自身の人生観を変化させる結果を招くことになるので,大きな不安を投げかける.患者にそれ以外の特異な心理的不安があるときには,なおさらのことである.

 ここに紹介するのは,右足骨肉腫で下腿切断を余儀なくされた患者が術前・術後にかけて不安を訴え続けていたが,あるきっかけから,自分の最大の心理的不安を軽減させたことによって,その他の不安も減少し,治療にも訓練にも積極的に参加するようになった結果,無事退院した例である.

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5分間放送の試み

 最近は第1子出産の平均年齢が若くなり,外表の成長に比べ精神的な発育が未熟のまま母親となり,そのうえ核家族のため児の養育に不十分な点があるのではないかとの見解により,当院産科病棟では入院中の母親に保健指導として,退院・沐浴・調乳指導を行なっておりますが,これに加えて5分間放送を昭和46年8月より実施しております.

 右の図をフロアに提示して,褥婦に内容を紹介しております.これは産科スタッフ一同で資料を集め,原稿を作成し,そしてテープの吹き込みなどそれぞれグループに分かれて行ないました.正常分娩ですと,分娩後1週間で退院しますので,1コースが週間になっております.

カンファレンス・1 日本赤十字社医療センター内科病棟

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私たちの病棟では,毎朝引き継ぎの終わったあと10-15分,個々の患者についてカンファレンスをもち,取り上げられた情報・問題点を具体策とともにカーディックスに記入し,看護チーム全員が,同じ目的をもって看護にあたるよう努力しています.

文献の紹介と考察・1

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これは私たちの日常使われている看護記録を,もう一度新たに看護の立場で考え直し反省するのによい資料となると思います.

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1.はじめに

 整形外科病棟においては,下肢の骨折や脊椎疾患などをもつ患者に対して,各種の牽引療法やギプス固定などが行なわれる.この際,離被架を使用することが非常に多いが,季節によっては,多くの患者が足の冷感や下肢の寒さを訴えることがしばしばある.

 寝具や衣類などで保温につとめたばあい,牽引が妨げられたり,寝具の重みで患部の疼痛が増強したり,また看護のための観察や処置が容易に行なえなかったりすることがある.そこで保温の効果をあげながら,このような問題点を解決する離被架カバーを考案したので報告する.

学会印象記 第21回看護研究学会成人外科分科会に参加して

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秋も深まりゆく肌寒い11月8,9日の両日,往年の繁栄がしのばれる駿府城跡の駿府会館で,第21回成人外科分科会が全国からの参加者4000余名の集まる中で,郷土色豊かなバックミュージックと協会歌の合唱とともに幕が開かれた.

カラーグラフ 職場のユニホーム・5

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最近ではユニホームの選択は個人の自由にできる所が多くなりました.京都の日本バプテスト病院は病院で指定されたユニホームのほかに自分の好みのデザイン・色・素材のユニホームを着用しています.その2,3例を紹介します.

カラーグラフ アイディア

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牽引療法における離被架の使用に際し とくに下肢の寒さを訴える患者が多いため 毛布やふとんを用い保温につとめるが 毛布やふとんの重みで牽引が妨げられたり 患部の疼痛が増したり また局所の観察や処置に不便をきたします.このような障害を取り除き保温できる離被架カバーをくふうしましたのでご紹介いたします.(本誌“研究と報告”の欄をご参照ください)

カラーグラフ 人体臓器の正常と異常・10

呼吸器系(2) 金子 仁
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肺炎 現在でも決して少なくない.しかし このスライドに見られるような大葉性肺炎はまれである.老人や小児に見られる小葉性肺炎が多い.大葉性肺炎は上葉とか下葉とかの大葉全部が侵され 小葉性肺炎はポツポツと小葉単位に病変がある.前者をクループ性肺炎 後者を気管支肺炎とも呼ぶ.

グラフ 看護界ニュース

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 日本看護協会看護婦部会(部会長大森文子)の主催する第21回全国看護研究学会成人外科分科会(学会長江川かよ)は 静岡県支部の担当で11月8日 9日の2日間 静岡市・駿府会館で約4000人が参加し開催された.

 こんどの学会は“患者の苦痛”を学会テーマに シンポジウム“外科領域における患者の苦痛を考える—術後のいたみを中心とし—”(司会 長嶋芳子 静岡赤十字病院)と特別講演“いたみ生理”(市岡正道 東医歯大教授)が行なわれたほか 関連展示としてパネル“痛みのある患者への援助”“救急の実際”やテレビ・映画の上映が催され また“いたみに関する文献集録”が編集・配布されるなど 多彩な企画が盛られ 会員の関心を集めた.

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日本バプテスト病院(院長 榊田博)は 京都・北白川の山の中腹に建っている.一見 別荘を思わせるようなスマートな白亜の建て物である.医療王国の京都市にあっては けっして目だった存在ではないが 京都市民ばかりでなく 近県の人々からも‘北白川のバプテスト’と親しまれ 高く評価されている.また 外国人患者の多いことも特色になっている.

1955年に日本バプテスト医療団が医療と看護を通じて社会に仕えようという主旨で設立したこの病院は 従業員と患者が朝礼拝をともにしたり 牧師が病室訪問をしたりエキゾチックな習慣もみられる.しかし 実は榊田院長以下の熱心な病院管理の実践に負うところが大きいことは案外知られていない.80種以上の職種にささえられているといわれる現代の病院のホスピタリティーをささえるために冷静な経営・管理手腕の必要性を忘れてはならない.

連載 看護の原点“助力論”・1【新連載】

“助力論”の問い 大段 智亮
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まえがき

 47年の夏,わたしの“看護のなかの人間”(川島書店)という書物が出ました.予想以上にたくさんの人たちが読んでくれて,うれしく思いました.そのうえ,朝日新聞の新刊紹介のページに取り上げられたために,あらためて読んでみる気持ちの起こったかたも多かったようです.

 そうした多くの反響のなかに,乾成夫さんという人からの手紙がありました.

連載 看護関係の心理・1【新連載】

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退院後の個人的人間関係は?

 ある精神科病院の看護スーパービジョン(Supervision)**で,こういう相談を受け.その病院を退院した分裂病の患者H嬢が,退院後,看護婦のAさん宅に,しきりに手紙をくれるのだという.そして,Aさんは‘どう対処したらよいか迷っているのですが,と当惑顔である.

 そこで,みんなでこのことをめぐって論議したわけであるが,その過程を整理してみると,次のようである.

連載 死と看護・1【新連載】

死の背景 河野 博臣
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問われる生と死の概念

 ルネ,デカルトに始まる近代文明の思想のなかで,進歩という名のもとに人間社会は大きく変化しています.進歩の思想は,人間(自我)中心のなかから出発し,人間および人間と関係のある物質以外は生存の権利はないという思想に貫かれています.この思想は過去より現在,現在より未来へと速度を速めています.そして社会は変化してきました.そのなかで,人間存在の理念も必然的に変化してきたのであります.

 科学文明は,とどまることのない直線的な思想のもとに進んでいます.歩くことより自転車に乗って行くことのほうがより進歩であり,さらに自転車よりも自動車のほうが科学的であるというように,その願望はジェット機へととどまるところを知らない状態であります.

連載 看護のための集団力学入門・10

社会的態度の形成と変容 岡堂 哲雄
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母性の願望と行動化

 ‘1年の計は元旦にあり’といわれる.新しい年を迎えるにあたり,人びとは秘かに,あるいは家族や友人たちの前で,ことしこそはしかるべきコトを達成したいと誓う.しかし,早ければ数日後に,多くは数週間後に,その誓いが守られていないことに気づく.かかる人びとを見ると,ほとんどの人が自分と同じらしいと思い込むことで,慣習的な社会生活を続ける人もあるだろう.

 また,自分の怠け癖や意志の弱さを嘆き,自分のあり方に絶望し,社会関係から後退する人もある.この自閉化傾向とは反対に,自分の誓いを維持できないのは,自分に問題があるからではなく,世間が悪いからだ,と合理化の機制にすがって,いっそう傲慢に生きる人も少なくない.

連載 医学と文明・1【新連載】

メディケア・アセスメント 水野 肇
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医学の進歩と国民の不安

 第1期1975年まで 四肢や臓器移植の範囲拡大

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 一般病院は病院の大部分を占める.規模によって比に差があるか,しらべる.規模を49床以下,50-99床,100-199床,200床以上の4種類とする.これは資料:医療施設にしたがう.また年次は1958年から1968年までにかぎられる.

 看護婦数も准看護婦数も規模の大きい病院ほど多い.しかし比は規模の小さいものほど多く49床以下病院では1968年は2,50-99床病院では1.8,100-199床病院では1.5,200床以上病院では1弱である.1958年には比は100床病院以下小規模病院ではいずれも同一の0.7,200床以上病院は0.4であった,年次の進むにつれ比が増加してきたが,また規模による格差が明らかになってきた.

2色ページ 老年病学・1

老化とはなにか 村地 悌二
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老化とはなにか

 人にかぎらず,多くの高等動物の身体構造や機能のうえには,時の経過とともに避けることができない一定の変化が起こってくる.これが一般に老化現象と呼ばれている.

 しかし,あらためて‘老化’とはなにかと聞かれると,これに答えるのは決して容易ではない.まず当面する困難は,‘老化’というコトバの定義そのものが,研究する人の立場により,また対象となる生物の種類によって必ずしも一致していない事実である.人のからだの中でも,赤血球や精子などの個々の独立した細胞について研究する場合,あるいは下等動物について研究している学者などは,‘老化とは,その発生から死滅までの時の流れ’と解釈している.

2色ページ 臨床薬理学・13

腎臓と薬剤 保刈 成男
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生体にとって薬剤異物で,絶対安全といえるものはなく,本質的には毒物ともいえる.このような薬剤が医療に供されているのは,その毒性が発現せず,しかも生体に好都合に働くような用量を経験的に上手にえらんで使用しているからである.この用量を一般に薬用量あるいは常用量とよんでいるが,これはあくまでも経験的,平均的なものであって,投薬に際しての各種の条件,たとえば年齢・性・体重・個人差,疾患の種類・程度,併用薬剤の有無などによって著しく左右される(本誌昭47,1〜2月号参照).

 したがって薬剤使用にあたっては,これらの条件を考慮にいれた上で,使用方法および用量が検討されなければならない.またその薬剤の分解および排出経路を知ることも大切である.肝臓がその分解経路の,また腎臓が排出経路の主役をなしていることは説明の要もないが,これらの臓器の機能障害のある場合,あるいは投与薬剤によって障害されたような場合には当然その障害の程度によって使用方法・用量を加減しなければならない.本稿では以上のことから薬剤と腎臓との関係について‘薬剤による腎障害’と‘腎障害時の薬剤使用’について述べることにする.

2色ページ ナースと臨床検査・6

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十二指腸液検査

 いわゆる十二指腸液には胆汁だけでなく,膵液および十二指腸自体から分泌される固有の十二指腸液も含まれ,臨床的に重要なものは胆汁および膵液である.したがって十二指腸液検査は肝臓,胆嚢,胆道および膵疾患の診断に有用であり,また胆汁を排泄させることにより,胆嚢炎や胆石の治療にも用いられる.

2色ページ ライフサイエンス入門・1

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ライフサイエンスの定義

 ‘ライフサイエンス(life science)とはなにか’という定義を行なう前にまず,ライフ(life)とサイエンス(science)の意義を明確にしなければならない.ライフには,生命という意味と生活という意味があるが,ここでは前者をさすと考えてよいであろう.しからば,サイエンスとはなにかとなると,厳密に規定すると難しいことになるが,ここでは‘客観化あるいは定量化(計量化)してとらえる学問’と考えてよい.次に問題になることは,生命のどの部分を研究するサイエンスかということである.

 生命の発生を研究するのか,生命の現象を解明するのか,あるいは生命のサポート(維持)のためのサイエンスなのか.生命に関係する現象あるいは実体をすべて研究するサイエンスとなると,あまりに広範囲になりすぎるようにも思える.しかし,従来のように,生命現象の分子生物学的な解明というように,狭い範囲に限定してしまうのは,かえって生命の実体からはなれてしまう危険性がある。なぜならば,分子生物学的な方法が生命現象を解明する唯一の手段であるという証明がなされていないからである.

基本情報

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看護学雑誌
37巻1号 (1973年1月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

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