看護学雑誌 28巻9号 (1964年9月)

特集 看護制度その問題点と動き

医療制度のなかの看護 北 錬平
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 看護婦という職業は婦人労働のさまざまな職種のうちで非常に特殊な性格をもっている。しかし看護婦業務の中にあらわれている諸矛盾は今日の日本における婦人労働がおかれている地位の一般的な反映であることにまちがいはない。日本の婦人労働の地位が高まれば,それに応じて看護婦の地位も高まるにちがいない。

 しかし,この問題は,ここで私が述べるまでもなく,たとえば田中寿美子氏の「現代の合理化と婦人労働」(看護学雑誌本年5月号)を読まれれば十分であろう。

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はじめに

 看護婦不足を契機として看護制度そのものの問題点が浮きぼりにされ,強く改善を要望する声が高まってきている。しかしながら現段階では事態を推し進めていけるだけの具体性をもった対策が立てられているとはいえない。いろいろなグループの討議や発表された考察などからその原因を考えると,第1に最も具体的に改善策を打ち出すことを迫られている立場にある医師や看護婦が,日々人員不足からくる多くの危険性と直面していながら,両者とも各自の立場を守ろうとする姿勢から一歩もでていないことがあげられる。社会のニードに対応した専門職としてのあり方という積極的なとり組み方に欠けているのである。

 第2に多くの意見は,科学的論拠という点で人々を納得させるだけのデータを持っていないことがあげられる。そこで現在および将来の看護制度のあり方や需給問題を考えるに当り,何を判断の根拠にすればよいのかに焦点をあわせて日頃思うことをまとめてみたいと考える。

看護制度の変遷と問題点 永野 貞
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はじめに

 現行看護制度の検討は看護関係団体をはじめ看護に関連をもつ他の方面においてもなされ,改正に関する多くの要望書も提出されている。現行法運営の当面の責任を持つ厚生省医務局看護課でも同法改正に関して慎重に検討を重ねている。

 このたび看護学雑誌編集部の企画に応じて保健婦助産婦看護婦法発足以来,今日に至るまでの制度上の変遷と今日の問題点を述べてみたい。

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 今回の厚生省への,日本看護協会の要望書について,その内容が形式上たいへん簡潔になっているところから,読みとりにくい問題とされるところなど,石本看護婦会長にキタンのない質問を提出し,そのポイントと背景をお話しいただいた。

保助看法改正に思う 菊地 真一郎
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 去る4月25目両国で日本看護協会の総会があり,席上小林厚相は「看護婦の待遇改善を計るために,次の国会に必らず法律改正案を提出する云々」と言明して会員諸姉の大拍手を受けた。また助産婦会の最高責任者横山参院女史は,「自らが使う看護婦は使い易いものにしておけばよいのだ。あまり余けいな世話はやいてもらいたくないと考えている医者が多いから困る云々」の意味を中心に形式的な保助看法改正の早急実現を長々とブチ上げた。

 保,助,看法改正試案が,日本看護協会方面から一部に発表されたが,これに対し如何なる反響があったであろうか。先の総会では「幹部横暴」として会員から相当強く突き上げられたと聞いている。果たしてその内容を検討した上での批判があったかどうか。全国,保助看婦諸姉が試案の内容について充分掘下げた上での「突上げ」であったとすれば,その理由の明示があって然るべきと思うが,未だに私の目にふれて来ない。半年も前のこと,林会長等から例の試案が武見日本医師会長に内示されたので,早速我々は我々なりの立場で,前後左右から細目にわたり試案の検討を行なった。その結果は,「原案に賛成出来ない」と結論した。もちろん,厚生省や国会方面にもその意志をはっきりと伝えておいた。その後,この試案の国会提出は,諸般の理由(単に日医の反対のみではなかった筈)で陽の目を見ないまま今日に至っている。

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ワンマンカーと合理化

 さいきんの交通地ごくはすさまじいものだが,その中でバス会社はどんどんワンマンカー(車掌を廃止したバス)にきりかえている。そこでは運転手がチャップリンのモダンタイムスよろしく,乗客の入れる小銭を横眼でみながら釣銭をわたしたり,前後左右の安全を確認しドアをしめ発車しながら,頭からかけたマイクに向って停留所名を告げる。そして神風タクシーのように車の雑とうする中を縫ってはしりまわる。この運転手はまさしく2人分の仕事をさせられているが,賃金は決してそうはならない。乗客はベルトコンベアよろしく,前のドアから後のドアヘ一方通行というしくみ。もはや子供や老人の上げ降しやふみきりなどに安全の手は差しのべられない。これはいうまでもなく,女子車掌のなり手が少なくなったためとられた会社の合理化政策である。この例が示すように現代の合理化は従業員の労働過重,利用者には不便と危険,会社には利潤の増大という法則をもっている。

 こんにち看護制度改訂をとなえる多くのこえはどんなもっともらしい理由がつけられようとも本質は結局,このワンマンカーと同じく看護婦不足という事態のまえに,看護婦のいない(少くてすむ)あるいはレベルダウンの病院,診療所にしようとする医療の合理化政策に外ならない。

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看護の岐路にたって

 看護はその歴史的な大きなうねりの中で今や岐路にたっているとは,かずかずの看護評論や少しでも看護に関心と同情をもつ教育者,社会学者等のたびたび指摘するところである。

 そこで不思議なことにはむしろ医師からの積極的なこの種の好意的助言は少なく,ごく一部に限られているということである。

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 今月号は,「看護制度その問題点と動き」を特集したが,印刷し始めた段階で7月30日,かねて厚生省看護課が,4月18日以来委嘱し,意見を聴取していた“看護制度に関して有識者の意見を聞く集り”の中間意見を発表した。編集部では,特集の性格から,この「集り」の意見は,法案化の過程で,一定の役割をもつものと判断し,急きょ巻末に掲載した。メンバーには,すでに本特集に,意見をおよせいただいた方も多く,内容的に重複するも面ありますが,本特集の一環として,参考にしていただきたい。

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 司会(渡辺)今日は,いま看護界で最大の問題になっている制度改正の要望書について保助看,それに准看護婦の方にお集りねがって,各々の立場からいろいろと,歯に衣を着せないでフリーにご発言いただぎたいとのことです。Yさんいかがですか。

看護制度研究集会から

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各界の代表をあつめて

 去る6月21日午後1時30分より鹿児島市山下小学校講堂におきまして「保健婦助産婦看護婦法改正に関する研究集会」が,日本看護協会各会県支部,及び看護連盟県支部,日本助産婦会県支部の合同計画により開催されました。当同は朝からドシャ降りの大雨でしたが,会員また一般の方々を含めて300人余りの出席で開会され下記プログラムにより進められました。

開会:基調報告 日本看護協会副会 長,石本茂

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超満員の会場と熱こもる質疑

 昨年12月26目厚生省に提出された“保助看法の抜本的改正に関する要望書”は全国で大きな反響を呼び,通常総会もこの間題で大ゆれにゆれた。その結果,疑問点の多い法改正について,神奈川県支部では6月13目に,協会本部から石本看護婦会会長を迎えて,保健婦助産婦看護婦三部合同の集会がもたれた。

 京浜子安駅から徒歩15分,会場の神奈川県母子衛生会館に到着したのは2時少し過ぎだった。蒸し暑い土曜の午後だというのに,会場は超満員廊下まで人があふれている。やっとのこと4人掛けの片隅に腰を落着けて会場を見渡すと,300人余りにおよぶであろうか,補助椅子もとれず,立ったままの人も多勢いる。夜勤あけの人もいるだろうに,どの顔も真剣で,法改正が自分達の明日からの問題であると自覚し,期待を持って公聴会に臨んでいることがうかがえる。

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 保助看法改正?の議論の経過をたどってみると,どうもどこかが狂っているという印象を禁じ得ない。当面するナースの不足への応急策と,恒久的な看護業務の質量の向上という大目的とがどこで噛み合うのか,どうもハッキリしないのである。

 われ人ともに知っている現在のナースの不足は,はっきりした二つの原因によるものである。第一はベッド数の絶対的な増加と日本の医療制度の発展とから,当然来るべくして来たナースの需要増を,行政当局が的確に予測し,必要な対策を講ずる努力を怠ったその怠慢の罪,これが最も大きい。

良い質は量を補う 外山 敏夫
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 看護制度に限らず,法というものは現実の推移に追いついていかなければならない。ここ10年の医療の変遷に対して,制度は血の通ったものになるためには大きなズレがあると思う。この点改正の必要はあろう。

 看護においてその間題は論議が重ねられていても,なかなかハッキリとしない。この大きな理由は,看護が医療問題全体の中で大きな比重を占めているのに医療問題自体が明らかにならぬためと思われる。

現実の上にたつものを 川上 武
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 制度を変える問題を考えるときは現実の上に立ってみつめなければならない。看護問題で私がみて,第一に考えられるものは,やはり労働条件の現状を直視することだ。もう奉仕による犠牲の押しつけはどこにも通用しない。看護の仕事が,国民医療のなかで非常に大きな比重を占めるものであるにかかわらず,また誇り高い職業であるのに,それにつく看護婦にとって働きやすい職場,魅力ある職場にはなっていないこと。

 たとえば,同じ女性の職業として女医の場合,結婚しても仕事をつらぬいて行くが,これは家事労働をホームヘルパーを雇ってもまかなえる給与を取っているからといえる。看護婦も当然,この条件に等しいものが設定されれば,もっと円熟した看護を国民にサービスできるだろう。また潜在看護力を再び生かすことも大いに可能となるのではないか。深夜勤の問題もしかり。このような問題が解決されない限り,いくら専門職として高い教育をして行こうと試みても,教育投資をするだけ損になるのではないか。家事労働を大きく上まわる諸条件がないと,女性の職業として魅力があるにせよ志望者がつづかなくなるのは当然である。

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 今回看護協会は「保助看法」の改正案を国会に提出しました。この問題点として考えたことを指摘します。

 第1に現在看護学校にはある程度補助が出ているのに,学生が集まらない。中学,高校で一番なりたくない職業がナース,次がバスの車掌さんという現状である。それが自己負担になる教育制度になると,今より以上に希望者はない。看護学校に行く人はだいたい経済的事情で大学に行けなくて来る人が多いことをみてもわかる。

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 准看護婦として10年,今だにその中から脱皮できないわたくし,昭和29年3月,中学時代の友人K子と検定試験の場所でいっしよになったことを喜びあった。K子は田辺の紀南病院乙種看護婦養成所,わたしは新宮病院の准看護婦養成所を卒業し同じ場所で同一の試験を受けた。

 だのに乙種看護婦は今では立派な看護婦として何のこだわりもなく活躍し,わたしたちには今だに看護婦への受験資格すら与えてくれない。進学コースに入学するには今の病院を退職しなければならず,そうなれば向う2年間病床の母に送金もできずせめて夜間進学コースでもあればと願った。しかし何といっても准看の数は少く力も微々たるもの最近まで夜間コースはできなかった。欠員欠員で看護婦不足を眼前にしながら若い准看の中にはせつせと定時制高校に通い短期大学や大学を卒業して職業を変えていつた人また家庭,診療所へと去っていった何人かがありました。

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 現行の保助看法を改正し保健師法案の確立をみようとしている看護協会。大々的に看護制度も変わろうとしています。複雑な看護界を統一するには最良のものかも知れません。改正案はある面では向上しある面では低下しているように思われますが看護の改善向上を期せる事は確かだろうと思われます。

 私がこの改正案を知った際「そんな馬鹿な」「シマッタ」という逆上にも似た感情を抱きました。進学コース在学中の人は多かれ少なかれ,私と似た感情を持った事と思われます。数名の友といっしょだったのですが皆キツネにつままれたように口をきくこともできなかった。そしていっせいに波立つ胸の内を話しはじめたものです。

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 天から降ったか,地から湧いたかまったく突如として現われた保助看法改定である。それが日本看護協会の発案ときくに及んでは,驚ろきだけではすまされない。私たちの職場では,過日県看護協会支部が行なった保助看法改定に関する説明と討議の会の模様を録音して,出席できなかった多くのナースのために聞かせてくれたが,その質疑応答を聞いていて,私を非常に憤慨させたことがある。進学コース卒業生の身分である。

 看護職の基礎教育の基準を高等学校にする基本線が打ち出されておりこれは協会幹部も,厚生省も,世論の声も大きいようであるが,高等学校を卒業せずに,進学コースに進み看護婦になった者は,保健師に進む道を与えないという意見である。高等学校を卒業していない者を大学卒と同格に扱えないのは当然である,と表明した偉い役員があり,「当然なり」と賛成した幹部連がいた。結論としては,進学コース問題は現在討議中であるとのことであったが,ここで昭和29年に保助看法改正が行なわれ,准看護婦制度がしかれた頃迄さかのぼって考えてみたいと思う。准看1回生は同じ新制中学を卒業しながら壁1枚へだてて,旧乙種看と同じ教科書で同じ先生に教育された。そして卒業後の資格は片は正看護婦片は准看護婦と運命づけられたのである。新制度実施への足並もそろわず,都道府県により1〜2年の開きができた。じっさいの話,12年生まれの乙種看があり,10年生まれの准看が存在している。

グラビヤ

ここに看護がある

Medical Topics

月経周期と病気,他 R.T.
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 産婦人科疾患は当然ですが,内分泌疾患,血液疾患等の内科疾患の時にも月経の異常のあることはよく知られていることです。しかし,逆に月経周期により影響される病気となるとあまりよく判っておりません。たとえばむくみのある患者は普通内科を受診しますが,内科医はややもすると月経周期との関係をききもらしたり,きくのを躊躇するために周期性にみられる浮腫の原因が判らず,いたずらに検査をしたり,不必要な治癒を行なったりしていることがあります。

 最近,月経周期と病気との関係が次第に明らかになり興味をもたれるようになってきました。これまでの報告によりますと,月経前期(すなわち黄体期)に悪化する病気が多いような気がします。

統計

心臓の異常者 西 真楠
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 40歳以上のものについて,心臓の状態をみると第4図の如く,正常なものは約半数の46.3%また異常なものは8.5%である。この心臓の異常者の発現率を血圧と関連してみると第1図および第2図の如くで,最大血圧では120〜129mmHg,最小血圧では70〜79mmHgのところが極小となるカーブをえがく。つぎに心臓疾患にみられる自覚症状といわれるもののうち「息切れ」「胸の圧迫感」の2つ,またはいずれか1つをもっているものは40歳以上のものの24.5%もあるが,自覚症状の有無別に心臓の異常者の発現率をみると第3図の如くで自覚症状のあるものに異常者がやや多く発見されるが,自覚症状がなくとも心臓の異常者が相当いる反面,自覚症状があるにもかかわらず心臓の異常の認められないものが44.5%もいる。なお,心臓の異常は心電図の判定によったが,ここでは判定基準を省略する。

看護婦さんへの手紙

病人からのお願い 壼井 栄
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 一昨々年から,ぜんそく持ちになった私は,ある時期になると入院しなければならないほどひどい発作におそわれ,入院と外来をくりかえしています。ということは,年がら年中お医者さんや看護婦さんと仲よし,ということになります。仲よしになってみて気がつくことは,看護婦さんという仕事が,どんなに大変かということです。女の職業の中で看護婦さんほど自分の感情を殺さねばならない仕事はまずないのではないでしょうか。対手が病人だということで腹が立ってもそれを顔に出せない。うれしくてもまた同じことでしょう。重病でうなっている人のところで,浮々などできないからです。といって,感情を押えすぎて哀楽を顔に出さなすぎても,患者にとってはそれが冷たく感じられたりして,不平のもとになったりするかもしれません。幸い私の場合は,そんなことはほとんどありまんでしたけれど,昨年,身内の若い者が癌で入院していた時には死期が近ずくにつれて,まったく,申しわけないほど看護婦さんに当り散らすのを,目の前で見せつけられ,わびる言葉もありませんでした。そのときの看護婦さんの,臨機応変ぶりには,はたの者は感謝で胸いっぱいなのに,病人にとっては,その一つ一つの気働らきまでが癌の種になるらしく,時には虫けらをはたき出しでもするように,出ていけッ!などと,病人とも思えぬ大声でどなるのですからそばにいるものはたまりません。

ポイント

よそ者 二木 シズヱ
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 福井県の看護婦のみなさまからのお招きをうけて,「社会の中の看護」という題目のもとに勉強させていただく機会にまたまた恵まれた。

 細かく神経のゆきとどいた支部長さんのご案内で,無事にあたえられた役割をはたし,看護婦としての職業への明るい見通しをおみやげに車中の人となった。途中時間のあるにまかせ久しぶりに助産婦学校時代の同級生にあいたいと思ってある駅で下車し,勤め先であるK病院に電話をかけてみた。

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 ひとりの小児科看護婦の手記が,いま大きな反響を呼びおこし,おおげさにいえば,“医療のあり方”の議論を国民の間にまきおこそうとしている。その手記は『生体実験」(三一書房・230円)。その事件が,かつて神戸医科大学において行なわれた臨床実験成績であり,乳幼児栄養の重要な発表として,昭和33年の日本小児科学会の輝かしい研究であっただけに,世間に投げかけた衝撃と波紋も,それだけ激しく大きかったといえよう。

 ストーリーをかいつまんでいえば“大学病院”の看護婦であったために,心ならずも未熟児の生体実験に協力させられ,その苦しみに耐えかねて病院を飛び出した著者が,この“生き地獄”のありさまを世間に訴えようと綴った手記といえよう。

医療の焦点

薬とその周辺 水野 肇
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 「日本ぐらい薬が自由化されている国はない」といわれている。テレビのコマーシャルでは,まるでその薬を飲めばポパイのように力持ちになるかと思うぐらいのPRが行なわれているし,どんな印刷物をみても,薬の広告のないものはないといってもいい。一方では,抗生物質ホルモン,トランキライザーのような医師の処方を必要とするようなものまで薬局の店頭で手軽に買える。それに加えて,このところ,サリドマイド禍,強肝剤論争,黄体ホルモンの奇形と話題も豊富である。—こういった情勢からはたして薬の問題は,いまのままでいいのかという疑問が識者の間で真剣に考えられている。

 大量生産される保健薬

 薬の問題点は実に多い。まず第1に,日本入は極端に薬好きの国民である。とくにいわゆる大衆保健薬といわれるものは,37年度でさえビタミン550億円,代謝性医薬品135億円,滋養強壮剤140億円など前年にくらべて3割以上の増産である。全部が日本で消費されたわけではないが,ともかくすさまじい売れ行きを示している。日本は,むかしから医師のことを“くすし”といっていたように,薬を与えるというのが医療行為の本流だった。東洋医学であったためだ。“くすりにしたくもない”というコトバがあるように,くすりが貴重品であるという考え方が国民の間にも根ざしている。

連載 新・ナイチンゲール伝・6

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9.クリミア戦争へ

 それから3年。時の流れはひとつの力です。ナイチンゲールの家族も,フロレンスの年令から来る力を,ようやく認めるようになりました。そして,フロレンスはロンドンのハーレー街の慈善療養院(看護ホーム)の監督に就任することになりました。

 ともかくも,ここにはじめて物心ともに独立の生活を獲得したのでした。母のナイチンゲール夫人はまだあきらめ切れなくて,とぎどきは近親に対して涙ぐんでグチをこぼしたりしていました。

精神身体医学講座・5

心身症の見かた 前田 重治
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 今回は,心身症の正しい見かたについてのべます。特殊なばあいをのぞいて,ナースが直接に患者を診断するということはないわけですが,心身症の正しい看護を行なうには,医師がどのようにして診察し,検査し,面接を行なっているかということをよく知っておくことが必要であるとおもわれます。また一方,そこに精神身体医学というものを理解していただく上に重要ないくつかの問題が横たわっています。

 心身症の位置

 心身症を正しく見てゆくには,その近接した病気について正しく知っておく必要があります。今日,ノイローゼというコトバが一般化していますが,それにつれて,ノイローゼと精神病とが混同されるだけでなく,心理的な色彩の濃い体の病気つまり,心身症までが精神病とまちがえられることも少なくないようです。心身症とノイローゼの区別は,今日まだいろいろと問題の多いところですが,一応図式的にまとめてみますと第1図のようになります。実際にはこのようにきれいに分けられるものではなく,右の方にゆくほど身体的な因子がつよく影響するといった意味のものです。身体疾患の患者の中にも,二次的に心身医学的な取りあつかいを必要とする者があることは前にものべたとおりです。また器官神経症(心臓神経症,胃神経症など)というのは,神経症の中でも体の症状を主とするもので,身体的因子がつよく作用していると考えられるものです。

看護と経済・4

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 病院のお金は入るのが大変なのだから,使用する場合も賢明に使用しなければならない。

 収入の1/3は看護に使用される。すなわち,職員とか,設備,サプライ,またそのようなもの。しかし,皮肉なことに総婦長は,予算の準備とか,会計の調節に関してはあまり重要な役割をもっていない。婦人の役割は家庭においては家事の運営についてであり,ニードを評価し,必要なものを買い,よいものを買い,買ったものが本当に役にたつかどうかをしらべて行く役割であることを考えると,病院における看護婦の立場はまったく逆説的である。しかも,総婦長のこういった面での才能はしばしばみのがされている。そして病院の予算や看護についての計画にはあまり深くまきこまれない。

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I.はじめに

 農夫症は,長野県の佐久平で農民の中にはいって研究されていた若月後一先生が調査により,ことに高頻度を示した“夜間の頻尿”“息切れ。”手足のしびれ“”肩こり“”腰痛"を5大症候とし,そのうち3つ以上の訴えのあるものを,一応,農夫症と定義しており,この原因として過労,精神緊張,栄養不良,寄生虫,寒冷があげられている。

Ⅱ.研究の目的

 セッツルメントで春休み,夏休みを利用して地域活動をしていて,農村に腰痛,肩こり,手足のしびれなどを訴える人が多いのを知った。そこでどうして農村にこのような症状(すなわち農夫症)が多いのか多方面から原因を追求し,今後の対策の資料とし,少しでも地域の健康が守られ,また生活の合理化がはかれたらと思って研究にとりかかった。

想園

余裕を持つて 愛宕 すみ子
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 ここ最近,入院患者がぐっと増加し,どの病棟も満床といったところだ。忙しい時になると,入退院患者が10余名にもなることがある。日勤者わずかの病棟では,これらの急変に携わるのに容易なものではない。退院時には,退院者個々の指導を,新たに入院する人に対して,病棟の説明および手術前のオリエンテーションを,そして,これらが時には機械的に処理されてしまいがちになることもあります。

 私はこのような忙しい時はとても悲しく,自分がみしめに感じられることが間々あり,そのたびごとに少しでも患者の要求を満たせるほどの余裕のある自分でありたいと願うのです。椅子に腰を落ちつかせるのが昼食のときだけということが,大半を占めている私たちである。この疲労しきっている心身で,どうして患者の要求を満たし得ようか。考えてみれば,病院で占める看護婦の業務は,あまりに多すぎる。しかし,すべてがすべて看護婦がなさねばならぬ仕事であろうか。一年ほど前しきりに業務分担の問題がとりあげられ検討されていたにもかかわらず,結論のでないままに終わっている。解決されぬままに,残されてゆけば看護婦の不足および看護の本質の悪循環を作ることになるのではなかろうか。

癌看護の苦しみ 高橋 加津子
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 “癌”何んというおそろしいコトバでしょうか。私が当センターに勤務して2年になりますが,日ましに恐怖と怒りがつのるばかりです。そして,解決のできない現在の医学に対して,たとえようもない腹立たしさを感じるのです。癌年齢が,30歳,20歳と若い人たちにみるにつけ,私の苦痛はつのるばかりです。看護学院を卒業する時は,強固な意識と希望それにセンチメンタルなかけらを胸にいだいていたのでしょうか。

 癌という病の看護に,少なからず期待をかけて就職したのですが,それは悪魔のような癌細胞の恐怖を知らなかったためでしょう。

二人の看護婦 小野 芳枝
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 私はつい最近,明るい話題と,暗い話題になる二つのことに直面しました。過日「看護学雑誌」にも取上げていただいてますが,庭球で大腿骨骨折をし第一回目のギブス固定(オペも含む)がうまく行かず,大手術を受けた当時の事を書いたのですがその妹があれから何回かの大手術を受けて,最近再び国立病院にて手術を受けることになったのです。

 ところが入院手続のために私は,勤務を交代して当日病院に伺ったのですが,私が書類を出してこれをお願いいたしますというと,その看護婦は顔も上げず,これは何ですか,これじゃわからないですよと,まったくケンもホロロの口調です。入院なんですけどというと,入院なら入院とはりきりいったらいいでしょう。黙っていてはわかんないですよと,まるで小学生にでもいうような態度です。しかもれっきとした看護婦です。私はあまりの口調に,まったくオドロイてしまいました。しかし病院慣れしている私は,多分虫の居所でも悪いのかなあと思い,どこの病院にも一人二人はこんな人もいるものだと思いながら,その場は黙って帰って参りました。

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 政治家や財界人が死んでも,別になにも感じないが,作家や芸術家が死ぬと,大なり小なり心に響いてくるものがある。時には襟を正すおもいでその記事を読むこともあるし,時には,その芸術家の作品にまつわる自分自身の思い出をあれこれと思い浮べながら,深い感慨にひたることもある。いずれにせよ,なんらかの感動を覚えずに,作家や芸術家の死に対さないわけには行かない。ところが,政治家や財界人の死は,それが余程の人間でないかぎり,無感動でとおりすぎてしまう。これは,自分が文学畑の人間で,もともと政治や経済にうといという理由からくる一種の偏見でもあると思うが,それ以外に,やはり芸術家の死と政界財界の入間の死とには,根本的に違ったものがあるようだ。だれでも騒いだし,事件そのものがショッキングだったから,大体比較にもならないが,たとえば,政治家でも,ケネディの死ぐらいになれば,やはり深い感動を覚えないではいられなかった。人間が,自分とはなんの関係もない人間の死を悼む気持になれるのは,その人間に人間としての深い味わいがなければいけない。日本の政治家や財界人たちは,その点いいようもなく面白くない人間ばかりがそろっている。その意味で作家や芸術家たちは,それぞれ,強い個性の持主である。作品はそれほど面白くなくても,作家の人間に面白味のある人もしばしばある。私は,すべて人間的な人間にしか興味を持てない。

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ありがとうと拝まれて胸あつかりき指示の注射をうちたるのみに大根にグリーンピースの添えてあり癌病む人の膳にも春は吾子咳くを背に聞き捨てて夜勤へと雨降る浜を黙し急げり

付録

看護手順—産婦人科
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〔外診〕

I.必要物品

 血圧計,聴診器,トラウベ聴診器,骨盤計,巻尺,メモ,鉛筆,打腱器,ストップウォッチ

基本情報

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看護学雑誌
28巻9号 (1964年9月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

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